いじめっこ
月曜日。わたしは学校でも質問攻めにあった。
わたしは家出をしたことになっていて、その話はすっかり学校中に広まっていた。
関係ない先生や、知らないクラスの子までもわたしに聞いてくる始末。わたしは上手く説明ができないから、あいまいに答えるしかなかった。
給食を食べ終わった後、町下くんがわたしの所に来た。
「昨日は大丈夫だった? 怒られた?」
心配そうに訊ねる町下くん。
「うん、すごく怒られた」
「何があったの? 本当に家出?」
町下くんはなぜか、小さな声で訊ねてきた。
「家出じゃないんだけど、言っても信じてもらえないから、良い」
「多分、信じると思うケド、言いたくないなら、良いよ」
「いみしん」な言いかた。彼はそれだけ言うと、なぜか満足そうにわたしの席を離れて行った。
「あの、町下くん」
呼び止めるわたし。振り向く町下くん。
「探してくれてありがとう」
「うん」
町下くんはちょっと照れくさそうにすると、仲の良い友達の所へと行ってしまった。
彼はわたしが居なくなった話を聞いて、朝からあっちこっちを駆け回って探してくれたらしい。
それで神社に居たんだ。彼だけじゃなくて、他の子も何人か探してくれていたらしい。
身に覚えのない家出だから納得がいかないけど、こういうのはちゃんとお礼を言っておかないといけない。
それに気づいて、町下くんを追いかけて、一緒に探してくれた子たちにもお礼を言う。
あんまり仲の良くないミキちゃんとか、ヒメとか、クラスで一番頭の良い菅原くんも探してくれたらしい。
けっきょく、クラスの半分くらいにお礼を言って回って昼休みを無駄にした。みんなバラバラだから、探すのが大変!
「オレも探したんだけどな~~」
デブゴンだ。
わたしは納得がいかないし、信じないし、お礼も言わない。
だいたい、コイツが探してたとして、わたしを見つけたりなんかしたら、わたしは余計に逃げて行方不明になっていたに違いない。
今もまだ迷子か「死体」として発見されているに違いないのだ。
自分だけお礼を言ってもらえなかったのが気に入らなかったのか、デブゴンは授業中に何回も「家出娘」とか「家出マン、あっ! 家出ウーマン。馬だけにウーマン」って呟いてた。
先生にバレて注意されたあとも「ウーマン」と一回だけ呟いた。
授業が終わったら、わたしはまっすぐ家に帰らなければならない。しばらくは友達の家や、外に遊びに行くのは禁止だ。
友達と帰って、しゃべって遅くなるのもきっと怒られるから、ひとりでさっさと帰らなくっちゃ。
わたしは小走りで通学路を逆走する。
ときどきお尻を押さえながら。
……じつを言うと、とんでもないことになっている。その、汚い話とかではないです。
昨日、洞窟を出てオレンジを出した時からあった「いわかん」。
なんと、わたしのお尻には、「鳥の尾っぽ」みたいなものが生えている。
お風呂の時に確認したから間違いない。白くてふさふさの尾っぽ。今日は体育の授業が無くて助かった。
――くちばしはウソをつき過ぎると外れなくなって、ホントのニワトリになっちゃうからね。
おねえさんの言葉。くちばしがホンモノだったから、きっとこの話もホントウなんだろう……。
さいわい、くちばしは外れている。今はランドセルの横に下げてる給食袋の中に隠してある。
この尾っぽは、わたしがニワトリになり始めたということなんじゃないだろうか?
あのおねえさんはニワトリをいっぱい飼っているみたいだけど、もしかして、そのニワトリって……。
給食袋が光った気がした。中からくちばしを取り出してみると、ウソもついていないのにほんのり明るくなっている。
このくちばしは、もう使わないほうが良い。でも、この尾っぽはどうしよう。くちばしの力で消せないかな?
