表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第一章「特殊第六執行部隊」1-3「ロザリア編」
PR
32/56

CASE.030「宝国の魔女」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、小説家になろう、noteにも掲載しています。

 時は、その日の夜へ。


 一人の女性が湯殿の前で待機していた。

 パール――本日、ロザリア御付きのメイドとして任命された新人である。


「……」


 もじもじと手を動かしながら、ひたすらに時が過ぎるのを待つ。

 そんな中、パールは本日の出来事を思い返していた。


 ロザリアとラズリ皇子の観光は、順調そのものだった。

 暗殺や襲撃に備えた過剰なほどの護衛が配備されていたが、それらが取り越し苦労に終わるほど滞りなく進行した。

 そして現在、ラズリ皇子はロザリアの城へ招かれ、夕食を馳走になり、ついでに風呂まで提供した――というのが顛末である。


 パールは一時的に御付きメイドの任を解かれ、ラズリ皇子の身の回りの世話を任されていた。

 とはいえ、皇子の湯浴み中の見張りという、極めて単純な仕事ではあるのだが。


 そこへ執事のヴォルツが声をかけた。


「お疲れ様です、パール」

「お、お疲れ様です! ヴォルツ様」


 ヴォルツは労いの品として、一杯の果実酒をパールへ手渡す。

 本来、仕事中の飲酒など御法度だ。

 だが、新人でありながら一つのミスも犯さなかったパールへの褒賞という名目がある以上、咎める者はいないだろう。


「あ、ありがとうございます……」

「いやはや、ロザリア様のわがままには苦労する……君も、よく頑張りましたね」


 パールは一口だけ果実酒を啜る。

 すると今まで味わったことのない甘みと酸味、そして大人びた苦みが口中へ広がった。


「お、おいしい……!」

「そうでしょうとも。それは王がロザリア様へ贈られた、宝国が誇る最高級の果実酒です。一般市民であれば滅多に口へできない代物。味わって飲みなさい」


 そのような高級品をさらりと手渡せる執事も執事だと、パールは震える手でちびちびとそれを啜り始める。

 酒が回り緊張がほぐれてきたのか、やがてパールはヴォルツへ問いかけた。


「ヴォ、ヴォルツ様。ご質問よろしいでしょうか」

「……どうぞ?」

「ロザリア様は何故、ラズリ皇子だけをご招待なされたのでしょうか? 団の他の方々は遠く離れた別荘へと案内されていましたし……何か特別な理由があるのではと」

「あぁ……そうですね。今のうちに貴女へは教えておきましょうか」


 グラスへ果実酒を注ぎながら、ヴォルツは静かに語り始める。


「儀式があるのですよ」

「儀式……ですか?」

「そう。ロザリア様恒例の、交誼を深めるための儀式です……レイン共和国との絆をより強固なものとするために必要不可欠なものなのですよ」


「絆……」


 ヴォルツ曰く、ロザリアが執り行うその儀式とやらは、必ず使節団の長たる男性を城へ招き入れて行うものらしい。

 内容については極秘。

 ヴォルツの口からそれ以上を引き出すことは叶わなかった。


「まあ……そのうち分かると思いますよ」

「……分かるとは?」

「フッ……ロザリア様の本当のお姿。神の御業のごとき力をです」


 その時、がちゃりと扉が開く。

 奥からラズリ皇子が半裸で顔を出した。


「ラズリ皇子、お湯加減はいかがでしたか?」

「さ、最高だったよ。さすがロザリア宰相閣下のお屋敷、実に見事な湯殿だ。ところで僕の服は……」

「こちらに――」

「いえ、私めがご案内しましょう。パール、ここは私が引き継ぎます。あなたはもう休みなさい」


「は、はぁ……」


 ヴォルツは果実酒を一杯、皇子へ手渡すと、そのままどこかへ案内していった。

 置いていかれたパールはしばらく呆けていたが、すぐに意識を切り替える。



 

「…………(大丈夫、私ならできる)」


 床へ水滴が落ちている。

 おそらく皇子が滴らせたものだろう。

 これを辿れば、二人が向かった先へ行き着けるだろうか。


 何かを決心した様子のパールは、静かにラズリ皇子の後を追い始めた。


 


 ――――――


 


 一方、ヴォルツになされるがまま案内されるラズリ皇子。

 今は下半身へタオルを巻いただけの、無防備に近い状態である。

 ゆえに皇子は静かに警戒を引き上げていた。


 するとヴォルツが足を止める。


「こちらです」


 目の前にあるのは、一見何の変哲もない扉。

 どうぞ、と告げながら自分では開けようとしないヴォルツを、皇子は疑念の目で見つめた。


 明らかに何かが仕込まれている。

 そう確信する。


 しかし、この城へ招かれた時点で、こうした事態はある程度覚悟していた。

 万が一の際は、配下の者が即座に母国へ緊急の伝令を送る手はずも整えてある。


 意を決し、皇子は扉を開けた。

 おそるおそる中へ踏み入る。


 ごく普通の部屋だ。

 ただし家具は極端に少なく、中央の寝台以外ほとんど何もない。

 室内は薄暗く、光源はかすかに揺れる蝋燭が一本だけ。

 そして部屋中には微かに甘ったるい香りが漂っていた。


 正体は間違いなくアレだ。

 蝋燭の傍らには、桃色の煙を昇らせる香が焚かれている。

 そしてその隣――目の端が、寝台の中の人影を捉えた。


 ぎょっとした束の間、背後でがちゃりという音がした。


「ッ!!」


 身を翻して扉を押し開けようとする。

 しかし、びくともしない。

 外側から鍵を掛けられたようだ。


(……やはり、噂は本当だったのか?)


 警戒を保ちながら室内を見回す。

 武器になりそうなものはない。

 大きな窓があるため、かろうじてそこから脱出を図れるだろうか。


 そう算段を立てていると、寝台の人影がゆらりと動き出す。


 ラズリ皇子は思わず後退った。


「何者だッ!! こんなことをして……我がレイン共和国の兵団が黙っていないぞッ!!」


 威嚇するように怒号を放つ。

 だが返ってきた答えは、予想を大きく裏切るものだった。


「あら、いらっしゃい。ラズリお・う・じ♡」

「ロ、ロザリア宰相……!?」


 ちょうど月明かりが部屋を照らし出す。


 そこにいたのは、衣服という衣服を一切纏わぬ――

 あられもないロザリアの姿だった。

ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



よろしければ、フォロー・ブックマーク・感想などいただけますと励みになります。

感想については、質問・ご指摘・話の感想など、なんでもお気軽にお寄せください~!!全て受け止めます!!



※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