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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第一章「特殊第六執行部隊」1-3「ロザリア編」
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CASE.040「愛のカタチ」

ご覧いただきありがとうございます。

noteがちょっとずつ、実を結んできました…モチベがぐいぐい上がるぜ


追記:内容を少し修正いたしました。


※本作はカクヨム、小説家になろう、noteにも掲載しています。

 任務開始から、本世界時間において約二時間が経過した。

 非常に短く感じるかもしれないが、転送準備や転送そのものにはかなりの時間を要する。

 装備の調整に本任務の出動申請、認可が下りるまでの待機時間、転送そのものの時間まで加味すると、丸々3日もかかっている。

 そのため彼ら特殊第六執行部隊にとっては、やっとでのターゲットとのご対面だった。


 赤いモノアイが暗く蠢く。

 仮面越しに、現状況の視覚情報を分析する。


 ターゲットは重傷。主に下半身がズタズタだ。

 おそらく協力者のダリヤ王女の仕業。殺す前に散々に痛めつけていたのだろう。背景を知れば気持ちは分からなくもないが、即座に葬っていればこんな面倒事にはならなかったものを。

 つくづく彼女のスカートに密かに位置情報トレーサーチップを仕込んでおいてよかったと、ドゥーは心の底からため息をついた。


(さて……)


 そして敵は2人。

 一人は気絶(腕は取れているが)。もう一人はターゲットを抱いており、明らかな臨戦態勢だ。


「……あ、あああな、あなた……なんで私の名前ッ……」


 ロザリア・ディ・エルヴァニス――前世の名は『貝塚 穂香(カイヅカ ホノカ)』。

 この名は、この世界では一度しか明かしたことはない。

 ラブラドーラさえも知る由もない、葬り去ったはずの黒歴史。それでもなお、脳裏にこびりついて離れない旧名。

 封印していたはずの情報を、確かに今、この謎の覆面男が口にしたのだ。


「貴方誰ッ!? 何を……は? え、何しに来たのよ!!」

「ロザリア様! お下がりを!」


 ロザリアは激しく狼狽している。

 そんな彼女に、ドゥーは冷たく言い放った。


「第三級累積型執行対象」

「……は?」


 覆面男が口にした謎の用語。

 あまりに抑揚がなく淡々としているため、機械かなんかなのかと疑うほど冷徹な声だ。


「及び第一級姦行罪」

「な、なによそれ……」


「貝塚 穂香――お前は幾多の淫行を働き、男を、国を貶め、仮初の玉座に君臨した。多くの民の心を弄んだその罪は許されるものではない」

「……なんなのよそれぇ!!」


 わなわなとロザリアが震える。

 それは寒さによるものではなく、怒りによるもの。

 ダリヤ王女(ラブラドーラ)の時のように、逆ギレ文句をまくし立て始めた。


「いいでしょ!? 別にッ!! この世界で私が授かった力なんだから!! 私がどう使おうが勝手でしょッ!? 何? そうやって意味不明な言葉並べれば騙せるとでも!?!? ホント男っていつもそう、配慮とか遠慮とか無しにマジレスすれば女は黙ると思ってるわけッ?! 私は屈しない! こんな世の中、私が変えてやるんだからッ!!」

「ロ、ロザリア様、お気を確かに!」


 鬼の形相のマシンガントークで己を正当化するロザリア。

 その様子に、抱きかかえるルーンプリンスの騎士も若干引き気味だ。


「それに淫行? は、別に私は男と■■■しただけよッ!? 愛の営み!! 人間としての義務ッ!! わかる? あーわかった。どうせあんた童貞なんでしょ? 彼女もできたことないクソキモ陰キャなんでしょッ!! その恰好、かっこいいと思ってんの?? ねえ? 駄々滑りだから、バーカ!!」

「………………」


 目の前で下劣な肉塊が何か宣ている。

 散々の言われようだが、ドゥーの心には一切響かない。

 どちらかというと、ミラのイヤホン越しの「言われたい放題ッスね(笑) プークスクスwwww」の方が何百倍も腹が立つ。


「私は何も悪いことしてない!! 騎士たちも幸せそうにしてる!! そうでしょ!? ねえ!?」

「は、はッ! 幸せでございます!!」

「ほら見たでしょ!! 聞いたでしょ!? 私は正しい、何も悪くない! 悪いのは全部ッ、私を裏切ったユウ君とアンタよ! ラブラドーラッ!!」

(ユウ君?)

