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絵本の中からこんにちは!?  作者: 鳥遠かめ
嘘つきはニワトリのはじまり!?
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6/15

にわとり

 ボク(・・)の名前はタダノマミ。唯野真美って字を書く。小学4年生。

 

 マミと言うだけあって、ボクは女だ。

 女なのに“ボク”って言うのは、ヘン?

 

 ……だって、この前テレビアニメの悪役が、女なのに「ボク」って言っていたから。

 そのキャラクターは、とってもカッコイイんだもん。男じゃないクセに強いし、敵のクセに優しいところもあるし、水色の髪をしているし、スカートじゃなくてズボンをはいているから。


 でも、ボクは別に、男になりたいわけじゃない。

 カッコイイのが好きなだけ。カッコイイと思うものに、たまたま男子のものが多いというだけ。フツーにお姫様とかも好きだ。


 日曜の朝には女の子向けのアニメだけじゃなくて、男の子向けのアニメや変身ヒーローもやってる。

 ボクはそれを全部観ている。それは学校のみんなには秘密だ。笑われちゃうから。

 本当に笑われちゃうかは分からない。男子とよく遊んでる友達のミキちゃんはそういうのが好きだし、彼女は笑われてない。

 昔のミキちゃんは髪も長くて、お姫さまみたいな恰好をしていた。そのミキちゃんが2学期になってからスカートをやめてズボンにして、髪の毛も短くしたとき、誰も笑わなかったし、ボクがマネしたときも、別に何も言われなかった。


 でも、「わたし」を「ボク」って呼びかたにしたら、笑われた。


 クラスに太っちょで、身体の大きい男子がいる。あだ名はデブゴン。

 よく嫌がらせやケンカをして先生に叱られている。他の学年の子ともトラブルが多い。

 昨日も2年生の子を押して転ばせて泣かせてしまって、怒られてた。ざまあみろ。

 誰かに変わった事があると、だいたいコイツが嫌なことを言う。すぐに人にあだ名をつける。あだ名はダメって言われてるのに。

 しつこいし、嫌がらせにハマると学校が終わってからも現れる。


 ついさっきも、デブゴンから逃げて帰ってきたところ。


「おい、ウマ」

 デブゴンはわたしを“ウマ”と呼んだ。

 別にわたしの顔が馬に似てるというわけじゃないし、走るのが特別速いというわけでもない。


 ――ウソツキマミ。


 学校でデブゴンが、ボク……わたしに最初に付けたあだ名。

 さっきのアニメのキャラクターの話をしていた時に、「どうしてそのキャラが好きか」って言い合っていて、わたしは「“カッコイイ”から」って言ったのに、デブゴンが話に勝手に入って来て「女子は“カワイイ”のが好きだろ。オカマキャラカワイイ~~」ってバカにしたんだ。


