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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第一章「特殊第六執行部隊」1-3「ロザリア編」
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43/56

CASE.041「ドゥーの意地」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、小説家になろう、noteにも掲載しています。

 廊下の奥、悲鳴のような絶叫を耳にし、ダリヤは大きく肩をびくつかせる。

 同時にドゥーは剣を構え、臨戦態勢に入った。


 声の主は、吹き飛ばされてしばらく意識が遠のいていたカイヤ。

 覚醒した直後、愛しき主のあってはならない姿を目にし、大粒の涙を流しているのが見受けられる。表情は見えないが、フルプレートの隙間から体液がとめどなく溢れているのが確認できた。


「よくもロザリア様をォオオオッッッ!!!」


 ダンッと壁を踏み砕き、凄まじい速度でドゥーへと斬りかかる。

 鬼気迫る速度だ。刹那の思考の中で、ドゥーは状況を瞬時に整理する。


 避けることはできる。だがそうすれば後ろのダリヤ王女が危ない。

 正面から受け止めるしかないと、ドゥーはブレードを構えた。


 バキャァンッという耳をつんざく破裂音と共に、金属の破片が四方へ散らばる。

 なんとか衝撃をいなし、破片をダリヤから逸らすことには成功したが、ANUBISは案の定粉砕し、ドゥーは大きくのけぞる。


「チッ!」


 またもたった一発でブレードが木っ端みじんだ。

 さすがは恩寵ギフトによる身体強化。いや、それともANUBISが脆すぎるのか。はたまたその両方か。

 そんなことを考えていると、続いて下段からの二撃目がドゥーを襲いかかる。


分解パージ再起リコール


 ドゥーに呼応するように刀身が外れ、瞬時に新たな刃が生成される。

 ギリギリのところで追撃を受け止めたドゥー。今度は助走がない分、威力は幾分か抑えめだった。ゆえにブレードはその形を保っている。ギシギシという異音が聞こえるが、今はそれだけで十分だ。


 火花を散らしながら、両者前のめりになって鍔迫り合いとなる。


「よくもッ!! よくもよくもロザリア様をォオオオオッッ!!!」


 カイヤが続けざまに猛烈な剣撃を繰り出す。

 連続の上段――示現流を彷彿とさせる、一撃必殺に重きを置いた重厚な斬撃を何度も何度も繰り出すカイヤ。

 凄まじい威力と覇気に、ドゥーは防戦一方となっていた。


「先輩、何してんスか! 反撃してください!!」

「――だめだ」


 もしかすれば、ロザリアの洗脳が解けるまでに時間を要するのかもしれない。

 今は多少無理をしてでも、この騎士の怒りを受け止めるというのがドゥーの考えだ。


「ドゥー、貴方まだそんなこと考えてたの!? 私情は捨てなさいとあれほど――」

「ミラ、今何分だッ!」

「え、どどどゆことスか??」


 ドゥーの問う時間。

 それには死と魂の繋がりが関係していた。


 人の死を司る輪廻庁には、興味深い学説が存在するという。

 それは、死亡と魂の離脱の間にあるタイムラグについて。


 人が死んだ瞬間に魂が肉体を離れると思われがちだが、実際には数分の時間差があるという。

 そして恩寵ギフトは肉体ではなく魂へ根強く外付けされているため、ロザリアが死亡してもなお洗脳の効果は数分間残るのでは――というのが、ドゥーの立てた仮説だ。


 極めて楽観的ではあるが、ドゥーはその可能性に全神経を注いでいた。

 ちなみにダリヤからすればドゥーが突然独り言を叫んでいるように見えるため、何が起きているのか全く分からない状態だ。


「何分だ!?」

「えーと、そっちの世界時間で0時――」

「地球時間で言えッ!」

「えぇ!? えーとえーと、42分ッス!!」


 ロザリア死亡から1分経過。

 ドゥーは心の中でカウントする。

 仮説ではあと1、2分で洗脳が解けるはずだ。それまで、この怒れる猛攻を何としても凌ぎ切る。


「おのれッ! おのれッ! おのれッ! おのれッ!」


 何度も猛烈な上段をいなすドゥー。

 その間に10回以上ブレードが破損し、分解と再起を繰り返している。


(はやくしろ、はやくしろ、はやくしろ……)

「先輩ッ!!」

「ドゥーッ! やめなさい!!」


「おのれぇえええええええええッッ!!」


 今度は大きく溜めを作り、今までの数段上の威力の一撃を繰り出さんとするカイヤ。

 再び折れた刀身を再生しようとするが――


「な——」


 ANUBISが応答しない。

 呼びかけに応じず、ブレードが生成されないのだ。


「こんんの不良品がッ!!」


 ANUBISをぽいっと放り捨て、素手による白羽取りでかろうじてカイヤの渾身の一撃を受け止める。

 衝撃がドゥーの全身から床へと駆け抜け、バキバキと廊下に亀裂が走る。


「先輩ッ、もう『アバドン・システム』でちゃっちゃとやってくださいよぉ~ッ!!」

「ちょ、ちょちょちょ! それはダメだからねドゥーッ!? また膨大なレポートを書く羽目になるわよ!!」


 それだけは心底ごめん被る。

 ドゥーはギリギリと剣を受け止め続けていた。

 カイヤはさらに全身の体重を乗せ始め、徐々にドゥーの体勢が崩れていく。


「今何秒だ!!」

「43分まで、あとヒトマルッ!!」

「死ィイねええええええええええええええッ!!!!」


 さらに体重を込め、肩で押すように剣を前へ前へと押し込んでくる。


(頼む……早く!)

