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ピーキーズ!!~追放者だらけのギルドを作ろう~  作者: 玉庭一福


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入団テスト①

 俺たちは集合場所であるダンジョンン前の広場に来ていた。

 そこには既に冒険者らしき人が30人くらい集まっていて賑やかだった。


「おお……多いな。これみんな"竜の一撃(ドラゴフォース)"の入団希望者か」

「そうだよ」


 返事を返したのはブルースだった。昨日も着ていた青いローブに、今日は身長ほどの大きさがある杖も装備している。

 今日は彼もダンジョンに入るようだ。


「ここ1週間の入団希望者だ。今日は4から6人くらいのパーティに分かれてダンジョンを探索してもらう。各パーティには引率のメンバーがついて、行先とか指示するからね」

「ふふ、楽しみだな!」


 ちょうど昨日が今回の入団テストの期限だったようだ。

 俺たちは第6パーティ。引率はブルースが来てくれるらしい。


「ちょっとこれ持って立ってて。俺は他の子探してくるから」

「分かった」


 ブルースはそう言うと「⑥」と書かれた旗を俺に渡してどこかへ行った。俺は見えやすいように旗を高い位置に持った。


「即席パーティか。気が合う奴らだといいな!」

「そうだな」

 

 しばらく待っていると、黒髪の女剣士が近づいてきた。

 装備はかなり軽装で、ショートソードを右の腰に差している。手足がスラっと長く、目つきは鋭い。

 斥候に長けたタイプの前衛だと予想する。


「失礼。第6パーティはここで合っていますか」

「ああ、そうだ」

「うおぉスタイル良いな……」

「剣士のミラリィです。今日はよろしくお願いします」

「付与術師のクレイシアだ」

「戦士のムジョウだ」


 ミラリィは礼儀正しくお辞儀をした。品の良さが伝わってくる。

 立ち振る舞いからして、俺よりも戦闘レベルはかなり高いだろう。

 すると、今度は反対の方から声をかけられた。


「失礼。第6パーティはここで合っていますか」


 現れたのは黒髪の女剣士だった。

 装備はかなり軽装で、ショートソードを左の腰に差している。手足がスラっと長く、目つきは鋭い。

 ……そう。ミラリィと瓜二つの女だった。


「な……ど、ドッペルゲンガー?!」

「いや、恐らく血縁だろう。双子か?」

「?! なんであなたが……」

「?! あなたこそ……」


 ミラリィと後から来た女は互いに驚いているようだ。ベルトの剣と前髪の流し方だけが左右逆で、あとは全く区別がつかない。まるで鏡に映したように同じだ。


「や、やあ。私はクレイシアだ。君はミラリィの……」

「……双子です」

「やっぱりそうか!」

「よろしく頼む。戦士のムジョウだ」

「ええ。私は剣士のミラリーです」

「……ん?」


 俺もクレイシアも混乱した。(俺は表情に出さないが)

 二人の名前が同じに聞こえたからだ。


「どっちもミラリーという名前なのか?」


 そう言ったクレイシアに、二人がグイっと近づいた。

 

「違います。ミラリーは私です」

「私はミラリィです」

「どっちもミラリィに聞こえるぞ! 何が違うんだ?」

「よく聞いてください。最後の音が少し違います」

「文字で書くとこうです。伸ばし方が違うでしょう」


 二人は手帳を持ち出して説明する。確かに字では最後が違うようだが、微妙な違いで聞き分けが難しい。


「だから嫌なんです。なぜあなたがこの街に……」

「こちらのセリフです。なぜいつも……」


 どうやら二人は今偶然ここで再開したらしい。

 一緒に行動するのを避けたくて別々の街にいたのだが、それぞれ別の理由でこの街に拠点を移したようだ。

 そしてたまたま同時期に同じギルドへ加入を希望した。


「双子の神秘じゃないか! すごいな!」

「そんな良いものではありません」

「これは……呪いです」


 そうこうしていると、ブルースが青年を一人連れて戻ってきた。


「良かった。双子ちゃんは合流してるね。感動の再開は終わったかな」

「すみません。パーティの移動をお願いします」

「別々のパーティにしてください」

「あれ? そういう感じなの? 喜んでくれると思ったんだけどな」


 双子は本気でパーティを変えてもらう気だ。しかしブルースは首を横に振った。


「これはギルドの会議でも出たんだけど、君ら名前もややこしいし、見た目もそっくりじゃないか。仮に合格したとして、ギルド内で別々で動かれると紛らわしいから、基本はセットで行動してもらうことになるよ」