(ユウ君?)

(ユウ君?)

(ユウ君?)


 その場の全員の頭上に疑問符が浮かぶ。

 誰だユウ君って、とミラに確認を求めるが「知らね」と一蹴されてしまう。

 当然ルーンプリンスの騎士とラブラドーラも訳が分からない。


「カイヤッ!! こいつ等全員斬って! 殺して!」

「か、かしこまりました!」


 カイヤとは、この騎士の名なのだろう。

 現在進行形で意識を飛ばして情けない姿を披露しているスファレの弟分だ。

 まだまだ騎士経験は浅く、ラズリ(故)同様ルーンプリンスの中では新参者に該当するひよっこである。


 だが愛しき主が今、自分だけに助けを求めている。

 酷く取り乱しているが、きっと傷の痛みによるものだと己を無理やり納得させた。


 チャキッと剣を構え、ロザリアを庇うようにドゥーの目の前へ立ち塞がる。


(あーこれはまた……面倒なことに……)


 ドゥーの「ルーンプリンスは被害者」という方針は、依然として続行している。

 そのため、この多少ぎこちない構えをしている騎士も救助対象なのだ。

 できれば殺したくはないが、いかんせん身体能力だけは中途半端に高い。

 後ろのダリヤ王女を守りつつ、彼を生かしたまま戦闘不能にし、ロザリアを即座に葬るのが理想だ。


 しかも今この瞬間、宿舎のルーンプリンスはインヨウ兄妹によって次々と処理されているはずだ。

 そのおかげでここへの増援は全く無いのだが、にしてもターゲットの執行だけでここまで難度が上がるものかと、ドゥーは頭を悩ませる。


(まぁ、いい……)


 ドゥーはぬらりと(少々頼りない)ANUBISブレードを抜き去る。

 騎士のそれとは全く様子の違う刃の形状に、カイヤは警戒して一歩下がった。


(せっかくだ。VABOの製品、しかと利用させていただこう)


 するとフッと、なんの前触れもなくカイヤの視界からドゥーの姿が消えた。

 跳躍した素振りは無い。ぶんぶんと首を回し、部屋中を索敵する。


 しかし見つからない。

 不気味なほど静かだ。

 遠くの宿舎で起きているとされる襲撃の音すら聞こえない。


 逃げたのか、と今度はダリヤ王女の方を警戒する。

 だがそこで、彼は一つの違和感を感じ取った。


(なんだ……?)


