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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第一章「特殊第六執行部隊」1-3「ロザリア編」
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27/56

CASE.025「反省会」

ご覧いただきありがとうございます。


一章第3節「ロザリア編」のスタートです!!

どうやらカイが激おこの様子だが…??



※本作はカクヨム、小説家になろう、noteにも掲載しています。

「ここに呼び出された理由、分かるわよね?」

「……」

「…………」


 揃ってあからさまに顔を背けるドゥーとミラ。


「コラ! 聞いてるのッ!?」

「「はい!!」」


 カイは完全に説教モードへ突入している。

 その目の前には、床へ直に正座させられたドゥーとミラの姿があった。


 時は流れ、場所はRAC本部の雑談室。

 防音性に優れ、扉を閉めれば外へ音が漏れることはまずない。

 

 ――にもかかわらず、カイの怒号は壁を突き抜けたらしい。

 誇張抜きで本部全体に響き渡り、部屋の前には野次馬の人だかりまでできていた。


「あなたたち、自分が何をしたか分かってるのッ!?」

「ウス」

「ウスウス」

「『ウス』じゃない!!」

「「ごめんなさい」」


 一糸乱れぬ謝罪だった。

 その見事なハモりに、野次馬の中には思わず吹き出している者までいる。

 だがそんな外野の反応など、今のカイにはどうでもよかった。


「まずはミラッ!! あなた、ポセイドン神――最上位存在の方の別荘を無断で転送したんですって!?」

「ウッス――あ、はい」


 カイは顔を手で覆い、深ぁ~いため息をつく。


「どうやったかは一旦置いておくとして……人の物を、それも最上位存在の方々の私物を勝手に転送するって、一体何を考えてるの?」

「それは弁解させてほしいッス!!」


(……ほう)


 この期に及んでなお言い訳ができるのかと、ドゥーはミラの強靭な精神力に妙な感心を覚えた。

 もっとも、その実態はほとんど現実逃避だろうが。


 カイは顎をしゃくり、言ってみなさいと促す。


「たしかに勝手に転送したのはアタシが100パー悪いッス! でもポセイドン神のご自宅って基本水中なんスよ!? しかもアタシが飛ばしたのは普段使わない別荘――うぎィ!」


 カイの拳骨が、ミラの頭頂部へ容赦なく炸裂した。


 信じがたい話だが、神々の家を一瞬でも転送させたというのは事実らしい。

 その驚愕の内容に、カイだけでなく野次馬たちまでもがざわつき半ば本気で引いている。


(そもそも、下級オペレーターにできる芸当ではないな)


 神々の領域たる“神域”は、通常の手段では決して基底界人が立ち入ることができない場所。

 無断侵入など論外オブ論外。

 プログラマーなら失神するような、凶悪かつ複雑怪奇なセキュリティが幾重にも張り巡らされているという。

 それを突破し、挙げ句の果てに建物ごと転送するなど前代未聞であるのだ。

 相手が相手なら、その場で首が飛んでも何ら不思議ではなかった。物理的にも。


「今回はあの方々の中でも温厚なポセイドン神だったから良かったものの……」

(あれは温厚というか、半分ボケているだけでは)


 本来なら懲戒ものの案件だった。

 だが温厚なポセイドン神は、その寛大な心でもってあっさり許したらしい。

 カイが全力で菓子折り片手に謝罪へ赴いたことも功を奏し、どうにかお咎めなしで済んだという。

 

