↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
PR
71/122

CASE.069「ぼく、わるいスライムじゃないよ」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

 堂々と執行官の前に名乗りを上げた転生者(ターゲット)、『ゥルル』。


 体をぷるるんと震わせ――顔のパーツはないので分からないが――まるでキリッとした表情をしている。

 当然だが、ゥルルは目の前の女性が自身を執行しに来た存在などとは、夢にも思っていないようだった。


「ゥルルちゃんって言うのね。可愛い名前~♡」

「うん? ぼく、おとこのこだよ」

「あ、ごめんなさい。ゥルル君ね!」

「むん!」


 なんだか、ほわほわとした雰囲気。


 モニター越しにその光景を見ていた作戦室一同は、ぽかんと口を開けて眺めていた。


「えっと…………あのスライムが本任務のターゲットで間違いないのよね?」

「はい……。てか、自分で名乗ってますし……」

「随分、情報と乖離……いや、別に乖離はしていないようだ。かなり情報録に準拠した姿だ」

「だいぶ珍妙だがな」


 大人組は揃って「何が何だか」という顔をしており、ひとまずユリスが全員にコーヒーを淹れる。


 一方、子供組――インヨウ兄妹は、初めて見るスライムに興奮していた。


「わぁースライムだぁ!!」

「すげえ。カイ姐、オイラたちもあそこ行きたい」

「だ、ダメに決まってるでしょ!? あなたたちは今はフィクサーなの! 今回は出番なし!」


 「ぶー」とインヨウ兄妹は不貞腐れ、ついには部屋へと戻ってしまった。

 どうやら、見ているだけではもう飽きたらしい。


「どうします? ヤるッスか??」

「うーん、見るからに敵対心はなさそうだけど……少し様子を見ましょう」


 情報録に書かれた内容から、どんな桁違いの化け物なのかと想像していた。

 だが実際に出てきたのは、かなりデフォルメされた可愛らしいスライムだった。


 そのうえ、あまりにも警戒心が薄い。

 敵対するどころか、自分から名乗り出たほどだ。


 子供そのもののようにアンの前ではしゃいでおり、正直なところこのまま即執行というのはなかなか心理的に躊躇われる。

 それゆえに、カイはアンへ待機命令を出すことにした。


「アン。とりあえず敵対心はなさそうだけど、一応はその子、転生者(ターゲット)だから。警戒を――って、もう聞いてないわね……」


 アンはすっかりゥルルにメロメロで、両腕で抱きかかえている。

 普通、赤いスライムを見れば「酸」や「毒」などを警戒しそうなものだが、彼女はそんなことを気にも留めず、ゥルルをぎゅっと抱きしめていた。


「んふふ~♡ ゥルル君ぷにぷにだねぇ~」

「えへへ。おねえさんはなんてゆーの??」

「ん? 私? 私はアンよ。よろしくね、ゥルル君」

「よろしくね! ぼくはゥルルでいいよ。そのかわり、ぼくも『アンねーちゃん』って呼んでいーい??」


「もちろん!!」


 アンはさらに強くゥルルを抱きしめる。

 ゥルルは体の形を変えるほどひしゃげているが、少なくともアンに抱き潰される程度では何ともないらしい。


「めっちゃ仲良くなってるッスー……。これ、不味くないッスか?」

「そうね。あまり執行対象に感情移入するのは……」


(でも、あの子がイシス神を殺したのよね……?)


