壁に体当たりする男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
** それではぁあ?(川口でーーす!へへっw**
シュッ!! ボフッ
** 次のカワシュミはコイツ!」
男が現れる。
腕に包帯。
足にも包帯。
首にもコルセット。
そして——
顔は爽やか。
「ユルガリヤ 又助と申します。
** 41歳。」
黒岩、
名札と身体を見比べる。
「……」
「もう聞く前に」
「だいたい分かるけど」
「その身体」
「どうしたの?」
男、
爽やかに答える。
「ぶつかりました!」
沈黙。
……
……
黒岩、
カメラを見る。
「ちょっと何言ってるかわからないw」
スタジオ、
ざわつく。
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
男、
胸を張る。
「はい!」
一拍。
「壁という壁に
** 全力でぶつかりに行きます!**」
黒岩、
ゆっくり目を閉じる。
「……」
「ちょっと待って」
「実演しないでね?」
男、
すでに後ろに下がっている。
助走。
深呼吸。
次の瞬間——
「うぉおおおお!!」
全力疾走。
そして——
ドンッ!!!
壁に激突。
そのまま
床に崩れ落ちる。
「うぐぅ……いたい……」
スタジオ、
静まり返る。
黒岩、
完全に引いている。
「……」
「いや」
「痛いよね?」
男、
床から親指を立てる。
「はい」
黒岩、
困惑。
「なんでやるの?」
男、
満面の笑み。
「わっかんないす!」
爽やか。
スタジオ、
一瞬沈黙。
……
……
黒岩、
ゆっくりカメラを見る。
……
……
「……かはぁーーっ……」
完全脱力。
「ちなみに」
「骨折は?」
男、
指を折って数える。
「腕2回」
「肋骨3回」
「鼻1回」
一拍。
「合計6回です!」
黒岩、
天を仰ぐ。
「もうやめなよ」
男、
首を横に振る。
「いや」
一拍。
「まだ当たってない壁があるので。」
沈黙。
……
……
黒岩、
完全に力が抜ける。
「川口」
「はい」
「つまみ出せ」
「どうぞ!!」
川口が、
塩辛
を差し出す。
強烈な香り。
黒岩、
それを見る。
一拍。
「……」
「しょっぱいな」
「つまみだせと……」
「飲兵衛かw」
「酒が欲しくなるだろこれ!!!」
その時——
男、
ゆっくり立ち上がる。
ふらつきながら
再び
壁の方を見る。
助走の姿勢。
黒岩、
慌てて叫ぶ。
「やめろ!!!」
しかし——
「うぉおおおお!!」
再び突進。
ドンッ!!!
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口が壁に張り付いている
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
完全に疲れた顔。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「突然しゃがんで地面に謝る男」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」




