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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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CASE.116「最速の執行部隊」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

 ガチャガチャと弾を装填し、セーフティを解除する。


 彼らが構えるのは、VABO製小銃『ヘファイス』――通称HFライフル。

 基底界人向けに設計された、安価で大量生産可能な万能銃だ。弾種を切り替えれば、あらゆる任務に対応できる。

 RAC黎明期を支えた主神の一柱――ヘファイストスが開発した、VABOの原点とも呼ぶべき兵器。以来、ほとんど姿を変えることなく、輪廻庁《サンサーラ・エージェンシー》で愛され続けてきた。


「放てぇ!!」

「てぇ!!」

「殺せぇッ!!」


 『アグレウス』各分隊の隊長らしき団員たちが、次々と声を荒らげる。


 それに応じ、最前列の者たちが勢いよく腕を振りかぶる。

 無数の槍が弾丸さながらの速度で、ドゥーたち第6.4合同執行部隊――その中央にいるアンとゥルルへ向かって飛来した。


 同時に、ニガールら第四執行部隊の4人は、アンたちを囲むように四方へ展開し、銃を構える。


「副隊長ッ!」

「分かっている――『絶対直撃領域(レッド・ライン)』」


 それは、瞬きひとつにも満たない間の出来事だった。


 空気を引き裂き、殺到する無数の槍。


 その刹那を一つずつ切り分けるなら、まず最前列を飛ぶ槍の穂先へ、赤い光点が灯った。

 次いで、その隣。

 後方。

 さらに、その奥。


 飛来する槍の一本一本へ、赤い光点が瞬く間に広がっていく。

 ニガールが赤い光点へ向けて発砲。ほかの三人も、それぞれの照準で引き金を引いた。


 ギギギギギギンッ!!