 カイだけではない。

 その場の全員が、同じ疑問を持ち始めていた。


 もちろん、ゥルルのこの仕草が演技である可能性は捨てきれない。

 だが、もしこれが素のゥルルならば、今の彼には“神殺し”の罪がどうにも似つかわしくないのだ。


 モニター上の反応も微弱。

 警戒心もゼロ。

 そして何よりも、幼い。


 幼いのだ。


「な、何歳くらいなのでしょうか……?」

「……しばらくは、あの子の素性を探りつつ情報収集ね」

「そうッスねぇ」

 

 ノルハイコの呟きを拾い、カイはアンに指示を送る。


「アン。その子に年齢を聞いてちょうだい?」

「了解!」

「それと、こちらのことは絶対に喋らないように。これから返事は、肯定なら頷く。否定なら首を横に振る。分かった?」


 アンは首を縦にブンブンと振る。


「アンねーちゃん、誰とはなしてるの?」

「んえっ、なななんでもないよ!」


 アンは必死にその場をはぐらかす。


 好奇心旺盛な年頃なのだろう。

 アンの懐にぴったり収まったゥルルは、興味津々に彼女を見つめている。


「ゥルルは何歳?」

「んー? たぶん5さい」

「5歳なのね! お誕生日はいつ?」

「おたんじょうびは……おぼえてないや……」


「5歳ッスか……マジなんスかね?」


 嘘かもしれないと、ミラはゥルルを疑う。


 もしかすれば執行官のことは端から知っており、騙し討ちを狙っているのではないか。

 コーヒーを啜りながら、ミラは細目でゥルルを見つめる。


「大丈夫。ここで、あの子の力が役に立つわ」

「力? ……誰のなんの話してます?」


 カイは余裕綽々とコーヒーを飲み干し、マイクを握る。


「アン。その子、嘘をついてるかしら?」

「……っ!」


 アンは、ゥルルが気づかない程度にゆっくりと首を横に振る。


「なるほど、了解。少なくとも本人は、本当に自分を5歳くらいだと思っているようね……」


「え、ちょ、どどどういうことッスか!? 意味が分からないッス」

「説明してなかったわね。これはあの子――アンの恩寵(ギフト)よ」

「ゲホッゲホォッ!!……ギギギ恩寵(ギフト)ぉ!?」


 衝撃の情報にミラは大いに咽る。

 ユリスも同様、驚きの表情をしていた。


「どういうことだ、カイ監査官。彼女はまだ下級官だ。下級官にはまだ恩寵(ギフト)の使用許可は――」

「――下りたのよ。特別にね」


「………………そうか。なるほど、概ね理解した。だからこそのここ——『特六』か」

「そうね。うちに普通の人材は来ない。彼女もまた、特殊第六執行部隊の『特殊』の名を冠するうちの1人ってことよ」


 特殊第六執行部隊は、他部隊では扱いづらい者、あるいは何らかの事情を抱えながらも、そのスペックだけは高く評価された者たちの巣窟だ。


 ドゥーを筆頭に、全員が全員濃い経歴と特徴を持っている。

 そしてアンもまたその一員であるという。それだけの話だ。


「アンちゃんの恩寵(ギフト)って何スか?」


「……『|あなたの物語を聞かせて《ユア・テイル》』」

「ゆあ――なんスか??」

「あの子はね、人の心を見透かすことができるの」

 


