弱気とオムライスと嬉し涙
私の名前は堂本メイ。
私はお兄ちゃんが大好きだ。
私と優しいお兄ちゃんとの過去を知れば、きっとみんなこう言うだろう。
「それなら、そうなるよね」と。
私たち兄妹の両親は、私が小学生の時に交通事故で亡くなってしまった。
まだ高校生だったお兄ちゃんと私は、大人たちの”譲り合い”の結果、大叔母の家へ引き取られた。
大叔母の名前は松本ユウキ。
ユウキさんは結婚しておらず、都内で一人暮らしをしていた。作家をしており、いつも家にいたが、家事はからっきしだった。普段は無口なユウキさんだけど、私たちを引き取った時の一言に、私は痺れた。
両親が亡くなり、親族が集まった場で、お兄ちゃんと私は無言でうつむいていた。周りで大人たちが、ギャアギャアと兄妹をどうするかと譲り合う中で――
スッと立ち上がって一言。
「お前たちはもう黙りな。今から私がこの子たちの保護者になる」
こうして私たちは、ユウキさんの家の子になった――
ちなみにユウキさんと呼ぶのは、“大叔母さん“と呼ぶと「私はそんなに年じゃないよ!」と怒るので、ユウキさんと呼ぶことになった。
ユウキさんはいい人だったけど、とても大雑把な人だった。だから家事は、私が頑張った。ユウキさんやお兄ちゃんのために、何かしたかったから。
そして、お兄ちゃんは――
「すまん! 遅れた!」と、汗だくになりながら自分の授業をサボって私の授業参観にきてくれたり。
でもその時に、必死の形相のお兄ちゃんを見て先生や他の保護者が悲鳴を上げたのは、予想外すぎてすごく笑ってしまったっけ……。今なら理解できるけどね。
私が中学校に上がってからは、毎朝早起きしてしてくれて「ほら、弁当持ってけ」と、お弁当を作って持たせてくれたり。
たまに入れてくれた、オムライスが大好きだった。初めて食べた時は、お母さんを思い出して泣いちゃってみんなに心配されたけど……。狙って入れたのなら、折檻ものだよね。
私の卒業式では「うおおおお」と、どんな親たちよりも号泣してくれたり。
無口で顔も怖くて、ぶっきらぼうなお兄ちゃんだけど……。
私にとっては、世界一優しいお兄ちゃん。
とにかく、お兄ちゃんは――
私が寂しくないようにって、自分も寂しいはずなのに、私のことをいつも優先してくれた。
だから私はお兄ちゃんが大好きだ――
ユウキさんも大好きだ――
二人の影響を勝手に受けた私は、一人で悩んでいる人や困っている人を助けるお仕事をしたいと思ったのだ――
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
今月も俺たちの店、『異世界カフェ』は大盛況だった。
「今月もお疲れ様でした! 来月の企画会議を始める前に、お兄ちゃん」
「おう。お前ら何がいい?」
最近は企画会議前にみんなで何か食べてから、もしくは食べながら会議をする形が定着してしまった。まあ、会議も仕事だから残業みたいなもんだし、残業お疲れ様って感じで提供している。
みんな喜んで食べてくれるので、俺としてはちょっと嬉しいと思っている。
「メイは何にする?」
最後にメイのオーダーを取る。
「オムライスかな。ケチャップで”愛するメイへ”って書いて!」
「そんな長文書けないよ!?」
「ぶ~。じゃあ普通のハートでいいよ」
「了解だ」
メイは結構オムライスが好きだ。母さんの得意料理だったもんな。俺なりに記憶の中の味を再現している。レトロな作りで卵はトロトロではなくしっかり固め、被せるタイプではなくて包むタイプ、中身もケチャップライスだ。
(隠し味はマヨネーズっと。ケチャップライスのコクと旨みが強くなるっと)
ケチャップライスをフライパンで炒めながら、我が家のレシピを思い出していた。卵で包み、ケチャップでハートを描く。
「どうぞ、召し上がれ」
「ありがとう〜。ん〜! 何でお兄ちゃんのオムライスって、こんなに美味しいんだろ~」
