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魔道師長のまかない係 ~身寄りのない幼児だけどがんばって美味しいご飯つくりましゅ!~  作者: 中村まり


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3/9

異世界サバイバル開始!

たった一人で異世界に残された私。

森の向こうから昇り始めたオレンジ色の朝日を見ながら、これは大変なことになったかもしれない、と思い始める。


「これ、やばくない?やばいよね?」


ぽろりと本音がこぼれた。

夕べは誰か保護者が帰ってくるのではないだろうかと思ったけど、それは甘い見通しだった。 もし誰もここに来なかったら? 明日も明後日も一人きりだったら? 最悪のパターンは幾つでも思いつく。


ここでじっとしててもきっと(らち)が明かない。


「と、とにかく、みじゅとご飯のかくほっ!」


この子はかなり幼いのだろう。舌足らずでかわいらしい独り言を耳にしながら、なんとかしなければと思う。


まずは行動だ。


しかし、この森には獣がいる。昨晩、遠吠えを聞いたばかり。


ふと、その辺に落ちていた木の棒が目に付く。

もしかしたらなんかの武器になるかもしれない。(というかそれしか武器らしきものがない)


ちょっと振ってみたけど、なんとなくいい感じ。もしかしたら、森の外に町があるかもしれない。


「よし、レッツゴー!」


おーっ!と気合を入れて棒を空に向かって突き上げる。


そうやって洞窟の外に出てみたものの、目の前の森はうっそうとしていて、道すらない。

丸い葉っぱの草や(つた)、自分より背が高い雑草が生い茂りどうにもこうにもならなさそう。虫とかいっぱいいそうだし・・・


「あーこれはちょっと厳しいかも・・・」


もし蛇とかいたら戻ってこようかな・・・やっぱりやめようかな。

そんな風に迷っていると不思議なことが起きた。


森の木や草がするすると移動してぱかっと開いた。

「道が、道ができた・・・」


覗き込むと細い道がずっと先まで続いている。


ここを通れということかな?


そう解釈して、木の棒を片手に用心しながら進むこと30分くらいだろうか。木の間隔がだんだんとまばらになり、その先には川と橋。橋の向こうには小さな家があった。


「やったあ、森をぬけられたでしゅ。村に来たでしゅ」


言葉の端々が子供言葉だけど仕方がない。今の自分は幼児なのだ。


何はともあれ、一番欲しいものと言えば真っ先に水だ。


村の住民が友好的だとは限らないし、幼児一人だったら何かと危なさそうなので、誰にも見つからないように用心しながら川の橋の近くまで来た。


なだらかな土手を降りていき川辺につく。そっと川を覗き込むと水はとても澄んでいてすぐにも飲めそうだ。そこに自分の姿が映っていた。


年はまだ3~4才くらい。ふんわりとした癖のある金色の髪に青い瞳。


とてもあどけない感じのかわいらしい子供だ。その子がびっくりした顔でこちらを見つめ返してる。


ええ~、本当に異世界転生だよ。金髪だよ!青い目だよ! 


こんなに可愛い子だったら攫われないように気を付けなくちゃなあ、と前世では成人女性だった私はぼんやりと考える。可愛いのも時と場合によってはトラブルの元になるのだ。


そして、川の水というのはどんなに澄んでいても、上流に動物の死骸があって水が汚染されたりして飲むと大変なことになるのだけど、少し下流に水汲み場らしきものがあり、どうも生活水か飲料水かに使われてるみたい。


だから飲んでも大丈夫だろう。(たぶん)


手で川の水をすくって飲んでみると、冷たくてとても美味しい。


「ぷは~」


なんだか間抜けな声が出たけど、この小さな体はずっと水も飲んでいなかったようだ。


喉の渇きがますます増えたような気がして、水を何度もすくっては飲む。


「ああ、おいしかった」


少し満足して、村の中をそっと探検するつもりだったのに、思いがけず子供心がむくむくと湧き出てきた。


そう、川の水はとても魅力的だ。


ちょっとだけ遊びたい。


ほんの少しだけだからと自分に言い訳をして、川の水を手ですくってみたり、ちゃぷちゃぷと足で踏んでみたり、水を手ですくってはまき散らしてみたり…。


はっと気が付いた時には「子供の遊び」を十分に堪能してしまった後だった。

精神は成人女子なのに、子供の気持ちに引きずられちゃってるんだなあ。


いかんいかんと思いつつ、橋の向こうにあった小さな民家まで歩いていき、そっと窓から中を窺う。

どんな人がいるんだろ。

何しろ異世界、初めての現地住民とのエンカウント。


わくわくしながら覗き込んでみると、残念ながらごく普通の家だった。


部屋の奥には石を積み上げて作った暖炉。近くには木でできたテーブルに椅子。暖炉の側には一人用の小さなソファ。

壁には古いタペストリーがかかっていて、テーブルの上には果物がおいてある。


「何してるの坊や?」


背後からいきなり声がかかって、ぎゃっと叫んで飛び上がったかもしれない。

恐る恐る振り返ると、視線の先には優しそうなおばあちゃんの姿が。


「えっと・・・あの・・・」


何て言ったらいいのかわからなくて、もじもじしているとおばあちゃんが驚いたように叫んだ。


「あらまあ、この子、ずぶ濡れじゃないの」


川でちょっとはしゃぎ過ぎたようです☆ あっさり見つかってしまいました。てへ。


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