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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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CASE.056「地獄へようこそ」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

 翌日、ようやく出所の時が来た。


 当初の予定では無期懲役だったところを、なんとたったひと月で出ることができたのだ。

 おそらくはカイの努力の賜物、そしてRAC職員たちのボイコットのおかげだろう。

 こればかりは盛大にやらかしてくれたトール神に感謝である。


 とはいえ、ドゥーにとっては非常に、非常に気が重い日だった。


「ではドゥー執行官、あなたのご活躍を期待しています!」

「うん……」

「ドゥー執行官? どうされましたか?」


 非常に帰りたくない。

 というか、ここから出たくない。


 ドゥーは現在、昨日付き添ってくれた職員に見送られ擬似タルタロスの出口前にいる。

 だが見える。見えてしまったのだ。


 紫色の髪の女性が立っている。

 その横には、ユリスらしき細身の長身と、小さな2つの影。間違いなくインヨウ兄妹だろう。

 そしてその後ろには、赤ひげの大男――ヘパーが腕を組んで佇んでいた。


(やっべー…………)


 ヘパーが纏うオーラ。

 おそらく、その大半が怒気。

 殺気も少しばかり添えられており、空間が歪んで見えるのはきっと錯覚ではない。


 だが、さらに恐ろしいのはその前方。

 カイだった。


(ああ嫌だ。多分おそらくメイビー間ッ違いなく怒ってる)


 カイの手には、干からびたミラが力なくぶら下がっていた。

 こっぴどく怒られたのだろう。白目を剥いて意気消沈しており、ドゥーの未来の姿を暗示しているようだ。


「うん、俺ここ残る」

「いや、いやいやいや。あなた昨日“釈放書”にサインしたでしょうが」

「俺は今日からタルタロスに転職します」

「何言ってんだアンタ」


 ドゥーはやむを得ず柱にしがみついた。

 それを見た職員が必死に引き剥がそうとする。


「ほら、はやく! お仲間がお待ちですよ!」

「あれは仲間ではない。悪魔だ。手元に干からびた水色髪がいるだろ? あれが証拠だ」

「あれは……うわぁ…ミラオペレーターですか。あ! でも、こっちに手を振ってますよ」


 ちらりとドゥーが目をやると、ミラが手を振っていた。

 何か背後にいる子供らしき影が、彼女の腕を操っているように見えるのだが気のせいだろうか。


「あれは悪魔の誘いだ。知っているか? 悪魔ってのはな、あんな感じで罠を張って人間をおびき寄せるんだ。俺には分かる。ここが天国。なんなら俺は無期懲役でいい」

「はっはっはっ、ご冗談を。というか、あなた結構おしゃべりなのですね……」

「そうだ、俺の愚痴を聞いてくれ。あそこに赤ひげの大男がいるだろ? 元はと言えばあの任務で、うんぬんかんぬん……」

「え? そんな人はいらっしゃいませんけど……?」


「え?」


 ドゥーは勢いよく振り返った。


「あ、まずい」


 直後、仮面をむんずと鷲掴みにされ、強制的に正面へ向き直らされる。

 そしてそのまま身体ごと軽々と持ち上げられた。


「その愚痴、俺にもよぉ~く聞かせていただきてぇ~もんだなぁ~??? あ”ぁ”~ん”??」

「……(ひ、ひえ~!!)」


 予想通り、それはヘパーだった。

 いつの間にか接近し、ドゥーの顔を片手で鷲掴みにして持ち上げている。手のひらが人の頭蓋よりも大きい彼だからできる芸当だ。決してドゥーには真似できない。

 

 あまりの威圧感と頭部の圧迫感にドゥーは怯み上がり、手足が力なくブランと垂れさがる。

 ちなみに職員はスタコラサッサとどこかへ退避してしまった。薄情な奴である。


「出所おめでとさん」

「……うす」

「“地獄”へようこそ」

「うす……(泣)」


 そのまま諦めがついたのか、ドゥーは力なく項垂れ、ヘパーに引きずられる形で擬似タルタロスを後にした。

 その後、ミラ同様に干物二号機となったのは言うまでもない。


 

 ――

 