メイも他のみんなも喜んで食べてくれて、俺も嬉しかった。
「食べながらでもいいか! 会議始めま~す」
(それでいいのか? メイよ)
「オムライスも美味しいですぅ」
(会議が始まったら食べてても切り替えような、レンよ)
「レンちゃん会議始まってるよ!」
(ほら怒られた)
「はぁ~い」
レンはちょっとしゅんとする。
「はい! はーい!」
「はい、リオちゃん!」
「オムライス美味しいね!」
「チッ!……リ・オ・ちゃん?」
「え? 褒めただけ……ごめんなさい。睨まないでぇ」
(リオ、成長しないな……)
「じゃあ、わたしから。そろそろ姫企画第二」「いい加減にして」
(ミオ、お前もか……)
二人ともうつむき、しゅんとしていた。
「では、わたくしから」とサエが手を挙げる。
「おお! サエちゃん珍しい!」
「最近はわたくしたちの企画が多かった気がします。メイちゃんの温めてる企画とかないのですか?」
みんなの視線がメイに集中する。
「…………」
メイは視線を惑わせてから、ポンッと手を叩く。
「あ~。え〜。そう! 『獣人』なんてどうかな?」
「「「「…………」」」」
「あ、じゃあ」
「いいじゃないですかぁ〜可愛いですしぃ」「いいんじゃないかな。多種多様な獣人がいるから、決めるのが大変そうだけどね」「私の魅力を引き出す、いい案ね!」「メイちゃん猫好きですしね。いいと思います」
メイが何か言おうとしたが、みんな賛成していたのでそのまま来月は『獣人の国』がテーマになった。
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
私は来月のテーマ『獣人の国』の準備として、店のブログや公式SNSを更新していた。
『異世界カフェ』への転換によって、この店はとても成功していると思う。
(あの時、お兄ちゃんに提案できて良かった……)
あの時も迷いに迷った上で私は提案していた。お兄ちゃんが頑張って経営していたお店を、全然違うものに変えてしまう提案だったから……。
(でも、お兄ちゃんは私を信じて受け入れてくれた。……あれは嬉しかったなぁ~)
大事な人の役に立つことができたという高揚感を思い出し、口元がニマニマと緩んでしまう。
(いけない、いけない! 仕事、仕事!)
私は、パソコンの画面に意識を戻す。
改めて見ても、店の人気や売り上げは右肩上がりだ。ブログのPVも右肩上がり、公式SNSの反応やコメントも右肩上がり、特に最近はすごかった。
(だんだんとみんなの固定ファンが、増えてきてる?)
特に最近。レンちゃんが企画を持ってきた辺りから、一人一人への推しのような動きが視えてきている……。
(”持ち込み企画”ブームから、何かみんなが更に輝きだした気がするのよね~)
それを肯定するような状態を示すデータが出ている。事実ってことね、きっと。
これは良い傾向だからと、もっと伸ばす方法はないかと考えていて……、気づいた。
(あれ?…………私は?)
そして、『獣人の国』企画が始まった――
私はビックリしていた。
「お兄ちゃん、今月の売り上げが、すごいよ、ヤバいよ、ケモ耳ヤバいよ」
「メイの語彙力がヤバいよ」
店は、目が回るほどの忙しさだった。
(確かに、みんなのあの姿は見たくなるかもね~)
「レンちゃ~ん、こっちも一口食べて~」
「は〜い。喜んでぇ~」
マイフォークを片手に、お客様の元に行く”兎獣人”のレンちゃん。
ピンっと立った兎耳が可愛い。あの耳はパタッと曲げられるらしい。そして、ふわっとしたワンピース。走るとまんまるモフモフの尻尾が揺れて、触りたくなる。でも、お触りは厳禁なのだ!
「ミウさ〜ん。チェキお願いします~」
「いいよ。撮ろうか」「キャーーー」
可愛いを狙って”シマエナガ獣人”にしたミウさん。
白髪に黒メッシュ、白のロングファーコートに黒の上下。そして黒い翼。完全にイケメン寄りの装備じゃないかな? ミウさんは、本当に可愛いを追い求めたのだろうか?