 幾つもの金属音が一度に重なり合う。

 甲高い破砕音は一つの轟音となって、広場全体を激しく震わせた。


 観衆は反射的に両耳を塞ぎ、何人かは顔を歪めながらその場へ屈み込む。

 その頭上では、軌道を逸らされた槍同士が互いにぶつかり合い、金属の雨となって石畳へ降り注いだ。


「何?!」


 クストーディスの喉から、理解の追いつかない声が漏れる。

 その後、『アグレウス』のあちこちから狼狽の声が噴き出し始めた。


「ふえぇ~」

「あっぶねぇー! アイツらの肩の力、馬鹿にならないぜ副長!」

「予想以上の投擲力……タイミングをずらされたらなかなか厄介だぞ、副隊長」

「あぁ。だが、投擲の予兆は読める。各自そのまま、槍を持つ者を優先して全敵対勢力を無力化しろ。急所は極力避けろ」

「「「了解」」」


 『アグレウス』もまた、負けじと槍を補充し、手にした者から投擲を試みる。


 だが、槍を手にした者はことごとく、第四執行部隊に手足を撃ち抜かれた。

 急所を外された団員たちが、ばたばたと呻き声を上げながら倒れていく。


「ほ、補充班も加われ! 突撃隊を編成し、段階攻撃で袋叩きにしろ!!」


 小隊長の1人が叫ぶ。

 その号令により、突撃隊と投擲隊が交互に並ぶ形で編成された。


 これこそが、『アグレウス』のもう一つの必殺戦術――オルカ戦術。


 投擲と突撃を交互に繰り返して敵を誘導し、少しずつ消耗させる波状攻撃である。


 一斉投擲が通じないと見るや、『アグレウス』はすぐさま戦術を切り替えた。

 この統率力と柔軟性こそ、彼らの真骨頂。ニガールは純粋に「ほう」と感心していた。


「各員、『FREYA-XS(フレックス)』を起動。任意に敵対勢力を迎撃しろ」


 ニガールに続き、プスコー、アモン、ハマーもそれぞれ首元のボタンを強く押す。

 すると、ブゥンという異音と共に、四人のFREYAの表面へ黄色い線が走り始めた。


「へへっ、久しぶりだなこれ使うの! 滾るぜ!」

「ハマーさん、あまりテキトーに動かないでくださいよぉ?」

「副隊長、いつでもいけます」


 アモンの報告を受け、ニガールはニヤリと笑う。


「よし、暴れろ」


「『アグレウス』、攻撃を開始しろォッ!!」

「かっ飛ばすぜええッ!!!」


 幾多の咆哮と共に『アグレウス』一列目の団員たちが突撃し、二列目が投擲を開始する。

 それに応じ、プスコー、アモン、ハマーの3人は高速移動を開始した。


 飛来する槍。

 突撃してくる団員。


 近いものから順に、ひたすら効率よく撃ち抜いていく。


 高速移動中も、三人の連携は一糸乱れない。


 アンたちを囲むように絶えず動き続け、互いの死角を補い合う。

 黄色い残像を残しながら、あらゆる攻撃と脅威を無力化していく。


「す、すげえッス!!」

「久しぶりに見たけど……凄まじい連携ね」

「これが、第四執行部隊……」


 おそらく、その速度はドゥーの――アバドンなしとはいえ――全速力すら超えている。


 それでも互いに衝突することはない。

 まるで全員の位置を共有しているかのように、一つの生き物となって、淡々と『アグレウス』の団員たちを戦闘不能にしていく。


「何スか、『FREYA-XS(フレックス)』って? ドゥー先輩のと、何か違うっぽいッスね」

「良い質問だ、チンチクリン!」


 やはり、ヘパーが出てきた。

 FREYA――特にVABO製品の名を口にすれば、嫌でも現れるのがこの男だ。

 わしわしとミラの髪をかき乱しながら、食い気味に顔を近づける。

 その鼻息に、ミラは眉間に皺を寄せ、露骨に顔をしかめた。


「アレは奴ら第四執行部隊専用に作られた、特注品だ。ドゥーとへっぽこ(アン)の物と同じ、専用規格ってわけだ」

「へぇ~、専用装備!」



 ――FREYA-XS(フレックス)。


 正式名称、『FREYA-|XS《eXtended Synapse》』。


 最新式である第三十六世代FREYAを、さらに第四執行部隊仕様へ落とし込んだ専用装備。


 身体能力を大幅に強化すると同時に、第四執行部隊各員のFREYAを神経レベルで接続。

 部隊全員を、一つの神経網として機能させる特殊規格を備えているのだ。


 さらに、共有されるのは単なる視覚情報や位置情報だけではない。


 思考。

 運動開始直前の神経信号。

 照準方向。

 次の移動経路。


 そうした情報が、瞬時に共有される。

 これにより、互いの動きを予測する手間さえなく、一寸の狂いもない高速連携が可能になる。


 突出した強烈な“個”の集まりである特殊第六執行部隊に対し、紛れもなく彼らは、極限まで洗練された“隊”である。


 曰く、『最速の執行部隊』。

 それが、ノルハイコ率いる第四執行部隊だった。


(しかも、ノル先輩なしでこれって……)


 高速で絶え間なく動き続ける、三つの黄色い残像。

 次第に閃光は三角形のような軌跡を描き始め、その内側で『アグレウス』の団員たちが、次々と倒れていく。


 槍と銃弾が飛び交い、いつの間にか野次馬たちも散開しつつあった。

 ただただ石畳の上へ倒れていく部下たちの姿を、クストーディスは目を見開いたまま観察していた。


(何、だ……何だアレは……!?)


 鍛え上げた戦友たちが、いとも容易く薙ぎ倒されていく。

 かつてクルキブリ史上5本の指に入るほどの大物をも仕留めたオルカ戦術すら、全く意味を成していない。


 黄色い閃光を放つ甲冑。

 金属の小塊のような物を、高速で射出する異様な筒状の武器。

 その全てが謎だった。


 初見の技術による暴力で、ことごとく『アグレウス』の戦力が削がれていき、クストーディスは苛立ちを隠し切れない。

 それでも冷静さを失わず、第四執行部隊の動きに隙を探していた。


(あの娘と同系統の装備……であれば、制限時間があるはず……ならば)


「貸せ」

「だ、団長?!」

「……ゥウンッ!!」


 クストーディスは横で待機していた団員から槍を奪い取ると、そのまま全力で第四執行部隊へ投げ放った。


 槍は、団員たちのそれより遥かに高速で空気を裂く。

 だが、それは第四執行部隊へ届くことなく、ドゥーによって片手で止められた。


「な——」

「横(・)槍(・)か……安心しろ、お前の相手は俺だ」


 シュウッと、槍を握る拳から煙が上がる。


 そのままミシミシと握る力を強め、柄がドゥーの手形に合わせ、歪に変形していく。

 そして今度は、クストーディスへお返しと言わんばかりに槍を投げ返した。


「フンッ!!」

「くッ!!」


 ドゥーの手元から、槍が爆速で返投される。

 クストーディスは高速で迫る槍を、何とか大剣の一振りで弾いた。


 ガキィンッ!!


