30 双子座流星群
11月11日の誕生日は亮太と杏樹と真由が祝ってくれた。杏樹と真由からのプレゼントはジブリーの可愛い花瓶。亮太は友達に好きそうなものを事前に聞いていたらしく、香水を用意してくれていた。
親は一応お祝いとケーキは用意してくれるが、プレゼントなんてものはもらった事がないので、泣きそうな程嬉しい。
12月に入る頃、みんなで星を見に行かないかと誘われた。双子座流星群が見られるらしい。
夜遅くなりそうだから家の人に話しておいた方がいいと言うが……亮太を父に合わせたくない。
「お父さんに殴られるかな」
「亮太殴ったら、私がお父さんぶん殴る」
最悪、訴えてくれて構わないと言うと亮太は吹いていた。わりと本気で言ったんだけどな。
まだ雪も積もっておらず、例年と比べて暖かい日が続いていたので、私と亮太はバイクでいく事に。
杏樹と真由と佐野君は杏樹の家の人が車で送ってくれるという。
丘の上にはすでに多くの人がいた。カメラを持つ人、大きな望遠鏡を構えている人、ピクニックのような雰囲気で来てる人。
凄く冷え込んできていて息が白い。
「あ!見て!光った!」と真由が言った。
どんどん流れて落ちてくる流星群。
前にもこんなふうにどこかで流星群を見たような……と思った。
このメンバーの他にも沢山人がいてーーーーーー。 あの時はまだ快適な時期で、みんな薄手の羽織ものでーーーーーー。
「前にも何処かで見た気がする」
「見に来たことあるの?」
「いや……わかんない」
あれ?どこでだっけ?
どこだった?あの場所は。
近くに大きな望遠鏡と観察施設があって……。
惑星があったはず。
湖の中に立つ遠くの塔と惑星が重なる時があるんだーーーーーー。
近くの鉄塔に国旗や旗が掲げてあって、その音が、音色が好きだった。
あの時、ユウもいた。ユウに似た人がいた。夢で見た騎士みたいな恰好の人によく似てる。ローブのような服を着ていて、観察用の大きな望遠鏡をみんなで覗いた。
「明里は大丈夫?」
亮太が覗き込んで言った。
「寒くない?」
「大丈夫。ぼーっとしちゃって」
「綺麗だもんな。吸い込まれそう」
「うん」
白昼夢のようなこの記憶は何だ。
帰りは亮太が家まで送ってくれた。
両親に挨拶していくと言う。
「いい、いい、ややこしいことになるからほんと」
「でも夜遅くなってるし」と亮太は言った。午後10時半をまわったところだった。
「お嬢さんを連れ回してすいませんと」頭を下げる亮太。
父は玄関で腕を組んで仁王立ちである。勘弁してほしい。アホみたいな振る舞いして恥ずかしい。上から下までジロジロ見渡している。
多分茶髪にピアスが気になるのだろう。
名前を聞かれて「由利亮太と申します」と言うと、父がギョッとしていた。
「由利って……〇〇企業の由利さんか?」と聞かれている。
「そうです。父は由利正孝です」
父は急に表情を緩めた。あからさますぎるくらい上機嫌になり出した。
「由利さんの息子さんだったのか!」と言う。
そんな有名なのか。確かにお家は大きいけども。
「いやぁ、そうかそうか、上がっていくかい」と言う父。マジでやめて。
そうだった。父は世間体が大好きな人だったと思い出した。いいとこの息子なら喜んで当然とも言える。
「いえ、遅いので今日は帰ります」と亮太。
リビングでは由利家の話で持ちきりだった。
「由利さんのところの次男坊なのか。どうして言わなかったんだ」と言う。
言ったところで全否定するだろうが、と心の中でツッコミを入れた。
由利家は資産家で大きな会社を経営しているらしい。
「お父さんには挨拶したんだろうな」と聞かれた。
「出張が多いらしくて、会ったことない」
「今度挨拶に伺うか」と言いだしている。
全力でこの頭おかしい親父を止めなければならない。
「別に結婚するわけでもないんだから、早いわよ、ねぇ」と母が制してくれている。
「そうだよ、逆に変な人だと思われて警戒されるよ」と六花も応戦してくれた。六花は私に目配せしてくれる。
そもそもお父さんに蹴られて家出した後に、介抱してくれたのが由利君だったことを話したらどんな顔をするだろう。
「ところで、どうしてあんな格好をしているんだ?高校生だろう」と父は憤慨している。
茶髪とかピアスの事だろうなと、思った。
「長男は優秀で次男は不良か?」
また始まったよ。よく知ろうともしないで、見た目だけでの勝手なジャッジが。
「もう体の関係はあるのか」と聞く。
心臓が飛び上がりそうなほど驚いた。なんてそんな聞くんだこの親父は。本当に昔からデリカシーというものがなくて困る。
「馬鹿じゃないの」と六花が言う。
「馬鹿とは何だ。まだ高校生なんだぞ。不純異性交遊は許されないぞ。体だけ大人になりやがって」
ほぼ死語のような言葉を使い、気持ち悪い事を気持ち悪い顔でぶつけてくる。吐きそうだ。何考えてんだよ、コイツ。
呆れてリビングを出た。ドンドンと階段をわざと音を立てて登った。それくらいしか反抗のしょうがない事が悲しい。
部屋で亮太と電話で話した。
「どんな人かなと思ったけど、俺、あのお父さん苦手だわ、ごめん」と話していた。
「奇遇だね。私も苦手なんだ」と言って笑った。