 ――『|あなたの物語を聞かせて《ユア・テイル》』。


 アンの恩寵(ギフト)の名。

 それは下級官でありながら持つことを許された、稀有な例である。


 その本質は、カイの言う通り“対象の心を読む”ことにあり、たとえどれほど取り繕おうとも、彼女の前で意図的な嘘を隠し通すことは困難を極める。

 変身の化身とも呼ばれる最上位存在(神々)の一柱、『ロキ神』でさえ、彼女の前ではいとも簡単に化けの皮を剥がされるという。


 戦闘面でも有用だが、何よりこういった心理戦や情報収集では無類の強さを発揮する。

 全RAC内の恩寵(ギフト)の中でも、かなり特異な異能である。


「なるほど。確かに適任ッスね」

「そう。あの子(アン)、外見はいかにも人畜無害だし、これほど噛み合った能力はないわ」

「それにしても異例中の異例だがね。下級官が恩寵(ギフト)を持つとは……他にはドゥー執行官くらいではないか?」


「だからこそ、ここに配属されたのよ」


 カイはそう付け加えた。


「ヘパー?」

「あん?」


 カイは突然、暇そうにしていたヘパーに話しかける。


「あなた今、暇よね?」

「暇じゃねえ。こうして俺が作った新作の動向を見張ってんだ」

「“あーし”の作品だし。勘違いしないでくんなーい?」

「あ”ん”ん”??」

「あ~ん??」


 またもやヘパーとルールーの間で火花が散り始めたので、カイが即刻ぶった切る。


「ヘパー、ルールー。あなたたちはあの子――『ゥルル』の経歴を調べてきて」

「は!?」

「え、なんであーしまで……」

「私はこの現場の指揮官を任されてるの。だから二度は言わない。分かった?」


「…………チッ」

「別にカイ姐様が言うならやるしー? このむさいおっさんと一緒くたにされるのはマジムリごめそだけど」

「ソイツは俺のセリフだ馬鹿タレ。俺の方こそ“マジムリごめそ”じゃ」


 「真似すんなし」と言いつつ、ルールーは作戦室を後にする。

 ヘパーも悪態をつきながら、カイの冷蔵庫から缶ビールを3本拝借し、その場を去った。


「ふぅ……これで、どうにか進展すると良いけど」

「あのコンビ、大丈夫なんスか?」


 ヘパーとルールー。

 お互いに癖の強い技術官。

 強いこだわりを持つ一方で、その腕は確かなもの。

 だが何かといがみ合うので、ドゥーとミラのコンビと比較しても、なかなかに危なっかしい2人組である。


「大丈夫よ。ヘパーはああ見えてオペレーターの適性が高いし、ルールーはあくまでストッパーだから」

「え”、あのおっさん、オペレーター適性あるんスか!?」

「そうよ? 前に議事録へ変なノイズが入ったことあったでしょ? アレ、あの馬鹿(ヘパー)の仕業だから」


「あー……アレあの人の仕業だったんスね……」


 そうこうしていると、モニターの方からまたアンとゥルルのほわほわな会話が聞こえてきたので、カイは本題に戻る。

 

「アン。そのまま色々と質問を織り交ぜながら、会話を続けてちょうだい」

「……」


 アンはこくこくと頷く。


「それと、何回も言うようだけど、こちらのことは何も言わないように、ね?」

「了解! …………あ」

「あ」


「心配ッスねぇ~~(;'∀')」


 アンは思わず口に手を当てる。

 少々ドジで心配だが、どうにかアンは己にしかできない責務を全うするのであった。


【今回の用語まとめ】


■ゥルル

今回の転生者(ターゲット)。自称5歳の男の子。

極めて人懐っこく、アンを「アンねーちゃん」と呼んですぐに懐いた。現時点では本人に嘘をついている様子は確認されていない。


■『|あなたの物語を聞かせて《ユア・テイル》』

アンが所有する恩寵(ギフト)。

対象の心を読み取り、意図的な嘘や偽装を見抜くことができる。戦闘だけでなく、尋問・心理戦・情報収集で極めて高い性能を発揮する特殊能力。


■アンの恩寵(ギフト)特例

通常、下級執行官・準上級執行官には恩寵(ギフト)の保有・使用が原則認められていない。

しかしアンは能力の希少性から特例で許可されており、ドゥーと同様に下級時点から恩寵(ギフト)を持つ異例の存在だった。


■ロキ神

変身・偽装に秀でる最上位存在(神々)の一柱。

『ユア・テイル』は、ロキ神ほどの偽装能力をもってしても欺くことが難しいとされており、アンの能力精度を示す比較対象となっている。




――――――――――――――――――――――――――――




ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



よろしければ、フォロー・ブックマーク・感想などいただけますと励みになります。

感想については、質問・ご指摘・話の感想など、なんでもお気軽にお寄せください~!!全て受け止めます!!



※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。