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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第一章「特殊第六執行部隊」1-3「ロザリア編」
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CASE.026「転生者たちの歴史」

ご覧いただきありがとうございます。


全話ではしこたま怒られたドゥーミラコンビ。

今回も懲りずに暴走するようです。



※本作はカクヨム、小説家になろう、アルファポリスにも掲載しています。

 時は流れ、深夜。


 地獄のような事後処理を終え、久方ぶりに何もない余暇の時間が訪れた。

 ユリスとミラは部屋にこもり、インヨウ兄妹はヘパーの元へまた遊び――もとい、茶化しに行っている。

 カイはブッダに誘われたナイトクラブとやらへ出向いたらしく、当分帰ってこないそうだ。


 作戦室はもぬけの殻。

 そんな中、ドゥーだけはひたすらモニターと向き合っていた。

 慣れない手つきでキーボードを叩き、何かを調べている。


「…………ここでもないか」


 無論、調べているのはブッダから手渡されたブレスレットの用途だ。

 彼はこれを渡す際、「転生者の過去のログを遡れ」と耳打ちした。

 だから言われた通りに動いているのだが、まず何から始めればいいのかすら分からない。


 馬鹿正直に本部へ「見せてください」と言ったところで、突っぱねられるのは目に見えている。

 最悪の場合、ミークから密かに預かったペンダントまで回収されかねない。

 ゆえにこうして自力でどうにかしようとしているわけだ。


「……くそ。そりゃ書いてるわけないよな……」


 ネットサーフィン。

 それがドゥーにできる精一杯だった。


 彼はこういった機材には滅法疎い。

 人差し指でぽちぽちキーボードを凝視してタイピングをする程度には機械音痴である。

 とはいえ、「ブッダのブレスレット 使い方」などという直球極まりない調べ方で答えが出るはずもなく、かれこれ1時間、ドゥーはモニター画面と格闘し続けていた。


 

「何してるんスか」

「う87)’k@09うおいhp8ッッッ!!?!?!?」


 突然背後から声をかけられ、検索に没頭していたドゥーは肩を跳ね上げ、声にならない悲鳴をあげた。

 というのも、ドゥーが今使用しているモニターは任務以外で起動してはならないという決まりがある。

 前任務でのやらかしも相まって、ドゥーの心臓は一気に鼓動を早める。


「ぷふっ、先輩何コソコソしてんスかぁ~? もしかしてそういうお年頃――」

「違う、黙れ。はよ寝ろ」

「あ、これってあのチャラい局長からもらったブレスレットすよね? これ調べてたんスか?」


 寝間着姿のミラだった。

 ゆったりしたパーカーにショートパンツという、いかにも私服な格好。

 彼女の問いにドゥーは渋々頷いた。


「で、ネットサーフィンっスかwww こんなんネットで調べてどうにかなるもんじゃないでしょ、あっひゃっひゃwww」

(あぁーもう、うるさいのに見つかった……)


「どれどれ……」


 ミラは替われと言わんばかりにドゥーを押しのけ、モニターの前へ陣取った。


「ま、こんなヤバい代物、どこ調べたって情報の“じ”の字も出ないッスよ。多分これ、本部の秘匿情報に指定されてるはずッスから」

「なるほど……」

「でも先輩は幸運ッスねぇ~?」


 ふふん、とミラは鼻を鳴らす。

 ドヤ顔を決め込み、これ見よがしに胸を張った。


「ここには超天才美少女かつ、あのブッタ神に認められた上級オペレーターがいるんスから!!」

(……前半は置いとくとして、後半はブッタ神のおべっかが半分だろ。それに最後、大事な『仮』が抜けてるぞ)


「お前ならどうにかなるのか? ミラ上級(仮)・下級オペレーター」

「む!」

「すみません、助けてください。美少女天才上級オペレーター様」

「よろしい」


 ミラは満足そうに頷くと、ぽちりと何かしらのボタンを押した。

 直後、起動音が鳴り、ブゥンという機械特有の駆動音が響き始める。


「幸いカイ姐も朝まで帰ってこないし、ちょっと反抗期タイムしましょ♡」

「いいのか? バレたら今度こそ首が飛びかねんぞ」

「大丈夫ッスよぉ~。アタシ、あの神域のファイアウォール突破したんスよ? RACのセキュリティくらい、ちょちょいのちょいッス」


 まったくとんでもない奴だ、とドゥーは呆れ半分、感心半分でため息をつく。

 だが一度乗った船だ。

 乗船したのなら最後まで付き合ってもらおう。


 