 それは敵が先ほどまで立っていた場所。その床部に黒い、ちょうど影のようなもやができている。

 影というキーワードが脳を巡った瞬間、カイヤは身を翻して剣を振りかぶる。


「透明かッ――」

「ご名答」


 声が聞こえるや否や、視界が大きく回転した。

 ドゥーはブレードを傾け、刃ではない側面でバキィンッ、とカイヤを吹き飛ばしたのだ。


「ぐはぁっ」といううめき声と共に、ピンポン玉のように廊下を跳ねる。

 終いには最奥、向こう側の壁へ背中から激突し、ぷるぷると叩かれた蠅のように横たわった。


「カイヤッ!! 何してるの、早く立っ――」

「次はお前だ、貝塚 穂香」

「――ッ!!」


 ブレードの刃を向けながら、ドゥーは徒歩でロザリアへ接近する。


「ま、待ってよ!」

「せめてもの情けで苦しまないよう、一撃で葬ってやる」

「待ってって!!」


 何を考えているのか、はたまた頭がいかれたのか、突然ロザリアは己を包んでいたマントを捨て去る。

 そのまま大股開きになり、自身の秘部をこれ見よがしに強調した。

 とはいえ周りのずたずた具合が酷すぎて、美しさも妖艶さも欠片もない状態に、思わずドゥーとダリヤ王女がフリーズする。

 ミラとカイも奥の方で「うわーお」とドン引きしてしまっている。あの兄妹が現場に居合わせなかったのだけが、不幸中の幸いだ。


「貴方も抱いてあげるから! ね? ほら、おいで――」

「何をやっている?」

「だから、貴方にも私の愛をあげるって言ってるのよ?? それくらい言われなくても察せないわけ?」


 「ほんとこれだから童貞は」と、ロザリアはぶつくさ恥ずかしげもなく文句を垂れる。

 その様子にドゥーは、呆れが一周回って何か悲しくなってきてしまった。

 というのも、ミラとカイが笑いを必死に堪えている息遣いが聞こえてくるため、なおさら自分は今何をやっているのだろうかと、迷走してしまっていた。


 だが、それも刹那。

 瞬時に正気を取り戻し、最優先事項を果たさんと歩みを再開する。


「ね、ねえ、早く脱いでよ! 女の子だけ裸のままにするなんてあなた最低よ!!」


 「ぶっひゃー(笑)」というミラの我慢が決壊した声が聞こえたが、この際須く無視だ。

 というか、笑ってないで周辺状況の確認くらいして欲しいものだ。


「お前の“愛”とやらは、それだけなのか……」

「な、なによ!?」


 歩みを続ける。

 服どころか得物すら手放さない目の前の男の圧に、ついにロザリアはその無理くりな作り笑いを崩し始める。


「ちょ、こっち来ないでよッ!!」

「同じ転生者として、情けない限りだ」


 前任務のターゲット、工藤・旭はその素行だけ見れば悪逆極まりない。

 だがその最後は、戦士として誇り高いものであった。

 それに比べてこの女はなんだ。

 寒暖差で風邪を引いてしまいそうだ。


 さらに近づく。

 もはや目と鼻の先。


「大人しくしろ」

「いやよ!! やめて!!!」


 ブレードをロザリアの首に接触させる。

 金属特有の冷たさに、ロザリアはいよいよ自身の状況を理解し始める。

 目の前のこの男は――自分を本当に殺そうとしているのだと。


「ラブラドーラッ!! 助けてよ!! 私のメイド長でしょ!?!?」

「…………」


 何を言っているのだ、とダリヤ王女はあれほど憎たらしかった怨敵が、今や不気味にさえ思えた。

 同時に、何故こんな子供じみた精神性の人間にこれほど規格外な力が宿ったのかという思考にさえ陥ってしまう。

 善人――それも自身の父のような男に渡れば、どれだけの人を救えただろうか。


「愛を肉体でしか語れぬお前に、それを語る資格はない」

「いやよ……いや………」


 首を左右に振り、涙目でロザリアは懇願する。

 何度もやってきた手口。下から見上げ、涙を浮かべて懇願すれば、愛は続くものだと――前世の記憶がそう言っている。

 その際、拳も一緒に飛んでくるというのは何度も見た景色だが、愛を失うことに比べれば些細なことだ。


「――ないじゃない…………」

(……なんだって?)


「しょうがな”い”じゃん”ッ!!」


 ロザリアは喘ぐように泣き叫ぶ。

 涙と鼻水をこれでもかと顔面から滴らせ、ドゥーのズボンをがちゃがちゃと、必死にいじくり始める。

 

 脱がそうとしているのか。

 だが、VABO製の装備は人間ごときに理解到底できぬ複雑怪奇な機構を持つ。

 機械学に精通する学者はおろか、知識も学も何もないロザリアには脱がすどころか、ズボンのロックを外すことすら叶わない。

 

 それでも手を動かすのを止めようとしない。

 泣きじゃくりながら、うわ言のように言い訳を口にする。


「これしか知らないんだもんッ!! これしかわからないんだもんッ!!」

「……」

「男って結局体目当てなんでしょ!? 違うのッ!?!? ユウ君は謝って■■■させてあげたら許してくれたもん!! ごはん作ってくれたもん!! 一緒にいてくれたもんッッ!!」


 これだ。違和感の正体は。

 前任務――ケイン・アッキネンやエリオット・レインフェルの執行の時もそう。ターゲットである転生者たちには大きな共通点がある。


 

