5-16:森の中の拠点
魔獣が通っていると思われれる道。
そこは、数多の魔獣に踏み荒らされた土壌であり、それが道のように変化していった感じである。
僕とエリンがその道を進んでいくと、荷台の残骸が放置されているのが見えてきた。
「クロエ、あれって馬車の荷台だよね? もしかして魔獣に荷台を引かせていたのかな?」
「そんな訳あるか!」
思わずエリンにツッコミを入れてしまったが、幾ら獣の厄災が魔獣を操るとはいえ荷台は流石に無いと思う。
それに、あの荷台は見た感じ馬に引かせる馬車用のものだし。
馬車、か。
そういえば、以前商人が荷物を魔獣に襲われた話をしていたなあ。
だとすると、
「エリン、あれはきっと魔獣が商人の荷馬車から盗んだものだと思う」
「盗んだって、魔獣が?」
「獣の厄災、奴が魔獣を操るのだとすれば魔獣を使って商人から荷馬車の荷台ごと積み荷を強奪していてもおかしくはない」
おそらく、あの荷台の残骸は獣の厄災が捨てたもの。
「エリン、きっとこの先に獣の厄災がいる」
僕とエリンは恐る恐るゆっくりと先に進む。すると、少し進んだところに山肌があり、洞窟が複数あるのが見えてきた。
そして、その洞窟群の中に石で補強された洞窟の家があり、周辺には荷馬車用の荷台が複数設置してある。
「当たり、なのかな?」
「多分、な」
例え獣の厄災でなくとも、こんな周りに何もない山岳地帯の森の中に住んでいるだけで怪しい。
それに、強奪したと思われる数々の荷台。
危険かもしれないが、近づいて誰かいるかを確かめる必要はあるな。
これで、ただの山賊だというオチならば振り出しに戻る事となるが、この辺りで山賊が出ているという話は聞いていない。
「クロエ、どうする? 透明化の白魔法を使って中に侵入してみよっか?」
「それは名案だな。是非頼む」
「そんなに効果時間長くないから、あんまり長居はできないけどね」
とりあえず、不在かどうかを軽く確認できればいい。
目当てはあくまで獣の厄災。
奴の正体だけでも分かれば御の字だ。
「それじゃあ使うよ。あっ、そうだ忘れてた。使うと私の姿も見えなくなるから気を付けて!」
「ああ、そっか。なら、お互い別々に一通り見回ったらこの場所に戻る作戦でいいか?」
「了解。そういう事なら私は右の方から、クロエは左の方からって事で」
エリンに透明化の白魔法を使ってもらい、僕とエリンは互いの姿が見えなくなる。
確か僕は左の方からだったな。
僕は罠が無いか念のため確かめながら洞窟の住居に近づく。
だが、その時不意に鳴き声のようなものが聞こえた。
何事かと思って警戒したところ、間もなくクマぐらいの大きさの猫が飛び出して──いや違う、これは猫型の魔獣だ。
感づかれたか?
いや、こちらの姿は見えないから大丈夫なはず。
いやいや、待て。そもそもこの透明化の魔法は魔獣には効果があるのか?
例え魔獣から視認されなくても獣の姿をしているだけあって臭いでバレるかもしれない。
嫌な予感が過ったその時、猫型の魔獣は言葉を喋り出した。
「ソコ ニ 誰カ イル ナ!」
バレてる!?
しかも、この魔獣喋ったという事は獣の厄災関連。
獣の厄災本人が近くにいるかは分からないが、手がかりにはなるかもしれない。
本当にバレているかは分からないが、こいつと話して何か獣の厄災本人の情報を聞き出せれば。
そう考えていた矢先、洞窟の住居から誰かが出てくる。
魔獣ではない。
姿は人間、長身で長い黒髪を束ねてポニーテールにしており、薄着で体のラインが出ている事から女性だと分かる。
そして、その女性が手に持っていた杖を使って魔法の光を辺り一面に放った後、口を開いてこう言った。
「二人、か」
嫌な予感がして右方向を見ると、魔法で姿を消していたはずのエリンが見える。
今さっきの魔法の光のせいか?
「クロエ、気を付けて! あれ、解除の白魔法だよ!!」
エリンが大声で叫びなが、慌てて僕の方に寄ってくる。
白魔法という事は出てきた奴はやはり人間の女、なのか?
「お前たち、ここに何をしに来た? 怪しい奴等め、何故姿を消していた!?」
怪しいのはお互い様だ。
「ん? 貴様確か見覚えが──間違いない! 貴様、私が操る魔獣を倒した黒魔道士だな!」
何故僕の事を! しかも黒魔道士だと知っている!?
いや、それよりも、魔獣を操るという発言。
こいつが、この女性が獣の厄災なのか!?
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