3.まじょ
翌日。日曜日。
ぼくはさっそく気分が悪くなった。
理由は日曜の朝にやっている、海モンのアニメ。
テレビアニメにはもう限定キャラの“たこやきにわとり”が出ていた。
なかなかひょうきんなキャラクターで、関西弁でつまらないおやじギャグを言っている。
こういうふざけたキャラクターは大体弱い。だけど、アニメでは“かえんほうしゃカジキ”を倒していた。
かえんほうしゃカジキはぼくのお気に入りのキャラクターだ。
アニメの主人公はかえんほうしゃカジキを仲間にしていないからあまり出てこない。
久しぶりに見れたと思ったらこの扱いだ。
カジキはまえも主人公の仲間の“でんきウミウシ”に負けてた。
本当はかえんほうしゃカジキの方が強いんだ。でんきウミウシはゲームでは弱いし、とり系はみんな火に弱くて焼き鳥になってしまうはずだ。
ゲームなら多分、レベルが同じだとカジキが負けるのは百パーありえない。
ぼくはテレビを消して、転がってるお父さんに近い所に置いた。
お父さんが「珍しいじゃないか、いつもは次回予告までにチャンネルを変えたら怒るクセに」と言った。トドは黙ってて!
さて、今日はどうやって過ごそう。
ぼくはとりあえず机に向かって、例の本を開いてみる。
予想していたとおり、空白のページがいくつか埋まっていた。
ペジタとドロシーがピクニックをしている絵と、ペジタが剣を見つけている絵だ。
これで話が繋がった。
ところで、「ピクニックのページ」はぼくがあらかじめ予想していたから、それだと分かったけど、いきなり見せられても何の絵か分からないほどにヘタクソだった。
本の絵を見ると、ちょっとニヤついてしまう。面倒くさいこともあったけど、この本が931円だなんてお買い得だった。
ペジタやドロシーは元気にしているだろうか。
またふたりが出てきたら良いな。今度ふたりが出てきたら、こっちで一緒に遊んだりしたい。
それにしても、出てきたのが召使いとかお姫様で良かったよ。
――もしこれが、悪い魔女とかドラゴンだったら……。
ぼくは途中まで想像して、慌てて違うことを考えようとした。だけどダメだった。
机の上の本がガタガタと震え始める。
マズいぞ! このパターンは! 魔女とドラゴンが出て来ちゃう!
本を両手で押さえるけど、ぼくの腕も一緒にがくがくと揺れる。
机に登って、本の上に座り込むけど、ぼくの身体ごと揺れる!
ぼくは部屋の真ん中に投げ出されてひっくり返った。
部屋中が変な煙でよく見えない。ぼくはお尻を思いっきりぶつけて半泣きだ。
煙の中から、いきなり木の棒が飛び出して、ぼくの鼻先でぴたりと止まる。
みんなも見たことあるでしょ? あのしわしわで、先の方がぐるっとなった、魔女の杖。
「イーッヒッヒッヒッヒ!」
この、聞いたことは無いけど、文字では読んだことのある笑い声。いまどき、アニメでも言わないよ。
煙の中が消えて、魔女の姿が現れる。
もうね、見たまんま。魔女。あのヘッタクソな絵でも簡単に魔女だと分かるような、黒い三角帽子と、裾の長い黒いローブ。
それでいて、ローブから覗く腕は骸骨みたいに細くて、木の杖と一緒になってるみたいにしわしわ。
顔ももちろんしわしわで、鼻が高くて曲がってて、帽子からはみ出る白髪はぼっさぼさ。
「おい、小僧! ワシの事を呼びだしただろう?」
まっかに充血した目が、ギロリ。
「よ、呼んでないよ。帰ってください」
ぼくの声は震えていた。正直、ビビってる。
「ふん! 子供はすぅぐに嘘をつくねぇ! どいつもこいつも!」
どいつもこいつも? ぼくはドロシーやペジタが心配になった。
「まあ、いい。うるさい小娘に追いかけられてたところを助けてもらったお礼をしなきゃねえ……」
ドロシーの事だろうか。……と、言うことはぼくは魔女を追い詰めるのを邪魔しちゃったの!?