「こーして、あーして、こーして……」


 ミラはぶつぶつと何かを呟きながら、超高速でキーボードを叩き鳴らす。

 その速度はおよそドゥーの50倍――もちろん、ドゥーの目算である。


 凄まじい勢いで画面にコードの羅列が流れ、ミラの眼球がきょろきょろと忙しなく動く。

 もはやドゥーには何が起きているのかさっぱり分からない。

 そもそも今流れている文字が何なのかすら判別不能だ。


 仕方ないので腕を組み、それっぽい体勢で待つことにした。


「突破したッス。さすがVABO製のスパパソ。超高性能ッスねぇ~欲しい~~」

「え、は……え?速ッ」


 あまりにも速すぎる。

 本当に突破できたのか。

 

 正直、ドゥーが画面を見ても何が起きているのかは分からない。

 文字の羅列と、“Divine Craft file 数字”という名のファイルがびっしり並んでいることだけは分かるが。


(RACのセキュリティが甘いのか、それともコイツがおかしいのか……)


 だが目的は果たせそうなので、このまま便乗することにした。


「えーと、ブッダのブレスレットはぁ……あった!」

「そうだなうん。もう任せるわ」


 ミラは“Divine Craft file 358”のファイルをクリックした。

 するとまた、おびただしい文字列が並び、最後には画像データが添付されていた。


「――これだ」


 まさにブレスレットと同じ形状、同じ色。


 名は『六道仏珠(ブッダズアイ)』という。

 ブッダの数ある神器の1つ。


 かなりの分量だが、その性能を要約するとこうだ。


 ――「結縁を解く、紡ぐ」神器。


 数珠型神器は、身につけた者が求める縁を手繰り寄せ、その者が執着する縁を解く。

 なんともアバウトな能力である。

 文面だけでは、何が何だかさっぱり分からない。


「これって……どういうことだ?」

「うーん。ま、物は試しッスねぇ~」


 そう言ってミラはためらいもなく、ブレスレットを腕にはめた。


「…………」

「…………」


 何も起こらない。

 二人は顔を見合わせる。

 やはり本人でないと効力がないのでは――そう考えた、その瞬間だった。


「あれ? こんなの在りましたっけ」

「ん?」


 見ると画面右上、いくつもある項目のさらに一番端に、新たな黒い項目が生まれていた。

 他と違って真っ黒なので、一目瞭然であった。

 そこには“reincarnater”と書かれており、先ほどまでこんな項目は無かったはずである。

 

 単に見逃していたのか。

 それともこれがブレスレットの機能なのか。


「へっへっへ~、楽しくなってきたッスねぇ~」


 ミラは即座にその項目をクリックした。

 すると、またファイル名の羅列。

 だが今度はそのすべてが互いに全く異なる、不規則な文字配列だった。


「これは……名前か?」

「みたいッスね」


 人名。

 いくらスクロールしても、スクロールバーはぴくりとも動かない。

 それだけ膨大な量の何者かのデータが保存されているのだ。


「これはまさか……この全部が転生者の名前か?」

「んん~、さすがに多すぎて何とも。検索機能は無いッスかねぇ~」

 

「………………あ」


 あまりに膨大なデータのため、そこから特定の人物を探すのは非常に骨が折れる。

 頭を抱え込んでいるミラを尻目に、ドゥーはあることを閃いた。


「そのブレスレット、“縁を紡ぐ”と言ったな?」

「はい。それが?」

「……ちょっとコレ付けてみろ」


 ドゥーは懐からペンダントを取り出した。

 青白い宝石が埋め込まれた精巧な代物。

 普通の男女関係なら、渡された側が勘違いしても不思議ではない一品である。


「え~何スか先ぱ~い♡ プロポーズッスか――」

「いいから付けろ。超ド級(の馬鹿)下級上級大天災オペレーター」

「ぅ……なんか属性が渋滞してますよソレ……」


 ミラはぶつぶつ言いながらも、ペンダントを首にかけた。


 すると、ブッタのブレスレットが淡く光り始める。

 同時に画面が凄まじい勢いでスクロールを始めたではないか。

 さっきまでどれだけホイールを回してもびくともしなかったスクロールバーが、ぎゅんぎゅんと下へ落ちていく。

 

 やがてスクロールが止まり、1つのファイルだけが赤く強調表示された。


 ファイル名は『Asahi Kudo』。


 さすがのドゥーでも、これが何を指すのか大体見当はついた。


(なるほどな。“縁を紡ぐ”か。……というかあのチャラ局長、ペンダントの存在を知っていたと見るべきか)