 それは、『歪み』。

 


 この女が、前世で何があったかは知らない。

 だがそれによって生じた人間性の歪みに近いものを、転生のシステム上、魂が引き継いでしまっている。

 それに神の御業ともいえる力が宿れば、結果は馬鹿でも分かるだろう。


 だからこそ、分からない。

 

 結果は見え見えなはずにもかかわらず、最上位存在たちは無作為に力を与えて放置する。これに何の意味があるのか。

 ドゥーはロザリアを始めとした歪んだ転生者たちの存在意義を、疑わずにはいられなかった。


「転生……」


 疑念ではない。

 ドゥーは完全に、この転生というシステムそのものに懐疑的になりつつあった。


 だが、それはそれ。これはこれだ。

 せめてこの魂が浄化され、今度こそ正しき道を進んでくれることを祈りながら、ブレードを今もなおズボンを下ろそうとするロザリアの首元へ当てる。


「なんでよぉ!! ねぇッ!! 私の何が悪かったの?? 分からないよぉッ!!」

「貝塚 穂香……お前の物語は、前世の時点で終わっている」


「どうすればよかったの!? どうすればユウ君は私を捨て――」


 ブシュッという音と共に、ロザリアの首元から鮮血が舞う。

 静かに引いたブレードには、血がべっとりと付着していた。


「――あ……」


 ダリヤ王女は僅かに涙を浮かべてしまう。

 それは復讐の成就による感動か。それとも亡き父や同胞たちへ報いることができた安堵からか。

 だが何か、心のどこかに棘が刺さっている感覚が拭えずにいた。

 虚ろになっていくロザリアの目と合う。


(なんで……今になって……)


 憎かった。ずっと殺したかった。この世のありとあらゆる苦しみを与えたかった。

 だが思い出すのは、元我が主――ロザリアの凛とした笑顔ばかり。


(あぁ……そうか)


 この涙は悲しみかと、この期に及んで怨敵の死を見て落涙する自分を、情けなく思う。

 

 だけど許してほしい。

 何故ならこの12年間、たしかにロザリアはダリヤ王女を――メイド長のラブラドーラを心の底から愛していたのだから。

 確かな愛を、怨敵から受け取っていたことは事実なのだから。


 徐々に脱力していくロザリアの身体を、ドゥーは静かに支えた。

 どれだけの蛮行を犯してきたとはいえ、死は平等であるべきだ。その骸までないがしろにするほど、ドゥーの心は腐っていない。


 亡骸をそっと床へ寝かせる過程の中、彼は彼女の最後の言葉を聞いた。


「……た、すけ…………ヴォル――」

「…………」


(この物語は奴らが用意した仮初の舞台。せめて来世、次こそは真っ当な生を歩めることを祈る)


 それを最後に、ロザリアは事切れた。

 ドゥーは何とも言えない感情に浸り、彼女の目を閉じ、マントを被せてあげた。


「執行完了。あとは——」


 同時に後方、廊下の奥から絶叫に近い怒鳴り声が木霊した。


「貴様ぁああああああああああああああッッ!!!!」

【今回の用語まとめ】


■カイヤ

ロザリアを守っていたルーンプリンスの一人。

スファレの弟分にあたる新参の騎士。

ロザリアへの忠誠心からドゥーへ立ち向かうが、FREYAの透明化機能を用いたドゥーに戦闘不能へ追い込まれる。


■FREYAの透明化機能

FREYAに搭載された偽装機能。

ホログラム技術を応用し、使用者の姿を周囲から見えにくくする。

今回はドゥーがカイヤを無力化するために使用した。


■ロザリアの“愛”

ロザリアが唯一知っていた愛の形。

彼女は身体を差し出し、相手を繋ぎ止めることを愛だと信じ込んでいた。

その歪んだ認識が、恩寵ギフト『アブソリュート・ラブ』の根源となっている。


■ユウ君

ロザリアの前世に関わる人物。

彼女の言葉から、前世の愛情観や依存の形成に深く関係している存在と思われる。

ロザリアの歪みを読み解く上で重要な名前。



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ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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