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operation.52

20機のスコルピウスが隊列を組み、脚部のローラーで大地を滑走している。


背負っている武装は、大きさから見て全て長距離砲のようだ。


観測ドローンから共有されている映像と、キツネビのカメラの映像から最短ルートを選んで距離を詰める。


「……反応があらへんね?」


まだ遠いが、キツネビのカメラにはすでに敵影が映っている。


すぐにこちらへ砲撃してこないのは、特定の命令に沿って動いているためか。


無人兵器に搭載されている自律AIの反応速度が遅いと言っても、音に反応しないわけではない。


こちらをカメラで視認していなくても、集音マイクでキツネビの走行音には気付いているはずだ。


「射程圏内に入っても反応無かったら先制するだけやけど」


こちらは出力最大の戦闘速度、相手は長距離移動のための巡航速度。遅かれ早かれ追い付くことができる。


それまで何もしない間抜け……ではなかったようだ。


そろそろ射程に入るかと思い始めたところで、殿を務めていたスコルピウス2機が速度を落として車列から離脱した。


ドリフトするように旋回しこちらに向き直ると迷わず長距離を撃ってきた。


照準レーダーでロックオンはされていない。丘陵の起伏が邪魔をしているのだ。


音のする方向に放たれた弾丸は丘陵を抉り取って速度を失い、キツネビの後方で跳ね上がって転がる。


「そうであらへんとなぁ!!」


本体を狙うのであれば隠れたまま追跡を継続をするべきところだが、エマはそんなつまらない選択肢を選ばない。


キツネビをホバーエンジン最大出力のまま跳躍させる。大地が抉れて多少勢いが削がれるが、エマが満足する高度まで跳び上がった。


丘陵の陰にいたスコルピウス2機がキツネビのカメラに映る。流石に飛び出してきた7mの巨体に気付かないほど間抜けではないらしい。


2機は攻撃ではなく、回避行動のために跳躍した。


「判断と反応がええな!やっぱ例の無人兵器か!」


スコルピウスのうち1機が跳び退きつつ砲撃する。


当然ながら発射の衝撃を相殺するすべがなく回転しつつ後方に吹き飛ぶのだが、脚部を180回転させ上下逆さまの状態で着地する。


撃ち出された砲弾は……何も貫けず空中で爆ぜた。


榴弾だったようで、爆風で吹き飛ばされるもののキツネビは難なく着地した。


「でも、相手が悪かったなぁ」


2機は弾丸が空中で消失し何が起こっているのか分からない様子で、まるで人間が慌てて周囲を見渡すように無駄にカメラが動いている。


砲撃せずに跳び退いたスコルピウスが機体下部の機関銃をキツネビに向けて掃射する……が弾丸は目標に届く事なく空中で爆ぜてあらぬ方向に飛ぶか変形した状態で地面に転がっていった。