道端でくちばしと睨めっこをしていると、誰かが近づいてくる気配に気づいて、慌ててくちばしを袋に戻した。
「おい、ウママミ!」
げ。デブゴン。しかも、わたしの向かう方角からの登場。
「なあなあ、なんで脱走したの?」
いじわるなデブが訊ねる。笑いながら、カサで自分の肩を叩いている。
「あんたには教えない」
「オレも一緒に探したのになあ。恩知らず」
「だって、あんたのことキライだもん」
はっきり言ってやる。デブゴンが怒った顔になる。
「どいて。帰らないと怒られるから」
わたしも負けていられない。
「そんなの知るかよ」
デブのとおせんぼう。じりじりと近づいてくる。
「もう!」
わたしは引き返して違う道で帰ろうと思った。
「通学路以外通ったら、ダメなんだぞ」
「あんたの家だって、こっちじゃないじゃん」
「なあ、なんで家出したんだよ? 競馬のレースに出れなかったから?」
付きまとって、とことんウマ扱いする気だ。もううんざり。
「先生に言うよ」
「言えば? でも、ここは通れないぞ」
走って通り抜けようとするも、肉の壁でブロックされる。
「触らないで! ヘンタイ!」
「おまえが勝手に当たってきたんだろ!」
ちょっとひるむデブゴン。
わたしはその隙に走り出す。
「待てよ!」
めんどくさいなあ。どうして追いかけてくるんだろう。
「わたしは早く帰らないとダメなの!」
「おい! “わたし”じゃなくて“ボク”だろ?!」
ランドセルを引っ張られる。
「放して!」
しつこいやつ! わたしは怒った。
給食袋から飛び出す魔法のアイテム!
「デブゴンが狂暴な犬に追いかけられてる!」
光るくちばし。ケガしちゃっても、知らないんだから!
「おい、今なんて言った? 犬?」
怒ったような、怖がってる様な声。
「あんたが犬に追いかけられてるって言ったの!」
「なんだよ。犬なんて居ないじゃんか。ウソマミ!」
――バウワウ!!
ほうら、来た! 曲がり角から犬!
でっかい身体にギラギラした目。口からはベロが出ててヨダレまで垂らしている。
「お、おいいいい!」
走り出すデブゴン。でも、とんでもないことにわたしのランドセルをつかんだままで!
「ちょっと、放してよ!」
「やだよ! オレ、犬嫌いなんだよう!」
「わたしも~~!」
一緒に走るデブゴンとわたし。
猛犬とわたしたちの鬼ごっこ。住宅地をデタラメに走り回る。
なんでわたしまで!? こいつがランドセルさえ放してくれたら!
迫ってくる犬。このままじゃ……
「追いつかれちゃう!」
悲鳴をあげるわたし。
――ガブリ。
「痛ってえええ!」
もっと大きな悲鳴が上がった。デブゴンのお尻に犬の顔が洗濯ばさみみたいに引っ付いた!
「やったあ! ざまあみろ!」
わたしは手を叩いて喜ぶ。
「助けて、外れない。外れないよう!」
半泣きになりながらデブゴンはカサで叩いた。でも洗濯ばさみは意地でも放してくれない。
まっかな顔のデブゴン。こいつまで犬みたいに白い歯をむき出しにしながら唸る。
――キャイン!
犬の悲鳴。デブゴンがカサで、犬の目を思いっきり突いた。
犬はそのまま「いちもくさん」に逃げて行った。
「おい! ウママミ! 絶対、許さないからな!」
デブゴンがキレた。学校でケンカしてるときでも見せないフンイキ。
……でも大丈夫。何て言ったって、わたしにはくちばしがあるんだから。
「許さないんだったら、どうするの?」
バカみたい。にやにやしちゃうよ! そばの電柱でカラスが「カア」と鳴いた。カラスだって笑ってる。
「ぶっ殺す!」
デブゴンはカサを振り上げた。ちょっとドキッとしたけど、やれるもんならやってみたらいいよ。
「わたしにはカラスの羽があって、空が飛べるんだぞ!」
目の前が眩しくなって、両腕がむずむずし始める。
わたしは黒い両手をバタバタさせる。軽くなる身体。
デブゴンは腕で顔を覆っていて、決定的現場は見れなかったみたいだ。
「おい! どこ行った!?」
ようやく目を開けてわたしを探すも、残念。わたしはあなたの上よ!
きょろきょろしたり、道の角をのぞき込んだりするデブゴン。おかしくって笑っちゃう!