 学校では男なのに女みたいだったり、女なのに男みたいだとオカマって言われる。

 そういうのはダメだってみんな知ってるけど、ダメなことを言うのは面白いから。


「でも、そのキャラがオカマだって知ってるってことは、デブゴンも女子向けのアニメを観ているということだから、オカマじゃん」


 わたしはそう言って反撃してやった。みんながデブゴンを笑った。大爆笑だ。まあ、みんなも観てるんだけどね。

 そしたらデブゴンが付きまとってくるようになって、わたしの失敗やヘンなところを探そうとしてくるようになった。


 でも残念! わたしには悪いところがあんまりない。

 女子だけど体育はできるほうで、たまに数合わせに男子扱いされることがあるし、理科は好きだし、算数も国語も得意。

 社会だけ苦手で、「通知表」に「がんばろう」を付けられたことがあるけど、夏休み前に貰ったやつは「できる」になっていた。


 「がんばろう」になるとお母さんに「どうして?」って聞かれるから、聞かれないよう頑張った。


 でも、夏休みのあゆみで「できる」になったらなったで聞かれたし、お母さんはしつこい。

 だから今、悪いところがあんまりない。


 ……でも、良いところも少ない。


 体育はできるって言ったけど、走るのは男子にはほとんど勝てないし、塾に行ってる子の方が頭が良い(でも、頭の一番良い子は塾に行っていない!)。

 漫画の絵も上手じゃないし、ゲームもあまり持ってない。


 だけど、良いところが無いのも悪い事ばかりじゃない。


 デブゴンはたまに人の良いところもバカにする。良いところなのに、さも悪い事のように言うんだ。

 あいつはわたしをバカにするために頑張ってたけど、「ケッテン」も「チョウショ」も無いわたしには、何もできないのだ。


 でも、じつを言うと……この前、失敗しちゃった。それもふたつも。


 社会の授業に使う地図帳を忘れて来ちゃった。

 それで、たまたま当てられる日で、先生にバレて「どうして忘れたの?」って聞かれた。

 分かんないよ。社会は頑張ってたから、忘れないように気を付けてたのに、どうしてだかランドセルに入ってなかった。

 「家で勉強してたから」って言ったら「よく探してみなさい」って言われて、机の方を探したら、あった。

 デブゴンが「置き勉だ」って言った。「忘れただけだし」って言ったら、「じゃあ勉強ウソじゃん」って言い返された。

 その日から「ウソツキマミ」とか「ウソマミ」とか言ってくるようになった。


 しかも、わたしが「でも」とか「だって」って言うだけで「はいウソ~~」って指をさして喋らせないようにしてくる。

 クラスの誰もそれには乗っからない。だって、わたしはウソツキじゃないから。イイワケはみんなやってるし。

 それに、デブゴンの言うことをいちいち気にしてたら、うちのクラスじゃやっていけない。

 今はたまたま、デブゴンの狙ってるのがわたしというだけ。みんなもそれが分かってる。


 もうひとつの失敗。

 「ボク」を始めたこと。もちろん好きなアニメキャラのまね。そういうのだって、みんなやってること。

 さすがに幼稚園児じゃないから、「〇〇ごっこ」とかはしないけど、言いかたやセリフをまねたりすることはよくある。


 わたしが「ボク」と言い始めた時も、みんなはそれに乗っかって「ワガハイ」とか「わたくし」とか言って遊んで面白かった。

 でもデブゴンが入って来て「オカマのまねしてる」ってまた言ってきた。


 むかついたから「違うもん、お父さんがわたしを男の子にしようとしてるから」って言ってしまった。


 どうしてそんなこと言っちゃったんだろう。言ってすぐ、顔が熱くなった。



 ――ウソツキマミ。



 ウソツキマミ、ウソマミ、ウマ。ちょっと省略しすぎだけど、最近はもう「ウマ」で呼んでくる。

 わたしが怒ると「ヒヒーン」って馬のまねをする。馬のまねはけっこう、みんなにウケてた。

