駅の改札で必ず敬礼をする男
世の中には、理解できない趣味を持つ人々が存在する。
理解されたいのか。
はたまた、理解されたくないのか。
それとも、ただ見てほしいだけなのか。
ここは——
変わった趣味を持つ者たちが集う場所。
『カワシュミの館』
「司会は私、館主の——」
「黒岩です!」
「そしてアシスタントの——」
「はい!!
** それではぁあ?(川口ともうしまs**
…ボキッ!!
** 次のカワシュミはコイツ!」
男が現れる。
背筋が異様に伸びている。
歩幅が一定。
目が真面目すぎる。
「海府 希雄 27歳。
** アルバイトです。
** ご苦労様です。」
すでに面倒くさい。
「んでわぁ?
あなたのー?
変わった趣味、ワッツ!?」
男、
姿勢を正す。
一拍。
右手が上がる。
そして——
「そーんじょそこらのっ!!」
ビシッ。
敬礼。
スタジオ、ざわつく。
「……はぁ??」
黒岩、
素の声。
海府「改札を通るたびに
敬礼するのが趣味です。
ご苦労様です。」
「誰に?」
「改札にです。
ご苦労様です。」
「……」
「毎回?」
「毎回です。
ご苦労様です。」
「混んでても?」
「混んでてもです。
ご苦労様です。」
「急いでても?」
「急いでてもです。
ご苦労様です。」
黒岩、
もう疲れている。
「理由は?ご苦労さんwぶっwww」
男、
胸を張る。
「そんじょそこらの機械じゃないからです。
** ご苦労様です。」
沈黙。
……
……
黒岩、
ゆっくりカメラを見る。
……
……
「……かはぁーーっ……」
かなり深い。
「川口」
「はい」
「つまみ出せ」
「どうぞ!!」
川口が、
縮まないニラチヂミ
を差し出す。
まだ熱い。
湯気が出ている。
黒岩、
それを見て言う。
「……」
一拍。
「本当に縮まないな。」
「つまみだせと……」
「うまそうだが今じゃない!!!」
海府 希雄
静かに出口へ向かう。
扉の前で立ち止まる。
一拍。
振り返る。
姿勢を正す。
そして——
「そーんじょそこらのっ!!」
ビシッ。
敬礼。
扉に向かって。
「ご苦労様です。」
——ここでCMが入る。
*
CM明け。
川口の口に靴がねじ込まれている。
「えぇ、いかがだったでしょうか?」
黒岩、
かなり疲れた顔。
カンペを見る。
「次回は——」
一拍。
「郵便ポストに毎回謝る女」
「おおおお!!」
「楽しみですなーー!!」
「また来週!!」