「ドゥーッ!」

「あと5秒ッ!!」

「がああああああああああああああああッ!!!」


 とうとうドゥーは跪く。床材がめきめきと割れ始め、その力の凄まじさを物語っていた。

 ミシミシという音と共に、剣がじりじりとドゥーのもとへ迫ってくる。


(頼む)

「3!」

「ロザリア様のォオオオオオオオオッ!!」


「2!」

(目を覚ませッ!)

「ロザリア様のォオオォオォオォオッッ!!」


「1!」

「仇ぃぃぃイイイ――――い……い……ん……あれ?」


 剣圧がみるみると消えていく。

 カイヤは一瞬呆け、ドゥーをじっと見つめた。すると、事態をようやく理解したのか、剣をぱっと放した。


 先ほどまでの殺気はいずこへと消え去り、彼は剣を落としドゥーの肩を掴む。


「大丈夫か君!? 俺は何という事を……というかここは、どこだ!?」

「ハァ~~……」


 ドゥーは全身の力が抜け、胡坐をかいて座り込む。


 彼の仮説は見事に立証された。

 洗脳は完全に解けたようで、カイヤはおろおろと周囲の惨状を見渡した後、より一層ドゥーの肩を揺らしながら謝罪の言葉をかけてくる。

 

 これがルーンプリンスではない、本来の彼なのだろう。

 「大丈夫か!? 本当に済まない!! で、ここどこ!?」と連呼しながら肩を擦る姿を見るに、心根もさることながらきっと素顔も端正なのだろうと、ドゥーはどうでもいいことを考えた。


「先輩! すごいですよ!!」


 ミラの喜びに満ちた報告。きっと宿舎のことだろう。


「ルーンプリンスが次々と戦闘を放棄し始めました! これはもう、完全しょ――」

「――ドゥーおつかれ~」


 ミラのやかましい報告を遮るように、憎たらしい子供の声がイヤホンから届いた。


「あちゃー、負けちゃったかァ」

「こいつら結構しぶといんだもん。結局スコア60止まりだし……」


 つまりドゥーが離脱したあの後、10人ほどしか犠牲は増えなかったということだ。

 あの勢いからすれば、全滅していてもおかしくない時間。インヨウ兄妹の実力からすると、相当手加減してくれたのだろう。

 彼らも人の心はまだ持っていたのかと、ドゥーは特大のため息をつく。


「ド、ドゥー様! ご無事ですか!?」


 ダリヤがドゥーのもとへ駆け寄ってくる。

 ドゥー自身は無傷だ。どちらかというと、奥歯が一本欠け、蹴り飛ばされた顔の半分が赤くなっているダリヤの方がよほど重傷だろうと、ドゥーはわずかにほくそ笑む。


「いやはや……一時はどうなるかと思ったッス……」

「もぉ~~~ホント、帰ってきたらガチ説教だからね!? ドゥー、聞いてるの!?」


 外野がうるさいが、兎にも角にも一件落着だ。

 ロザリアの背景、そしてルーンプリンス最強の存在という要素が少々引っかかるが、結果は望ましいものだ。

 最小限の犠牲で『アバドン・システム』を使わずに任務を達成できた。

 文句のつけようがないはずなので、レポートも短く済むだろうと、ドゥーは緊張が解けて半ば呆けてしまう。


「だ、大丈夫なのか君……」

「ドゥー様……本当にありがとうございます……ありがとうございます……」


 心配するカイヤと、何度も頭を下げるダリヤ。

 大丈夫大丈夫と、ドゥーは適当にあしらう。

 どうせこの後フィクサーによって記憶処理が施されるのだ。これ以上関わっても意味はない。


「では、ミラ上級オペレーター! これより執行官の帰投準備に入りますッス!!」


 もう昇進した気になっているミラ。

 というか“上級”は二階級特進ではないかと、ドゥーとカイが同時に突っ込む。

 だがまあ、彼女の解析がなければここまでスムーズには進まなかった。上級はまだしも、準上級は確実だろう。


「そうだな……そろそろ帰る支度を―――」


 


 ――突如、その場が粉塵に包まれた。

 


 轟音。


 堅牢な壁材を粉々に粉砕する爆音と共に、廊下の一部が爆発したのだ。


(今度はなんだ!?)


