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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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73/123

CASE.071「頑張る、トリリウムシスターズ」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

「キャァァァアアアアッッ!!!」

「(;゜ω゜)」「(;゜ω゜)」「(;゜ω゜)」

「あばばばばばばば」


 絶叫する一同。

 アンはゥルルを抱え、シスターズはアンの下敷きになりながら、穴――というより長い長い洞窟を高速で滑り落ちていた。


 勾配はおそらく45度超。

 アンのお尻は「ぷろてくとモード」のシスターズが下敷きになることでガードされているものの、アンとゥルルの重みで彼女たちはゴリゴリと、大根おろしのように高速で滑落していた。


「やべッス! 速度100キロ超えてますよコレ!」

「アン大丈夫なの!? 今どうなってるの!? アン!?」


「キャァァァァアアアアアッ!!!」


 アンはカイの言葉を掻き消すほどに絶叫を繰り返している。


 まさしく命綱・減速なしのノンストップ高速ジェットコースター。

 しかも視界は真っ暗で、何も見えないというおまけ付き。

 穴はかなりうねっているらしく、アンたちは右へ左へ、予告なく土壁へ叩きつけられる。


 ただ、ゥルルはアンに体が大きくひしゃげるほど抱きしめられており無事。

 アンも同様に、FREYAの装甲とシスターズが身を挺して防御しているので無傷である。


「わわわわわわわわわ!」


 ゥルルもこの速度で降りるのは初めてらしい。

 いつもはコロコロゆっくり転がりながら降りているため、非常に逼迫した表情をしている――ようだ。


 かれこれ数分間滑り落ち続けており、いつ外へ飛び出してもおかしくない状況だ。

 その時、ミラの怒号がイヤホンに鳴り響く。


「アンちゃん! 前方300m、行き止まりッス!!」

「えぇ!? 行き止まりぃ!?」


 さすがのアンにも聞こえたのか、さらに狼狽する。


「たぶん道がちょっとかわってるるるる……」


「衝突まで、あと10秒!!」

「アン! シスターズに命令して!!」


 ミラとカイも冷や汗だらだら。

 カイはマイクをぎゅっと握りしめすぎて、また若干ひん曲がり始めている。


「あと5秒、4……3……」

「ううっ、KNOWS(ノーズ)ちゃん、『せんめつモード』!!」

「(◣д◢)」


 アンの下敷きになっていた1機が、どうにかその隙間から顔を出す。


 変形して銃口を露出させると、桃色の光線が勢いよく前方――3人が滑り落ちていく方向へ射出された。


 光線に照らされ、一瞬だけ暗闇が晴れる。

 その先にあったのは、何の変哲もない分厚い土壁だった。


「2……い――」


 ビュンッ、とビームが洞窟内を駆け抜け、そのまま前方を塞いでいた土塊を貫通する。


 アンはゥルルを覆いかぶさるように抱きしめた。

 目を瞑り、真正面から高速で迫る土壁へ勢いよく激突する。


 バカァンッ、という衝撃音。

 ビームによって壁の中央が脆くなっていたため、辛うじてアンらは肉塊にならずに済んだ。


 だが次の瞬間。

 瞼の奥から強烈な光が差し込み、妙な浮遊感が全身を包み込む。


「アンねーちゃん、起きて!!」

「え、なにな――」


 アンは瞼の奥から光を感じ、思わず目を見開いた。

 すると目の前には――見渡す限りの大自然が広がっていた。


 果ての見えない森。

 ところどころに滝や川、渓谷や山々といった自然特有の絶景が広がっている。


(すご……)


