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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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119/123

CASE.117「いと貴きヒト」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

「団長!!」


 身体を激しく揺さぶられ、クストーディスはゆっくりと目を開けた。


 視界はぼやけている。

 耳鳴りも酷く、辛うじて目の前に数名の団員がいるのを認めた。


 団員たちは、クストーディスを覆う瓦礫を必死に退かしていた。


 クストーディスは項垂れたまま、頭から滴る水も意に介さず、先ほどの一撃を反芻していた。


「団長、お怪我は?!」

「…………問題ない」

「団長が、一撃でここまで……」

「今瓦礫を除きますからねっ!」


 だが、団員たちの手を借りるまでもなく、クストーディスはのそりと立ち上がった。

 そして、心配そうに見つめる彼らを見下ろす。


「……状況は? 俺は、どのくらい意識を飛ばしていた?」

「は、はい! 団長は一分ほど気絶しておりまして、現在『アグレウス』は敵を包囲――波状攻撃によって、絶えず攻撃中であります!」

「……で、仕留められたのか?」

「…………いえ、その……」


 団員たちは目を逸らし、地面を見つめる。

 その反応から、言葉にせずとも、クストーディスは状況が芳しくないことだけは理解できた。


「被害状況は」

「は……そ、その――」

「何だ。はっきりと言え」

「申し訳ありません! は、早くも半数が戦闘不能……依然として、敵は全員存命です……」


「…………」


 歯切れの悪い報告が、事態の深刻さを物語っていた。


 戦場からは今なお銃声と怒号が響いている。

 自分の団が蹂躙されている音だ。


 意識を失っていた僅かな間に、約百名の『アグレウス』は半数が戦闘不能となった。

 しかも、たった数名を相手にしてだ。


 当初は時間制限付きの戦闘力であると踏んでいた。

 だが、どうやら当てが外れたらしい。


 クストーディスは歯軋りする。


(何なんだ、奴らはッ?! どういう絡繰りだ……まさか奴らもギルド長がおっしゃっていた、かの“いと貴きヒト”なのか……? であれば、あの摩訶不思議な武器も――)


「グゥッ……」

「「団長!!」」


 一歩踏み出そうとした矢先、腹部へ激痛が走り、クストーディスは思わず膝を突く。


 慌てふためく団員たちの声が、雑音のように耳を通り過ぎる。

 今はただ、突如現れた脅威へどう対処するか。

 クルキブリ最強を名乗る以上、ここで引くわけにはいかなかった。


(ヌゥ……一撃でこの威力。クロハガネ製の大剣を粉砕してなお、この衝撃……)


