郵便ポストに謝る女
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
** それではぁあ?(川口でぇす!僕の趣味は股間にあ**
ボフッ!!
** 次のカワシュミはコイツ!」
女性が現れる。
スーツ姿。
少し緊張している。
だが笑顔は明るい。
「こうがみ明美 23歳 OLです!」
黒岩、
腕を組む。
「OLって何してんの?」
一瞬。
スタジオが
微妙な空気になる。
「えっ?」
「いや、
OLって何してんの?謎じゃね?必要ある?」
「具体的におせーてw」
ブラ紐を直すような仕草でじわじわ詰め寄る。
「え、えっと……
書類とか……」
「書類とか?」
「電話とか……」
「電話とか?」
さらに一歩近づく。
「それ仕事って言うの?む の う?w」
スタジオ、
ざわつく。
「ちょっと待ってくださいよぉ!」
明美、
少し笑いながら抗議。
「ちゃんと働いてますって!」
黒岩、
小さく鼻で笑う。
「……そっかぁ、んで?」
「趣味は?」
「はい!」
明美、
元気よく答える。
「郵便ポストに謝って回るんです!
** ごめんなさいっ!て。」
沈黙。
……
……
「……はぁあ??」
黒岩、
素の声。
「なんかしたの??」
「いえ!
なにもっw」
「……はぁ、んで?」
明美、
少し照れながら言う。
「あの子…赤いじゃないですかぁ」
「だから」
一拍。
「謝らないとなぁって
** なっちゃうんですっw」
黒岩、
ゆっくりうなずく。
「ええ」
「それね、かなり変ですよ。」
「真面目にそれやってるん?」
「なんか、
えへへw」
「なっちゃってというかw」
「変ですよねw」
黒岩、
真顔。
一拍。
「病院いったらいいんじゃね?」
一瞬。
空気が止まる。
「ひどい!!」
明美、
大げさに身を引く。
「どいひー!!
** モーニングピーヤンですか!!」
スタジオ、
ざわつく。
黒岩、
カメラを見る。
……
……
「……かはぁーーっ……」
深く、
長い吐息。
「川口」
「はい」
「つまみだせ!!
** このシャワランめ!!
** エキセドリンか!」
「どうぞ!!」
川口が、
シメサバ
を差し出す。
つやつやしている。
黒岩、
それを見る。
一拍。
「……」
「締まってんなぁ」
「つまみだせと……」
「魚は好きだが今じゃない!!!」
明美、
スタジオの隅に置かれた
赤い消火器に向かって——
ぺこり。
「ごめんなさいっ!」
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口が消火器で噴かれた後みたいに真っ白に
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
静かに言う。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「ペットボトルの上に乗りたがる男」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」




