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ようこそ!異世界カフェへ! ~迷える彼女たちの居場所探し~  作者: はひなひは


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7/7

夢とコーヒーとみんなの居場所

 俺の名前は堂本誠。

 メイの提案を受け入れる選択をした結果、俺の店は生まれ変わった。

 シックな落ち着いた雰囲気の喫茶店から――


「レンちゃ~ん一口どうぞ~」

「喜んで~!」


「ミウさ~~ん、こっち向いて~」

「どうしたんだい?」キランッ

「キャーー」


「リオ様~! ツインテで叩いて~!」

「バカ言ってんじゃないわよ!」バシン!


「サエさん、今日は彼との相性を……」

「……五分五分ですね」


「メイちゃん注文よろしく~」

「は~い! ただいま伺いま~す!」


 騒がしいけど、明るく楽しい雰囲気の『異世界カフェ』になった。

(しかし……、メイしかちゃんと仕事をしていないのか?)


 今月のテーマは『異世界コーヒーショップ』、様々な種族のバリスタが集まってカフェを開き、各々の種族をイメージしたコーヒーを提供する企画だ。みんな様々な種族のコスをするが、服装はバリスタの恰好だ。


「玄さん、いらっしゃい。ご注文のコーヒーセットをどうぞ」

「やあ、マスター。何でマスターが持ってくるんだよ。メイちゃんに持ってきてもらいたかったよ」


 そんな不満を言うこの人は玄さん。

 前の店の時から、常連として来てくれていた人だ。前は「僕はマスターのコーヒーに惚れてるんだよ」と言ってくれていたのに……。


 今ではメイちゃん、メイちゃんと。メイ目的で来る客になってしまった。

(まあいいけどさ。何だかな……)


「玄さん」

「何だい?」


「前の店と、今の店はどっちがいい?」

「前の店もさ、落ち着いていて、マスターのコーヒーも美味くてさ、とてもいい店だったよ。僕は好きだった……」


 そして、玄さんは真剣な顔で俺を見る――

「でもさ、比べるのも申し訳ないくらいに、今の方がいいに決まってるじゃん」


 いい笑顔でそう言った。


「ですよね~」

(やっぱり、誰がどう見たっていい店になったよな〜)


 あの日、ユウキさんに言われたことを俺はずっと考えている。

 その答えが、きっと……

 俺が店長としてここにいるために、必要なことだと思うから――



 ユウキさんの退院日――


 睡眠不足で倒れてしまったユウキさんを、俺は病院まで迎えにきていた。

 退院手続きをして、俺の運転でマンションへ帰る途中で。


「すまないね、誠」

「いいや、ユウキさんが無事で本当に良かったよ。俺も連絡を聞いた時は焦ったからさ」


「フッ。お前の子供を見るまでは、死ぬ気はないよ」

「……じゃあ、しばらくは平気だな」


「ハァ。それはそれで困るね。いい娘はいないのかい?」

「出会いがねーよ。こんな面だしな」


「見た目で決めるような娘はダメだ。私が認めないよ」

「小姑か!?」


「姑って言わないお前が好きだよ。誠」

「ありがとうユウキさん」


「そういえば、店に可愛い子がいっぱいいるんじゃないのかい?」

「いやいや! 店長が店員に手を出したらダメだろうが!?」


「小説じゃあ、よくあるよ?」

「フィクションだからでしょ!」


「お前たちの両親も、そんな感じだったと思ったぞ?」

「え? マジで?」


「……たぶん?」

「どっちだよ……」


 しばらくして、マンションの近くまできた頃に。


「そういえば誠。メイが泣いてたぞ……」

「……そうか」


「何やってるんだい、お前が近くにいてさ」

「弁明できない。あんなに自分を卑下していたなんて……」


「あの子も優しいからね。お前のことも大好きだ。逆に言えないことも、あるかもしれないね」

「ユウキさんに感謝だよ。俺にはできなかったからさ」


「何言ってんだい?」

「いや、俺はメイの心の支えになってあげられてないなって……」


「ハア。この兄妹は本当に……」

「ん?」


「お前は自分で答えを出しな! もういい大人なんだから!」

「お、おう?」


「ったく! お前な~~!」

 ユウキさんは髪をガシガシしながら、

「ヒントだ! お前は何で喫茶店を夢にした? それを思い出しながら、周りの人間を見てみな!!」


 ちょうど駐車場に着くと、ユウキさんはさっさと降りてしまった。

「誠なら分かるはずだ! しっかりしな!」


 そう言って、行ってしまった……。



 言われた日から、ずっと考えてはいるが……。


 夢の喫茶店。

 これは一回挫折しかけたけど、今の『異世界カフェ』に変えることで成功した。

 いい店になった。これは、間違いない。

 

(でもメイの心の支えと、どう関係があるんだ?)


