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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第一章「特殊第六執行部隊」1-3「ロザリア編」
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CASE.037「執行官の本領」

ご覧いただきありがとうございます。



※本作はカクヨム、小説家になろう、noteにも掲載しています。

「良かったんですか、殺して」


 早速ルーンプリンスを3人始末したわけだが、任務はあくまで転生者の処理だ。

 規定では、ターゲット以外に被害が及んだ場合、その規模に応じたペナルティが課される仕組みになっている。ゆえに、むやみやたらに大規模攻撃を仕掛けるわけにはいかない。

 前任務でケインやエリオットを『アバドン・システム』でまとめて消滅させなかったのも、それが理由だ。もちろん『アバドン・システム』の使用自体を制限されていたという事情もあるが。


 とにかく、ルーンプリンスの殺害は任務の評価に支障が出るのではないか――と、3体の横たわる死体を眺めながらドゥーはインヨウ兄妹に問いかけた。

 ミラもイヤホン越しにぶつくさと言っており、この行動の意義を見出せないでいた。


「なーに言ってんの、ドゥー」

「そんな細かいこと気にしてたら、執行官なんて務まらないよぉ~」

「……ですが部隊の評価にも悪影響が出るのでは? ロザリア自体に戦闘能力が無いのであれば、あのメイド長がロザリアを斃すまで足止めをするだけでも――」


「だーかーら、これにペナルティなんてないってば」

「……は?」


 ミラのぶつくさが煩く、インの言っていることがよく聞き取れなかった。


「ドゥー、任務の規定をよく読んでないでしょ」

「……?(規定は何度も確認したはずだが)」


「カイ姐、解説ヨロ~」

「はぁ……わかったわ。ちょっとどいてミラ、ありがとう」


 ぶつくさの声が消え、今度は代わりにカイの面倒くさそうな声が届いた。


「規定には、今回の任務のターゲットはロザリア勢力の殲滅とあるの。洗脳されているとはいえ、ルーンプリンスはれっきとしたロザリア陣営――敵勢力よ」

「ですがロザリアを処理した後、彼らの洗脳が解ける可能性がまだ――」


「――だとしても、よ」


 カンッという音と共に、カイがドゥーの言葉をぶった切る。

 おそらく酒の缶をデスクへ強く叩きつけたのだろう。

 面倒くささに混じった怒りのようなものが、音だけでも伝わってきた。


「洗脳だろうがなんだろうが今この瞬間、彼らルーンプリンスが敵対勢力であることに変わりはないの。任務に弊害を及ぼす存在である以上、転生者と等しく殲滅しなければいけないのよ」

「……納得できかねます、カイ上級監査官」


 ドゥーはブレードを納める。

 インヨウ兄妹はドゥーの反抗的な態度を見て、同時に肩をすくめた。


「我々の目的は転生者によって歪んだこの国を、この世界を修正することのはず。被害者である彼らを一方的に殺戮することが、それに繋がるとは俺には到底思えません」

「でもやるのよ。それが私達、特殊第六執行部隊に課された任務よ」

「ですから、彼らには何の罪も――」

「ドゥーッ!」


 鼓膜に衝撃が走り、思わずインヨウ兄妹がびくつく。

 作戦室からの音声は共有されているため、カイがデスクを勢いよく叩いた音が三人の耳をつんざいた。


「よく聞きなさいドゥー。アナタの言いたいことは分かるわ。私だってこの方法は取りたくない。だけど上の者たちは、常に合理性と効率を求めるの。ルーンプリンスを殲滅する方が効率的であれば、上は間違いなくそれを推奨し、評価する。この任務にアナタの私情はノイズなのよ」

「…………」

「言いたいことは山ほどあるでしょうけど、その声を最上位存在たちに届ける方法は一つだけよ」

「……特級階級ですか」


 