でも、そのうちに腕が疲れてきてしまった。鳥になるのも楽じゃない。
わたしは高い塀の上に着地する。
「やい、デブゴン!」
腰に手を当て呼びつける。
「えっ!? ウママミ?」
デブゴンが振り返り、見上げた。
「降参しろ! もうわたしに関わるな!」
指をさすわたし。
「どうやってそんなところに登ったんだよ!? 鳥の格好なんかして、ウマのクセに!」
「わたしはウマじゃない」
小声で言い返す。
「うっせーブス! ウマじゃないならウマドリだ!」
デブゴンは背伸びしてカサを目いっぱい高く上げた。カサはわたしの足よりも下のほうでふらふらするばかりだ。
「えっ!」
気付いてしまった。わたしの足が「鳥の足」になってる。わたしは「カラスの羽」としか言ってないのに!
「ヘンな格好しやがって。またアニメのマネかよ。みんなに言いふらすからな!」
鳥になったのを言いふらされる?
「やめて! 言わないで!」
「へーん。ざっこ。言って欲しくなかったら降りて来いよ!」
「降りたら殴るでしょ?!」
「あたりまえじゃん。ほら、どっちだよ? あ~。オレ今日ヒマだからな~。ずっとここで立ってようかな~~」
デブゴンの顔に余裕が戻った。
「デブゴンはわたしのことを言いふらしたりしない!」
くちばしが光る。
「……へん。別にいいけどよ。面白過ぎるから、オレだけのヒミツでもいいぜ。でも、なんで、そんな格好してるんだよ?」
デブが笑いながら訊ねる。
「これは……」
「これは……なんだよ? ウソの羽を付けて塀に登っても、人間は空なんて飛べないんだぞ!」
「飛べるもん!」
わたしは羽ばたこうとした。でも、身体は浮き上がらない。
あれっ!? 黒かったカラスの羽。今は真っ白でふわふわの羽になっている。
「飛べるわけねーじゃん!! だっておまえ、どうみてもそれニワトリだぜ!」
デブゴンのげらげら笑いが響く。
「わ、わたしはニワトリじゃないよう!」
なんだか頭のてっぺんがむずむずして来た。
――にょき!
「ぎゃはははははは! トサカが生えた! やべー! おもしろすぎ!」
崩れ落ちるデブゴン。どうしよう。ホントウにニワトリになっちゃうの!?
「わたしはニワトリじゃない……わたしはニワトリじゃない!」
叫んでみるもくちばしは反応ナシ。
「うわああん!」
泣き出してしまうわたし。デブゴンが目を丸くする。
「おい、おいマミ……鳴きかたが間違ってるぞ! ぎゃははははは!」
もう一度大笑い。
ちくしょう! 泣いたってしょうがない。なんとかして、元に戻らないと。
「なあニワトリ! 明日から学校じゃなくて、飼育小屋に行かないといけないな! しまったな~~オレ飼育係してれば良かったよ~~。3学期になったら立候補しようかな~~~」
デブゴンはランドセルから給食のコッペパンを取り出した。
デブゴンは食い意地が張っている。クラスで休みの子がいると、余ったおかずや牛乳をジャンケンして奪い合う。
彼はそれに絶対参加する。コッペパンはあんまり人気が無くて、ジャムやマーガリンがつかない日はジャンケンにならない。
でも、このデブはそういう日でもコッペパンを貰っていく。
「ほら、ニワトリちゃん~~餌だよ~~」
コッペパンを振るデブゴン。
ん……? このコッペパン、なんだか潰れててバリバリになってるんだけど?
「あんたそれ、机の中に入れてたやつでしょ!?」
「あ、バレた? 大丈夫だって! 金曜日のやつだから!」
「金曜はパンじゃなかったじゃん! 大丈夫でも、あんたのなんて要らない!」
「うるせー、食えよ!」
デブゴンは力任せにパンを引きちぎると、わたし目掛けて投げてきた。
「キモい! やめて!」
「キモいって言うな! キモいって言ったらダメなんだぞ!」
コッペパンの嵐。
「うるさい、バカ!」
「バカはおまえだ! アホ、ボケ、ブス!」
「ブスじゃない! ヒメのほうがブスだし!」
わたしはついついクラスの子のことを言ってしまった。別に仲良くないし、いいもん。
「じゃあ、ヒメの次にブス!」
指をさすデブゴン!