 ユウキさんの言い方だと、俺はメイの心の支えには、なれているのだろう。


 店―― メイ―― 周りの人間を見ろ――

 


 その答えが分からないまま、今月も企画会議が始まる――


「では! 今月もお疲れ様でした! お兄ちゃんよろしく!」

 今月からは、更に新しいルールになった。


「おう。みんな、コーヒーセットだ。召し上がれ」

 それは、会議で出すメニューを今月の”一番注文されたメニュー”にする、というルールだ。コーヒーセットはパンケーキと、俺特製ブレンドコーヒーだ。


「う〜ん。パンケーキ、うまぁ〜」

(レンは、生クリームをたっぷり付けて頬張っているなぁ)


「店長のコーヒーは、やっぱり美味しいね」

(ミウは、コーヒーを飲む姿もイケメンだな)


「砂糖とミルク入れると、もっと美味しいよ!」

(リオは、いつ大人の魅力を身に着けられるのだろうか……)


「パンケーキ自体の、仄かな甘みもいいですね」

(サエは、結構甘いもの好きだよな〜)


「パンケーキにはコーヒーだよね!」

(メイも美味しそうに食べ飲みしてくれている)


 ある程度、食べたところで。

「じゃあ始めよっか、会議!」

 コーヒーを飲みながら、メイの号令がかかった。


「はい!」

「はい、レンちゃん!」


「最近は奇抜な企画が多かったのでぇ、そろそろ王道路線はどうでしょう?」

(おお、レンがまともだ。あれ? 食べものが絡まなければ、いつもまともな方か?)


「いいね、いいね! 私は賛成~」

(リオはいつも乗っかるよな。そのノリに助けられることも多いけど)


「わたしもいいと思うよ。王道ってことは」「姫はないよミウちゃん!」

(ミウは相変わらずだ。でも、そんなめげないところもすごいよな)


「王道は正義ですね……」

(サエの言葉は、いちいち意味深く聞こえるのは何故だろう?)


「じゃあとりあえず、王道路線で考えていくよ!」

(メイが上手く纏めてくれるから、個性的なみんなも好き勝手に言えるんだろうな)


 本当に、良いチームになったな。


「具体案がある人はいる?」

「異世界の王道といえば、ファンタジーですよねぇ」


「ファンタジーといえば」「ミウちゃん、進まないから止めて」

 ミウはいつも通りに、うつむいてしまう。


「アハハ。最近は、何でも言える仲になったって感じでいいよね~」

「たまには良いこと言うね~。リオちゃん!」

「え? たまに? 私いつも良いこと言ってるつもり……」

「リオちゃん面白~い!」

 リオはえ?って顔で固まっていた。


「サエちゃんは何か意見は?」

「そうですね。わたくしは異世界王道で浮かんだのが”ギルド”でした」


「「「「…………」」」」


「「「「それだ!!」」」」


「いいね! 来月のテーマは『冒険者ギルド』にしよう!」

「「「「異議なし」」」」

(『冒険者ギルド』か。面白そうだ)


「みんな何の役にする?」

「はい! あたしは、ギルド内食堂のウエイトレスがやりたいですぅ!」

「わたしは、ギルド内図書館の司書をしようかな」

「私は、解体作業の解体師にするわ! ドラゴンだって解体できるんだから!」

「わたくしは、ギルドの占い師ですね……」

「じゃあ私は、受付嬢ね!」

(おぉ。一気に決まったな)


「もちろんお兄ちゃんは、ギルドマスターねっ!」

「え? なんで?」


「あたりまえじゃない! お兄ちゃんはこの店の、ううん。この”ギルド”の”マスター”なんだから!」


 みんなも、うんうんと頷いていた。


 配役が決まったので、そのまま様々な事柄を話し合っていく。衣装・内装・料理メニュー、最近は宣伝方法なども企画会議で話し合っている。


 ギャーギャーと騒ぎながらも、みんな笑顔で、自分たちの意見を自由にぶつけ合って。


 その様子を見ていて、ふと思った。


(みんな自由で楽しそうだ、こいつらにとってここは居心地の良い場所なんだろうな……)


  ”居心地の良い場所”――


(あれ? 俺が最初に喫茶店を作った時の”夢”って……)