 ――特級階級。


 カイやユリスのような上級役員のさらに上位に位置する、転生監査機関における最高階級だ。

 その権力は中枢機関に所属する最上位存在にも匹敵し、インタースペース人でありながら、最上位存在たちへ意見を申し立てることが許される唯一の階級である。


 しかしその席は限られており、幾多の試練と評価を経た末に、最上位存在たちに指名されて初めて到達できる。

 つまりその地位へ辿り着くには、任務を積み重ね、その都度神々に認められなければならない。


「……わかりました」

「ありがとう、ドゥー。アナタは冷徹に見えるけど、優しい心を持っていることはみんな分かってるわ。だからお願い。せめて今を生きる宝国の民を……あの悪徳令嬢から救ってあげて」


「――了解」


「おわったー?」

「話が長いよもぉ~」


 無駄話がやっと終わったかと、インヨウ兄妹が大きく息をつく。

 この3人を真っ先に始末する選択をしたのはこの二人だ。

 見た目は子供とはいえ、その精神性はもはや歴戦の戦士を超え、人間性すら感じさせない時がある。

 非情で合理的で、神々が好みそうなやり口。


 ドゥー自身もターゲットの始末を最優先とするし、任務の妨げとなる障害は問答無用で排除する所存だ。使えるものは全て使う。

 今回ラブラドーラを捨て駒同然に扱ったのも、効率性と成功率を天秤にかけた末の選択である。

 だが決して命を蔑ろにしたいわけではない。

 全ては――理不尽を振り撒く悪しき転生者を、一刻も早く執行するために。


 だからこそ、ルーンプリンス殲滅の合理性を理解できる反面、どうしても納得できない自分が同居していた。


(俺は……意外と面倒くさい人間なのか……)


「じゃ、ちゃっちゃと終わらせて――」

「――今回もがっぽり稼ぎましょー」


 悩むドゥーを放っておくことにしたインヨウ兄妹が、ルーンプリンス城の入り口へ歩を進める。

 そして何のためらいもなく、堂々と扉を開けた。


「こんばんわー!」

「お邪魔しますッ」


 なんだなんだ、とエントランスにいた美男子たちがざわめき始める。

「新入りか?」「なんだあの格好は、どこの国の使者だ?」「何か聞いているか?」と、思い思いに疑問を口にした。


 するとその中の一人が、本日は新入りが一人来ること、いつも通り入り口で副団長が応対するはずであることを思い出す。


「君達は? それに副団……長…………ぉおッッ!?」


 見知らぬ異様な双子の手には、血で赤く染まったナイフ。

 その背後には頭目らしき赤いモノアイ。

 さらにその奥、不審者3人が入り込んできた扉の向こうに、3体の横たわる死体を発見する。

 遠目からでも分かる。あの遺体は新入りであるレイン共和国の皇子、副団長のクンツァ、そしてベリルだ。


「敵襲ゥーッ!!!」


 異常を察知したルーンプリンスの一人が声を荒らげる。

 それに応じて、次々と騎士たちが戦闘態勢へ移り始めた。


「お、意外と切り替えが早い感じ? 楽しめそうだね、ヨウ」

「準備運動にはちょうどいいっぽいね、イン兄」


 二人は片手にナイフ、もう片手には袖からスライドさせて取り出した直剣のような得物を、いつの間にか携えていた。


 最も近くにいた騎士2人が迷いなく斬り込んでくる。

 ダンッという力強い踏み込みと同時に、ケイン・アッキネンのそれと比肩する速度でインヨウ兄妹に向かって突撃を敢行した。


「ウオオオッ!!――カッ」

「チェリァァァアッ!!――ゲッ」


 だが剣を振り抜くことなく、二人は力なく斃れる。

 倒れた衝撃で切断された頭がごろりと転がり、敵襲をいち早く叫んだ騎士の足元へぶつかった。


「んな、なッ……」


 物音を聞きつけたルーンプリンス達が、奥の方からぞろぞろと集まってくる。

 白銀のフルプレートを纏った者が混じっており、おそらくは警備に出払っていた者達だろう。


「オイラは右をやるよ」

「じゃあボク左ね」


 兄妹にたじろぐ様子など微塵もない。

 意思を伝えあうと同時に、二人の姿がフッと消えた。

 かろうじて青と緑のスーツの光が刻む残像を、ドゥーは視界の端で捉えることができた。


「何奴――げっ」「このガキ――こっ」

「な、ま――ヴッ」

「こ、こんなお――ゴハァッ」


 異次元の速度で、バシュッバシュッと次々にルーンプリンスの首と鮮血が宙を舞う。

 二人は縦横無尽の立体機動で室内を跳ね回り、すれ違いざまに騎士たちを両断していく。


 まるで流れ作業。

 工場で流れてくる品を淡々と処理するように、インヨウ兄妹が破竹の勢いで白銀の鎧を赤く染めていく。


(……これが、歴戦の執行官とやらか)