ぼくは魔女の事を一瞬忘れて、本を探した。続きが変わってしまってるかもしれない。でも、本は見当たらない。
「おまえさんが探してるのはこれかえ?」
魔女は懐から本を取り出した。枯れ木みたいな腕で、あの重たい本を軽々と持ち上げている。
「返せ!」
ぼくは魔女に飛び掛かった。
「嫌だね。子供には過ぎたおもちゃだよ。それより、小僧。おまえには消えて欲しいモノはあるかい?」
魔女はそういうと「イーッヒッヒッヒ」と笑った。消して欲しいモノ?
「そうだよ。おまえさんの邪魔をするモノさ。気に入らない親だとか、面倒くさい学校だとか、後はそうさねぇ……おまえさんの“悩み”でもええぞ」
悩み……。
「じゃ、じゃあ。海ブツモンスター2.5が欲しいって言ったら?」
「欲しいぃ?! おまえは人の話をちゃんと聞いてたのかえ? ワシは、消してやると言ったんだ。さあ、早く言え! 言わないとおまえを消してしまうぞ!」
ちょっとでも魔女をアテにしようなんて考えるんじゃなかった!
「さあ、決まったかえ……?」
魔女は笑った。口がほっぺたの上まで裂けているみたいだ。
ぼくは、冷静になろうとした。。
大丈夫、思い出すんだ。こういうピンチの時に役立ちそうな、漫画もアニメもゲームも絵本だってたくさん知っている。
ぼくは、ニヤリと笑うと魔女にこう言ってやった。
「……おまえを、魔女を消して欲しい!」
魔女は目をお皿のように真ん丸にした。
「ワシに消えて欲しいぃ? 馬鹿かえおまえさんは? 誰がそんな願いを聞くんだい? おとぎ話の読み過ぎなんじゃあないかね? ん?」
そういうと魔女は、杖でぼくの頭をコンコンと叩いた。
「まあ、ええ。ワシの心はこの部屋とは違って広いからの。ちょっとのあいだだけ消えてやる!
いいかい? 昼過ぎまでに消えて欲しいモノを考えとくんだよ。どうでもいいモノを言ってもダメだからね。
おまえに関係のあるモノ限定だ! ワシはちゃあんと、戻ってくるからね!
それまでに決めてなければ、おまえを消す! イーッヒッヒッヒ!!」
た、大変なことになった……。解決するにはきっと剣が要る。
でも、ぼくは剣なんて持ってないし、本は魔女に取られてしまっている。
「さあて、それじゃちょっと外をぶらついて来ようかねえ。魔法を使って久々に“大暴れ”だよ! イーッヒッヒッヒ!!」
ぼくは背中に氷を放り込まれたみたいになって、目の前も真っ暗になった。
このままだと、魔女の魔法で街はめちゃめちゃにされてしまう! ぼくのせいで!
ぼくの責任で……? ぼくは責任を取らされて、逮捕されちゃうのだろうか?!
「なんでぼくが! 待ってよ!」
ぼくは魔女を追いかけて部屋を出た。玄関のドアが、ばたんと閉じる音。
「今の、カケルのお友達? あんた、変わった友達多いね」
お母さんが居間から覗き込む。
さて、困ってしまった!
ぼくは足が速い。でもこの場合、魔女を追いかけて、追いついたとしても手の打ちようがない。
相手は魔法使いだ。それも街で大暴れできるほどの。警察だって逮捕できないに決まっている。
どうしてぼくがこんな目に! 夢だったらいいのに!
ぼくは思いっきりほっぺたをつねってみた。……意味ナシ!
