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28 高2の夏祭り•後編


 由利君と佐野君も浴衣を着ている。佐野君のお父さんが和服がお好きらしく、2人のために見繕ってくれたのだとか。

 由利君はユウと同じくらいの背丈なので、浴衣をきると細身の体型がより映える。佐野君もなかなか似合っていて、杏樹が隣でときめいている。


 暫く5人で行動を共にした。屋台を練り歩き、かき氷を食べて、りんご飴を食べて、お腹が膨れすぎるのが嫌で、たこ焼きは我慢する。

 またどこかにあるステージから音楽が聞こえてきた。今年も色々なバンドが会場を盛り上げてくれるらしい。


 真由が彼氏と合流して4人になった。

 くじを引いたり輪投げをしたり射的をしたり。特に盛り上がったのは射的で、佐野君は名手なのかと思うほど上手くて、当てた景品を杏樹にあげていた。

「ごめん、取れなくて」と謝る由利君。

 私も挑戦してみたが、センスがないみたいだ。


 凄い賑わいなので、大声で話さないと声がかき消されて聞こえない。

 話す時の顔が近くて、頬がほてるのがわかる。

「金魚掬いあるよ」

「やりたい!」杏樹が言う。

 金魚掬いが1番美味いのは由利君だった。

 ひょひょいとすくっていく。

 楽しそうに金魚掬いをする由利君の笑顔がキラキラ光っていて写真に収めておきたいくらいだった。金魚が取れなくてぐずる男の子に救い方を伝授している。 顔に汗が流れてきていて暑そうにしていたので、隣でうちわを仰いであげる。

 金魚が取れなかった男の子に「あげる」と言って金魚を手渡していた。


 花火大会の会場は大混雑で、4人でまとまって行動する事が難しいということになり、二手に分かれる事になった。

 杏樹が別れ際、「上手く行くといいね」と耳元で囁いて言った。

 ユウも「上手くいくといいね」と言い、人混みに紛れて姿を消した。


 ぎゅうぎゅうだったので、逸れないようにと手を繋いだ。

 花火を見るために柵のある場所まで移動した。色んな人とぶつかるので由利君に抱き寄せられた。心臓の音が聞こえるんじゃないかと思う距離だった。由利君は凄くいい匂いがする。

 周りはカップルだらけ。

 いつもは会話が弾むのに、緊張しすぎて上手く話せなかった。告白してみようかな、なんて考えが頭を過っていく。

「具合悪くない?」と由利君が聞く。

「大丈夫、ちょっと緊張してるだけ」

「……俺も。浴衣すっごく可愛い」

「ありがとう。由利君も浴衣めちゃくちゃ似合ってる」

 混みすぎているから、場所を変える事になった。比較的空いていて、2人で座れるスペースを見つけた。 近い。めちゃくちゃ近い。

 浴衣が軽くはだけていて、その隙間から見える胸板。少し汗をかいているおでこ。程よく筋肉があり、血管の浮き出た腕。全部がキラキラして見える。

「花火そろそろかな」

「うん」

 花火が打ち上がり始めた。

 一般的な花火の他に星の形やハートの形の花火も打ち上がった。

「珍しい形だよね、今こんなのもできるんだ〜」

「凄いね」

「あのさ」

「うん」

 暫く沈黙が続いた。

 由利君は言いづらそうな雰囲気だった。


「付き合わない? 俺たち」と真剣な表情で言う。

 びっくりして暫く反応できなかった。告白でいいんだよね、これは。心臓が弾けて無くなりそうなくらいドキドキしていた。

 うんうんと頷いた。激しく頷いた。

「本当に?」

 うんうんと頷いた。

「よかったぁ」と言う由利君。

「あの……えーと……好き、です」

「俺も好きです」

 はにかんでいる由利君はとても可愛かった。

「すごい長い間があったから、ダメかと思った」

「由利君、クールだから、理解するのに時間がかかっちゃった」

「クールじゃないよ、めちゃくちゃドキドキしてる」

「嘘だぁ」

「じゃあ、確かめてみる?」

 由利君はそういうと、わたしの手をとり自分の胸に当てた。

 心臓の振動が手のひらに伝わる。全速力で走った後のように脈が早かった。

「ね。緊張してるでしょ?」

「うん」

 由利君の顔が赤くなっていた。よく見ると耳まで真っ赤になっていた。

 そのまま手を繋いで花火を眺めた。

 ずっとこの先も今日のことを覚えておきたい。1秒も忘れないように大切に保管しておきたい。そう思えるのはきっと今が凄く幸せだからなんだろうな。



 帰りはまた六花と母と帰る事になっている。

 母が由利君も送って行くと言いだした。思わぬ形で紹介することになり焦ってしまった。

 六花はニヤついているし、お母さんもいつもより声が高くなって嬉しそうにしている。

 とりあえず暫くは父に知られたくないと言うことを話しておいた。



 家に帰るとユウがソファに腰掛けていた。

「楽しかった?」

「うん」

「それはよかった」

「付き合う事になった」

「知っている。君が幸せそうでとても嬉しいよ」

「でも、付き合ってく中で幻滅されないかなとか思うんだよね」

「君はもう少し自分に自信を持った方がいい」

「うーん……」

「大丈夫だよ、由利君は君の事が大好きだから」

「そんな事わかるの」

「うん」


 物凄く嬉しいし、舞い上がってる感は否めないが……不安はある。自分の何処を好きなのか、何で好きになってくれたのか……。話してない事も沢山ある。話したくない事も。

「どんな人も話してない事、話さない事の一つや二つあるものさ」


 そうなんだが、自分がが話してない事は相当大きなことである。隠し通さなければならない。ユウの存在も含めて。由利君は取り繕っている綺麗な部分しか見えていないのだから。

「懐の深い人だけど、僕のことはまだ話さない方がいいよ」

「言われなくても話さないよ」

「彼は君の大ファンだったから大丈夫」と言ってフフフっとユウは笑った。

 大ファンってどうゆう事だ?

「いつか分かるよ」

「由利君、あ、亮太って少しユウに雰囲気似てるんだよね」

「魂が近い存在だからね」

「由利君がユウだったら良かったのにな〜」

「申し訳ないけど、違うよ」

「うん、分かってる」


 夜寝る前に亮太から電話があった。

話したくなったと言われて、自分も同じ気持ちだっと話をした。

 電話を切った後も夢うつつで、亮太と付き合うことになったなんて本当なのかなと思う。もしかしたら妄想かも。やっぱり夢なのかもと思うくらい、亮太のことを考えるとフワフワしてくる。幸せすぎて溶けそうだ。

 ユウは隣でニコニコしている。

「夢じゃないよ」とユウは言った。


 でもやっぱり夢だったらどうしよう。お願い、覚めないでくれ。

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