 同じ執行官であるドゥーの目にも、二人の速度はあまりに異常に映った。

 片手のナイフで至近距離の首を一閃。

 もう片方の直剣は蛇腹剣だったようで、伸縮自在の刃を操り、遠方のルーンプリンスの頭部をすかさず貫通する。

 そのまま己の身体を引き寄せ、通り過ぎざまに立ち尽くす美男子たちの頭部と胴を泣き別れにしていく。


 初見でここまで捉えられるなら大したものだろう。

 一般人の目にはルーンプリンスの頭が次々と血を噴きながら宙へ舞い上がる、異様な惨劇にしか見えないはずだ。


 ミラもイヤホンの向こうで押し黙っている。

 カイも、普段から古株たるもの伊達ではないと分かってはいたが、缶ビールを口へ運ぶ気配すら感じない。

 それほどまでの一方的な殺戮が、今この瞬間、画面越しに繰り広げられていたのだ。


「……な、なんなんだお前たちはッ!?」


 ドゥーの近くに残った生き残り――おそらく真っ先に敵襲を叫んだ青年が、足腰を震わせながら狼狽えている。

 へたりと座り込み、股間から液体が滲み始めた。


 操り人形になろうと感情の類までは消えることはないらしい。

 無理もない、とドゥーはその青年を放置することにした。

 もはや敵対する気力も実力もないだろう――そういう合理的な判断だ。


 40は処理しただろうか。

 インヨウ兄妹が亡骸の山の奥から、ひょっこりと顔を覗かせた。


「ドゥー、先行ってていいよぉ」

「……は、どういう――」

「ドゥーはこの人たちが死ぬのは嫌なんでしょー?」


 ヨウが仮面を外す。

 そこには屈託のない笑顔の少女がいた。


「メイド長さんが成功するとは限らないし……ドゥーが先行して早く仕留めてきなよー」

「………………なるほど、()()()()ことですか……」


「そうそう♡ ドゥーが早く処理すればするほど、ルーンプリンスの被害が減るよぉ~?」

「オイラ達と競争だね、ドゥー」

「……」


 言いたいことは山ほどあるが、行かせてもらえるなら断る理由はない。

 ドゥーは軽く会釈すると、宿舎を飛び出し、ラブラドーラが向かったであろうロザリア城へ続く隠し通路へ疾走した。


「へへ、ドゥーもやる気みたいだね」


 ヨウが再度仮面を付け直す。

 緑の三角のモノアイが、嬉しそうに輝いているかのようだった。


 二、三の死体の山を築いても、ルーンプリンスは湯水のごとく各入り口から湧き出してくる。

 そのほとんどがフルプレートの完全装備だ。

 丸腰だった者よりは多少手こずる相手が、熱気と殺意を帯びて、嬌声にも近い雄叫びを上げながら怒涛の勢いで突進してくる。


「じゃあ先輩として、カッコイイとこ見せないとな」

「うん♪」


 


 

 ————————————————————————————————

 


 ――報告。

 地球時間012314ZFEB25


 イン下級執行官・ヨウ下級執行官によるルーンプリンスの蹂躙を確認。

 ドゥー準上級執行官は別途行動――協力者であるラブラドーラの報告にあった隠し通路を介し、ロザリアの根城へ進行中。


 同時刻、レイン共和国の壊滅を確認。

 一つの生体反応によるセレスティア宝統府への急速接近を検知。

 各員、任務の迅速な処理を推奨する。


 

 以上。


ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ


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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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