 とはいえ、神々の面子というものもある。完全に何もなしというわけにはいかない。


「よって、ミラ。貴女の昇進は残念ながら取り消しになりました」

「え”ッ」

「まあクビにならなかっただけマシね。特殊第六執行部隊の“特殊”の部分に感謝しな――」

「なんでええええええええええ!!!」


 ミラはカイの言葉を遮り、「なんでなんで」と喚きながら暴れ始める。

 駄々をこねる子供そのものだ。

 ケイン・アッキネンの方が幾分か大人しかった気すらする。


 そんな彼女の頬をぐにーっと左右に引っ張りながら、カイはミラを諭した。


「うにぃ~~~~」

「文句言わない! というか本部はあなたの能力自体は高く評価してたのよ! 余計なことさえしなければ、準上級どころかそのまま上級もあり得たんだから!」

「うにぃ~~~~(´;ω;`)」


「ですが、カイさん。ミラのおかげで俺の仕事が滞りなく進んだのも事実です。心底ムカつきますが、彼女の能力はほ――ぶっ」


 あまりに不憫だったので、ドゥーは割って入ろうとした。

 だが次の瞬間、ターゲットが自分へ移っただけだった。

 カイの拳骨を受けたのはドゥーの頭部だったが、なぜかダメージを受けたのはカイの方である。


「何様ですかドゥー君はァ~~?? 貴方も十分重罪なのよ?」

「……すみません」


 カイはやれやれと手をぷらぷら振りつつ目を閉じる。

 それにつられ、野次馬たちも一様に呆れ顔だ。というかとっとと帰りやがれ。


「ドゥー、今回の任務における規定を復唱しなさい」

「……ターゲット『工藤・旭』の執行」

「その続き」

「アバドン・システムの出力は20%までとする」

「それよそれ。で、今回記録された最大出力はというと――」


 元々、今回の任務における『アバドン・システム』は完全使用禁止だった。

 それがターゲットの異常行動によって難度が跳ね上がり、急遽使用が許可されたというのが事の経緯。

 

 そして実際に記録された最大出力は――驚異の34%。

 20%を堂々と見事に踏み越えており、RAC本部としてはミラの件よりこちらの方をより重く見ていた。


「貴方は自分の力の危険性をもっと自覚しなさい」

「……いえ、理解はしています。ただ、少しハッスルしすぎました」

「ハッスルして世界壊したら元も子もないでしょーが!!」


「…………ス」

「何?」

 

「俺、またなにかやっちゃったスかァー??(ミラの真似)――いだッ!」


 ドゥーはカイとミラの両方から、思い切り蹴りを入れられた。

 場を和ませるための渾身のギャグだったのだが、どうやら逆効果だったらしい。言葉というのは本当に難しいものだと、ドゥーは辟易する。


 そこへ、あまりにも場違いな軽快な男の声が部屋へ滑り込んできた。


「YO~YO~、今日もツンツンしてんねぇカイちゃん~」


 

「誰ッスか、アンタ」

「誰だお前」

「ちょ、バカ! アンタたち!!」


 カイは慌てふためいた様子で、ドゥーとミラの口を塞ぐ。

 無論、ドゥーは仮面をしているので意味をなさないのだが、どうやら本気で焦っているらしい。


 野次馬たちも一段とざわつき、中には写真をパシャパシャ撮り始める者までいた。

 それほどの大物なのだろうか。


(本当に誰だ、コイツ)


 身長はドゥーより頭ひとつ分高い。

 褐色の肌。

 白金に近い金髪の短いパーマは寝癖のように無造作に波打ち、眠たげに細められた目元と緩い眉が、どこか人の好さそうな印象を与えている。

 片肩だけ崩した乳白色の袈裟じみたジャケットを羽織り、首元には数珠めいたヘッドホン、手首には無数のブレスレット。

 脇にはDJが使うような高価そうな機材まで抱えている。

 

 とても高位の存在には見えない。

 というか、RACという軍事施設の空気にあまりにも場違いである。


「この方は最上位存在が一柱――転生監査機関RAC局長・ブッタ神よ!!」


 

「……え」

「あっス……」


 思わぬ超大物に、ドゥーとミラは揃って固まった。

 自分たちの雇い主に向かって「誰?」はさすがにまずい。まずすぎる。

 だからこんなにも野次馬たちが騒然としていたのかと、ドゥーはようやく納得した。


「まぁ~まぁ~カイちゃん。俺様ほとんどRAC来てないしサ、仕方ねえって(笑) それより今晩ウチのクラブ来ない? ゴッドショット(超高級シャンパン)用意してるゼ☆」

