operation.71_人造人間試験個体
この先下記作品の既読前提で進めていきます。
City State 隔たれた世界
時間軸的にもCity State 隔たれた世界の終章→Sisters of LAWS 2人の軌跡の序章となっています。
「なあ、アイツの機体と死体だけでも回収してやれないか?」
「無茶を言うのは止めろ。この仕事をする上で覚悟はしてただろ」
「⋯⋯気持ちは分かる。都市軍でも仲間の亡骸すら回収できない事は少なくない」
クレアは新兵に対してするように新米傭兵の面倒を見を見てくれている。そんな姿を他所に、その周囲では野営の準備が始まっていた。
「⋯⋯まあ、仲間がやられる気持ちは痛いほど分かるけどね」
「ですが、来た道を戻ることはできません。また都市軍に目を付けられてはたまらないです」
そして、コバルトはルージュと共にカズサとグリッド、ハワードと肘を突き合わせてアウトベースに到着するまでの打ち合わせを行うことになった。
「コバルトちゃん、正論は正論なんだけどさ。人を動かすならクレアさんみたいに寄り添う事も大事だよ」
この場では新顔の赤髪褐色の女性が肩をすくめる。そんなルージュをコバルトはジロリと睨みつけた。
「感情に流されていては仕事に支障が出ます。この手の仕事をする上で分かっていた事のはずです」
「ニコルちゃんに憧れてるのは知ってるけど、そこはニコルちゃんの悪い部分でもあるんだよ?」
「ニコルさんの事は今関係ないです!!」
特定の人物の名前を出されて、コバルトは顔を真っ赤にしている。どうにも、この青い少女にとっては逆鱗にあたる部分らしい。
「⋯⋯助けてもらった時に通信で自己紹介してもらったけど、一応、もう1回自己紹介いいかい?」
「⋯⋯コバルト・キースです。アルビオン・バイオニクス本社直属の情報戦略部所属となります。強行偵察部隊としてジパング・インダストリー経済圏にて傭兵活動を行なっています」
「同じく、ルージュ・キースです。まあ今はイチ傭兵みたいなものだし、気軽によろしくー」
「セカンドネームが同じって事は姉妹なのか?髪は染めれるからともかく、何というか⋯⋯こう⋯⋯」
自己紹介をするコバルトとルージュをハワードはしげしげと眺める。
彼の言いたいことは分からないでもない。全く似ていないと言いたいのだろう。
「⋯⋯そもそも、私もルージュもアルビオン・バイオニクスの人造人間 のため、セカンドネームは開発者のものですね。用途が異なる為、遺伝子的にも大きく離れています」
「ちょっと待ちな、そこは今初めて聞いたね?」
カズサが目を丸くした。
「まぁ、特別聞かれないと答えない部分だねー」
ルージュは軽く流しているが、コバルトは顔をしかめた。
「⋯⋯何か問題が?」
「あ、いや⋯⋯問題って事はないけどさ。人造人間ってのは白髪赤目って風の噂で聞いてただけさ」
あちこち周っているキャラバンだけあり、噂程度で存在を聞いていたらしい。その見た目と大きくかけ離れていたため驚いただけのようだ。
「⋯⋯特定のロットはそうですが、私達はデザイナーベビー開発の試験個体ですので、他の個体より容姿と性能にムラがあります。ゲノム配列で特定の容姿と能力が発現するか確認するため個別に遺伝子組換えがされています」
そのため、ルージュとコバルトは似るはずもない。
説明を受けたハワードは関心した様子で興味深げだが、カズサとグリッドの方は渋い顔をしていた。
「ジパング社の強化人間も大概だが、アルビオン社の人造人間も聞けば聞くほどグロテスクだね⋯⋯。ハワード、あんた、よく平気な顔してるね」
「培養槽で育つってだけで人間は人間だろ。俺は別に宗教家でもないし、富裕層向けの再生手術用人造人間サービスより健全だと思うぜ?」
そもそも人造人間は3Dプリンターで作られた欠損部の代替品が起源だ。
皮膚だけだったものが、今や脳内の記憶や自我以外は補完できてしまう最新医療である。
ハワードが富裕層向けと言う通り、費用に関しては課題が多いが。
「⋯⋯それはそうだけどね。しかし、コバルトちゃん怖い顔してたね」
「私達は産まれの特性や容姿で、宗教的に嫌悪されたり崇拝対象にされる場合があり、地域によっては人権が認められません。素性を明かすなり態度が変わるということも少なくないですので」
唇を尖らせたコバルトに、カズサは苦笑いする。
「嫌そうな顔をしたのは悪かったよ。仕事柄、培養槽やらインプラント、機械義手にお世話になるのは死にかける時だからね⋯⋯」
「⋯⋯まぁ、世間一般では確かにそうですね」
単純に人の身体をどうこうする技術全般にいい思い出がないという言い訳にコバルトは溜飲を下げた。
ある程度一緒に行動していたので、コバルトもカズサの人柄は分かっているつもりだ。
「話が脱線したけど、アルビオン社の人造人間ってんなら、むしろ護衛としてこれ以上心強いもんはないよ」
「私のMⅢリンクスも持ってきて貰えたので、ドローンで索敵しつつ移動できます。まあ、城塞都市からも離れたので、不要かもしれないですが」
自信たっぷりにコバルト胸を張った。
その年相応に可愛らしい仕草とハイテク兵器とのギャップが凄まじく、カズサは思わず笑いが零れてしまう。
その反応が不服だったのだろう、またコバルトは唇を尖らせてしまった。そんなやりとりを見て、ハワードもグリッドも苦笑いする。
この面々のなかに、なぜコバルト・キースが身分を偽ってキャラバンに入り込み、ジパング・インダストリーの都市外施設になど入り込んでいたのか聞ける者はいなかった。
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レッド"恋バナタイム!"
