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転生監査機関RAC  作者: ぽんにむ
第二章「輪廻庁」2-1「ゥルル編」
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105/123

CASE.103「ギルド」

ご覧いただきありがとうございます。


※本作はカクヨム、noteにも掲載しています。

設定資料をご覧になりたい方はぜひnoteに訪れてみて下さい!!

https://note.com/ponym/m/mc8c9ad24eef6

「こちらです。足元にご用心を」

「……はい」

「わーい」


 言われるがまま、クストーディスの案内についていくアン一行。

 ゥルルはるんるんと上機嫌で、ついでにヘロメロスも、一応保護者役としてついてきていた。


「お前はお呼びでないんだがな、ヘロメロス」

「うっせえ。このまま帰ってもサポの姉御にどやされるんだよ。察しろ、朴念仁」

「フン……つくづく、あの男女(サポーニス)の腰巾着だな……」

「あぁ?!」


 ヘロメロスとクストーディスの間に、ばちばちと火花が散っている。

 だが、そんなことはさておき、アンはすっかり周囲の景色に夢中になっていた。


 街の中央へ近づくにつれ、建物の密度ががらりと変わっていったのだ。

 市場や宿屋、工房がひしめく通りを抜けると、前方には巨大な広場が開け、その中央に骸都クルキブリの中枢がそびえていた。


 狩人連盟本部――別名『ギルド』。


 それは建物であると同時に、巨大な頭蓋骨でもある。


 あまりにも大きいため、遠目には白い岩山か、石造りの城砦のようにも見える。

 だが近づけば、その眼窩、鼻腔、牙列、頬骨、そして頭頂部へ走る骨特有の亀裂の形まで、はっきりと分かるのだ。


 超巨大種の頭蓋を丸ごと土台にし、その上から石材、甲殻板、鉄骨、腱線維を組み合わせ、建造物として補強している――それがギルドなのだ。


「こちらです」

「わぁい、着いた~!」

「こ、ここがギルド……」


 正面入口は、上下の砕かれた牙の間に造られていた。

 無事な巨大な牙が柱のように左右へ並び、その隙間には厚い門扉がはめ込まれている。

 門の上部には狩人連盟の紋章が掲げられ、そこから何本もの旗が垂れ下がっていた。


「あれはね、狩人(スレイヤー)さんたちのチームの旗なんだよ」

「こ、こんなにあるんだ……!」

「それでクストーディスさんのがアレ!」


 ゥルルが指差した旗。

 それは何本も並ぶ旗の列、その中央に掲げられていた。

 漆黒に輝き、黄金の縁取りが施された厳かな旗が、1本だけ風にはためいている。


 他よりもひときわ大きく掲げられており、説明がなくとも彼らがギルド筆頭であることは一目瞭然だった。


「チッ……5年前までは、俺らのがそこにあったのによー」

「フン。いつまでも過去に縋るとは、トライデントも堕ちたものだな」

「チッ」


「……まあいい。狩猟団『アグレウス』団長、クストーディス。今戻った」


 風に揺れる旗の下を、武装した狩人たちや、荷を運ぶ職員らが絶え間なく出入りしていた。

 だが、クストーディスが足を踏み入れた途端、彼らの動きが止まる。


「お疲れ様です!」

「お疲れ様です、クストーディス様!!」

「ああ……ギルド長と長老様はどちらに?」

「会議室にてお待ちになられています」


 クストーディスが先行し、後ろから3人がついていく。

 階段を上ると、やがて1つの大きな部屋へ辿り着いた。


「狩猟団『アグレウス』団長、クストーディス。ただ今戻りました」


「うわぁー、マジで洒落てるッスねぇ」

「巨大な頭蓋骨をそのまま利用しているのか……興味深い」

「アンタたち、見惚れてないで集中しなさい!」


 あまりにも巧妙なギルドの造りに、作戦室の一同まで感心してしまっていた。


 眼窩には大きな窓。

 片方は受付広間へ光を取り込む採光窓となっており、もう片方には見張り台のような構造物が張り出している。


 眼窩の奥で人影が動くたび、巨大な怪物が今もこちらを見下ろしているかのような錯覚を覚える造りになっていた。


 中央には円卓。

 その配置は、特殊第六執行部隊――RACの執行部隊作戦室とどこか似ており、アンは妙な親近感を覚えてしまう。


「よく戻ったな、クスト」

「は。ご客人2名、そして部外者1名をお連れしました」


「ハハハ、ようこそ!!」


 出迎えてくれたのは、ブッダ神を思わせるような褐色の肌を持つ、長身の男性だった。


「ヘロメロスもよく来たな! どうぞどうぞ、座ってくれたまえ!! あ、彼らに最高級のお茶を」

「ヘロメロスには不要かと思いますが」

「まあまあ、良いではないか!」


「オメエ、あとで覚えとけよ……(後で甲冑の隙間にツチクイミミズ入れてやる……ッ)」


 意気揚々と喋る謎の男。

 黒髪は頭皮に沿って細く編み込まれ、そのうち数本だけが肩の前へ垂れている。

 後方へ伸びた耳、鋭い眉、短く整えた髭が特徴的だ。

 眼差しは厳しいものの、声は常に静かで、とても聞き心地が良い。


 黒い狩猟服の上から、白灰色の甲殻を加工した襟高の胸当てを着用しており、前線から退いた今も、腕には傷だらけの革製籠手を装着していた。


「君がアンさんだね?」

「は、はい!!」

「ハハハ、元気の良い返事だ!」


 急に話しかけられ、アンはびくっと肩を震わせる。


 それにしても、辺りを見れば見るほど作戦室に酷似した造りだ。

 まるで、そのままこの世界の様式に改築したかのような。