 予感した通り、あの赤目は規格外の力を秘めている。

 体格ではロンショウに遠く及ばぬというのに、その一振りは、今まで喰らったどんな一撃よりも重かった。


「団長……」

「…………」

「あの赤目……いや、奴らは何者なのでしょうか」


 それはクストーディスも知りたいところだった。

 ようやく彼らの言葉が意味を伴って脳へ入ってきたとはいえ、有益な情報を一切寄越さない部下たちへ苛立ちが募り始める。


「知らん。だが、あの娘や長老と同じ類いの者であることは確かだ」

「それは……いつもギルド長がおっしゃる、“いと貴きヒト”でしょうか?」

「…………あぁ」


 ――いと貴きヒト。


 ドクトリウス家に伝わる、クルキブリの創設者たちの呼び名だ。


 驚異的な生命力と身体能力、そして不可思議な道具を携えてこの地に現れ、人々と共に骸都クルキブリを築いたという。

 今や生き残りはミュラーただ一人。その伝説は、ドクトリウス家に代々語り継がれてきた。


 ミュラーはしばしば、いと貴きヒトの再来を望んでいた。

 その時こそが反撃の狼煙であると、ドクトリウス家へ何度も口を酸っぱくして言い聞かせていたという。


 そのためドクトリウスは、そのいと貴きヒトへ異常なまでに執着していた。

 アンがその一人だと知って歓喜したものの、協力を拒まれるや一転、彼女の捕縛を命じた。


 だが、クストーディスにはその判断が間違いだとは思えなかった。


 狙いは恐らく、アンを旗印としたユグドラシル討伐。彼女と絆の深いゥルルの力も借りれば、厄竜を退けたあの力を存分に使える。

 たとえ討伐が叶わずとも、アンを長老の後(・)継(・)にでも据えれば、さらなる街の繁栄に繋げられる。

 少なくとも、そう考えていた。


 だが現状はどうだろうか。


「いと貴きヒトがこれほどまでとは……随分と、聞かされていた伝説とは違うものだな……」

「団長?」

「…………アレを持って来い」

「アレ、とは……?」


 クストーディスは、物分かりの悪い団員をぎろりと睨みつける。

 すると団員たちは肩をびくつかせ、何を指しているのか察したらしい。


「ま、まさか、アレを使うのですか?!」

「そうだ。背に腹は代えられん」

「アレは来る厄竜、そしてモンスターの母——ユグドラシルとの決戦まで温存せよと、ギルド長が固く厳命なされていたはず――」

「構わん、持って来い。ギルド長も分かってくださる」

「…………だ、団長」


 団員たちは二、三歩後ずさる。


 厄竜との決戦まで温存するはずの切り札。それを使う判断に、すぐには納得できなかった。

 だがクルキブリ最強の狩人(スレイヤー)が、あの赤目を厄竜に匹敵する脅威と見なしている。

 ならば、今は団長に従うほかなかった。


「よし、ギルドへ鳥を飛ばせ! 待機している団の者が持ってくるはずだ」

「では、私は文を」

「俺は鳥を」


 議論を即座に終え、てきぱきと次の行動へ移った彼らはすぐにその場を後にした。

 迷いを振り切って動き出した部下たちの背を見送り、クストーディスは鼻を鳴らした。


「名などもはやどうでもいい…………その首、この俺が貰い受ける」


 決意を表すように、戦場を見据える。


 鳴り止まぬ怒号。

 空気を裂く射撃音。


 怒りを胸に押し込み、クストーディスは部下の帰還を待った。



 ――――――――



「おわー、すっげえ!」

「アレが、ドゥーの『罰劾(ばっがい)』か……。間近で見るのは初めてだな」


 高速で駆け巡りながら、ハマーとアモンはフルプレートの大男を軽々と吹き飛ばしたドゥーを、横目で見つめていた。


 資料では何度か見たことがある。

 だが実際に目の当たりにすると、なかなか強烈な技だと感心してしまう。


「しかし、コイツら何者だ? ドゥーよ」

「……何者……とは?」


 ニガールは、いつの間にか救出していた満身創痍の三人を、静かに地面へ下ろした。


(いつの間に……FREYAの透明化か)


 乱戦に乗じて姿を隠し、捕らわれていた三人を救い出したのだろう。

 無駄のない救出だ。


「ヘロメロスさん!」

「ロンおじちゃん!!」


 ヴェインとバルカン、そしてゥルルは、横たわるロンショウたちへ駆け寄る。

 何をすべきか分からずオロオロと慌てる彼らへ、ニガールが声を掛けた。


「大丈夫だ。特別製の鎮痛剤は打ってある。呼吸も安定している。じきに目を覚ますだろう」

「本当?!」

「あぁ」

「あ、ありがとう! おじさん!」

「おじ――……まあいい。感謝しろよ、スライム坊主」


 ゥルルは、血で固まったロンショウの髪を優しく撫でる。

 数少ない理解者たちの存命を確認し、目に涙を浮かべた。


「テメ……アンタら、何者だよ」

「ん?」


 ミュラーの力を借りながら、ヴェインたちはてきぱきと3人へ包帯を巻いていく。

 その傍ら、バルカンは溜め込んでいた疑問を、ニガールとドゥーへ投げ掛けた。


(まあ……無理もないな)


 突如現れ、街の精鋭を一方的に圧倒する、奇妙な装備の集団。

 バルカンが正体を疑うのも無理はない。


 ドゥーは手短に答えることにした。


「俺たちは味方だ。少なくとも、お前たちがアン側ならな」

「アンタは……コイツ――アンの何なんだよ?」

「上司だ」

「じょ、上司…………」


 バルカンは、何とも微妙な表情を浮かべた。


 だが、そんなことよりもドゥーには先ほどのニガールの言葉が気に掛かった。


「それより、さっきの……”コイツらが何者”とは、どういうことですか?」

「ん、あぁ。ちょっと、アイツを見てみろ」

「アイツって、どれです?」


 ニガールは「アイツだ、アイツ」と、奥の方で子鹿のようにぷるぷる震える敵の1人を指差す。


「あれは……」

「あの野郎、もう2、3発撃ったはずなんだがな。一向に戦意を失う様子を見せねぇ」

「…………」


 ニガールは銃を構え、容赦なくその敵の肩を撃ち抜く。


 パシュンという音と共に、敵はぱたりと倒れた。

 だが、すぐに地面を掴み、ぷるぷると起き上がろうとし始める。


(何だ……奴だけが異常に頑丈なのか……?)


「うーん。コイツは少しばかり厄介だな。さっさとずらかる準備をした方がいい」

「……? ミラ、どういうことだ」


 久しぶりに名前を呼ばれ、ミラは元気よく応えた。


「ウッス! お久しぶりッスねぇ、先輩! 今の今まで、どこほっつき回ってたんですか!?」

「うるさい。それは後で教えてやる。それよりも、コイツらだ」


 ドゥーは周囲を見渡した。


 すでに何度も撃たれているはずの敵が、何人も続々と立ち上がっていた。

 かなりの速度でさばいているにも関わらず迎撃が終わらないのは、そのせいである。


「何故コイツらは、あれだけ撃たれても立っていられる? 異世界人にしては頑丈すぎるぞ」

「うーん……それがッスねぇ……」


 歯切れの悪い返答に、ドゥーは安堵と苛立ちを同時に覚えた。

 この調子を聞くのも、二日ぶりだ。


「どうした。いつものモゴモゴが出てるぞ」

「いや、だって、これ言ったら馬鹿だって言われるッスもん!」


 何を言っているのだと、ドゥーは首を傾げる。

 隣で聞いているニガールへ目を向けると、彼も肩を竦めていた。


「じゃあ、アタシの独り言だと思って聞いてほしいッス」

「いいから言え」

「コイツら全員から、微量に……基(・)底(・)界(・)人(・)の反応が検出されるッスよ」


【今回の用語まとめ】


■いと貴きヒト

約2000年前、骸都クルキブリの創設に関わったとされる謎の人々。驚異的な生命力・身体能力と不可思議な道具を持ち、街の発展に貢献したという。現在の生存者はミュラーただ一人とされる。


■ドクトリウス家の伝承

クルキブリの創設者「いと貴きヒト」に関する言い伝え。ミュラーは彼らの再来を長く待ち望み、それがユグドラシルへの反撃の契機になると説いてきた。


■クロハガネ

クストーディスの大剣に使用されていた金属。ドゥーの《罰劾》によって大剣は粉砕され、クストーディス自身も一撃で戦闘不能となった。


■『アグレウス』の異常な耐久力

第四執行部隊の射撃を複数回受けても、再び立ち上がる団員が続出。ミラの解析により、彼らから微量の「基底界人」の反応が検出された。詳細な原因は不明。



――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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