「おまえのほうがブス!」
わたしは叫んで指をさし返した! 特にくちばしは光らない。
「うっせー! ウマ! ニワトリ! ウソツキ! ウソツキマミ! 知ってるか? ウソツキは捨てられるんだぞ? オレのママが言ってたぞ」
「そんなわけ……」
――あんまりウソをついてると、捨ててしまうからね!
ドキリ。
「まあ、そんなでっかいニワトリだったら、ウソツキじゃなくても、キモくて捨てるけどな」
「……」
わたしは言い返せなかった。
どうしよう。ウソツキは捨てられる? ニワトリになったら、ウソを言わなくなっても、捨てられちゃう? もう、遅いの?
「おい、何とか言えよ!」
デブゴンの言葉は右から左。わたしは塀の上で小さくなる。
「おい、何か、言いわけしてみろよ?」
デブゴンも少し勢いがなくなる。
「わたし……ニワトリになっちゃう。どうしよう! 元に戻らなくなっちゃう!」
――――!
わたしの目の前がまっしろになる。
「うおっ、まぶしっ! ……なんだ、今の? っておい!?」
デブゴンが見上げる塀の上には、ちいさな一羽のニワトリ。誰だと思う?
「そんなあ。ホントウにニワトリになっちゃったあ!」
塀の上でバサバサやるわたし。
「マ、マミなのか? ホントに?」
デブゴンが震え声で訪ねる。
「そうだよ。わたしは、唯野真実だよう」
「ホントにニワトリになっちゃうなんてよ。……おい、そこは危ないから、降りて来いよ」
デブゴンが手を伸ばす。わたしは素直に従って塀から飛び降りる。デブゴンはちゃんとキャッチしてくれた。
「「どうしよう……」」
ふたり一緒に呟く。
「うちじゃ、飼えないしな……。学校の飼育小屋、ニワトリが増えてたらバレるかなあ……」
首をかしげるデブゴン。
「イヤだよ! お家に帰りたい!」
「でもよう。これ持っておまえの家に行っても、誰も信じねーぞ」
もっともだ。
「じゃあ、やっぱり飼育小屋……」
わたしのちいさなトサカがふにゃりとなる。
「でもなあ。リュースケが言ってたけど、あいつらすぐにケンカするんだって。新入りのニワトリは、きっといじめられちゃうよな……」
デブゴンはわたしを抱きながら困った顔をした。
「いじめられるのもイヤ!」
わたしは叫ぶ。
「うーん。そういえば隣町に、ニワトリをたくさん飼ってるおねえさんが居るってウワサがあったな。そこなら引き取ってくれるかも……」
隣町のおねえさん……!? やっぱり、あのおねえさんの「さくりゃく」だったんだ!
……わたしは気付いてしまった。
むこうの角で、わたしたちを見ている人が居る。塀から顔だけ出して、こっちを覗き込んでいる。
青い帽子とサングラスの怪しい格好。
帽子は前と違うけど、見間違えるはずがない。くちばしをくれた、あのおねえさんだ。
わたしは悲しいやら悔しいやらでコケコケと鳴き始めた。
「おい、そんな声だすなよ。ホントにニワトリみたいじゃんか」
「おねえさんもイヤ! わたし、その人に騙されてニワトリになったの!」
「ホントかよ?! おねえさんは、ニワトリを包丁でばらばらにして、食べてるってウワサなんだぞ!」
「じゃあなんで、そんなところに連れて行こうとしたの!?」
「だって、ニワトリって言ったら他に思いつかなくてよ。ごめん! 連れて行かないから!」
「だって、じゃない! デブゴンのバカ! あんたなんて死んじゃえ!」
わたしのくちばしが光る。
今、なんて……?
「おい、ボウズ。なんでニワトリなんか持ってるんや?」
聞き覚えのある声。
「えっ?」
デブゴンが振り返る。
「なんでニワトリ持ってるんやって聞いとるんや」
この前、追いかけて来たおじさん。
あの、包丁を持ってたフシンシャ。
「こ、これは、あとで食べようかと思って……」
デブゴンが言い訳をする。
「ほうか。じゃあ、ワシが絞めたるわ。よこせ」
おじさんがわたしに手を伸ばす。
「こ、これはダメだ!」
デブゴンがわたしを抱え込む。
デブゴンのバカ! ペットって言えば良かったのに!
