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ピーキーズ!!~追放者だらけのギルドを作ろう~  作者: 玉庭一福


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竜の一撃

「ダンジョンへ入れない?!」


 俺の予想通りクレイシアは朝一番で俺をたたき起こし、一緒にダンジョンへと向かった。

 しかし予想外に足止めを食らっていた。


「この街ではダンジョンの探索許可は個人ではなく、ギルド単位で取得するものなんです」

「? 君たちが冒険者ギルドではないのか?」

「えぇ~っと。私たちは国に管理を委託されている"ダンジョン管理機関"です」

「……?」

「銀の棘は古いダンジョンだからな。旧式の管理体制なのか」

「あ、はい! そうなんです」


 俺は前にも同じ形式のダンジョン街にいたことがある。

 このタイプはダンジョンの管理をそれ専門に作られた組織が行い、冒険者の管理は冒険者側が自ら組織を作り、申請と報告をする形になっている。

 一方で俺たちがいた前の街では一括管理が採用されていた。冒険者ギルドと呼ばれる1つの組織がダンジョンの管理と冒険者の管理を兼任するのだ。

 どちらもギルドと呼ばれていてややこしいが、少し意味合いが違う。


「要は前の街はみんな1つのギルドに入っていたが、ここではいくつかに分かれているんだ」

「う~ん、なるほど。それって私たちが新たに作ったりできるのか?」

「可能ですが……ある程度の実績証明が必要ですし、お時間もかかります。まずはどこかに所属することをお勧めしますよ」


 受付の女性はそう言うと、ギルドのリストを見せてくれた。

 現在この街では10個のギルドが加入者募集中らしい。ギルド名や代表者名、人数などが記載されている。


「"黄金のたてがみ(ゴールドレオ)"、"羽馬の風(ペガサスウィンド)"……。決め手がないな、どこかおすすめは無いか?」

「そうですね。一番の大手は"黄金のたてがみ(ゴールドレオ)"ですが、今勢いがあるのは半年前に結成した"竜の一撃(ドラゴフォース)"ですかね。ちょうど大規模な新人募集をしているんです」

「良さそうだな。"竜の一撃(ドラゴフォース)"にしよう!」

「俺も異論はない」

「お手数ですが交渉は直接お願いします。彼らが拠点にしている酒場の場所をお伝えしますね」


 街の地図を使い酒場の場所を教えてもらう。ここからそう遠くない場所だ。

 俺たちは女性に礼を言って酒場に向かった。

 

 その酒場は"老竜の洞穴"という名前で、店の外に立派なドラゴンの装飾が飾ってあった。

 店内は朝だというのに冒険者らしき客たちでにぎわっていた。


「頼もう! "竜の一撃(ドラゴフォース)"はいるか! 加入希望だ!」


 クレイシアがでかい声を出すと店内の注目を集めた。すぐに青髪の魔法使いらしき男がこちらに近づいてきた。

 笑顔がさわやかな好青年だ。


「やあこんにちは。俺はブルースだ。ここに居るのは俺を含めてだいたい"竜の一撃(ドラゴフォース)"のメンバーだよ」

「私はクレイシアだ。こっちはムジョウ」

「ムジョウだ。街に来たばかりで、ギルドを探している」

「ウチに声をかけてくれてうれしいよ」


 俺たちはブルースに案内されて席に着いた。向かいにブルースともう一人女性が座った。

 紙とペンを持っているので書記だろうか。大きなギルドでは冒険者以外に、事務などサポート専門のメンバーを雇っているところも多い。


「じゃあさっそくだけど軽く面談させてもらうね。合否は一度仮パーティを組んで、ダンジョンにもぐった結果で決めさせてもらうからね」

「むむ。テストがあるのか」

「無条件で誰でも入れるわけにもいかなくてね」


 組織としては当然だ。能力や人格に問題がある者はなるべく内側に入れたくはない。

 聞くと"竜の一撃(ドラゴフォース)"の所属冒険者は40名。ゆくゆくは100名を超えて大手ギルドの仲間入りを目指しているらしい。

 人数は欲しいが、かといって条件を緩くすれば組織は思った方向へ進めなくなるだろう。だからこその入団テストだ。

 

