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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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108/123

CASE.106「板挟み」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

「これは……大変なことになったッスねぇ……」


 ミュラーから共同戦線の申し出を受け、急遽、作戦室では緊急会議が開かれていた。

 カイ、ミラ、ユリス、ノルハイコ、そして無理やり連れてこられたヘパーの5名が、作戦テーブルの前へ集合する。

 ルールーはインヨウ兄妹の面倒を見つつ、眠るディーテルへの悪戯を傍観していた。不憫な情報官である。


 アンには、ひとまず回答を保留するよう伝えてある。

 今はギルド内を案内してもらいながら、時間稼ぎを任せていた。


「とりあえず、まずは現状判明している情報だけ整理しましょう」

「「「了解」」」

(早く終わんねえかなぁ~)


「現状、押さえておくべき重要情報は4つ――」


 1.本部の任務情報は改竄されている

 ゥルルが転生したのは直近ではなく、約1980年前(らしい)。そしてイシス神は現在、魂のみの状態で存続しており、明確にRAC本部へ敵対心を抱いている。


 2.イシス神は特殊第六へ、ゥルルを守るための同盟を提案している

 彼女の要求は「ゥルルの保護」。現状、特殊第六執行部隊はこの提案を保留しており、今はアンの保護を最優先に行動している。これを本格的に受諾した場合、明らかに本部の執行命令へ反することとなる。


 3.ミュラーは半基底界(インタースペース)人で、過去のRAC――特に第零の当事者である可能性が高い

 RAC、執行官、FREYA、階級制度を知り、作戦室との通信まで見抜いている。また、執行部隊の到来を長年待っていたらしい。


 4.クルキブリ側も特殊第六へ共同戦線を提案し、ユグドラシルの討伐を求めている


「ってことは、今アタシら、イシスさんとミュラー婆の板挟みって感じッスか」

「そうだ。現状、イシス神とは友好関係を築いてはいるものの、彼女の真意は測りかねるがね」

「うーん、どうしたものか……(一方は本部への反抗心丸出しの主神。もう一方は、怪しさ満点の基底界(インタースペース)人……)」


 カイは、ノルハイコをちらりと一瞥する。

 いつもはおどおどしている彼女だが、どうにもイシス神の出現――いや、ミュラーが基底界人だと判明してから、様子がおかしい。


 基本的に任務中も、執行官として出向くまではおどおどしている。

 だが今の彼女は何というか、気が立っているというか、切羽詰まっている様子だった。


「ノルちゃんは、どう思う?」

「……私は、ミュラーという女性の情報を精査すべきかと」

「それもやまやまだが、あまり踏み込むと警戒される可能性がある。故に、ここである程度の方針を定めるべきだ」


 ユリスは、2つの駒をテーブル上へ置く。

 砂糖が入っていた紙袋で作った、急ごしらえのミニフィギュアだ。


「何スか、これ」

「イシス神とミュラーだ。双方の提案を比較するための目印代わりだ」

「そうッスか……(この人、いつの間にこんなのを……)」


「では整理しよう。どちらから行く、カイ監査官」

「……イシス神で」

「了解」


 ユリスが、イシス神の駒を前へ動かす。


「まず、イシス神の提案だが……正直、ハイリスクだ。リターンも現時点では読めない」

「んなもの、受ける価値ないじゃないッスか」

「だが、そう早合点するものでもない。ミラじょ――オペレーター。我々の前(・)提(・)を思い返してほしい」


「…………あ」

「そうだ。我々はすでに情報官へ危害を加え、あまつさえ過去の違反行為まで彼らに知られた。故に、この作戦が失敗すれば――」

「ゲームオーバーね」

「そう。それに、タイムリミットも忘れてはならない。もう間もなく、本部もディーテルら情報官の未帰還を疑い始める頃だろう。もし作戦が停滞し、本部がここへの突入作戦を実行した場合、それもまたゲームオーバーだ」

 

