ペットボトルに乗りたがる男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
** それではぁあ?
** 次のカワシュミはコイツ!」
男が現れる。
手には——
カルピスウォーター。
すでに飲み干してある。
「立脚 登志男と申します。」
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
「はい」
男は真顔で答える。
「ペットボトルの上に乗ることです。」
「……」
黒岩、
少し前のめりになる。
「何のために?」
「乗るために」
「……」
「飲むんです」
「……」
「そして」
一拍。
「乗ります。」
スタジオ中央。
空のペットボトルが置かれる。
男、
深呼吸。
「よし……」
小さくつぶやく。
「飲んだら乗るな!
** 飲むなら乗れよ!**」
片足を上げる。
ぐらつく。
もう片方の足。
乗ろうとする。
——
ぐしゃ。
潰れる。
男、
バランスを崩す。
「……」
一拍。
次の瞬間。
「シャケこの野郎!!」
空のペットボトルを
思い切り蹴飛ばす。
コロコロ転がる。
スタジオ、沈黙。
黒岩、
口元がわずかに緩む。
「もう一回やります」
男は真剣。
「なぜカルピスウォーターなんですか?」
「透明だからです」
「……」
「中身がなくなったことが
よくわかる」
一拍。
「誠実なんです。」
黒岩、
小さくうなずく。
「いいねぇ」
珍しく
肯定的。
男、
再挑戦。
「飲んだら乗るな!」
「飲むなら乗れよ!」
乗ろうとする。
——
また潰れる。
「……」
一拍。
「シャケこの野郎!!」
再び蹴飛ばす。
黒岩、
ついにカメラを見る。
……
……
「……かはぁーーっ……」
しかし今回は——
少し笑っている。
「川口」
「はい」
「つまみ出せ」
「どうぞ!!」
川口が、
揚げ出し豆腐
を差し出す。
湯気が立っている。
出汁の香り。
黒岩、
それを見て言う。
「……」
一拍。
「うまそうだな。」
「つまみだせと……」
「豆腐は好きだが今じゃない!!!」
男、
三度目の挑戦。
真剣な顔。
ゆっくり足を乗せる。
——
また潰れる。
静寂。
そして——
「シャケこの野郎!!」
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口の足元に、焼きシャケが転がる
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
少し満足そう。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「エスカレーターに乗りながらスキーで滑る動きをする男」
「おおおお!どう言うことこれw!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」
何これwwwねえっっw