どれだけ撃っても結果は変わらない。


弾丸は届かない。


目標のMⅢ、キツネビは様子を見るように見据えているだけだ。


避けもしない。


弾丸は当たらなかった。


それでも撃ち続けるが、砲身がオーバーヒートし機関銃が動作不良を起こした。


「ホンマおもしろいな。この無人兵器」


キツネビが一歩足を進めると、怯えたように後退する。無人兵器の自律AIなら撤退するか体当たりしてくるところだろう。


「ひとつ」


スコルピウスが後ろへ下がるため、左前脚を持ち上げようとしたが動かなかった。


カメラを向けると、そこにあるはずの脚部がない。機動兵器にとって生命線である脚は地面に転がっていた。


何をされたのか。黒いMⅢに向き直ろうとしたが、急に胴体が地面に叩き付けられた。


カメラだけはなんとか動く。


脚部は全て千切れ、地面に転がっている。


黒いMⅢは数歩進んだだけで目の前にいる。


そこで無人兵器は停止した。


機体内に爆薬でも備え付けられたいるのか、胴体が弾け飛ぶ。


「やっぱ、無力化すると自爆するんよね。綺麗な状態で鹵獲したいんやけど、なんとかならへんかなこれ」


粉々になった無人兵器に興味を失い、キツネビは踵を返す。


後ろから砲弾が飛んできた。しかし、結果は変わらず空中で爆散してしまった。


逆さに着地していたもう1機だ。


「敵討ちかな?嫌いやないで」


もう1機が甚振られるのを眺めているだけかと思ったが、攻撃に転じてきた。まるで恐怖が激昂に切り替わった人のようだ。


勢いを付けてキツネビに飛び掛ってくる。


「ふたつ。それ正解。でも気付くの遅かったな」


腹面を向けて飛び掛かってきたスコルピウスの胴が赤熱し、爆ぜる。機体内の自爆用の爆薬に引火したのだ。


「今のところ叩き潰して自爆装置を不発にするくらいか。でもそれやと中身もぐちゃぐちゃになるんよな」


「エマ。遊び過ぎだ。それに、今回はサンプル回収も不要だ」


「はいはい。わかっとるよー」


ウェインから釘を差され、エマは気のない返事を返した。


だが、逃げられて合流部隊にちょっかいを出されるのも面白くない。


キツネビに搭載されている光学兵器の迎撃性能の前では形無しだが、ビルの壁面までよじ登れる踏破性と速度を兼ね揃えた自走砲でもあるスコルピウスは厄介この上ない機体だ。


エマは本来の目的に頭を切り替える。


遊んでいる内にわりと距離を離されてしまった。


「追いかけっこの再開やね」


凶暴な笑みを浮かべ、エマはキツネビを残りのスコルピウスに向けて直進させる。燃料の残量など気にせず、ホバーエンジンの出力は最大のままキツネビの最高速度で肉薄し、邪魔な障害物や起伏があれば跳躍で飛び越えていく。


残りのスコルピウスの隊列も速度を上げているようだが、スコルピウスの車輪と車両用のエンジンでは航空機のエンジンを応用したホバーエンジンの出力を最大限に活かせる軽装のMⅢからは到底逃げることなどできない。


逃げ切れないと悟ったのか、もて遊ばれて潰された2機の仇討ちか、後列の8機が動きを変えた。


車列から離れてこちらに向き直った。散開し、キツネビを包囲する陣形をとる。


「悪いけど、これ以上遊んだら怒られそうやねん」


この特殊な無人兵器の反応を楽しみたいのは山々だが、本当に逃がしてしまうと後のご褒美に影響が出そうだ。


キツネビの光学兵器ユニットの1つが稼動し、前面に展開する。


「これでまとめてじゅう」


先ほどとは異なります、赤い閃光が散開したスコルピウス8機の表面を撫でた。


間髪をいれずに8機のスコルピウスが上下に両断される。


"光学兵器ユニット4番"

"オーバーヒート"

"緊急冷却"


攻撃に使用した光学兵器ユニットが赤熱し、上下に開いた。ユニットから周辺を写すカメラの映像が揺らめくほどの熱気が排出される。


「さあ次や」


前面に展開していたユニットは開いたまま定位置に戻った。


冷却中のユニットは自動迎撃に使えないが1本程度問題にならない。まだ3本が稼働している。


キツネビは両断したスコルピウスを跳び越え、残る10機に追い縋る。


「あ、そうくる?」


残りのスコルピウス10機が逃げつつ陣形を広げ始めた。迎撃よりも逃げて任務を果たすことに重きを置いたらしい。


散開しバラバラに逃げるつもりだ。


「じゃあ、しゃあない」


先ほど使用した光学兵器ユニットの左右反対側のユニットが1つ前面に展開した。


ただ、先ほどとは異なり、残ったスコルピウス1機1機に赤い可視光のレーザーが当てられた。すぐに機体が溶解される様子もない。


当然、各機は逃げようと跳躍するが、着地点に赤いレーザーが先回りした。


「ばぁん」


エマが戯けた声で発砲音の口真似をした瞬間、赤い可視光の当てられていたスコルピウス10機の胴体が赤熱し溶解、風穴を空けた。


少し間をおいて、自爆用の炸薬が熱で誘爆していく。


"光学兵器ユニット2番"

"オーバーヒート"

"緊急冷却"


先ほどと同じく、攻撃に使用した光学兵器ユニットは上下に開いて熱を吐き出すと、定位置に戻った。


MⅢキツネビは残骸とかした無人兵器達の上げる炎の中で誇らしげに天を仰ぐ。


「任務完了や。そっちに戻るで」


「了解した。こちらも終わりそうだ」


「ウチの活躍見とったか?」


「ああ。お前はいい女だ」


「せやろ?」


ウェインの言葉に、エマは上機嫌な返事と共に踵を返した。

MⅢキツネビはジパング・インダストリー製の光学兵器の実戦試験機でエマの愛機です。大きな欠陥がありますが、チート機体に見えていれば幸いです。

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