 当然、それを見ていたミラとユリスも気付いた。


「ほう、やはり作戦室は、どこも中央に円卓を置くものなのか……興味深い」

「効率を重視すると、どこもこんな感じになるんスかね~」


 そう感心するほど、あまりにもこの世界――『α-980-ノード89』はよくできている。

 その景観は見る者を魅了し、人々の文化もまた、これまで訪れた異世界のような継ぎ接ぎには見えない。


 衣食住も、狩猟も、建築も。

 長い年月の中で互いに影響し合い、転生者とは関係なく、確かな生活として根付いているのだ。


 さすがは“α”級の異世界、そして主神と言うべきか。

 イシスが創った世界は、今までのどれよりも“面白い”。


 それが、作戦室の一同が抱いた純粋な評価だった。


「ああ、そうだ。自己紹介を忘れていたよ。私は『ドクトリウス』。このギルドの長さ。適当に“ドク”でいいよ」

「は、はい! ありがとうございます……」

「ホレ見ろ。ドクの旦那の方がしっくりくるぜ」

「お前が言うと馴れ馴れしいのだ。恥を知れ」


 職員が、湯気を立てたお茶をアンたちの前へ用意する。

 ドクトリウスが「どうぞ」と身振りで促すので、アンはせっかくだからと茶器を手に取った。


 だが、飲みはしない。


 アンは茶へ唇をつけ、舌先で味だけを確かめる。

 喉へは通さず、飲んだように小さく息を吐いてから、そっと茶器を戻した。


「お口に合うかな?」

「お、おいしいです!」

「そうかそうか。安心したよ」


 執行官の掟の1つに、異世界人から振る舞われたものへ不用意に手を付けない、という規則がある。

 昨晩はサポーニスの晩餐へがっついたものの、それはサポーニスが純粋な善意で提供していることを、アンが恩寵(ギフト)経由で知っていたからだ。

 それでも無警戒にも程があるのだが。


 しかしながら、今は状況が違う。


 この場を包む、クストーディスを筆頭とした“野心”めいた熱。

 アンの異能は、その妙な感情が室内の複数人から滲んでいることを拾っていた。


 それだけでも、警戒するには十分だった。


 ゥルルはがぶ飲みしているが、ヘロメロスもまた、同じように茶へ手を付けずにいる。

 あのがめついヘロメロスが、無償で提供されたものへ手を出していないというのも、アンの疑念を裏付ける一因だった。


「ほら、長老。お目当ての子が来ましたよ」

「………………」


 にこりと笑うドクトリウス。

 彼が声を向けた先には、背中を丸め、縮こまるように座る1人の老婆がいた。


「………………」


 黙り込んだまま、ずっとアンを見つめている。


 見た目は小柄で、背中が大きく曲がった老婆。

 綿毛のように膨らんだ白髪を、大きな三角笠の下へ押し込んでいる。

 長い耳は垂れ気味で、その先には古い裂傷が残る。


 丸い眼鏡の奥にある瞳は小さく、一見すると穏やか。


 しかし、その瞳孔はしっかりとアンを捉えていた。


「ハハハ、長老。そんなに見つめては、アンさんが怖がりますよ」

「………………」

「ご紹介しよう。この方が長老『ミュラー婆』。このクルキブリを創った、創設者の1人だよ」

「創……設者」


 思いもよらぬ重要人物と出くわし、アンは唾を飲み込む。


 丁寧に整えられた髪に、艶やかな一品物の杖。

 そして何より、クルキブリのトップであるギルド長ドクトリウスですら、最大の敬意をもって接している。


 おそらく、この老婆こそがクルキブリの中枢に最も近い人物。

 否、中枢そのもの。

 街の歴史を知り尽くす、生きた象徴なのだろう。


 故に、ここだけは失敗が許されない。

 ここからの展開次第で、任務の行方は大きく変わるのだ。


 アン、そして作戦室の一同が、ごくりと息を呑み、長老ミュラーの動きを注意深く観察していた。


 だが次にミュラーが発した一言が、彼女らの心臓を鷲掴みにすることになるとは、誰も予想だにしなかった。


「転生……監査機関…………」

【今回の用語まとめ】


■狩人連盟本部『ギルド』

骸都クルキブリの中枢施設。超巨大種の頭蓋骨そのものを土台とし、石材・甲殻板・鉄骨・腱線維などで補強して建造されている。多数の狩人(スレイヤー)や狩猟団が集う街の中心地。


■狩猟団『アグレウス』

クストーディスが団長を務める狩猟団。現在のクルキブリでは筆頭格に位置し、その旗はギルド正面の中央に大きく掲げられている。


■ドクトリウス

クルキブリのギルド長。褐色肌の長身男性で、通称「ドク」。現在は前線から退いているものの、今なお狩人の装備を身につけている。


■長老『ミュラー婆』

クルキブリ創設者の一人。ギルド長ドクトリウスからも最大級の敬意を払われる老婆で、街の歴史そのものを知る重要人物。


■「転生監査機関」

ミュラー婆がアンを見て発した言葉。

何故彼女が知っているのか、今はまだ不明。



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ここまでお読みいただきありがとうございます('ω')ノ



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※AIの利用について:

・本作ではChatGPTとclaudeを、誤字脱字の確認、前話との整合性確認、アイデア整理、世界観管理の補助として一部使用しています。

・作品本文および物語の主要構成は、すべて作者自身が執筆・最終決定しています。

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