地面に謝る男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
** それではぁあ?(川口です。アシスタントという名の修行僧です)**
(余計な事言うなよ)
** 次のカワシュミはコイツ!」
男が現れる。
歩き方が
妙に慎重。
足元を
ずっと見ている。
「千山 フン太郎
** 35歳。」
黒岩、
すでに不安そう。
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
男、
何も言わず
突然——
しゃがみ込む。
床に手をつき
震える声。
「さみませんっ!!
** 踏んじゃった!」
スタジオ、
静まり返る。
「いたい?
** うぉん…」
黒岩、
固まる。
「……」
一拍。
ゆっくりカメラを見る。
「ちょっと何言ってるかわからないw」
スタジオ、
ざわつく。
黒岩、
困惑したまま言う。
「いや」
「踏んでも大丈夫よ?」
「地面だし」
一瞬。
空気が変わる。
男、
ゆっくり立ち上がる。
目が——
怒っている。
「……」
一歩近づく。
「地面の気持ち
** わかたけかな!この!」
スタジオ、
ざわつく。
黒岩、
完全に引く。
「いや」
「分からないよ?」
男、
震えながら叫ぶ。
「毎日踏まれて!
** 何も言えず!
** 耐えてるんですよ!!**」
黒岩、
言葉を失う。
一拍。
男、
カメラを指差す。
「あなたも!」
「踏んでる!」
「今も!」
そして——
突然
怒りのまま
スタジオの出口へ向かう。
黒岩、
呆然。
「……」
ドアの前で
男、
最後に床へ向かって
深く頭を下げる。
「ごめんなさいっ!!」
そのまま——
怒って出ていく。
ドアが閉まる。
沈黙。
……
……
黒岩、
ゆっくりカメラを見る。
「……」
「川口」
「はい」
一拍。
「おつまみちょうだいw」
スタジオ、
ざわつく。
初めての要求。
川口、
少し申し訳なさそうに言う。
「今日はありませんw」
沈黙。
……
……
黒岩、
完全に力が抜ける。
椅子にもたれる。
そして——
「……かはぁーーっ……」
空腹100%。
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
床に
「本日は踏み放題」
と書かれた紙が貼られている。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
少し元気がない。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「割り箸で船を作る男」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」




