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シャベル×しゃべる ~うるさすぎる最強相棒と異世界開拓記~  作者: バックドロップ


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第一話 ようこそ?異世界へ



 体が宙に投げ出されるような浮遊感。


「きゃああああああっ!」


「おおおおお! 異世界やぁぁぁ!!」


「うるさぁぁぁい!」


 白い光が弾け、次の瞬間――。


 ドサッ!


「いったぁ……。」


 ひよりは柔らかな草の上へと投げ出された。


 全身が痛い。


 ゆっくりと顔を上げると、目の前には見渡す限りの森が広がっていた。


 空は青く、木々は地球のものより一回りも二回りも大きい。


 どこからともなく鳥の鳴き声が聞こえ、風が木々を揺らしている。


「ここが……異世界?」


「せや!」


 すぐ横から元気な声が飛んでくる。


 見ると、地面にシャベルが突き刺さっていた。


「空気うまいなぁ!」


「木ぃでかいなぁ!」


「山や山!」


「テンション上がるわぁ!」


 ひよりはゆっくりと立ち上がる。


「……。」


 辺りを見回す。


 人はいない。


 家もない。


 道らしきものも見当たらない。


 あるのは木、木、木。


 そして森。


「……ねぇ。」


「なんや?」


「ここ、山の中じゃない?」


「せやな。」


「せやなじゃないよ!」


 思わずシャベルを掴み上げる。


「人里は!?」


「知らん!」


「知らないの!?」


「ワシ初めて来た世界やし!」


「使えない!」


「誰が使えへんや!」


 シャベルは柄をぷるぷると震わせる。


「嬢ちゃん、まずは落ち着け!」


「落ち着ける状況じゃないよ!」


「こういう時は深呼吸や。」


「誰のせいだと思ってるの!」


「女神ちゃん。」


「そこは否定しないんだ……。」


 ひよりは大きくため息をついた。


 とにかく状況を整理しよう。


 持ち物は制服だけ。


 スマホはある。


 電源を入れてみる。


 当然のように圏外だった。


「はぁ……。」


「写真撮っとくか?」


「何を?」


「異世界初日記念。」


「そんな余裕ない!」


「若い子はよう写真撮るやん。」


「それ旅行だから!」


 シャベルはケラケラ笑う。


 本当に一秒も黙らない。


 ひよりは額に手を当てた。


(これ、本当に一緒に生活するの……?)


 想像しただけで頭が痛い。


「まぁまぁ。」


 珍しく少し落ち着いた声でシャベルが言う。


「嘆いても腹は膨れへん。」


「……。」


「まずは生き残ること考えよ。」


 その言葉だけは妙に説得力があった。


「……そうだね。」


「よっしゃ!」


 また元気な声に戻る。


「まずは水や!」


「水?」


「人間は食べんでも数日は生きられる。」


「せやけど水はあかん。」


「喉渇いたら終わりや。」


「だから川探すで!」


 ひよりは少し驚く。


(意外とまともなこと言うんだ……。)


「ほらほら!」


「歩くで!」


「レッツサバイバルや!」


「……その前に一つ聞いていい?」


「なんや?」


「あなた、名前は?」


 シャベルは少しだけ黙った。


 数秒後、誇らしげに答える。


「シャベル。」


「……そのまま?」


「そのままや。」


「いや、神器とかじゃないの?」


「正式名称は長い。」


「聞かせて。」


「『対災害級開拓用神造多目的万能インテリジェンスシャベル零式』。」


「長い!」


「せやからシャベル。」


「納得した……。」


「嬢ちゃんは?」


「結城ひより。」


「ひよりちゃんか!」


「よろしくな!」


「……よろしく。」


 その瞬間だった。


 ガサガサッ――。


 近くの茂みが大きく揺れる。


 ひよりの体が強張る。


「な、何?」


 茂みの奥から現れたのは、一匹の灰色の狼だった。


 ただし普通ではない。


 牛ほどもある巨体。


 赤く光る瞳。


 口元から覗く鋭い牙。


「え……。」


 狼はこちらを見つめたまま、低く唸る。


「グルルルル……。」


 ひよりの足が震える。


「どうしよう……。」


 その時だった。


 いつも騒がしいシャベルの声が、不思議なくらい静かになる。


「ひより。」


「……え?」


「ワシを握れ。」


 その一言には、今までとは違う重みがあった。


「ここからが、本番や。」

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでも「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

感想・レビュー・ブックマーク・評価などで応援していただけると、とても励みになります。


皆さまの反応を参考に、今後の更新ペースや展開も調整していきたいと思っています。

誤字脱字なども気づいた点があれば、遠慮なく教えてください。


これからもよろしくお願いします。

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