こんなことをしてる場合じゃない。魔女はお昼過ぎには帰ってきてしまう。
それまでに、「消えて欲しいモノ」を考えておかないと。
魔女は「ぼくに関係のあるモノ限定」と言った。つまり、学校とか、お父さんとかお母さんとか……。
ときどき嫌になることもあるけど、どれも消えたら困る。
学校にはイヤな奴がいっぱいいる。デブゴンとかヒメとか。
でも、それでも彼らにだって友達は居るし、家族だって居るんだ。ぼくの勝手で消しちゃうわけにはいかない。
海モンを消してもらおうかとも思ったけど、最近はイヤでも、ぼくは海モンのお陰でたくさん楽しい思いをしたし、トモキやリュースケだって海モンが大好きなんだ。
たこやきにわとりならともかく、こんな「限定」は要らないよ!
ぼくはウンウン唸りながら、消えて欲しいものを考えた。
……でも、ダメだった。
お昼ご飯の焼きそばも味がしない。もう、ぼくひとりの力じゃ限界だった。
こういう時は、大人の力に頼るんだ。
ぼくはお父さんを探した。
お父さんはパソコンで何か調べものをしてるみたいだった。ちょうど良い。
「ねえ、お父さん。教えて欲しいことがあるんだけど」
「ん、なんだ? パソコン使うか?」
「どっちでもいい。この世から消えてなくなったほうが良いモノ、教えて」
「ん~。なんだそれ。何でもいいのか? 戦争とか災害とか?」
なるほど、いい考えだ。だけど、今の所はぼくには関係がないモノだ。
日本が戦争をしたのはずっと昔だし、地震や台風も大きなのは体験していない。
「できれば、ぼくに関係あるモノ」
「関係なくはないだろう?」
「関係ないままかもしれないでしょ」
「ん~。そうだな。そのほうが良い。じゃあ、似たようなもので、今後おまえに絶対関係してくるもの」
「あるの?!」
「あるぞ。差別と、貧富の差と、無駄に長い労働時間だ。将来社会に出れば百パーセント関係がある。
どうだ、無くなったほうが良いだろう? お父さんも嫌いだ。特に労働時間が嫌いだな」
「分かった。ありがとう! お父さん」
「お、おう。宿題か何かか?」
「そんなところ!」
ぼくは最高の回答を手に入れた!
魔女を迎え撃つために、部屋で正座をして待つ。「せいしんとういつ」だ。
しばらく目を閉じて待っていると、またあの「イーッヒッヒ」が聞こえた。
いつの間にか、部屋はまた白い煙でいっぱいになっている。
「さあ、帰って来たよ。小僧! 消えて欲しいモノを考えておいたかえ?」
帰ってきた魔女はなぜか顔が真っ白で、くちびるは口紅で真っ赤、杖を持つ手の指にはたくさんの大きな宝石の付いた指輪が光っていた。
「……考えたよ」
「よし、じゃあ言ってごらん! おばあちゃんが、消してあげるよ」
魔女は優しく言った。
「消えて欲しいモノ、それは差別と、貧富の差と、労働時間!」
ぼくは魔女の変な格好に吹き出しそうになるのを堪えながら言ってやった!
「ほおお。それが、おまえの消えて欲しいモノなんだね」
「そうだ!」
魔女はまた口裂けになって、ひときわ大きくイーッヒッヒをした。
「それにしても、みっつもかい? 欲張りだね。でも大丈夫だ、みっつともやってやる」
ぼくはみっつも言ったのは失敗だったかと思って、ちょっと焦った。
「ワシはね、おまえみたいな子供に会うと、いつも願いを聞いてやっているんだ。
すると、子供はバカだからね。うるさい親を消してくれとか、嫌いな食べ物を消してくれとか頼むのさ。
でもね、結局は後悔して、戻してくれと泣き喚く! ワシはそれが大好きで大好きでたまらない!」
魔女はぼくの顔をずいっと覗き込んだ。
「おまえは最初にワシに消えろと言った。他のバカとは違って、ちょっとは頭が切れるみたいだね?