「……分かりました」

「……分かりました」

「うん、期待してるよ。そして彼が最後の一人だ」

「僕シダだよ。遅れてごめんねぇ」


 最後の一人は短い緑髪の男で、杖を持っているので魔法使いのようだ。

 ガタイはいいが、のんびりとした気の抜ける話し方をしている。


「おお、すごい! すごい量の体内魔力だ!」

「見ただけで分かるのか?」

「魔法使いは魔力の流れが見えるようになるんだ。私の体内魔力が"ぽんっ"って感じだとすると、彼は"どぉん!"って感じだ!」

「よく分からんが期待できそうだな」

「こほん。じゃあメンバーを確認するよ。戦士のムジョウ、付与術師のクレイシア、剣士のミラリ……えぇと双子ちゃん、魔法使いのシダ。うん、これで全員だね」


 今日はこの候補生5人に、ブルースを加えた6人パーティでダンジョンヘ潜るようだ。


「まずは俺についてダンジョンに入ってもらう。その中で俺がモンスターを指定するから、君たちに討伐してもらう。俺は基本手伝わないし、何回か繰り返す可能性があるから気を引き締めてくれ」

「よぉし! いざ、ダンジョンへ!」





 "銀の棘"はその名が表すように、銀色の塔が巨大な棘のように空へと伸びているダンジョンだ。

 しかし外から見える塔の部分は特に何もない。ダンジョンは広大な地下空間なので、俺たちは塔の入り口に入ると巨大な階段を下って行った。

 ダンジョンは入り口に近い場所ほど、人の手で整備が進んでいる。階段を下りた大広間は松明で明かりが確保されていて、休憩用の焚火台や各行き先の看板が設置されている。


「ここが"銀の棘"か! ワクワクするなぁ!」

「俺たちはこっち、草原エリアにむかう。準備はいい?」

「もちろんだ!」

「ええ」

「ええ」

「いいよぉ」

「ダメだ」

「よし、みんなついてき……え?」


 俺の言葉に驚いてブルースが振り返った。俺は一番近くにいたシダに声をかける。


「シダ。今から俺は倒れるから受け止めてくれ」

「え? 倒れる?」


 そう言い切った直後、俺は身体に力が入らなくなりその場に崩れ落ちた。シダは理解が追い付かなかったようで、受け止めてはくれなかった。

 俺は床に倒れて動けなくなった。


「む、ムジョォォ! 大丈夫かしっかりしろ!」

「ここの……ダンジョンは……思ったより……魔力が……強い……な……」

「会話を続けようとしなくていい!」

「まさか言っていた魔力酔いか? こんな浅い階層で?」


 魔力酔いとは、外からの強い魔力に体内魔力が過剰反応し、身体がうまく動かせなくなる症状のことを指す。

 普通は強力な魔法やモンスターを至近距離で感じるか、ダンジョンの奥深い層で耐性のないものがたまに起こす程度の状態異常だ。

 こんなに簡単に魔力酔いになるのは俺だけだろう。


「大丈夫なんですか?」

「帰られた方が良いのでは?」

「大変だねぇ」

「……クレイシア……付与を……」

「そうだな! 使うぞ!」


 クレイシアが倒れたままの俺に触れて、呪文を詠唱する。そして【力の超越】が発動する。

 身体が巨大化し、皮膚は血のように赤くなり、額から二本の角が生えてくる。

 すると全身に力が入るようになり、俺は立ち上がれた。やはりこの肉体は魔力酔いとは無縁のようだ。


「大丈夫か?」

「ああ、問題ない。次からは入る前に使った方がいいな」

「そうだな」

「……お、オーガ?」


 見るとパーティメンバーたちが驚いた顔をしている。

 倒れていた奴がいきなり真っ赤な化け物になったら無理もないだろう。


「地上だと目立つから実演しなかったんだが、俺はダンジョン内では基本この状態でいるつもりだ。俺専用の強化魔法だと思ってくれ」

「これが私の古代魔法だ。どうだすごいだろう!」

「……信じられない強化率だ。あらゆる身体機能が向上している……。効果時間は無いのか? デメリットは?」


 ブルースは【鑑定眼】でも持っているのか、俺のステータスがどれだけ上昇したのかが分かっているようだ。

 興味深そうに問いかけてきた。


「効果時間は無い。だよな?」

「そうだ。私が近くにいる限り継続する。その代わり暴走状態になる魔法なんだ」

「それを俺の【平常心】で無効化している」

「なるほどね。これは驚いたよ」


 ブルースは嬉しそうにそう言った。気に入ってもらえたのなら何よりだが、実力の証明はこれからだ。


「よし、改めて草原エリアに向かう。君たちの戦いが楽しみだよ」

【鑑定眼】

 "戦技(スキル)"の1つ。見ただけで相手の力量を測る技術。

 極めれば対象がどんな魔法や"戦技(スキル)"を持っているのかまで分かる。

 センスが必要で習得は極めて難しいが、有用なので使用者は重宝される。

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