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BEFORE DAYS:208801110047

 揺れは数分間断続的に続いた。立ち上がり歩き出そうとする度に地面がまたうねり、彼はその場からなかなか動く事が出来なかった。

「うううううううっ……!」

 この世の終わりが唐突に訪れた。懸命に耐えながら彼はそう感じていた。何もかもが終わってしまう。半世紀以上前からずっと、来るぞ来るぞと言われながらも全く来なかった。このまま来る事なんて無いのではないかとどこかで思っていた、その日がついに来た。南関東で発生すると予見されていた直下型の大地震。この巨大な揺れは間違いなくそれに違いなかった。

 やがて永遠に近い様な時間が流れ、比較的揺れが落ち着いた事に彼は気付いた。足を震わせながら体をゆっくりと持ち上げ、恐る恐る顔を上げる。そこはさっきまで彼がいた都心部とはまるで違っていた。

 崩れ落ちた摩天楼。それが生み出した瓦礫の山々。月明かりに照らされ輝くガラスの破片。横転した車。押し潰されたガラクタ。亀裂が走り隆起したアスファルトの大地。まるで異世界に放り込まれた様な、非日常の世界。その光景を見て彼は絶句していた。

「……!」

 肩にかけていたショルダーバッグがずるりと落ち、はっとする。こんな所に突っ立っている訳にはいかない。一刻も早く家に向かわなくては。彼はバッグを担ぎ直した。

 息を切らしながらすっかり壊れてしまった東京の街を進んでいく。力一杯走っているつもりだが、ショックから足が思う様に動いてくれない。ふらふらと千鳥足になりながらも家路を急いだ。ふと腕時計に目をやると、ちょうど0時半を指している。十五分。たった十五分しか経っていない。ほんの十五分前まではここはいつもの街だったのだ。

 突然にまた大きな揺れが起こり、彼はその場に倒れ込んだ。家に帰り着く事無く死んでしまうのではないか、そう思った。

 だが彼は死ななかった。何とか自宅まで帰ってくる事が出来たのだ……が、再び唖然とする。家は倒壊する事無く残っていた。しかし一階から出火しているのがわかる。このままではあっという間に全体が炎に包まれてしまう。

「……あ……ああ……!」

 家には今、はるばる九州から娘夫婦が遊びに来ている。それもまだ一才にも満たない孫を連れて。三人は無事だろうか……!

 意を決して彼はその中へと飛び込んでいった。

お久し振りの更新です。そして三年前に公開した冒頭部分の続きになります。忘れた方は読み直して下さい。

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