「「「「リオ様〜。注文お願いします~」」」」
「また、あんたたちなの? 本当に暇なのね?」
注文を取りに行くリオちゃんは、カツンカツンとハイヒールの音を鳴らし、長い縞模様の尻尾をフリフリしながら歩く。女豹の耳に、丈の短いヒョウ柄ワンピース。リオちゃんは”豹獣人”になった。
注文した四人は目がハートになってたけど、他のお客様は転ばないかと心配している様子で見てるのよね。
「サエさん、占いお願いします」
「はい。今月はアニマル占いですよ」
いつも通り占いスペースのサエちゃんは”犬獣人”だ。
白くて垂れたモフモフの耳、レースやフリフを多く使ったガーリー感のメイド服で可愛い。尻尾もモフモフっぽくていいね。何で犬?って聞いたら、犬は直感が鋭くて予知的なことも出来るとか出来ないとか。
「メイちゃ~ん、注文良いかい?」
「は~い」(ついついみんなに見惚れてしまったよ!)
私は以前と同じ猫耳ちゃん。”黒猫獣人”だよ。
「いらっしゃいませ、玄さん。いつもきてくれて、ありがとね!」
「まあね。前の店の時からの常連ですから僕は」
そう、玄さんは以前のシックな店の時からきてくれていた、常連さんなのだ。
「今日も繁盛してるねぇ。コーヒーセットで」
「おかげさまでっ! いつものですね、了解です!」
私はオーダーを伝え、受け取って玄さんへ持っていく。
「コーヒーセットです! あたたかい内にどうぞ!」
「ありがとうな、メイちゃん」そう言って一口。
「相変わらずマスターのコーヒーは美味しいねぇ」
「ありがとうございます! 店長に伝えておきますね!」
「メイちゃんも相変わらず”まじめ”だねぇ。僕のことを本当のおじさんと思って、もっとフランクに接してくれてもいいんだよ?」
「またまた~。十分に甘えた接客をさせてもらってますよ!」
「そうかい?いつもメイちゃんは”頑張ってる”からさ、僕も心配しちゃうんだよ~」
「ありがとうございます。私よりもみんなの方が働き者ですよ~。人気もすごいですしね」
「確かにみんな人気者だよね~。引っ張りだこって言うの? みんな可愛いし個性的だしキャラが立ってるもんなぁ」
――みんなを褒めてくれる言葉なのに、嬉しい言葉なのに、どうして……
私の笑顔が、崩れそうになってしまうの?
(”まじめ”、”頑張ってる”……。私の評価はそういうものだ……。私は……)
「メイちゃんも人気者なのにマスターが見張ってるせい……」
ネガティブな思考に入っていて、よく聞こえなかったけど玄さんが何かを言おうとした時、店の電話が鳴った。
「はい。異世界カフェですぅ…………はい……、はい、そうです…………、分かりました」
レンちゃんの顔色が悪い? こっちとお兄ちゃんを見て手招きをする。
「ごめんね玄さん。ちょっと呼ばれちゃった」
「お、おう。またねメイちゃん」
レンちゃんと一緒に奥に入ると、焦った様子で、
「さっきの電話。編集者って人からで、先生が倒れて市民病院に搬送されたって。二人に伝えてって」
(……先生?……っ!! ユウキさん!?)