 ……笑われてるのはデブゴンなんだけど、気付いていらっしゃらない。


 わたしが「ボク」って言うのも、やめたいんだけど、「わたし」って言うとデブゴンが「シテキ」してきてめんどくさい。

 まだ慣れてないから、ワザとじゃなくても「わたし」って言ってしまう。どっちがどっちなのかこんがらがってくる気もする。

 今日は特に言い間違えが多くて、友達の前で赤くなってしまった。


「はぁ……」


 今日は誰とも遊ぶ約束をしていない。だって、デブゴンが「終わりの会」の時にこっちを見る気がして、キモかったから。

 挨拶が済んだらさっさと教室を出て、門を出たらすぐに走って帰った。


 家に居たって退屈だし、もしかしたらデブゴンが来るかもしれない。来たことはないけど、近くまで付いて来られたことはある。

 だからひとりで、どこかに行くことにした。



 わたしは探検が好きだ。建物とか、山とか公園も好き。移動すると景色が変わって楽しい。

 男子のゲームソフトの“海モン”にアイテムを売っているお店や、海底ダンジョンがあるんだけど、そういうところに行ってみたい。

 店員さんや探検家になってみたい。だってカッコイイから。


 でも、ダンジョンは「ソンザイ」しないから、行ったことの無いマンションとか、スーパーで我慢する。


 ケーキ屋とかコンビニはだめ。お店の人が見てくるから。マンションは勝手に入っても大丈夫。

 声を掛けられても「友達のところに遊びに来た」って言えば怒られない。


 公民館や図書館は大きくて、通路や棚が沢山あるし、建物の外や隙間に行っても怒られないから好きなんだけど、学校の友達が居ることが多いから、今日はやめておこう。


 わたしは最初にスーパーに行った。

 ここに来たら、フードコートの席を必ずチェックする。前にそこに「お姫さま」が居たから。

 お姫さまみたいな服を着た子は学校にもたまにいるけど、あの子は髪の毛も目の色もお姫さまみたいだった。

 ああいうのもカッコイイと思う。でも、見かけたのはその一回きり。


 別に主婦になりたいわけじゃないけど、お買い物をするフリをする。本当は店員さんのほうが良い。

 品物を出してるおばさんとか、レジを打っているおねえさんはカッコイイ。

 中でも値段のシールをカチャカチャつけるヤツを素早くしてるおじさんが一番だ。


 お店の中を長くうろうろしてたら、同じ店員さんと何回かすれ違って、こっちを見られた。

 わたしは「売ってないか~」って言ってスーパーを出た。


 次は、知らないマンション。

 前から行ってみたかったマンションがあるんだ。遠くから見ても大きいって分かる、新しくて立派な茶色のマンション。

 今日はヒマだから、そこまで行ってみようと思う。楽しみ。エレベーターと階段は当然あるだろうし、誰かの部屋じゃないドアや、謎の行き止まりがあると、もっと良い。


 階段の踊り場から、外を見たらどんなに気持ちが良いだろう。

 本当は、屋上に登ってみたいけど、どこのマンションも、屋上への階段には扉が付いてて、カギがかかってる。残念。


 ところで、思ったよりマンションは遠かった。「校区外」の道路よりも向こうだ。

 ……本当はそっちに子供だけで行っちゃダメなんだけど、その先ならデブゴンは絶対に来ないと思うし、デブゴンじゃないなら文句を言わないと思うから、大丈夫。

 わたしはちょっとだけあたりを確認してから、「校区外」へ出る。



 ――コッコッコ。



 ニワトリの声がした。

 もう一度見回すけど、道路と家の塀ばかりで、学校は無い。謎だ。ニワトリを見かけるなんて、学校の飼育小屋くらいだし。



「お嬢ちゃん! そのニワトリを捕まえとくれ~~!」

 女の人の叫び声がした。



 そっちのほうを見るとニワトリが走ってやってくる。


 わたしはニワトリを捕まえようと手を伸ばすけど、白いもこもこの身体はするりと抜けて、わたしの膝に頭をぶつけて、ひっくり返ってしまった!


 死んじゃった……?


