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ずっとあなたがすきでした―②―

せめて、この恋を失くさないように。


願うのはそれだけ。



もし、次があるのなら、この恋を幼い時の恋だったのよと笑って話せる時が来ると願って。



そして、貴方の側に立つ。




* * * * * * * * * * * *


「誓います。」



静寂に包まれた教会で、お兄ちゃんが誓いの言葉を復唱する。

あれだけ無神論者だった人が、当の神に向かって結婚の誓いを述べているなんて…とどこか面白さを感じている自分が何だかおかしい。



『日本人はさ、なんで仏教徒が多いくせに教会で式挙げるわけ?キリスト教徒じゃあるまいし、神に誓ってどうすんのっていつも思ってる。だからあんまり結婚式って好きじゃないんだよね。』



と、結婚式のお知らせが届くたびに漏らしていたのに、桜さんのウエディングドレスを自らデザインして

それを着た妻となる人を皆に見せびらかしたくて、今までの信念をころっと変えた。

人間変われば変わるもんだと、内心皮肉気に考える。


ふっと懐かしい想い出に口許を綻ばせると、なんだか視線を感じた。

なんだろうと不思議に思ったものの、式中なので大仰に視線の元を辿る事が出来ないので控えめに首を動かしてみる。


新郎の親族席は最前列で、どうやら視線は後ろから感じる。と言う事は、お兄ちゃんの友人関係なんだろうなー。でも誰?

私が知ってるお兄ちゃんのお友達って言ってもそう多く無いし、その中でも高橋さんは新郎付き添い(ベストマン)だし…。んー…誰だろう?


結局それを深く追求する間もなく、式は粛々と進んで行った。





「おめでとー!!」


「このやろー!幸せそうに笑うなーー!」


「桜ー、綺麗だよ!おめでとう!!」


「くそー、なんでお前が先に結婚してやがるんだ!イケメンのくせに!!」



規定量より若干大目のライスシャワーを存分に浴びた本日の主役は、痛い痛いと苦笑しつつ、友人達の手荒い歓迎を笑顔で受けていた。

それを離れた場所でパパと二人で笑いながら見ていた私は、ちょっと顔を冷やしてくるねと言ってその場を離れた。何か言いたそうに心配気に私を見ていたパパだったけれど、仕事で付き合いのある人に声をかけたので仕方なく「あまり遠くに行くなよ」と言ってくれたので、私は祝福の声の輪から一人外れる事に成功した。



会場は有名ホテルに最近出来たチャペルで、この後軽いパーティがあるのでこのままホテルに上がればいだけだ。

ホテルの広いガーデンをほてほてと一人で歩いていると、思うのはやはり暗い事でしかない。



わかっていた事だけれど、いざ誓いのキスの場面。

あれは本当に辛かった。


もう完全に、私の入る隙は無いのだと思い知らされたような気がして。



いや、違う。

私はちゃんとお兄ちゃんの中に入っている。妹として。だけど。


なんだかなぁ…と自嘲の笑みが零れる。

と言うか、もう笑うしかないって感じだ。


お兄ちゃんが結婚すると家族に言った時、遂に来たかと言う嫉妬する気持ちと共に、安堵の気持ちも湧きあがったのは本当に本心から。

私の思いは成就しない。そう確信を持っていたからこそ、そこに立つ桜さんへの嫉妬と共に嬉しいと言う、相反する気持ちがあったのだと思う。

確かにその夜から一人で泣いた。本当に悲しいときは声が出ないものなんだなと、どこか第三者的な感想も持ちつつ、枕を濡らした。朝起きて、腫れた目元を見られ無かったのはひとえに一人暮らしをしていたからだと思う。そうでなかったら、確実にシスコンの二人が何があったんだと騒ぐに決まっているから。


なんとなくパパは気付いていたのではないかなと思う。だからこそ、何も言わずに側にいてくれたのだと思うから。私を送り出す時に見せていた、あの心配そうな顔もそうと考えれば合点がいく。



よく晴れた空を見上げて、はぁー…と深いため息を付いた。もう涙は出ないものの、やはり辛いものは辛い。


この辛かった恋が将来、私の糧になる日は来るんだろうか。


恋をするのは今はもう、いいやって思う。

若干十七にして枯れてるなぁと思うけど、しばらくは感傷に浸るとするに限る。




青空を見てぼんやりしていると、ふわりと煙が漂ってきた。

タバコの匂い…?ここって禁煙じゃなかったっけ?あれ、でも屋外だから…いいのかな?

家では誰もタバコを吸わないので私にとっては馴染みのない香りだったけれど、妙にそのタバコの煙が気になって、ついつい煙を辿ってみることにした。

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