 以前の俺ならこういった入団テストが高いハードルだった。精神攻撃を受けないことだけが取り柄の、虚弱な戦士はどこも必要としていない。

 しかし今は違う。……はずだ。


「じゃあまずそれぞれの役割を聞こうかな」

「私は付与術師だ」

「いいね。魔法はいくつ使える?」

「えぇ~っと。……2つだ」

「2つ……2つかぁ」

「だ、だが普通の魔法ではないぞ! 2つとも強力な古代魔法で……」

「古代魔法ね。それ、使用場面がすごく限定的だったり、制御が難しかったりしない?」

「ぐっ!」


 やはりブルースは魔法使いのようだ。古代魔法と聞いただけでクレイシアの問題点に察しがついている。


「なるほどなるほど……それで君は?」

「俺は見ての通り前衛だ」

「武器は小盾とメイスだね。何か"戦技(スキル)"は使える?」


 "戦技(スキル)"とはこの世界の超人的な体術のことを指す。

 魔法と違って魔力を消費せず、"恩恵(ギフト)"と違って訓練で習得できる。

 俺も特訓したが、虚弱体質が邪魔をして何も習得できずにいた。


「何も使えない。だが【平常心】という"恩恵(ギフト)"を持っている」

「"恩恵(ギフト)"持ちか! どういう能力かな?」

「感情や精神系の攻撃を無視できる」

「悪くないね」

「その代わりに肉体が弱い。ダンジョンの魔力で魔力酔いになる」

「……それは冒険者としてはかなりまずいんじゃないの?」

「ああ、致命的だ」


 欠点を隠しても後々悪い状況になっていくだけだ。だから包み隠さず全てを話す。


「う~ん。なんだか加入は難しそうに思えるけどなぁ」

「あ、いやいや! 確かにそれぞれは欠点が多いが、私たちが揃えば問題ない! 相性ばっちりで大活躍間違いなしだ!」

「二人はいつからパーティを組んでるの?」

「……一昨日だ」

「一緒にダンジョンに入ったことは?」

「……まだ無い」


 ブルースは難しい顔をして黙ってしまった。話しているこちらとしても、こんなに怪しい二人組は居ないと思う。

 だが俺たちの相性については説明が難しいし、パーティとしての実戦経験が足りないのも事実だ。


「実力については、ダンジョンで判断するということにしてくれないか? とにかく俺たち二人で前衛として機能すると思ってほしい」

「うん……分かったよ。もともと面談だけでは合否の判断は行わないからね」

「ほっ……良かった」


 クレイシアが胸をなでおろした。これでダンジョンで活躍を見せれば、加入できる可能性は大いにある。


「じゃあ別のことを聞こうかな。二人は冒険者としての目的とかはあるかな?」

「目的か……」

「目的かぁ……」


 俺たちは二人そろって考える。

 改めて考えると、俺の今までの目標は「冒険者になる」ことだったように思う。

 冒険者ではあるのだが、ずっと見習いというか、半人前のような感覚だった。

 しかしクレイシアのおかげでその壁は越えられると思う。

 じゃあ次の目標は何だろうか。強いて言えば「冒険者を続けること」だが……


「よし決めた!」

「今決めたの?」

「私は"勇者"になるぞ!」


 "勇者"とは別名"栄誉冒険者"。ダンジョンを制覇したり、世界を滅ぼすようなモンスターを討伐したりと、英雄的な活躍をした冒険者に贈られる称号だ。

 世界中の憧れだが、同時に手の届かないほど高みの存在だ。子供のころは誰もが口にしたが、大人になれば誰も言わなくなる。そんな夢だ。


「ははは、大きく出たね」

「じゃあ俺も決めた」

「今決めたの?」

「俺も"勇者"になる」


 隣のクレイシアがこちらを見る。嬉しそうに目を細めたその顔を見て、俺も同じくらい嬉しくなる。表情には出さないが。


「目指すなら、二人一緒だ。だろ?」

「だな!」

「……面談は以上にしようかな。俺たちはお邪魔みたいだからここで……」


 そそくさと席を立つブルースたちを見送り、俺たちは入団テストの作戦会議を始めた。

 その後"竜の一撃(ドラゴフォース)"の一人が声をかけてきた。どうやらさっそく明日、他の入団希望者と一緒にダンジョンにもぐることになったようだ。

 今度こそ、ダンジョンに入れる。


 俺たちは明日に備えて早めに宿屋へ戻った。

【魔力】

 魔法の発動に使われる不思議なエネルギー。

 生み出すことができるのは生き物かダンジョンのみ。生物が生み出して体内に留めている魔力を体内魔力と呼び、コツがいるが自分の意志で操ることができる。

 操作した魔力を消費し、様々な超常的な効果を得る技術が"魔法"

 魔力を体内で適切に流し、その流れで身体効果を高める技術を"戦技(スキル)"と呼ぶ。

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