ブルー"いいえ。情報交換の時間です"
シープ"お二人ともご無事で何よりです"
夜警のためにMⅢのコクピットで待機しているコバルトとルージュは、専用のチャットでアウトベースに待機しているドリーと通信を繋ぐ。
このチャットでの通信はエンドツーエンドで暗号化され、一定時間でメッセージは削除される。
シープ"目標について、情報は得られましたか?"
それでも、重要な人物の名前などは直接入力はしないようにしていた。
ブルー"目標はすでに死亡している可能性が高いです。サンプル回収とゲノム解析で確認は必要ですが"
ドリー"えっ⋯⋯じゃあ帰れる?"
ブルー"サンプル回収とゲノム解析で確認は必要です"
レッド"嘘の可能性は?"
ブルー"私の素性を知らない以上、嘘をつく理由がありません。別の可能性として、目標が別の研究者を母親代わりにした可能性はあります"
ドリー"初期ロットのケアを他人に頼むのは⋯⋯"
ブルー"リスクが高過ぎますね。私達を道具と考える連中であれば尚更です"
レッド"そっか。待って。死体のサンプル回収できるの!?"
ドリー"確かに⋯⋯"
ブルー"聞いた限りでは、火葬して遺骨を保管しているようです"
ドリー"ええ⋯⋯"
レッド"ああ、この辺りは湿気が多いから火葬が主流なんだっけ。後は2人のいる施設に行ければいいんだね"
ブルー"そちらに関しては、本社から連絡が来てませんか?"
ドリー"あ、はい。先方と話はついたようです。お2人が戻り次第、輸送ヘリで該当施設まで運べるよう準備をしています"
レッド"ブルーは大活躍だね。いつ根回ししたの?"
ブルー"たまたまです"
レッド"そう言えば、例の2人はどんな感じだった?"
ブルー"⋯⋯環境が異なっているため、差異はあるものの、オリジナルと遜色ないですね。目標が製造したと見て間違いないです。会えば一目で分かりますよ"
ドリー"製造方法や設備が漏洩した可能性は⋯⋯?"
ブルー"であれば、あのような粗悪品の量産で済んでいないと思います。目標の死亡とともに消失している可能性が高いです。そちらに関しても資料提供の約束を頂いています"
レッド"大活躍だねえ"
ブルー"交渉条件が緩かっただけです"
ドリー"サンプルの解析データと資料を本社に提出したら帰れるかな?"
ブルー"粗悪品の製造工場への処置を本社がどう判断するかですね⋯⋯。ジパング社が鹵獲した粗悪品の実物も確認しました。アレの方が例の2人よりも火薬庫になりかねないんですよね⋯⋯これが画像データです"
レッド"うっわ⋯⋯"
ドリー"うっ⋯⋯夕飯戻しちゃいそう⋯⋯"
レッド"外科医の資格持ってる人がなんか言ってる"
ブルー"これは怪我をするのが怖くなってきましたね"
ドリー"ひ、酷い⋯⋯"
レッド冗談はここまでにして、確認事項が無ければここまでにしよ"
ブルー"そうですね。私達は警備任務に集中します"
ドリー"了解です。お2人ともお気を付けて"
レッド"りょ"
ブルー"レッド、くだけすぎです。了解しました"