お兄ちゃんと目が合う。
「すぐに行くぞ! メイ!」
「ダメ! お兄ちゃんは残って! 私が行くから!」
「何言ってんだ! ユウキさんが倒れたんだぞ!」
「店はどうするの!?」
「それどころじゃないだろ!?」
「冷静になってお兄ちゃん! 倒れたってだけで、状況はまだ分からないんだから。私が行って確認する。ここで働いているみんなには、お兄ちゃんが必要でしょ!?」
「いや、それを言ったらお前の方が必要だろうが!?」
「私はいなくたって大丈夫なんだから平気! とにかく! お兄ちゃんは待ってて!」
「いや、ちょっと待て、メイ!」
私は、お兄ちゃんの制止を振り切って走り出した。
私は病院に着き――
「ユウキさんっ!!」
個室とはいえ、病院であることを考えず勢いよく個室の扉を開けた。
「メイじゃないか? 何でここに居るんだ? 今は店の時間だろ?」
ベッドの上で座っていたユウキさんが、驚いた顔で言った。
「……あれ? ユウキさん。大丈夫なの?」
そこに、後から編集の木下さんがやってきた。
「あ! メイちゃん。早かったね」
ユウキさんはハッとした顔になり、
「木下〜。お前、連絡すんなって言ったのに連絡したな!」
「しますよ。だって『最近あの子たちは店が忙しそうで何より』とか言いつつ、寂しそうな顔してましたもん。いい機会じゃないですか~」
「お前なあ! 木下!」
木下さんは私の後に隠れて、
「メイちゃん、先生の診断は睡眠不足でした。だからしっかり休めば大丈夫です。念のため、今日だけは入院ですけどね」
そう言って木下さんは「あとはよろしく〜」と病室を出て行った。
お兄ちゃんにはメッセージを送り、入院の手続きをした。そして、病室に戻ってユウキさんに問う。
「……そんなに寝てなかったんですか?」
「……あ〜。筆が乗ってな、三徹くらいかな~」
ため息が出てしまう。
「ユウキさん。もう若くないんだから無理しないで下さいよ!」
「な!? まだ私はそんな年じゃないぞ!」
本人はそう言うが、最近は綺麗な黒髪に白髪が交じるようになってきた。
私はユウキさんの手を取り、自分の額に当てた。
安心したら手が、少し震えてきてしまった。
「本当に……、お願いしますよ……」
「…………ああ、私は大丈夫だよ」
しばらくユウキさんは、空いている手で私の頭を優しく撫でてくれていた……。
落ち着いてきたら、恥ずかしくなってきた。
私は顔を上げ、手を放す。
「ごめんね私ばっかり。病人はユウキさんなのに……」
「久しぶりに甘えるメイを見れて、私は嬉しかったよ」
ジーっと私を見てユウキさんが、
「メイ。何か悩みごとでもあるのかい?」
ドキッとする。
本当にこの人は……、大雑把なのに、肝心な時はとても鋭いのだ。
「ちょっとね」
「店のことかい?」
「お店は楽しいよ。軌道にも乗ってきたと思う。だからかな……」
私は店に”必要”なのかな?
……そう考えてしまうのだ。
「私は、お店から手を引こうかなって……」
ユウキさんは手を顎に当て、
「ふむ。どうして、そう思うんだい?」
「私がいなくても、お店はきっと大丈夫だろうし……」
「嫌になったのかい?」
「違うよっ。楽しいよっ。でも、私はあの子たちみたいに、輝いていないから……」
「ん?」
「あのね、みんなね、すごいんだよ。すごく”個性的”で、何て言うかな~、そう! キャラが立ってる子たちばっかりなんだよ!……きっと、私はみんなの足を引っ張っちゃうから……」
「それで?」
「いや、それでって! それが全部だよ! だから私は、そろそろいなくなった方がみんなのためってことだよ! 邪魔になっちゃうから……」
「誰かに言われたのかい?」 ユウキさんの目が鋭くなる。
「言われてない、言われてないから! みんないい子だよ!」
「そうか。それなら良かった」
(……私は、良かったと思えないかも……)
「じゃあ話は簡単だな」
(……え?)
「メイ。お前が単純に、自分に自信がないだけの話だろ?」
「……たしかに、自信はないけど……」
「それなのに、辞める理由を”みんなのため”なんて言うなんて、お前らしくないじゃないか」
その一言にはカチンときた。
(”お前らしい”って何!? ユウキさんは親代わりだけど、仕事仕事で私たちの相手なんか、大してしてきてないじゃん!! 私の何が分かるの!?)