 かろうじてドゥーは防御に成功する。

 さすがFREYAだ。この衝撃波を受けて無傷とは。どこかのブレードも見習ってほしいものだ。

 一方ダリヤは、カイヤがしっかりと庇っており無傷だ。

 それを確認して安堵するのも束の間。粉砕された廊下の残骸、立ち込める煙の中から人影が現れるのをドゥーは視界に捉える。


「そんな………………早すぎるッ…………!」


 ダリヤが恐怖と困惑で狼狽える。

 それの意味するところは一つだけだ。

 それと同時にドゥーも、その人物を連想する。


「最初のルーンプリンス……」

「先輩ザザザ……大丈……ッスか!?」


 衝撃でイヤホンが少々いかれている。

 ノイズが混じり、ミラの声が途切れ途切れになっている。


「ただいま、帰りました」


 そう静かに、肩にかかった砂や瓦礫を払いながら、その男は無造作に姿を現した。

 漆黒の長髪に整った顔立ち。そして今まさに国一つを滅ぼしてきたとは思えぬ落ち着きで、息切れはおろか服に傷一つない。

 一目で分かる。


 過去一番の強敵だ。

 

 紛れもなく本案件最大の壁となる男が遂に姿を現した。

 ドゥーはそっと、カイヤが落とした剣に手を伸ばす。


「この惨状はなんです、ラブラドーラ? おや、その怪我は……ところで貴方はどちら様でしょう………………か……」


 視線がダリヤからカイヤ、そしてドゥーへと泳ぐと、すぐさま床に横たわる亡骸を発見する。

 すると目が血走り、整った顔立ちのパーツに無数の血管が刻まれる。


 その瞬間、ヴォルツは消えた。


(ッッ! 消え――)


 背後に気配を感じ真後ろを振り返ると、彼はロザリア――愛しき主の亡骸を力強く抱きしめていた。


(おい……今見えなかったぞ)


 尋常ではない速度。執行官であるドゥーでさえ捉えきれなかった。

 初見とはいえ、これはあまりにも異常な身体能力だ。

 警戒心を一気に引き上げると同時に、ドゥーは一つの大きな違和感を覚える。


 いや、覚えてしまった。


「あぁ“ホノカ”……。なんという姿に…………」


 けたたましい慟哭を予感し、ドゥーは身構えたが、ヴォルツの弱々しく小さな声に拍子抜けしてしまう。

 だが、ここで安心するような阿呆はこの場にはいない。

 ヴォルツからはドス黒い殺気のようなものが延々と流れており、あのドゥーでさえ次の行動に移せずにいた。

 当然、ミラとカイもその異常事態に黙り込んでしまっている。


(“ホノカ”? ……どういうことだ、こいつらは。主従関係なのでは…………いやいや待て待て。コイツ――)


 “ホノカ”という主従関係には見られない呼称に、ドゥーは大きな違和感を抱く。

 だがそれより遥かに巨大な違和感に、ドゥーの背中がひやりとした。


 

「洗脳が……解けていない、だと」





 



 

 ————————————————————————————————


 


 

 ――報告。

 地球時間020046ZFEB25

 


 特殊第六執行部隊・ドゥー準上級執行官によるターゲットの執行を確認。同時に他ルーンプリンスの無力化に成功。

 直後、“第一のルーンプリンス”による大質量攻撃を確認。


 

 特殊第六執行部隊に通達。本ターゲットを更新。

 『ヴォルツ・ディ・エルヴァニス』を第二目標として執行せよ。繰り返す、『ヴォルツ・ディ・エルヴァニス』を第二目標として執行せよ。

 脅威度は巨神兵(ティターン)級相当と推定する。

 


 追記:最上位存在が一柱――アヌビス神より報告が一通。


「……………………吾輩の傑作を……“不良品”? これは吾輩の聞き間違えかな?? 耳に砂でも詰まっているかって??? ハッハッハッ……くぁwせdrftgyふじこlp&'+<PGytじょこ――」


 ログを強制終了。


 


 以上。



【今回の用語まとめ】


ANUBISアヌビス

ドゥーが使用するVABO製ブレード。

分解パージ再起リコールによって刀身を再生成できるが、カイヤの猛攻を受け続けた結果、ついに応答不能となった。

ドゥーからは不良品扱いされているが、製作者であるアヌビス神は大いに不満らしい。


■ヴォルツ・ディ・エルヴァニス

ロザリア最初のルーンプリンス。

レイン共和国を壊滅させた後、異常な速度でセレスティア宝統府へ帰還した。

ロザリア死亡後も洗脳が解けておらず、彼女を“ホノカ”と呼ぶなど、他のルーンプリンスとは明らかに異なる状態にある。


巨神兵ティターン

ヴォルツに対して推定された脅威度。

国家一つを壊滅させたうえ、なお無傷で帰還するほどの戦闘能力を持つ。

ロザリア編における最大戦力であり、特殊第六にとって次なる壁となる。



――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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