「なあ、ボウズ。見てみい。ワシ、鳥を捌くの得意なんや」
おじさんが呼びかける。デブゴンが顔を上げるとそこには。
――包丁。
「ひっ!?」
デブゴンは短く悲鳴をあげると尻もちをつき、わたしを放り投げた。
「ニ、ニワトリあげる!!」
デブゴンはわたしを売り渡した。
でも、おじさんはわたしのほうを見ない。
――あんたなんて、死んじゃえ!
ぜんぶ、わたしの、せい。
「なあボウズ。おまえ肉では何肉が一番スキや?」
包丁を持ったフシンシャがデブゴンに迫る。
「ブ、ブタ肉……」
きっと、くちばしでウソをついても、フシンシャは消えない。たこやきにわとりがそうだったから。
「ボウズ、ワシな、ブタを捌くのも得意なんやで」
おじさんがにっこり笑った。
デブゴンの顔が青くなる。おじさんの狙いが自分だって、気付いたんだ。
「や、やめて。殺さないで……」
泣きながら命乞いをするいじめっこ。カサを振り回して抵抗をする。
「絞めずに捌くのは“非人道的”やから、アカンなあ」
おじさんはカサを蹴飛ばす。子豚ちゃんの上で刃物がギラリ。
――ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ!
わたしはデブゴンのランドセルにかじり付いていた。防犯ブザーがけたたましく音を立てる。
「なんや!? なんでブザー鳴っとるんや!?」
フシンシャがたじろぐ。
「おまえか!」
ブザーをくわえたわたしに腕が伸びる。
わたしはおじさんの腕をするりと抜けると、大ジャンプして羽ばたいた!
全然飛べない! それでも良い。わたしは首を思いっ切り振ってブザーを放り投げる。
うるさいヒヨコは塀の向こうへ落ち、それでも叫び続ける。
「クソが!」
おじさんが怒鳴った。
「どうしたらええんや!?」
壁の向こうを見たり、わたしとデブゴンのあいだを、ハトみたいにうろうろしたりするフシンシャ。
――パン!
突然、大きな音が響いた。わたしたちは音のしたほうを見る。
「こらーっ! 警察だぞーっ! 不審者め! 逮捕してやる!」
そこにはピストルを空に掲げた、青い帽子とミニスカートの正義の味方。
「あかん、ポリや!」
おじさんが悲鳴をあげる。
――パンパン!
婦警のおねえさんが空に向かってピストルを撃ちまくる。いいの!?
「動くな、撃つぞー!」
おねえさんが駆けてくる。
「もう撃ってるやんけ!」
おじさんのツッコミ。
「あんたを撃つって言ってるんだよう!」
おねえさんがピストルを向ける。
「か、堪忍してや」
おじさんは包丁を落とし、両手をあげた。
婦警さんは降参した不審者に手錠を掛けて、包丁を拾いあげた。
「さあ、お縄だよ! 観念するんだね!」
フシンシャはおねえさんに連れられて去って行った。
わたしとデブゴンは「ぼうぜん」とふたりを見送る。
「お、驚いた。鉄砲ってあんな簡単に撃って良いもんだっけ?」
デブゴンが首をかしげる。
「だめだと思う……。だってニュースでも問題だって言ってたし」
わたしもトサカをかしげた。
「なあ、マミ」
デブゴンがわたしを拾い上げる。そうだった、わたしはまだニワトリなんだった……。
「なによ?」
「ありがとう。助かったよ。おまえは命の恩人だよ」
デブゴンはそう言って、わたしの羽をなでた。くすぐったい。
「やめてよ、気持ち悪い。そもそも、わたしがくちばしで……」
声が小さくなる。
「今から、おまえん家に行くよ。絶対信じさせて、家に帰れるようにしてやるよ」
わたしを覗き込むデブゴンの顔は、真剣そのものだった。
「信じてもらえないよ。ウソツキは捨てられちゃうんだ」
わたしは自分のふわふわした身体に顔を沈める。
「オレも家ではよくウソついて、かーちゃんに叱られる。親って口うるさいよな。
オレは失敗ばっかするからさ、多分かーちゃんはオレの事が嫌いだ。
だけど、オレはかーちゃんが好きだ。マミ、おまえも自分のかーちゃん、好きだろ?」
わたしは返事をしなかった。気にせず歩くデブゴン。
お母さん……。
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