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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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106/123

CASE.104「長老ミュラー」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

「……ッッ」


 声を噛み殺し、戦闘モードへ移行しかけたシスターズを必死に制止するアン。

 心臓がばくばくと鳴る。

 全身へ血が駆け巡るのが分かるほど、その鼓動が耳の奥で響いていた。


「え?」


 作戦室も同様に、ミラたちは凍りついていた。


「い、今この婆さん、“転生監査機関”って……」

「…………ふむ」

「いや、さすがに……。きっと聞き間違いか何かよ――」


「……転生監査機関」


「ほらぁ!! 今言ったでしょ、ねえ?! 今言ったッスよ、カイ姐!!」

「…………」


 ミュラーは、先ほどよりもはっきりとした口調で“転生監査機関”と言い放った。

 それにより、カイの抱いていた「聞き間違い」という一縷の望みは瞬時に砕け散り、彼女は押し黙ってしまう。


「なぜ彼女が転生監査機関を……過去にイシス神と対峙したであろう執行官と何か関係が……いや、それともただの接触者か……うーむ、面白い」

「「面白くない!!」」


 カイとミラから同時にツッコミを受けるユリス。

 彼もまた、この異常事態を受け、再び熟考モードへ入ってしまっていた。


「どういうことッスか?! なんでこの婆さん、アタシらのこと――」

「しっ! ミラ、黙って! 何か言ってるわ……」


 ミュラーが何か続けて口にしている。

 その一言一句を聞き逃すまいと、カイとミラは耳へ全神経を集中させる。

 それはアンも同様だった。


(お、落ち着かなきゃ……まずはお茶を一杯……って、これ毒が入ってるかもなんだった(´;ω;`))


「お主……」

「ひゃ、ひゃい!!」

「お主、何者だ」


 ひどくしわがれた見た目に反し、その声にはしっかりと芯が通っている。

 まじまじと見つめられ、その眼光に圧倒されたアンは、頭をフル回転させ、乏しい語彙の中から次なる言葉を探した。


「え、えええと、流浪の旅人のアンです!! ただの旅人です!!」


(アンちゃん、それはちょっと厳しいッスゥ~~!!)

(あの子には今度、話術を叩き込まなきゃね……)


 アンの素っ頓狂な返答に、ミュラーは一時停止する。

 そして少し考え込んだ末、改めてアンへ尋ねた。


「質問を変えよう……所属を教えてはくれまいか」

「しょ、所属……?! ななななんのことですかぁ?!」

「…………」


「ʅ(´- -`)ʃ」「ʅ(´- -`)ʃ」「ʅ(´- -`)ʃ」


 あまりにも下手な嘘に、シスターズは「やれやれ」と呆れ返っている。

 ミラたちも白目を剥いており、アンのあまりにも下手くそな知らんぷりに、本日二度目の度肝を抜かれていた。


「……ふむ。では、アンとやら」

「は、はい!」

「ちと、こちらへ来てくれるか」

「へ?」


 アンの思考が停止する。


 こちらへ来いとは、どういうことだろうか。

 これは罠か。

 拒否すべきか。

 それとも、潔く言う通りにすべきか。


 そうした疑問が頭の中へ溢れ返り、思考回路はショート寸前となる。


 だが、ドクトリウスはにこにこと「どうぞ、長老の元へ」と促しており、頼りのヘロメロスは腕を組んで不貞腐れ、肝心のゥルルは三杯目のお茶を堪能していた。


(ひい~、助けてミラ先輩~~!!)