「ヤバいじゃないッスか!!」


 ユリスの矢継ぎ早の八方塞がり宣言に、ミラが頭を抱える。

 だが、すぐに彼は切り返した。


「だからこそのイシス神の存在だよ」

「へ?」

「一度、輪廻庁《サンサーラ・エージェンシー》は彼女の死を公表した。だが、そこへ本人が現れたとする。他の基底界人はどう思う?」

「…………なんか、輪廻庁怪しいと思うッス」

「その通り。ただでさえロザリアの件で、現在の中枢機関は信用を失っている。そこへイシス神本人による暴露まで重なることは、彼らの望むところではないはずだ」

「だからイシス神に協力することで、その対価として私たちにも協力してもらうってことね」

「まさしく」


 カイの結論に、ユリスが指を鳴らして同意を示す。

 依然としてヘパーは興味なさげに天井を見つめており、ノルハイコはずっとミュラーの駒を見つめていた。


「じゃあ、もうイシス案一択じゃないッスか」

「そうとも限らない」

「なんで!!」

「現状、彼女の言葉を裏付ける根拠が薄いの。そもそも相手は主神だし……私たちと同じ思考の尺度で測るのも……」

「……ってことはー、イシスを信用して裏切られたら、任務も失敗、執行官は全滅、部隊はパーってことー?」

「追加で、俺(ヘパー)とおめー(ミラ)のタルタロス送りな」

「イヤだァーー!!」

「だからこそのハイリスクだ。そして彼女が今後もこちらの意に沿って動いてくれる保証はない。見返りの大きさすら、現時点では確定していない」


 ユリスはイシス神の駒を引っ込め、今度はミュラーの駒を前へ出す。


「続いて、ミュラーという謎多き基底界人だが……ノルハイコ隊長。何か言いたいことでも?」

「いえ……ただ彼女と第零執行部隊、それからイシス神との関係性が気になって……」

「おおむね、僕も同じだ」


 ノルハイコの疑問に、ヘパー以外が頷く。


「あくまで憶測の範疇であることを前提に、聞いてほしい」


 ユリスはコーヒーで喉を潤す。

 すると脳内で幾多の可能性を分析した末に導き出した、最もそれらしい答えを提示した。


「ミュラーという女性。彼女は以前、イシス神の執行任務へ送られた第零執行部隊……その生き残りである可能性が高い」

「生き残り……」

「マジで第零執行部隊だったら、ガチのボイコットもんのスキャンダルッスよ、これ」

「ただ、現状理解できないのが彼女が“半基底界人”であること。そうだろう、ミラ――オペレーター」


 ミラはモニター前へ移動し、先ほどシスターズの協力を得て収集した、ミュラーの生体情報を画面へ映す。


「そうなんスよ。何か、半分基底界人、半分この世界の人間みたいな」

「ハーフというわけではないの?」

「いや、血の問題じゃなくて、魂の問題ッス。何か、一度基底界人だった魂へ、後から無理やりこの世界の人間としての属性を植え付けたような……そんな感じです」

「どういうこと?」

「??」


 ミラの言葉に、ノルハイコとカイが眉をひそめる。

 魂単位での情報の改竄。

 それができる存在は、今のところ1人しか候補がいなかった。


「イシス神……」

「ウス……だから一番手っ取り早いのは、イシスさんへ聞くことッスね(またここのセキュリティ、ダウンさせなきゃいけないッスけど……)」


 正直、ミラの言う「イシス神へ直接聞く」という方法が、最も確実な案である。

 魂そのものの情報を微細に調整できる存在は、現状ではイシス神しかいない。

 彼女とミュラーがどのような関係なのか聞ければ、今後の部隊の行動方針を決める一手となるかもしれないのだ。


 だが、ノルハイコは強く反発した。


「却下です。また、ここを無防備にするつもりですか?」

「む……ウッス」

「そもそも、仮に彼女が第零執行部隊の生き残りだとして……なぜユグドラシルを……今まで何を……というか、彼女はなぜ老いているのでしょう……?」


 確かに、とカイとユリスは頷く。

 彼女が基底界人であるならば、上位存在である限り老いることはない。

 故に100年経とうが、1000年経とうが、ここまで老けることはないはずなのだ。


「うーん、やっぱアンちゃんからイシスさんへ聞いてもらいます?」

「…………アンには……あまり任せたくないわね。申し訳ないけど」


 何かと気に入られているアンだが、彼女だからこそ、こんな博打じみた質問はさせたくない。

 今のところアンの反応を見る限り、イシス神はゥルルの中からミュラーを見ても、特に反応を示していないようだ。


 そんな彼女へ「あれをやったのはあなた?」という、ど直球の質問をぶつけるのはいささか危険である。

 アンとイシスの友好関係という最強の手札を、こんなところで失いたくはないというのが作戦室の総意であった。


「だが、聞くという方針自体はアリだ」

「へ?」

「アンへ指示を送りたい。いいかな、カイ監査官」

「何するつもり?」


 ユリスはきょとんとしながら、カイたちを見つめる。


「何とは……イシス神へ聞けないのなら、ミュラー本人へ聞けばいいではないか。だからこその、アン執行官の恩寵(ギフト)だろう?」


【今回の用語まとめ】


■二つの協力提案

特殊第六執行部隊は現在、イシス神から「ゥルルの保護」を条件とした同盟を、クルキブリ側からは「ユグドラシル討滅」を目的とした共同戦線を提案されている。両者の目的や利害が一致するかは不明。


■ミュラー=第零執行部隊生存者説

RAC、FREYA、旧階級制度などへの知識から、ユリスが提示した仮説。

ミュラーは過去にイシス神の執行へ投入された、第零執行部隊の生存者である可能性が高いと推測されている。


■ミュラーの“半基底界人”化

ミュラーの魂には、元来の基底界(インタースペース)人としての情報に加え、この世界の人間としての属性が後天的に付与された形跡がある。魂そのものへ干渉できる存在として、イシス神との関連が疑われている。


■ミュラーの老化

本来老いるはずのない基底界人でありながら、ミュラーは老婆の姿をしている。

“半基底界人”という現在の状態と関係している可能性があるものの、原因は現時点では不明。



――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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