……つまりだ。今、おまえさんが言ったモノは“本当に消えてしまっても良いモノ”に違いない。
それが消えると、おまえは泣き喚くどころか喜ぶんだろう!? それじゃ、ワシは面白くない!」
魔女の息がぼくの鼻にかかる。飲み会のあとのお父さんのニオイ。
「イーッヒッヒッヒ! 魔女の魔法は消すだけじゃないのさ!
子分のトカゲを巨大化してドラゴンにできるのは知ってるだろう? 本を読んだだろうからね。
ワシは今から街へ出かけて、お前さんの言う“差別”と“貧困の差”と“労働時間”を大きくしてやる!」
部屋がぐにゃりと歪んで紫になった。幻覚?
イーッヒッヒが部屋の中で、耳の中で、頭の中でこだまする。
ぼくはふざけてぐるぐる回った時みたいに気持ち悪くなって倒れ込んだ。
「世界中を大混乱にしてやるよ! おまえが教えてくれたモノを巨大化させてね! イーーーヒッヒッヒッヒッヒッヒ!」
大変だ。魔女を止めないと。
ぼくはふら付きながら魔女を追いかけた。魔女はゆっくり歩いてるはずなのに、全然追いつけない。
「ちょっと! カケル! 宿題やったの?」
急にお母さんが声を掛けてきた。宿題ならやったし、昨日も同じことを聞いたじゃないか!
「ちょっと! カケル! 宿題やったの?」
また同じことを聞く!
「チョット! かけル! 宿題ヤッタの?」
「チョット! カけル! 宿題やッタノ?」
「チョット! チョット! チョチョチョチョチョチョチョチョ! チョマテヨ!」
お母さんはバグったゲームみたいになって、固まってしまった。
「カケルぅ……ごめんなぁ。お父さん、海モン2.5を買ってこなくて。役立たずでごめんなぁ」
今度はお父さんが現れた。
「でもなぁ、カケルぅ。俺はお母さんに買ってやっちゃダメって言われててなぁ。
俺もお前には不自由をさせたくはナイ。隣のクラスの子みたイにドロボウになったら嫌だからなあ。
でも、ワガママにもなって欲しくナいんだあ。あのおヒメ様みたいににににににににににににににににににににににににに」
お父さんも「フリーズ」した。
ぼくは正直ちびりそうだ。赤ちゃんみたいなハイハイで逃げて、靴を履いてなんとか玄関から飛び出した。
家から出ると、紫のぐにゃぐにゃは収まった。
「おや、脱出できたんだねえ。お父さんとお母さんを放って置いてもええのかえ?」
「おまえをやっつければ、戻る!」
ぼくはまだくらくらする頭を押さえながら言った。
「やっつける? ヒヒヒ、これはケッサク! 小僧っ子が抜かしおる!」
魔女はぼくのほうを向いて手を叩いた。手を叩く度に魔女がワープして、遠ざかっていく。
ぼくは魔女を追いかけた。全速力で。絶対に捕まえてやる。街を魔女の好きにはさせない!
でも、魔女はワープを繰り返して距離がどんどん開く。その内に見失ってしまった。くそう。
それでも、とにかく走る。魔女の行き先は、街だ。
街では魔女が大声を張り上げていた。
「イーッヒッヒ! どこだい、“差別”は? どぉこだい、“貧富の差”は!? 消してあげるよお! 消してあげるよお!」
街は大混乱だ。みんなが魔女のほうを注目している。
「ねえ、あれ何? コスプレ?」
「なまはげ?」
「ヘンなの!!」
街の人たちが魔女を指さして笑い始めた。
「うるさい連中だねえ! なんでワシの事を笑う!」
そういうと魔女は杖を振り上げた。
「ブゥ」とオナラみたいな音がして、やじ馬たちがみんなカエルになってしまう。
「踏みつぶしてやろうかねえ」
「やめろ!」
魔女の足が止まり、カエルが逃げて行く。
「小僧! ワシに恥をかかせおったな!」
魔女の顔が邪悪になる。
裂けた口の隙間から、ヘビの舌みたいに炎がチロチロと出ている。
「おまえの言ったものが見当たらないぞ! おぉまぁえぇぇぇぇ! ワーシーをー……だぁまああしぃいいいいたぁああなああ!」
魔女が滑るようにぼくに迫ってきた! トレードマークの帽子が落っこちて、ぼさぼさの髪が振り乱れる!
