喋る時に喉をチョップする男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
** それではぁあ?(かわぐちぇd**
バキッ!!ボッ!!
** 次のカワシュミはコイツ!」
男が現れる。
姿勢は普通。
服装も普通。
だが——
右手が
常に首元にある。
「打声 ゴロ助と申します。
** 48歳。」
黒岩、
違和感に気づく。
「……」
「さっきから」
「何してんの?」
男、
普通に答えようとする。
——パシッ。
自分の喉に
軽くチョップ。(トントントン…
「ワタシハ
** フツウニ**
** ハナシテ**
** イルダケ**
** デス**」
スタジオ、
一瞬静まる。
そして——
爆笑。
ドッと笑いが起きる。
黒岩、
顔をしかめる。
「いやいやいや」
「何それ?」
「普通に喋って」
男、
うなずく。
——パシッ。(トントントントン
「コレガ
** フツウ**
** ナンデス**」
——パシッ。(トントントントン
「チイサイ
** コロカラ**
** ヤッテ**
** マス**」
会場、
さらに爆笑。
スタッフが
肩を震わせている。
黒岩、
もう耐えられない。
口を押さえる。
「……」
一拍。
「ちょっと」
「自己紹介」
「もう一回」
男、
真剣な顔。
胸を張る。
——パシッ。
「ワタシハ
** ダセイ**
** ゴロスケ**」
——パシッ。
「シュミハ
** ハナス**
** コトデス**」
——パシッ。
黒岩、
ついに——
吹き出す。
「……」
「……」
呼吸が乱れる。
肩が震える。
そして——
「……ぶっw かはぁーーっ……」
しかし今回は
呼吸困難気味。
「……ちょっと待って……」
「苦しい……」
黒岩、
机に手をつく。
笑いが止まらない。
その横で——
川口。
鼻を押さえている。
「……」
赤い。
鼻血。
スタッフ騒然。
「川口!」
「大丈夫か!」
川口、
小さくうなずく。
「ひゃぶっ…」
一拍。
「面白すぎて……」
黒岩、
まだ息が整わない。
「……」
「川口」
「はい」
「つまみ出せ」
川口、
鼻にティッシュを詰めたまま。
「どうぞ!!」
差し出されたのは——
牛フワ(モツ)煮込み。
湯気が立っている。
黒岩、
それを見る。
一拍。
「……」
「うまそうだな」
「つまみだせと……」
「モツは好きだが今じゃない!!!」
男、
最後に一言。
——パシッ。(トントントントン
「アリガトウ
** ゴザイマシタ**」
——パシッ。
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口の鼻に、
まだティッシュ。
黒岩、
少し疲れた顔。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「凝ったイタズラ電話をする女」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」
もうwww何これねぇっっw




