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絵本の中からこんにちは!?  作者: 鳥遠かめ
嘘つきはニワトリのはじまり!?
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10/15

わたし

 お母さんとは意外な場所で会った。

 わたしの家じゃなくて、学校の近所だ。

 フシンシャに追いかけられたせいで、いちど学校に戻らないと帰り道が分からなかったから、デブゴンに戻ってもらった。

 そこにお母さんがいたというわけ。


「あなた、マミのクラスの子? うちのマミ……唯野真美を見なかった?」

 お母さんがデブゴンに訊ねる。


 デブゴンは、わたしとお母さんを見比べると、はっきりとこう言った。

「唯野さんのお母さん。このニワトリが、マミちゃんです」


 ニワトリを差し出すデブゴン。

 お母さんの顔はみるみる赤くなり、鬼のようになった。


「どうしてそんなことが言えるの!? うちの子が昨日、家出をしたの知ってるハズでしょう!? 他の子は心配して探してくれたっていうのに、どうして、そんなウソがつけるの!?」

「違う、ホントウなんだ! それに、オレも探してたし! このニワトリはマミだし、さっきは刃物を持った男に追いかけられて、大変だったんだ!」

 デブゴンも顔を真っ赤にする。


「そんなウソばかり!」

 睨みつけるお母さん。こんなに怖い顔、見たことがない。昨日叱られた時よりも、もっともっと怖い。鬼だ。


「ウソじゃない!」

 デブゴンは負けずに睨み返した。

「……うちの子も最近、やたらとウソが多いのよ。もしかして、あなたみたいなののせいじゃないでしょうね!? 知っているのよ。あなたが他の子をイジメてる問題児だって」

 お母さんは激怒した。かの有名ないじめっこをもう一度睨みつける。


 デブゴンは青くなった。何か言おうとしてたみたいだけど、出てきたのは「マミが…」の一言だけだった。


「ふん」

 お母さんは「プイ」とあっちを向いて、立ち去ろうとする。小さくなるお母さんの後姿。



「待って! デブゴンは本当にわたしを届けようとしてくれたの!」



 わたしは叫んだ。振り返るお母さん。あたりを見回す。


「わたしよ。マミよ!」

 お母さんの前で人間の言葉を話すニワトリ。


「……?」

 お母さんは首をかしげ、デブゴンのうしろを覗き込んだ。


「わたしだよ。このニワトリが、わたしなんだよ」

 羽を広げて抗議する。


 デブゴンがもう一度、わたしを差し出す。


「ホ、ホントウに、マミなの?」

 目をお皿のようにするお母さん。わたしを受け取る手が震えている。


「そうだよ。昨日の晩ご飯、カレーだったでしょ。ちくわの入った」

 わたしは「しょうこ」を出す。


「ああ……そんな、マミ!」

 お母さんは泣き出してしまった。わたしも泣いてしまう。


「……どうして、こんなことになったの? 昨日に言ってた、くちばしの話、ホントウだったの?」

 お母さんの質問。


「だから、ホントウだって言ったじゃん!」

「ああ! マミ!」

 今さら信じてもらっても遅い、わたしはもうマミじゃない。わたしはニワトリ。


「……でも、違うの。こうなったのは、わたしがウソばっかりついたせいなの! ホントウは、ウソなんてつきたくなかった!」

 わたしは力いっぱい叫んだ。



 わたしのくちばしが光り輝く。いつものまぶしい白じゃなくて、きれいな虹色に。



 わたしの小さな白い身体がにょきにょきと元の大きさに戻り、いつもの服とランドセルの姿へと変わる。


「あ……」


 くちばしが落ち、こつんと地面に当たった。


「「やったあ!」」


 わたしとデブゴンはお互い両手を握って飛び跳ねる。

 お母さんは顔を濡らしたまんま、その場にへたり込んでしまった。



 お母さんはしばらくして落ち着いたら、立ち上がってデブゴンに謝った。