「こら、ニワトリ~~!」

 女の人が駆けてくる。……ちょっと「ダサい」格好をした女の人。

 ジーパンにジャンパーに、野球帽。それに何より、サングラス。こぶしを振り上げて、ニワトリに向かって怒ってる……というかキレてるみたいだ。……どうしよう。


「はあはあ。助かったよう。お嬢ちゃんが捕まえてくれたんだねえ」

 女の人は息を切らせて、わたしの前で止まる。


「知らない。ニワトリが勝手にぶつかって来た!」

 わたしはすぐに言った。


「そうなのかい? でも、おねえさん、助かったよ」

 そう言うと、あやしいおねえさんの口がにっこり笑った。


「こら、起きなさい! あ、寝てるほうが都合良いか……」

 そっとニワトリを抱きかかえるおねえさん。

 冷たくなってないか心配したけど、ニワトリはおねえさんに持ち上げられると、なにやら「もにょもにょ」言った。ニワトリも寝言を言うんだ……。


「捕まえてくれたお礼を、しないとねえ」


「大丈夫です」

 わたしは断った。


「そんなこと言わずにさ。お礼のひとつでもさせてもらわないと、おねえさんの気がすまないんだよう。ねね、お嬢ちゃんの名前、なんて言うんだい?」

 おねえさんが覗き込んでくる。


「わた……ボクは……」

 言っちゃいけない。学校で教わった。知らない人に「コジンジョウホウ」を教えたらダメなんだ。

 名前も、学校も、住所も言っちゃダメ。

 二年生の時は放課後も名札を付けてろって言われてたのに、三年からは「つけない」って言われて、今年はなぜか「学校の中だけつける」になった。おとなは面倒くさい。


「ボク? キミは、男の子なのかい?」

 首をかしげるおねえさん。


「うん。オレは男だよ」

 わたしは言った。


「うーん? 男の子にしては、ちょっと髪が長いような……。おねえさん特製のアクセサリーをあげようと思ったのになあ」


 ……アクセサリー?


「でもまあ、カッコイイやつだから、男の子でもいっか。ほら、これをお礼にあげるよ」

 おねえさんがわたしの手に何かを乗せる。


 ……金ぴかの、三角をふたつくっつけたような、良く分からない物体。


「ティアラ?」

 アクセサリーでこういう形をしているのといえば、お姫さまの頭に乗っかってるティアラくらいしか知らない。


「ノンノン。これは“くちばし”だよ!」

 指を振り振りおねえさんが言う。


「くちばし……? 鳥とかの? 口に付けるの?」

 今度はわたしが首をかしげる番だ。


「そうだよ。わたしが作ったんだよ! どうだい? カッコイイだろう?」

 お姉さんが胸を張る。

 くちばしなんて作ってどうするの……? ダサイでしょ。


「そのくちばしにはね、不思議な力があるんだよ」

 おねえさんはしゃがむと、サングラスを外して、わたしに顔を「ズイッ」と近づけた。


「不思議な力?」

 わたしは一歩下がる。


「……そう。そのくちばしを付けてウソを叫ぶと、言ったことが、ホントウになるのさ」

 おねえさんは何やら低い声で、ゆっくりと言った。夏休みにテレビで見た、怖い話みたい。


「ウソだ」


「ホントウさ」


「おねえさんはウソツキだ!」

 ウソツキはドロボウのはじまり。あやしい格好だし、飼い主のクセにニワトリに逃げられてたし。


「人を疑うのは良くないよ!」

 おねえさんがこぶしを振り上げる。わたしはまた後ずさる。

 人を助けて、お礼を貰ったのに怒られるなんて、ヘンだよ!


