くしゃみに拍手する男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
** それではぁあ?(川口ですっ 早口で言ってガッツポーズ**
** …ちっ! 次のカワシュミはコイツ!」
男が現れる。
やや緊張気味。
ハンカチを握りしめている。
「祝福 拍人と申します。
** 39歳。」
黒岩、
すでに怪訝な顔。
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
男、
胸を張って言う。
「くしゃみに拍手します。」
沈黙。
……
……
黒岩、
ゆっくりカメラを見る。
「ちょっと何言ってるかわかんないw」
スタジオ、
ざわつく。
男、
真面目な顔。
「いや、くしゃみって」
「出た瞬間」
「達成感があるじゃないですか」
黒岩、
腕を組む。
「ないよ」
男、
うなずく。
「では」
一拍。
「実演します」
ハンカチを構える。
鼻がむずむずしている。
スタッフも
少し身構える。
そして——
「……」
深呼吸。
顔が歪む。
次の瞬間。
「へくしょん!!!」
一拍。
間。
そして——
「よいしょ!!」
パチパチパチパチパチ!!
勢いよく拍手。
満面の笑み。
スタジオ、
一瞬静まる。
……
……
そして——
爆笑。
黒岩、
耐えきれない。
「……」
「……」
手が
勝手に動く。
「……」
一拍。
「よいしょ!!」
パチパチパチパチ!!
黒岩も拍手。
スタジオ全体が
つられて拍手。
大喝采。
スタッフも
拍手。
照明も
少し明るくなる。
男、
嬉しそうに言う。
「ありがとうございます」
黒岩、
まだ笑っている。
カメラを見る。
……
……
「……かはぁーーっ……」
今回は
完全に楽しそう。
「川口」
「はい」
「つまみ出せ」
「どうぞ!!」
川口が、
ドライサラミ
を差し出す。
黒岩、
それを見る。
一拍。
「……」
「乾いてんな」
「つまみだせと……」
「肉は好きだが今じゃない!!!」
その瞬間——
黒岩の鼻が
むずむずする。
スタジオ、
静まり返る。
そして——
「へくしょん!!!」
一拍。
間。
全員が
黒岩を見る。
黒岩、
ゆっくり手を上げる。
「……」
「……」
「よいしょ!!」
パチパチパチパチ!!
スタジオ、
総立ち拍手。
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口が
くしゃみを連発している。
そのたびに——
スタッフ全員が
拍手している。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
まだ少し笑っている。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「日傘をさして影をつくり、我こそは暗黒の魔王だ!という男」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」




