5-15:魔獣は何処から来るのか?
突如として目の前に現れた魔獣。
それは、まるで何も無いところから突然湧き出てきた感じだった。
「私、魔獣が生まれるところ初めて見たかも」
生まれる?
確かにそんな感じに見えなくもないが、何となく生まれるとはまた違う感じもする。
だが、魔獣が死ぬ時は素粒子になって消える感じだから、あんな感じで生まれるのだとしても不思議ではない。
しかし、今はそれよりもだ。
「エリン。とりあえず、こいつを倒さないと」
出現した魔獣は狼の形をした黒い獣。
大きさは普通の狼の比ではなく牛くらいには大きい。
今のところ言葉を喋る気配はないので、獣の厄災が操る魔獣であるかどうかまでは不明だ。
「それじゃあ、私が倒すからクロエは見てて」
そう言って、エリンは速度上昇の白魔法を自分に使いながら魔獣に向かって飛び出していく。
僕は生き返ったばかりのエリンがまた死なないか心配しながらその戦いを見守りつつ、他に魔獣が出現しないかどうかに注意する。
それに、この魔獣が獣の厄災とは関係無かったとしても、何らかの気配を察知して別の何かが新手としてやってきても面倒だ。
エリンが前に出て戦うというのならば、エリンが戦いに集中できるように僕が周囲に気を配るべきだろう。
「クロエ、気を付けて! こいつ、狼の姿だけあってすばしっこい」
目の前の魔獣は素早く動きながらエリンの戦っている。
しかし、白魔法の力で素早くなったエリンもその速さには負けていない。
エリンは魔獣の素早い猛攻をすべて避けつつ、その体に槍の突き攻撃を繰り返し行う。
やがて、弱ってきた魔獣が形勢不利と判断したのか僕がいる方向に向かって逃げてきたので、黒魔法で対処しようとするが、
「逃がすかあーー!!」
エリンが魔獣に追い打ちをかけ、それが止めとなったのか魔獣は素粒子と化して消滅してしまった。
「やったーー! 倒したーーッ!!」
魔獣を倒したエリンは喜んでいるが、結局今の戦いで獣の厄災が出てくる事はなかった。
あの魔獣を野放しにするわけにはいかないので倒せた事はよかったが結局進展は無し、か。
せめて手がかりの一つでもあればいいのだが。
そう思いながら辺りを見回すが、開けた場所という以外には特に何もなさそうだな。
──ん?
違う、手がかりは無いが一つ特徴があるぞ、ここ。
何か、道のような感じで木が生えていない踏み荒らされた地面が伸びている。
「エリン、この地面が伸びているところを先に進もう」
「えっ、何で?」
「この辺りの地面が踏み荒らされている原因。さっきみたいな感じで魔獣が現れたせいだとすれば、それが伸びているって事は何かあるかもしれない」
「そっか。魔獣が通った道かもしれないもんね」
獣道ならぬ魔獣道の可能性が高い。
僕とエリンは、その魔獣道を辿って先に何があるのかを調べる事にした。
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