 時は流れ、夜。


 特殊第六執行部隊一同は作戦室――ではなく、基底界(インタースペース)の街中にある、とある居酒屋へ身を寄せていた。


「ダハハハハハッハッ!!!」

「アッハッハッハッ!!」


「…………」

「…………」


 豪快なヘパーとカイの笑い声。

 2人とも上唇に白い泡の髭を作りながら、ジョッキになみなみと注がれたビールを飲み干している。


 インヨウ兄妹はジュースをくぴくぴ飲んでおり、ユリスは端の方でカルーアミルクをちびちびと飲んでいる。人によって飲み方は千差万別だが、こんなにも多様なのはここ、特殊第六執行部隊くらいだろう。

 そして当の問題児、ドゥーとミラは隊の真ん中で肩身を極限まで狭くして隣に座っていた。


 まさしく飲みサークルの嵐に呑まれる新参者。

 2人はぴっちりと肩をくっつけ、ひたすらに水を飲んでいた。


「コォォオラァァァアッ!! ミラァッ!!」

「は、はいい!」

「何、水ばっか飲んでんのよぉ~。この私の酒が飲めないってぇ↑の? アンタぁ~??」

「の、のみましゅ」


 ミラはさらに縮こまり、ジョッキの酒に手を付け始めた。


「オラッ!! ドゥー、テメエッ!! 誰が休んで良いつったぁ、あぁん!?」

「うす」

「飲め、おらぁ!! そんためにその仮面に口作ってんだ!! 酒が飲めねぇ口なんて口じゃねぇ!! せいぜい■■■を〇〇〇するだけの▲▲▲だ!!」

「うす」

「あん? “薄(うす)”? 親父ィ!! こいつに店一番の酒持って来い!!」

「オウ、任せろ旦那」

 

「(泣)」


 何かにつけて度数の高い酒を飲ませるヘパーに、ドゥーは完全に好き放題されている。

 高らかにアルハラだと叫びたいところだが、いかんせん立場が立場なので黙るしかない。


 ゆえに今まさに目の前で注がれ続ける、麦茶色の得体の知れない液体をただひたすらに見つめる。

 なんだか紫色の湯気が立っているのだが、これは毒なのではないだろうか。少なくとも基底界人が日常で飲む代物では無いだろう。


「ドゥーたち、いじめられてる」

「ミラー。ジュース飲むぅ??」


 ユリスは無関係を貫いている。

 今やインヨウ兄妹が唯一の癒やしとなっており、ミラはヨウをぎゅっと抱きしめた。


「まあ、そんなナヨナヨすんな! 十分に怒った。もう終わったこった!! なぁ、カイよ」

「…………そうねぇ。まだまだ言いたいことは山ほどあるけど、このお店のお酒に免じて許すわ。店長さん、これもう一杯」

 

「あい」

「すんません」


 ドゥーは、異様な雰囲気を纏うジョッキに口を付けた。


(う! 毒だコレ!!)