 俺たち兄妹の家族が二人きりになった日――

 あの日に俺は。

 まだ小学生だったメイを絶対に守ろうと。

 そう、誓ったんだ。


 親戚たちが俺たちをどうするなんて話は興味は無かった。自分たちは厄介な存在だと分かっていたから。でも、メイにそう悟らせるのだけは嫌で、早く結論だけ出してくれと黙って拳を握りしめていた。

 

 そんな時に――


「お前たちはもう黙りな。今から私が、この子たちの保護者になる」

 

 そう言い放ち、俺たち兄妹の手を取って歩き出したユウキさん。

 周りの大人たちが何を言っても、ただ黙って俺たちの手を引くうしろ姿がカッコよくて。

 こういう大人になりたいと、強く思ったんだ。


 そのうしろ姿の安心感に憧れて。

 そういう頼れる、自分になりたくて。

 

 だから俺は――


 そんな場所があったらいいなと思った。 

 寂しさや悩みとかを、抱えてても居られる場所。

 

 そんな居場所を、作りたかったんだ。



(そうだ。俺の夢は、メイがいつでも帰ってこれる場所を作ることだったんだ)


 俺は、楽しそうに会議をするメイやみんなを見る。


(まさか、メイと一緒に店をやるとは思ってなかったけどな……)


「なあ。一つ聞いていいか?」


 最近懐いてくれているレン。

 期待を寄せてくれるようになったミウ。

 すごく距離が近くなったリオ。

 よく笑ってくれるようになったサエ。

 そして、俺の大事な家族のメイ。

 みんなの視線が俺に向く。


「みんな……。ここは楽しいか?」


 みんなは不思議そうな顔をして、それから満面の笑顔になり。


「「「「「もちろん!!」」」」」


 その瞬間――


 メイやみんなの笑顔が身体の中にスッと入ってくる。


 俺の心の中にとけ込み、気持ちが軽くなって、今までのことを思い出す。


 よく頑張ったねと……。そう両親に言われたような……。そんな気がして……。


 ああ……、俺はちゃんと、できてたんだな……。


 俺は、込み上げるものが抑えきれなくなり、うしろを向く。


 「そうか」

 

 それだけ告げて、部屋を出た――



 テーマ『冒険者ギルド』初日の朝。時間は開店前。


「みんな、準備は大丈夫か?」


 レンは俺のそばにきて、軽く胸を叩く。

「バッチリですよぉ店長! 今月はナポリタンを売り上げ一番にして、月末の会議食をナポリタンにしますよぉ~!」


「おう。期待してる」

「任せといて下さいね! 店長ぉ!」

 レンはウインクをする。


 ミウがそばで上目遣いになり、祈るポーズをする。

「任せてください店長。わたしがココアを一番にしますから」

「ミウはココア、好きだもんな」


 ミウはちょっと拗ねたような顔になり、

「店長は分かってないな。ココアは、わたしを可愛く魅せるアイテムだから好きなんです。まあ、店長の淹れるココアは好きですよ」


 リオがドヤ顔で、仁王立ちをする。

「私が大人の魅力でチョコバナナパフェを一番にしてあげるから、感謝しなさい!」

「そうか」(頼んでないのだが……)


「なんで私の対応は、淡泊なのよ~~~!!」

 リオが、ツインテで俺を攻撃してくる。


「店長……」

 サエが俺の袖を、後ろから軽く引いていた。

「どうした?」

「わたくしも、月末の会議食をチュロスにできるように頑張ります。占いで、チュロスを食べれば恋愛運アップって言います」

「いやいや、それはダメだろ?」


「フフッ。冗談ですよ、店長」

 サエは微笑み、袖を離した。



「お兄ちゃん」

 メイが、強い意志を持った目で見てくる。


「私も目指すよ。オムライスで一番を。お兄ちゃんのオムライスは世界一だもん!」

「おおう。ありがとうなメイ」


「みんな! 負けないよ!」「負けません!」「望むところだよ」

「目にもの見せるわ!」「わたくしが勝つ未来が……」

(どんだけみんな会議食好きなの!?)


 そして今日も開店の時間になる。


 店の扉が開き――


「さあ、お客様がいらしたぞ」




 ここは、都内某所の雑居ビルの中にあるちょっと変わったカフェ。


 ここでは個性的な女の子たちが、今日も元気に働いています。


 そしてここは、

 彼と彼女たちにとっての、優しくて掛けがえのない居場所――




「「「「「ようこそ!異世界カフェへ!」」」」」




最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


誠(店長)たちのお話は一旦お終いですが、『異世界カフェ』の営業はきっと続いておりますので、またお暇の際にはお立ち寄りください。

『異世界カフェ』が、誰かの優しい場所になれたとしたら幸いです。


またのご来店をスタッフ一同お待ちしております。


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