「おっと、ごめんよ! その金のくちばしは、キミに幸運をもたらすくちばしだからね。大事にするんだよ」

 おねえさんはこぶしを下ろすと、両手を腰に当てて鼻息を吐いた。


 ――コッコッコッコ。


 ニワトリの白いお尻が遠ざかっていっているのが見えた。


「あっ! しまった! こら、待て~~~!」

 おねえさんは再びこぶしを振り上げると、ニワトリを追いかけて行ってしまった。


 ……と思ったら戻って来た。


「言い忘れてたよ。くちばしはウソをつき過ぎると外れなくなって、ホントのニワトリになっちゃうからね。気を付けるんだよ!」

 だから信じないって。

 おねえさんはこぶしを振り上げなおすと、小さくなった白いお尻を追いかけて行った。


 ……大人って勝手だな。


 手の上に残された金ぴかのくちばしを眺める。

 ホンモノの金でできてるんだろうか? もしもホンモノだったら、わたしはお金持ちだ。

 おねえさんは「口に付けるもの」って言ってたけど、ゴムも紐も無いから、どうやって付けたらいいか分からない。

 やっぱり、頭に乗せるティアラじゃないかしら。

 試しに頭の上に乗っけてみるけど、ちょっと動くとすぐに落っこちそうになる。


 そういえば、本物のティアラだって、どうやってくっ付いてるのか分からないな。


 くちばしはポケットに入るほど小さくないし、邪魔だけど手に持っておくことにした。

 とりあえず、ウソのくちばしなんてどうでもいい。わたしは、あのマンションに行くんだ。


 ……でも、すぐに引き返すことになった。


 住宅地を抜けて、大きい道路に来た。知らないお店や会社の並ぶ道。沢山の人が歩いてる。みんな忙しそう。

 それで、そこの信号を渡ったときに、気が付いたんだ。


 まぶしい。陽がもう傾いている。夕日というほどじゃないけど、最近はもう暗くなるのが早くなってきたから、時間が無い。

 あのマンションはちょっと遠過ぎる。

 遅くなるとまたお母さんに文句を言われる。だから、帰らなくっちゃ。


 信号がまた赤になってたから、もう一度待たないといけない。

 同じ信号をすぐに渡ろうとしたからか、知らないおばさんがこっちをチラッと見た。わたしはちょっと恥ずかしくなった。


 初めて来た道だったけど、ずっとまっすぐだったから、帰るのに迷うはずなんてない。

 だけど、行くときは目印のマンションが空に見えていたけど、帰りは何もない。逆向きになると景色が変わっちゃう……。

 景色が変わるのは、いつもは面白いのに、今日はイヤだった。


 わたしは知らない景色の中をダッシュで帰った。

 信号はちゃんと青で渡った。横断歩道では手もあげたし、曲がり角には気を付けた。

 家の近所に来た時は、汗だくで、すごく疲れてしまっていた。手の中のくちばしがべたべただ。


 わたしは家に帰ると、靴をそろえて、手を洗ってうがいをして、机の上にくちばしを置いて、台所でお茶を飲んだ。


「最近は暗くなるのが早いから、もっと早く帰って来なさい」

 お母さんのお小言。


 せっかく急いで帰って来たのに!


 わたしはお母さんを無視して部屋に帰った。宿題と、ついでに明日の準備を済ませる。

 夜まで放って置くと、また文句を言われるに決まってる。


 ……。


 これで大丈夫。明日の学校は社会の授業は無いし、明後日は土曜日で休み。大丈夫。

 急いでやったから、晩御飯までに全部終わってしまった。

 また少しヒマになったから、雑誌の好きなページを眺めることにした。

 女の子向けの漫画の雑誌だけど、“海モン”の漫画が載ってる。

 ゲームは男の子向けだけど、海モンのキャラクターは可愛いから、女の子にも人気がある。


 わたしは海モンの漫画やアニメの主人公が好きだ。

 その男の子はモンスターに命令して敵をやっつけるんだ。

 あーあ。海モンが、本当に居ればいいのに。わたしもデブゴンとかをやっつけてもらいたい。

 でも漫画やゲームの世界はウソだから、ありえない。


 ふと、おねえさんの言っていたことを思い出す。


 ――そのくちばしを付けて叫ぶと、言ったことが、ホントウになるのさ。


 机のうえでくちばしが「キラリ」と光った気がした。

 ホントにそんなこと、あるわけない。でも、もし本当だったら……。


 わたしは試しにくちばしを口に当ててみる。


「海モンは本当にいる」


 ……ばかばかしい。


 叫ぶって言ってたっけ。でもここで叫んだら、怒られちゃうよね。でも、ちょっと試してみたい気もする。

 でも、わたしはお母さんに晩御飯に呼ばれたから、くちばしを机の上において部屋を出た。


 ご飯はおいしくなかった。

 明日の学校が「ユーウツ」だ。またデブゴンが何か言ってくるに違いない。

 家では、わたしは「わたし」のままなんだけど、さっき言い間違えて「ボク」と言ったら、お母さんやお姉ちゃんに変な顔をされた。

 「ボク」なんて始めなければ良かった。

 まだ慣れてないから、しばらく学校に行かなければ、「ボク」って言ってたことも、「ウマ」のことも、みんな忘れてしまうんじゃないだろうか。

 お風呂で考え事をしていたら、お姉ちゃんに早く出ろって文句を言われた。

 最近寒くなったから、お湯が冷めて「メーワク」らしい。

 お姉ちゃんがお風呂から出たあと、「お湯がぬるかった」と文句を言われた。

 わたしはむかついたから、お腹を出して寝ることにした。


 お姉ちゃんのお風呂がぬるかったぶん、わたしが冷たい思いをすれば良いんでしょ? それで風邪をひいたら、お姉ちゃんのせいだ!


***

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