「ゴッドショッッ!?――ゴホンッ! いえ、局長。彼らにはきつく言っておかないと。またいつ、何をしでかすか分かりません。局長からも何か一言いただけませんか?」

 

「ふぅ~ん、あそう? そうだねぇ……」


 ブッタは前かがみになり、ドゥーとミラに顔を近づけた。

 先ほどまでは皆無だったが、こうして真正面から見つめられると神としての威圧がはっきりと伝わってくる。


(なるほど……これが神か)


 強い。

 いや、強いなどという言葉では括れない。

 存在そのものが遥か格上――そうとしか言いようのない圧に、二人は本能的に息を呑んだ。

 見つめられれば見つめられるほど、その不可思議な模様を宿した瞳へ吸い込まれそうな錯覚すら覚える。


「うん! ミラちゃんはオペレーターとして天賦の才がある! ポセイドンのおじーちゃんも久々にいい刺激になったって言ってたし、問題なし! 頑張ってネ!」

「あ、あざっす……?」

「局長~…ッ」


 思っていた方向と違う、とでも言いたげにカイは項垂れる。

 続いてブッタは、今度はドゥーの仮面を指先でなぞり始めた。


「ふぅ~む。君が噂の問題児か」

「…………」

「はは……すごい。俺様の目でも何も見えない(笑)! マジで深淵って感じ。ウケるね」

 

(ウケる?)

(ウケる?)


 満足したのか、ブッタはひょいと身を起こす。


「噂の特殊第六執行部隊、しかとこの眼に焼き付けた! 用は以上。ほらみんな解散解散~」

「ちょっと、局長~ッ!」

「ほらカイちゃん、お土産。これで元気出しな」

「わ、最近お気にのラベル♡ ありがとうございますぅ♡」


 何やら賄賂めいた物を手渡され、カイは一瞬で上機嫌になった。

 野次馬たちも次第に散り始め、やがてドアの前はすっかりきれいになった。


「そうだ。ドゥー君、執行官は板についてきたかな?」

「…………はい、おかげさまで」

「ふっふーん、嘘が下手なようで」

「いや、そんな――」


「君の気持ちは理解できるヨ。神々の気まぐれで過ぎた力を得た“転生者”。その力に振り回される現地の人々。そんで、そのためだけに作られた地球の模造品である“異世界”。神々の一存でそれらすべてが、舞台装置のように手のひらの上でコロコロされる。理不尽極まりない蛮行だヨ」

「…………」

「だからこその転生監査機関! だからこその執行部隊!」


 ブッタはじゃらじゃらと手首のブレスレットの一つを外し、ドゥーへ手渡した。


「俺様はね、そんな人々の物語を救いたいからRACを作ったんだぜ? んん~? 偽善だって? 上等だね☆やらない善よりやる偽善の方が、よっぽどロックンロールだ!」

 

「これは……?」

「ふふん……君はどうやら、拒絶の権化のような力を持ちながらターゲットにより強く感情移入する傾向にあるみたいなんでね」


 

 ――転生者の過去を調べてみるといい。きっと役に立つよ。


 ブッタはそう耳打ちすると、そのままスタスタとどこかへ去っていった。


「何スかそれ?」

「……知らん」

「はぁ~~~仕方ないわ……局長のお顔に免じて、今回は報告書30枚で許してあげるわ」

「「げ!」」


 結局、地獄が待っていることに変わりはなかった。

 ドゥーとミラはカイに引きずられるようにして、第六部隊の作戦室へ連行されていく。


 任務の間の超箸休め会――などと誰が言ったのか。

 少なくとも当人たちにとっては、胃の休まる要素などひとつもない日なのであった。

 

【今回の用語まとめ】


■ブッタ神

最上位存在の一柱であり、転生監査機関RACの局長。

軽薄なDJのような振る舞いをしているが、神としての格は本物。

神々の気まぐれで作られた異世界と、そこに生きる人々の物語を救うため、RACを設立した。



――――――――――――――――――――――――――――




ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ


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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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