「バケモノ!」
ぼくは悲鳴を上げて回れ右をした。
火を噴く魔女が追いかけてくる。街にはまだ人がたくさん居る。ぼくはみんなが逃げてくれるように祈りながら、とにかくまっすぐ走った。
誰か女の人の叫ぶ声!
「大変だよお! おまわりさーん! 子供が変質者に追いかけられてるよう! “じあん”だよおー! 変質者は凶器を持ってるよおー!」
女の人の声に反応して、見回り中の「青い正義の味方」がこっちを見た。
「なんだあれは!?」
お巡りさんは口を思いっきり開いた。顎が外れそうだ。
「いいから! 早く捕まえておくれよお! お巡りさん! 男だろう!」
女の人の追撃。お巡りさんは顔をぶるぶると振ると、魔女に向かって走り出す!
お巡りさんが魔女にタックルをした。老婆は大人の男に押されてひっくり返った!
「あいたあ!!」
魔女のローブから本が飛び出す。ぼくはそれをすかさず回収した。
「怪しい奴め! 子供に手を出すとは許せん!」
お巡りさんは魔女を片手で押さえつけると、空いた手で手錠を取り出す。
「未成年者略取の疑いで現行犯逮捕だ!」
――ガチャリ。
バケモノの手に手錠が掛けられる。魔女は急にしおれてしまって、ただのおばあさんになった。
「やれやれ……捕まってしまったよ……歳には勝てないねぇ……」
「大人しくしてるんだぞ」
お巡りさんは無線を使って仲間とパトカーを呼ぼうとした。
「“大人”しくぅ? 誰に向かって口を利いてるんだい!? ワシはお前の10倍は生きてるよ!!」
おばあさんの骸骨みたいな手がするりと手錠を抜ける。
「魔女を甘く見るんじゃないよ」
魔女はローブに手を突っ込んで、赤い液体の入った瓶を取り出して、栓を外して「グイッ」と飲んだ。
魔女の身体が急に膨らみ始めた。大きく、大きく。10倍にも。
黒いローブと一緒に魔女の身体がビリビリと破れ、中から赤い鱗のびっしり生えたドラゴンがでてきた。
「こうなったら、貴様ら全員、踏みつぶしてくれるわ!」
ドラゴンの声が炎と一緒に街をこだまする。
火を噴く竜を見たお巡りさんは逃げてしまった。「とりものげき」を見に来ていた人たちも、クモの子を散らすように逃げ出す。
「小僧。貴様は炎でじっくり炙ってから、かみ砕いてやる」
ドラゴンは言った。熱い風が吹きつけてくる。炎どころか、風だけで火傷をしそうだ。
ぼくは、このまま竜に食べられてしまうんだ。
お父さんやお母さんも元に戻してあげられないまま。
――お話はバッドエンドだ。
「カケル君! “いまじねーしょん”だよ!!」
どこからか声がする。そうだ、ぼくには本があった。
――想像する。本の中の友達を。お姫様と召使いを。ドロシーとペジタを。
本が手の中でガタガタを震え始める。――来た!!
「お呼びが掛かったようね」
「んだ。お姫様」
「ちょっと! “お姫様”じゃないでしょ」
「しづれいした。ドロシー」
ぼくとドラゴンの間に、ドロシーとペジタが現れた。
「ペジタ、あれを出してちょうだい」
ペジタは、手に携えた「剣」をドロシーに渡す。
「あと、それも貸して」
ドロシーはカカトの折れた靴を脱ぎ捨てる。
ペジタは、「くさったうわばき」を脱ぐとお姫様の足に履かせた。
「ここは暑いわね。またソフトクリームが食べたいわ。……さ、悪い魔女を退治するわよ!」
ドロシーは剣を構え、切っ先をドラゴンに向けた。
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