 デブゴンは鼻をこすると「当然のことをしたまでです」なんて言って笑い、カサをふりふり去って行った。

 帰り道、お母さんはわたしの手をずっと握っていた。

 帰ってからは特に何も言わなかった。くちばしのことはお父さんやお姉ちゃんには話さなかったみたい。


 ところで、あのくちばしだけど……もう使わない事にした。机の一番下の段の、大きな引き出しの後ろに落として「ふういん」した。

 地面に落ちた時に、当たったところの金色が剥がれて灰色になってたし、やっぱり安物だ。



 次の日。朝ごはんの時、お母さんが「お母さん、あなたのことが心配だから、今週はまっすぐ帰って来て。外へ遊びにも行かないで」と言った。わたしも、ちゃんと返事をした。


 遊びに行けないのは残念だけど、なんだかあまり嫌じゃない気がした。


 学校の昼休み。わたしは放課後に遊べないぶん、たくさん遊ばなきゃダメだと考えた。

 だけど、そういう風に考えれば考えるほど、何をしたらいいか分からなくなってしまう。


「ねえねえ。わたし、海モン2.5買ってもらったんだけど、カケルくんはやった? むずかしいところがあるんだけど」

「ぼくは2.5は持ってないや。でもストーリーは2と大体一緒だから、分かると思う」


 ミキちゃんと町下くんがゲームの話をしている。ふたりはわたしの憧れだ。あまり仲が良くないけど、一緒に遊べたらいいなと思う。

 ふたりは仲が良いけど、ふたりはふたりでそれぞれ仲のいい友達が他にもいる。

 だいたいは誰かと遊ぶ約束をしている。わたしには、よく遊ぶ友達というのはそんなにいない。


「そこはね。ゴミ箱の中にスイッチがあるんだよ」

「ああ、そうなんだ」

 わたしも、海モン買ってもらおうかな。1の中古でもいいから。どうせ今週はヒマだし、おねだりしてみようかな……。


「ようマミ、何見てんの?」


 げ、デブゴン。いくらヒマでも、こいつはちょっと……。

「マミも海モンやりたいのか?」

 ウマとかウソツキって呼ばなくなったのはいいけど、マミマミって、すっごく馴れ馴れしいんだけど!


「うん。わたしも、ちょっと興味あるの」

 でも、正直なわたし。


「……ふーん。おい、カケル!」

 デブゴンが町下くんに話しかける。「ろこつ」に嫌な顔をする町下くん。

「今日の放課後、海モンしようぜ」

「なんだよ急に。ぼくはおまえとは遊びたくない!」

「あはは! 町下くん、ハッキリ言う!」ミキちゃんが大ウケする。

「そんなこと言うなって、今日はマミも一緒にさ」

 わたしのほうを見るデブゴン。


「マミって、唯野さん?」

 町下くんもこっちを見た。


「え、大丈夫。わたし、しばらく遊びに行くの禁止だし、海モンも持ってないし……」

 わたしは遠慮する。


「ふーん。じゃー、唯野の家で遊ぼうぜ。海モンはオレのを貸してやるよ。通信するために二個持ってんだよ!」

「ひとりで通信してるの? デブゴンおもしろい!」

 ミキちゃんがまたウケてる。

「うるせー。おいカケル、今日は放課後、唯野の家な!」


「……分かったよ。おまえと遊ぶんじゃないぞ。唯野さんと遊ぶんだからな!」

 勝手に決まってしまった。


「唯野さんちだったら、わたしも行ってみたいな!」

 ミキちゃんも加わる。

「いいぜ。4人で遊ぼうぜ」

 デブゴンがニヤリと笑った。

「仕切るなよ!」

 町下くんが怒る。

「言い出しっぺのオレが偉いんだよ!」

 デブゴンが胸を張る。

「は? デブゴンとは“遊んでやってる”からオレのほうが偉いし!」

 町下くんが対抗する。

「あはは。じゃあ、海モンの対戦でどっちが偉いか決めたらいいじゃん!」

 ミキちゃんはずっと笑ってる。

「いいぜ。じゃあ今日、唯野んちで勝負な!」

「望むところだよ!」


 ……まったく、わたし抜きで決めちゃって。


 今日の放課後は、どうやら忙しくなりそう!


***

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