 アンは恐る恐る近づいていく。

 念のため、背中のローブの下ではシスターズが自ら戦闘モードへ移行し、誰かが不自然な動きを見せた瞬間、即座に迎撃できる態勢を取った。


「すまないね。この歳にもなると、どうも視界が悪くて……」

「あ、あはは……」


 アンは口角を引きつらせながら、どうにかミュラーの前へ辿り着く。

 誰も止める様子がないことがかえって怪しく、アンの心臓はさらに鼓動を速めていった。


「アンよ」

「はいい!!」

「ちょっと後ろを向いてくれぬか」

「うええ?!(絶対、後ろからプスッとされるやつだ!)」


「(っ `-´ c)」「(っ `-´ c)」「(っ `-´ c)」


 だが、身体は自然と動いてしまう。

 装備だけはいっちょ前でも、心まではまだ十分に執行官となり切れていないアン。

 恐怖とパニック、混乱と不安によって、身体の制御が利かなくなっていた。


 よってシスターズは最大限まで警戒を強め、ミュラーがわずかでも不自然な動きを見せれば、即座にレーザーを放てる形態へ移る。


「…………」

「あ、あのー……これは何ですかぁ??」

「ちょっとお黙り」

「はいい!!」


 ミュラーは何か物や武器を手に取るでもなく、アンのローブ、その中央に刻まれた“RAC”の文字を、まじまじと見つめていた。

 そっと手で触れ、その感触を確かめる。


 それが一分ほど続いた、その直後。

 突如としてミュラーの目から、大粒の涙が溢れ出した。


「長老!」

「長老様ッ!!」


 長老の異変に、待機していた護衛、そして狩猟団『アグレウス』の団員たちが次々と武器を構える。


「武器を収めろッッ!!」


 クストーディスの怒号。

 全員が即座に武器をしまい込み、ついでにアンとゥルル、ヘロメロスの三人がぴょんと跳ねた。


「申し訳ない、アン殿。そして長老様、いかがなされた」

「長老……ミュラー婆……どうかしたのかい?」


「遂に……遂に来た……来てくれた……」


 ドクトリウスがミュラーの背中を擦る。

 それでもミュラーは、震えながら大粒の涙を流し続けていた。


 ミュラーは両手を合わせ、まるでアンを崇めるかのように祈りを捧げている。


 アンはもう、何が何やら分からず困惑するばかり。

 作戦室でも、誰一人として言葉を発せずにいた。


 しばらくして涙が収まると、ぐしゃぐしゃになった顔を職員に丁寧に拭いてもらい、ミュラーはようやく再び口を開いた。


「……いや……すまないね。つい感極まってしまって」

「長老が泣くところなんて初めて見たよ……。で、一体何が?」

「うむ……。アン殿、もうよい。こちらを向いておくれ」


「ふぁ、ふぁい~」


 精神的に摩耗し、すっかり疲弊してしまったアン。

 彼女はゆっくりと身体の向きを反転させ、ミュラーと対面する。


 すると目の前には、先ほどとは打って変わって優しげな目をした老婆が、笑顔でアンを見つめていた。


「……あ、あの――」

「驚かせてすまないね、執(・)行(・)官(・)のお嬢さん」

「くぁwせdrftgyふじこlp!?!?(くぁwせdrftgyふじこlp!?)」


 立場まで言い当てられ、アンは訳の分からぬ奇声を、心と口から同時に放った。

 ミラとカイも面食らっており、ユリスは目を見開いている。


「ちょちょちょちょ、何なんスか、この婆さん?!」

「なんで執行官を知って――……ユリス!」

「ふむ」


 カイは頭脳担当であるユリスに、考察を丸投げする。

 だが、意外にも助け舟を出したのは、後ろで退屈そうにふんぞり返っているヘパーだった。


「馬鹿だな、オメエら。RACと接触したことがあるか、RACの関係者か、そのどっちかだろ。普通に考えてよ」

「馬鹿、そんなこと分かってるわよ!! だから彼女の正体を今、ユリスに――」


「第零執行部隊」


「……は?」


 ユリスが、一言だけ呟いた。

 カイは固まり、モニターを凝視するユリスを見つめるだけで精一杯だった。


「アンタ、何言って……第零はもう全滅したはずじゃ――」

「そうだ……僕はなんて浅はかだったんだ……なぜ、それを最初に考慮しなかった……!」


 ユリスが、ぶつぶつと独り言を呟いている。

 頭の中を整理するように、自分へ言い聞かせるように早口で言葉を零しており、カイの声すら届いていないようだった。


「ミラオペレーター」

「は、はい!」


 急に名を呼ばれ、ミラは勢いよく返事をしてしまう。


「彼女の……個体名“ミュラー”の生体情報を精査してほしい」

「い、今ッスか?!」

「今だ。アン執行官へ、シスターズの協力を要請してほしい」

「わ、分かったッスよぉ~!」


 何が何だか分からないまま、ミラは解析を始める。

 同時に彼女からの要請を受け取ったアンも、訳が分からないまま了承した。


「あ、あの……」

「何かね? もしや執行官ではなく、フィクサーかの?」

「少々お待ちくださいね」


 するとアンの背中からシスターズが浮遊し始め、その頭上で待機する。

 護衛たちは再び武器の柄へ手を掛けるが、クストーディスがそれを制止した。


「これはこれは。何とも奇妙な……!」

「…………これは、もしやVABOの……」

「トリちゃんたち、“探索”集中モード!」


「(╹▽╹)」「(╹▽╹)」「(╹▽╹)」


 三体のシスターズは、その場でくるくると回り始める。

 すると、緑色のレーダーのような光が辺りを照らし始め、やがてミュラーの方へ収束していった。


「アンさん……これは一体?」

「ご、ごめんなさい! ちょっとお時間をください!」

「何をしているかだけ――」

「ドクトリウス、静かに」

「…………了解」


 ミュラーの指示を受け、ドクトリウスは渋々引き下がる。

 それでも、視線はシスターズに釘付けである。

 感謝の意を示すようにアンがぺこりと頭を下げると、ミュラーは笑顔で応えた。


「よーしよしよし! さすがシスターズ。めちゃくちゃ解析が早いッス」

「それは結構。では、彼女の種族分類を教えてほしい」

「種族? 人とかエルフとかッスか?」

「そうだ」


「うーい……(何言ってんだ、この眼鏡)」


 ミラはひとまず、彼の言う通りミュラーの種族情報を解析する。

 シスターズのおかげか、結果はすぐに表示された。


 その瞬間、ミラの表情が強張る。


「えっ……」

「何、ミラ?! 何て出たの?!」

「その……それが……」


 モニターが示したもの。

 それは、あり得ないはずの結果だった。


 ミラは震える声で、ユリスの求めていた答えを恐る恐る口にする。


「この人……“基底界(インタースペース)人”ッスよ……」


【今回の用語まとめ】


■ミュラー婆の正体

《トリリウムシスターズ》による生体解析の結果、ミュラーの種族分類は――基底界(インタースペース)人と判明した。



――――――――――――――――――――――――――――



ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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