 すぐにジョッキを置き、どさくさに紛れて少しずつヘパーの方へ寄せ始める。


「カイ姐、結構頑張ってたもんねぇー? イン兄」

「うん。めっちゃペコペコしてた」


 その言葉が、追い打ちのようにドゥーとミラへ重くのしかかる。


「そうね。でも今回、特殊第六執行部隊への処分が大幅に軽くなったのは、私が頑張ったからってだけじゃないのよ。RAC全体の意向みたいなものなの」


 カイ曰く、今回の騒動は想像以上に大ごとだったらしい。


 ロザリアの任務によって、トール神の過去の悪行と数々の不祥事が明るみになった。

 さらに尋問の最中、中枢機関との癒着まで発覚。

 それを知ったRAC局員たちは一斉に反発し、局内は半ばボイコット状態へと突入した。


 さすがの中枢機関も、これ以上現場との対立を深めるわけにはいかないと判断。

 最終的には局員たちからの圧力に折れる形で、特殊第六執行部隊への処分を大幅に緩和したという。


 もちろん、「特六を許してあげる」という彼らの態度そのものが上から目線ではないか、という不満も残っていたのは事実だ。

 だが、これまでの最上位存在たち(神々)の独善的な振る舞いを考えれば、これでも異例の譲歩である。

 ひとまず現場の溜飲は下がり、それが今回の騒動の落としどころとなったらしい。


「いやーでもね、2人とも。私は今、すっごぉ~い気分が良いのです」

「そりゃあ酒飲んでるからじゃ――」

「だって中枢機関のクソジジイたちのあんな顔、初めて見たもの! オッホッホッホ!!」


 中枢機関の最上位存在たちの顔は、それはそれは見ものだったという。

 いつもは極上の椅子の上でふんぞり返っている者たちが、こぞってカイの元へ、あの任務記録を消してくれと頼みに来たのだ。


 その交渉で色々と頂いたらしく、今夜の宴会費もその戦利品の一部から捻出したという。

 だからこそ、カイとヘパーは現在すこぶる機嫌が良いのだ。


「そ、それって……今後もアタシたち、こき使われるってことじゃ……」

「んん? こき使われるのはいつものことでしょ? なら思う存分、こっちも好き勝手させてもらうわよーって。店長、もう一杯!」


 「あいよ~」という声が奥から聞こえた。


 ここの店――『御勝手(おかって)』は、カイとヘパーの行きつけの居酒屋だ。

 中はちょっと暗めの洒落た大人な雰囲気。お高めの店でありながらいつも賑わっており、ブッダを筆頭とした神たちも時折訪れるほどの大人気店である。

 だが今日は貸し切り。思う存分騒げるし、飲めるのだ。


「それで、特殊第六執行部隊は今後どうなるのですか?」

「あぁん? もう仕事の話か?? ドゥー執行官はまだまだ酒が足りないと見える。親父、おかわり!!」

「勘弁してぇ!」


 ヘパーの注文を、ドゥーが必死に止める。

 さながら、暴走する上司をなだめる部下の図だ。


「そうね。色々あったけどちゃんと任務は果たしてるし、結果は上(・)々(・)。評価も良(・)好(・)。概ね昇進コースはなかなか順(・)調(・)……あら、韻(・)踏んじゃった」

「ラッパーカイ姐だ」

「YO♪ YO~♪」


 インヨウ兄妹は相変わらずノリノリである。

 そこでユリスが口を開いた。


「だが、ただの労いのためにここを貸し切ったわけではないだろう? カイ監査官」

「アラ♡ さすがね、ユリス」


 その時、カイの電話が鳴った。


「あ♡ 来たわね」

「え、誰がッスか?」

「フフフ……今に分かるわよ」


 すると居酒屋の扉の鈴が、チャリンチャリーンと鳴る。


 一人、また一人と客が入店してきたのだ。

 貸し切りのはずなのに、ぞろぞろと人が入ってくるのでドゥーとミラは呆気に取られてしまった。


「なるほど……では僕はここでお暇――」

「ヘパー」

「おっと、駄目だぜ眼鏡ノッポぉ。なんせ今日はせっかくの親(・)睦(・)会(・)なんだからよぉ~。誰1人、俺より前にここを出ることは許さん」

「うぶぶぶ……」


 立ち上がろうとしたユリスを、ヘパーががっちり剛腕でロックする。

 細身のユリスはその腕の中で敢え無く溺れた。


「し、親睦会?」

「え、アタシそんなこと聞いてないッス」

「うん。だって言ってないもの☆」


 「この酒癖狂乱ビッチ監査官め」とミラがわなわな震えるが、ドゥーがそれを諫める。

 だがドゥーもドゥーで人見知りの類なので、気が気ではなかった。


「おやおや、カイちゃん。そちらが噂の問題児2人かいな?」

「あらあら、ごめんなさいね。はい、みんなちゅうもーく!!」


 カイが手を叩く。

 すると店主を含めたその場の全員の視線が、たった今入店した集団へ釘付けとなった。


「では紹介するわ。第四執行部隊、第五執行部隊のみなさんでぇ~す!」

「「はいぃ!?」」


【今回の用語まとめ】


■干物二号機

出所直後、ヘパーたちからこっぴどく説教されたドゥーの成れの果て。

先に干からびていたミラが事実上の一号機。

特殊第六の問題児二人が揃って制裁を受けた結果である。


■御勝手《おかって》

基底界(インタースペース)の街にある人気居酒屋。

カイとヘパーの行きつけであり、ブッダ神をはじめとした神々も訪れることがある。

今回は特殊第六執行部隊の宴会兼、ある目的のため貸し切られている。


――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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