ドアノブを2回回す男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
それではぁあ?
次のカワシュミはコイツ!」
男が現れる。
スーツ姿。
無表情。
手袋をしている。
「回転門 正義と申します。
41歳。」
黒岩、
眉をひそめる。
「なんかもう名前が面倒くせぇな」
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
男、
静かにうなずく。
「ドアノブを二度回してから入ることです。」
「……」
「一回じゃダメなの?」
「ダメです」
「なぜ?」
一拍。
男、
ゆっくり言う。
「一回目は確認。」
静寂。
「二回目は覚悟。」
スタジオ、
沈黙。
黒岩、
顔をしかめる。
「……」
「いや」
「何と戦ってんの?」
スタッフが
ドアを用意する。
男、
前に立つ。
ゆっくり手をかける。
——カチャ。
一回。
止まる。
深呼吸。
——カチャ。
二回。
静かに言う。
「よし。」
そして
ドアを開ける。
黒岩、
腕を組む。
「もし急いでたら?」
「二度回します」
「火事でも?」
「二度回します」
「漏らしそうでも?」
「二度回します」
黒岩、
顔を覆う。
「……」
一拍。
カメラを見る。
……
……
「……かはぁーーっ……」
今回は
呆れ100%。
「川口」
「はい」
「つまみ出せ」
「どうぞ!!」
川口が、
揚げ出し豆腐(再登場)
を差し出す。
黒岩、
それを見る。
一拍。
「……」
「また豆腐か」
「つまみだせと……」
「好きだけど今じゃない!!!」
男、
スタジオの出口へ向かう。
ドアの前に立つ。
静かに手をかける。
——カチャ。
一回。
止まる。
——カチャ。
二回。
「覚悟。」
そして
ゆっくり出ていく。
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口が
ドアノブを
四回回している。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
少し疲れた顔。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「自動ドアに会釈する男」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」