「開いてくれ」

「当然!」


 ファイルを開く。

 ロードを数秒挟み、ようやく目当ての情報が開示された。


 ◇


 以下の情報は参考文献『=RAC=』の内容の一部を、日本人向けに翻訳したものである。


 名:工藤・旭

 性別:男

 年齢:21

 死因:過労による衰弱死。自室のパソコンの前に倒れ伏す形で発見された。

 経歴:13歳時に中高一貫の中学校である“常城学園”に進学。その後、ゲームの腕を見初められ、プロゲーマー育成機関“β-Dvisions”にヘッドハンティングされる。


 ◇

 

「衰弱死……ゲームでだなんて……」

「21歳……ゲームって双六とかか?」

「バカですね。んなわけないでしょ。世の中にはあるんですよ、eスポーツっていう、サッカーとかバスケ並みに白熱したゲームの分野が!」

「ほう……」

「先輩、ネトゲとかしないんですか……」

「スマホとやらの使い方が分からん」

 

「………………はぁ……」


 情弱の馬鹿仮面はさておき、ミラはさらにスクロールする。



 

 ◇


 経歴(続き):


 対象はその後、ゲームの世界へとのめり込み、ついにプロゲーマーを目指して学校を中退。

 そのまま“β-Dvisions”に所属し、訓練生として活動する。当然、親の猛反対はあったものの、それを振り切っての、半ば家出同然の形で家族とは縁を切る。


 大会には通算54回出場。

 しかし戦績は振るわず、15勝39敗。

 その後、戦力不足として“β-Dvisions”から退団通告。18歳時点で無職となる。

 個人で配信をしつつ、バイトでその場しのぎの生活を送りながらも、プロゲーマーとして大成する夢を捨てなかった。


 生活環境は劣悪。

 昼夜逆転は当たり前、栄養は偏り、糖尿病やそれによる合併症で足を切り落とす。

 PCに向き合う時間は24時間のうち15時間。バイト、配信、最低限の生活行動以外はすべてゲームに費やす。


 最終的には、アパートの大家にPCに突っ伏し、あらゆる体液を垂れ流したまま意識を失っている本人を発見される。

 親族は遺体の引き取りを拒否。


 性格:


 人との付き合いを極限まで削った結果、外部情報への認識が著しく衰えている傾向を確認。

 また、中学時代から現実の自分と想像上の自分のギャップに苦しむ傾向がある。

 周囲を見る、空気を読む、察するといった能力――EQが著しく低い可能性が高い。


 カルマ値:10


 良くも悪くもない。無である。


 転生可否:有


 生を全うできなかった者として、転生の資格あり。

 カルマ値にも問題なし。速やかに対象の魂を「転生配属課」に搬送すべし。


 ◇



「なるほど……」

「相当やべー経歴ッスね。てことは大体8年くらい、ゲームにのめり込んでたってことッスかねぇ」

「のめり込んでいたというより、現実という世界から目を逸らし続けていたんだろう。ちょうどあの異世界の時のようにな」


「なんだかなー」と、ドゥーとミラは揃って腕を組み、目を閉じる。


 こんな歴史を持つ人間のどこに、神々は英雄たる器を見出したのか。

 否――そんなこと、端から考えていないのだろう。


 ただひたすらに、手ごろな魂を見つけ次第、矢継ぎ早に力を与え、適当な異世界へ放り出す。

 それが神々の量産する異世界であり、彼らが紡ぐ新たな物語なのだ。


 ブッタ神は人の心理から生まれた神だ。

 迷いの眠りから目覚め、宇宙と人生の真理を完全に理解した末に神となった――いわば元人間でありながら後天的に神となった稀有な存在である。


 だからこそ、なんとなくだが彼がRACを発足した理由も分かる気がした。


「でも、こんなのを見せるために神器なんてもの渡したんスかねぇ」

「……たしかにな」


 言われてみれば、自身の唯一無二の専用道具たる神器を一時的とはいえ預ける理由が、こんな情報を見るためだけとは思えない。

 まだ何か、自分たちが見落としている情報があるのかもしれない。リスクを負ってでも調べるべき何かが。


「へへ、じゃあカイ姐たちの過去も見ちゃお~(笑)」

「お、良いなそれ」

「気になるッスよねぇ! 特にヘパー師匠! あの人絶対ただ者じゃないッス」


 倫理的に些かどうかと思うが、たしかに気になる。

 せっかくの機会だ。

 どうせならカイだけでなく、ユリスやインヨウ兄妹の過去も覗いてみたい。ドゥーは脳死でミラの暴走に乗ることにした。


「ふ……確かにな。それに、俺も1人だけ調べたい奴を思い出した」


【今回の用語まとめ】


六道仏珠ブッダズアイ

ブッダ神がドゥーへ手渡した数珠型の神器。

「結縁を解く、紡ぐ」力を持ち、縁のある情報へ持ち主を導く。



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ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ


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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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