感情が抑えられずに、吐き出してしまう――
「……お前らしくないって何!? ユウキさんに私の何が分かるの!?」
ユウキさんは少し驚いた顔をするが、すぐに穏やかな顔になり、
「そうだね。私がお前たちの何を知っているんだ?って思うわね。でもねメイ。それでも私は、お前がしてきたことの意味や、頑張ってきたことの意味は、理解しているつもりだよ」
ユウキさんは自分の考えを話してくれる――
「どうして、SNSアドバイザーになったんだい?」
(……悩んでる人や困っている人を、助けてあげたいと思ったから)
「人を、一人にしないためだろ?」
(……そう。一人は辛いから)
「店の同僚は、どうして店に誘ったんだい?」
(……何か辛いものを、抱えていると思ったから)
「困ったり悩んだりしていると、分かったからじゃないのか?」
(……打算もあったけど。その気持ちもあった)
「そんな同僚たちは、今はどうだい?」
(……最近はみんな、何かを乗り越えたような……、気がする)
「きっと、どこか明るくなれたんじゃないのかい?」
ユウキさんに酷いことを言い、気まずくてうつむいていたけど……。
私は顔を上げてユウキさんを見た。
「どうして……」
ユウキさんはフッと笑う。
「それでも私は、お前たちの保護者だからね。分かるのさ」
優しい笑顔や酷いこと言ってしまったのに包んでくれるような優しさに、私は涙を堪えられずユウキさんの胸に飛び込み、わんわんと泣いてしまった――
しばらくして……。
落ち着いた私は、ユウキさんに聞いてみる。
「見てないのに、何で分かるの?」
「それはな。人は人に影響を少なからず受けるもんさ。私はお前たち二人の、心の優しさを知っているからね。周りに集まった人間が、不幸になるとも思えないさ」
そう言って笑うユウキさんを見て、この人は本当に大きな人だと思った――
病院を後にして、店の前まで戻ってきた。
(……みんな怒ってないかな?)
私は勇気を出して、店の扉をあける。
でも、そっと中に入る。
「……ただいま〜」と小声で。
「あ~~! メイちゃんが帰って来た~~!」
リオちゃんに見つかる。
店はまだ大賑わいだった。
「メイちゃん〜。さすがのあたしももう食べれませぇん」
「じゃあ、食べるのやめなさい! レンちゃんの一口メニュー今日は終わり~」
「「「ええええ!!」」」
「え~! じゃない! 終・わ・り・です!」
「「「は~い」」」
「メイ。チェキが無くなったんだけど」
「奥の会議室の右から三番目の棚に入ってるはずだよ!」
「さすがメイ。ありがとう見てみるよ」
「ねえメイちゃん。足がめっちゃ痛いんだけど……」半泣きで言う。
「ヒョウ柄のスニーカーがあるから履き直して来て! あと少し休んでていいから」
「ありがとぉ~」
「メイちゃん。お帰りなさい。待ってましたよ」
サエちゃんが優しい笑顔で言ってくれる。
「うん。ただいまサエちゃん。あと少し頑張ろう!」
ドタバタとしつつも、今日も終業までみんなで頑張った。
終業後――
「みんな今日はゴメンね! 急に抜けちゃって……」
「大叔母さんが無事で良かったよぉ」「メイの偉大さがわかる一日だったということだったね」「ユウキ先生が大丈夫だったなら良かったわよ!」「……メイちゃんが、いい顔になった気がします」
「みんな……、ありがとう。これからもよろしくね!」
そして、私はみんな帰ってからお兄ちゃんとテーブルで向き合っていた。
何故か私の前に、”オムライス”が置かれている。
「食え」
「……いただきます」
一口……。(う~ん。美味しい)
隠し味でコク旨になったケチャップライス、ほどよい固さの卵、そして口の中に広がるバターの香り。ケチャップライスの焼き加減も絶妙だよ。
「あ!」
「ん?」
「食べる前に、ケチャップの字を見てくれたか?」
「え? 見てない。美味しいよお兄ちゃん」
「そうか……。でも良い顔に戻ったかな?」
「え? 何て書いてあったの?」
「いいよ。気にするな」
「いや気になるし!」
「あ~、うん。『お前が必要だ』ってな」
「…………シスコン?」
「ばっ! 違う! まあ、違いはないけどさ! 俺はお前を本当に大切にだな……」
横を向いて頬を搔いている。
(強面のデレとか需要がないんだけど……)
「”いなくて平気”なんて言わないでくれ。俺にはお前が必要だよ」
私は目を見開く。
「それに、お前が帰ってきた時のみんなの顔を思い出してみろよ」
レンちゃんの安心した顔。
ミウさんの嬉しそうな顔。
リオちゃんの感動している顔。
サエちゃんの優しい笑顔。
なんだ、そっか。
私はみんなに必要とされてるじゃないか――
『自分に自信がないだけ』
本当に、ユウキさんは核心をつくなぁ。
「……お兄ちゃんには私が必要?」
「……当たり前だ。俺もみんなも、お前を必要としてるよ」
「ぷっ、アハハ。なんだ、うぅ……」
私は吹き出し、笑ってしまう。
笑いながら、涙を流していた――