 凄まじい金属音を立て、クストーディスに弾かれた槍は宙を舞い、遠くで待機していた『アグレウス』団員の兜へドスッと突き立った。

 幸い穂先は兜を貫通せず、団員は訳も分からぬ様子でキョロキョロするが、クストーディスは意にも介さない。

 ただ、自分の手をじっと見つめ、ぐっぱ、ぐっぱと開閉していた。


(な……何という腕力……。力だけなら先生とタメを張る……いや、それ以上か……? …………いや、そんなはずはない!! そんなはずは……)


 びりびりと大剣を握る手が震え、先ほどの投擲がいかに強烈だったかを物語っていた。


 ロンショウを凌ぐ腕力――そう感じてしまったクストーディスは、必死にその考えを振り払う。


 彼の中で、ロンショウはいまだ“個”として最強なのだ。


 その腕力は鋼を押し潰し、モンスターの頭蓋を粉砕する。

 クルキブリで狩人(スレイヤー)を志す者ならば、誰もが憧れる力だった。


 現最強の冠を頂く今でさえ——半殺しにしたとはいえ、彼はロンショウを師として尊敬している。


 だからこそ、それを凌ぐであろう腕力を、あの赤い単眼がいとも容易く披露した。

 その事実だけは、断じて認められなかった。


(そうか……あの面妖な装備に、何か絡繰りがあるに違いない)


 そう思い込むことで、クストーディスは自らの疑念を押し殺した。


(まあいい……とにもかくにも、まずはあの単眼が邪魔だ)


「ッッムゥン!!」


 居ても立ってもいられなくなったクストーディスは、その力の真偽を確かめるべく、半ば八つ当たりのように石畳を踏み砕き、突撃した。

 大剣を高々と掲げ、真っ二つにする勢いでドゥーへ振り下ろす。


 だが、その大剣もまた、ドゥーの片手によっていともたやすく止められてしまう。


「何、だとッ?!」

「…………大した力だ。異世界人にしてはな」


 ドゥーの指一本一本が大剣へめり込む。

 圧倒的な握力により、刀身へビキビキと亀裂が入り始めた。


 その異様な光景に、クストーディスは兜の奥で目を見開いた。


「貴様……何者だ……」

「だから言っただろうが。お前に教える名など、持ち合わせていない」

「くッ!!」


 クストーディスは大剣を勢いよく引き抜き、態勢を整えようとする。


 だが、その隙を逃すほど、ドゥーという男は甘くない。


 僅かに姿勢を崩したクストーディスへ、ドゥーは一気に接近。

 難なく、技の射程圏内へ踏み込んだ。


(はや――)

「罰劾(ばっがい)」


 強烈な十文字斬りが叩き込まれる。


 クストーディスは辛うじて大剣を滑り込ませる。

 だが、大剣は見事に粉砕された。


 例のごとくANUBISも砕け散り、クストーディスは後方へ大きく吹き飛ばされる。


「グゥオォァッッ!?!?」


 何度も石畳の上で跳ね、終いには広場の噴水へ背中から激突した。

 瓦礫を巻き込んだ水飛沫が天高く舞い上がり、噴水の縁にめり込んだクストーディスの頭上へ降り注ぐ。


「ぐ……は…………」


 甲冑の中が水浸しになり、大きな瓦礫が数個、彼の頭へ直撃した。

 そのままクストーディスの意識は、呆気なく途切れた。

【今回の用語まとめ】


■VABO製小銃『ヘファイス』/HFライフル

ヘファイストス神が開発した、基底界人向けの汎用小銃。安価で大量生産が可能であり、弾種の切り替えによって様々な任務へ対応できる。RAC黎明期から使用され続ける、VABOの原点とも呼べる兵器。


■『絶対直撃領域(レッド・ライン)』

ニガールが使用した特殊な技術。飛来する槍の穂先へ次々と赤い光点を出現させ、第四執行部隊による精密射撃を可能にした。能力の詳しい仕組みは現時点では不明。


■オルカ戦術

狩猟団『アグレウス』が使用する集団戦術。投擲隊と突撃隊による波状攻撃で敵を誘導し、消耗させることを目的とする。


■FREYA-XS(フレックス)

正式名称『FREYA-|XS《eXtended Synapse》』。第三十六世代FREYAを基に開発された第四執行部隊専用装備。身体能力の強化に加え、装着者同士の神経信号や思考、照準、移動経路などを共有し、極限まで精密な高速連携を実現する。


■『最速の執行部隊』

第四執行部隊の異名。各員の身体能力と《FREYA-XS》による神経接続を組み合わせ、部隊全体が一つの生命体のように行動する。個人技に秀でた特殊第六とは異なり、集団連携を極めた部隊である。



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ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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