 アンは目をぱちくりと開閉する。


 なんとも美しい景色だ。

 これが彼女が舞い降りた、ゥルルが住む異世界の全容なのだ。


「アンちゃん、したした!! 下見てッスゥーッ!!」


 だが感動も束の間。

 浮遊感は消え失せ、重力に引かれて真下へ落ちていく感覚に襲われる。


 彼女らは空――ユグドラシルのどこかしらからポイッと放り出されたのだ。


「キャァァァアアアアッッ!!!」

「んむぅーっ」


 再度、アンの絶叫が空中で儚げに木霊する。


 強烈な突風に襲われ、アンは息をするのもやっと。

 ゥルルはアンに抱きしめられ、もはや身動きが取れずにいる。


 意外と胸もふくよかなので完全に押し潰される形となり、視界が完全に遮られ何が起きているのかもよく分かっていない。


「ヤバいッス、今度こそマジやばいッス!!」

「シスターズッ! なんとかなさい!!」


 すると、カイの言葉が届いたのか。

 空中へ投げ出されていたシスターズが即座にアンの背中へ舞い戻る。


 そして花びらが開くように変形し、レーザーの逆噴射を始めた。


「ト、トリちゃん!?」

「:(`^´):」「:(`^´):」「:(`^´):」


 だが、それでも勢いは止まらない。


 つい先ほど、最大出力照射と緊急防御を立て続けに行ったばかりだ。

 さらに洞窟内ではアンの下敷きとなり、KNOWS(ノーズ)は再びレーザーまで使用している。


 本来なら、とっくに休ませなければならない状態。

 それでもシスターズは負けじと、出力を徐々に上げ始める。


「(((◣д◢)))」「(((◣д◢)))」「(((◣д◢)))」


 ついにシスターズは、各々が全開でレーザーを噴射する。


 銃口部は赤熱し、機体は細かく震えていた。

 明らかに限界を超えた稼働だ。


 それでも主を守らんと、必死に落下速度を相殺しようとしていた。


「がんばれがんばれがんばれがんばれがんばれがんばれがんばれがんばれ!!」

「がんばれがんばれがんばれがんばれがんばれがんばれがんばれがんばれ!!」


 カイとミラも、必死にシスターズの奮闘を応援している。

 というより、今の彼女たちにできることは、3つのポッドへ言葉を送ることだけだった。


 すると――


「わ、わ、わ……!」

「わぁ! 飛んでる!!」


 シスターズの奮闘が功を奏した。

 落下速度はみるみる減速し、ついにはアンとゥルルの体が空中でほとんど静止するまでに至った。


「(;´Д`)」「(;´Д`)」「(;´Д`)」


 だが相当疲弊しており、シスターズの稼働はいよいよ限界を迎えていた。


「ありがとね、トリちゃん!! ぐすん……あとでいっぱい撫でてあげるからね!!」

「ありがとう!」


 アンとゥルルは、精一杯の感謝をシスターズへ送る。

 言葉はシスターズにも届き、満足げに噴射を少しずつ緩め、アンたちをゆっくりと地上へ降ろし始めた。


「すごいね、アンねーちゃんの武器!」

「武器じゃないわ。『トリリウムシスターズ』のトリちゃんよ♪」

「へぇー。ありがとね、トリちゃん!」

「(´◡͐`)」「(´◡͐`)」「(´◡͐`)」


 危機が遠ざかり、カイとミラも床にへたり込む。


「はぁ~~~~~~」

「心臓が……いくつあっても足りないわ……」

「お疲れ様だ、2人とも」


 ユリスが、すっかりやつれた2人にコーヒーを差し出す。

 すでに1杯頂いたところだが、2人は奪い取るように受け取り、ごくごくと一気に飲み干した。


「ふぅ……ありがとう、ユリス」

「気が利くじゃねぇッスか」

「それはどうも。それより、これからどうするつもりかな? 危機は免れたものの一件落着とはいかないだろうに」


 正論をぶつけられ、空気の読めない眼鏡を2人はじろりと細めた目で見つめる。


 とはいえ、彼の言う通りである。


 ユグドラシルからの脱出。

 それは一時的なゴールであり、当初の目的であった他執行官との合流には、まだ何も着手できていない。


 運よく(?)転生者(ターゲット)――ゥルルには遭遇できたものの、このまま執行というわけにもいかない。

 よって、アンの次なる行動は慎重に決める必要があった。


「まぁ、でも……今はそっとしておきましょ」

「そうッスね」

「同感だ」


 モニターを見ると、アンたちは束の間の空の旅を満喫していた。

 子供のような笑顔を咲かせ、アンとゥルルは初めての感覚と光景に見惚れていたのだ。


 任務も大事だが、そもそもこれは彼女の初任務。

 こういう時くらい、あの子の“今”を優先させてあげるのが先輩というものだろう。


 カイ、ミラ、ユリスは軽いため息をつき、次のステップについて議論を始めた。


「こんな景色、初めて見た……」

「そうなの?」

「うん。いつもはユグドラシルさんの上だし、降りた時はもう地面なんだもん」

「そうなんだ……」


 風に揺られ、アンとゥルルは再び言葉を交わしていた。


 そこでアンは、ここで1つ、ゥルルの素性に踏み入る質問をした。


「お友達はいるの?」

「……アンねーちゃんが初めてだよ」

「そ、そうなんだ……ごめんね! ででも、ありがとね! ゥルルのおかげで私も寂しくないよ!」


 やはりまずい質問だったと、アンは必死にその場の雰囲気を取り繕う。


「アンねーちゃんは、どこから来たの?」

「…………小さなお部屋から来たの」

「? へぇ~~、1人ぼっちで?」

「…………ううん。本当はいっぱいいたんだけどね……はぐれちゃったの」

「そうなんだ。見つかると良いね!!」


 アンは優しくゥルルの頭頂部を撫でる。

 気持ちいいのか、ゥルルはぷるんと体を震わせた。


「ゥルルも1人なの?」

「……うん」


 

「……ぼくはずっと1人、だよ」

「そう、なんだ……。じゃあ私たち、1人ぼっち仲間だね!」


 ゥルルは嬉しげに、ポヨンポヨンとアンの腕の中で跳ねた。

 アンはそんな彼を、優しく撫で続ける。


 ひとまず苦難を避け、転生者(ターゲット)であるゥルル本人にも会えた。

 アンとしては、この状況は上々。

 幸先の悪いスタートからかなり盛り返すことができたので、今はとても気分が良かった。


 だが、そんな他愛のない会話の中でも、彼女の異能は見逃さない。


 

 彼、ゥルルの最後の言葉に——


 

 ――大きな嘘が紛れていることに。

【今回の用語まとめ】


■ユグドラシル内部の抜け道

ゥルルが知っていた、ユグドラシルの背中から外へ降りるための洞窟。

本来はゆっくり転がって進む道らしいが、今回は身震いの影響もあり、アンたちは高速で滑落することになった。


■「ぼくはずっと1人」

ゥルルがアンへ語った自身の境遇。

しかし『|あなたの物語を聞かせて《ユア・テイル》』は、この言葉に大きな嘘が含まれていることを感知した。



――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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