27 高2の夏祭り•前編
夏休みはどこかへ1日遊びに行こうと由利君と話しているところ。由利君は将来の為にお金を貯める目的で、アルバイトをしている。飲食店とガソリンスタンドを掛け持ちしてアルバイト三昧だけれど、わざわざ予定をこじ空けてくれるらしい。
父と折り合いが合わず、数年間口を聞いていないと話していた由利君は、あまり自分のことを詳しく話さない。
聞いても話を濁される時もあるので触れないようにしている。
休日は海に行ってみようか、遊園地か水族館、動物園もいいかも。
夏休みの計画を街のファストフード店でしていると、「明里?」と声をかけられた。
声の主は大介で、サッカー部の友達らしき人達と一緒にいた。
トレーを持ったままの立ち止まっている大介。
「誰?」とほぼ同時に由利君と大介は言った。
「こちら由利君で、こっちは幼馴染の大介」
「友達?」と大介が聞くので、「友達」と答えた。
2人はお互いをジロジロ見ているようで、空気がピリついているように感じた。
「大介ーこっち空いてる」
空いた席に呼ばれて去っていく大介。
「さっきのってただの幼馴染?」
「うん」
「ふーん」由利君は口を尖らせてそう言った。
「どしたの?」
「俺のことは名前で呼んでくれないよなーって」
「由利君て呼び方に慣れちゃって」
「亮太でいいのに」
「じゃあ、亮太……君?」
「君ががついてるじゃん」と言って笑った。
「そっちも明里でいいよ」
「明里……あれ?何か違和感あるね」
「でしょ、慣れないでしょ」
慣れていこうよと由利君は言った。
夜、大介から連絡があった。会って話せないかと言う。部活がない日中に、近くの公園で話す事になった。
話の内容は由利君の事だった。
ブランコに腰掛けて話を聞く。大介はブランコにはのらず、ブランコの柵に腰掛けている。久しぶりにちゃわと見る大介は、かなり体が出来上がってきており、がっしりしてきた。肌も真っ黒でサッカーを頑張っていることが伺える。
「由利ってやつ、あんまりいい噂を聞かない」と大介は言った。
「不良グループだったから?」
「同じ中学だった奴が言ってた」
「いい人だよ、とっても」
「騙されてんじゃない?」
「違うと思う」
薬をやってたとか、タバコ吸ってて停学とか、遊び回ってると聞いたらしい。
遊んでたっていうのはあながち間違いじゃない。麻雀仲間と夜な夜な集って遊んでいたって意味では。
「女遊び激しいらしいよ」
その発言にはドキっとしてしまった。その噂は嘘だといいな。
「そうかな。意外と真面目だよ。頭もいいし。数学が得意で勉強も教えてくれるんだよ」
「あの底辺高のやつが?」
「大介が思ってるような人じゃないと思うよ」
「明里、遊ばれてんじゃないの?」
別に遊ばれてもいいかも由利君なら……。
「由利君なら遊ばれてもいいかも」と言うと、
「マジで?」と大介は驚いていた。
「心配してくれるのは有難いんだけどさ、由利君のことよく知らないでしょ」
「そうだけど」といって、靴で砂を蹴っている。
「自分で見て判断してるから大丈夫だよ。人の意見なんて見る人によって変わるでしょ」
「けっこう2人で遊んでるの?」
「まあまあ」
「へぇ」
そんな話をしている時、由利君からメールが来た。
「由利から?」
「うん」
「好きなの?」
「うん、たぶん」と普通に答えてしまった。意外とすんなりと認めた自分にビックリしていた。
「そっか、じゃあ好きにすればいいんじゃない」と大介は切り捨てるように言った。
何でそんな言い方するんだろう。いい人なのに。
「ユウもいい人だって言ってるんだよ」
「ユウって誰」
「……友達」不意に口をついて名前が出てしまった。
「バイト早く上がれるから会おうって連絡きたから帰るね」
夏祭りは予定があるのかと由利君が聞く。
「友達と今年も行こうかって話してるところ」
「そっか」
「でも、3人で行ってから真由は彼氏と合流する予定だし、はっきりわかんないかも」
杏樹は由利君と行くなら遠慮するよと言っていたが、1人残して行くのも嫌だしなと思った。
「友達呼ぶ?」
「それいいかも!」
「佐野暇かな?無理だったらほか当たったみた方がいいかな」
「初めて会う人だと緊張するよね……」
「そうだよね……本当は2人で行きたいんだけどね」と由利君は言った。
「杏樹に聞いてみてからでいい?」
「いいよ」
杏樹とその夜話をしてダブルデートにする事にした。去年みたいに途中から離れて行動しようかという話になった。
由利君に会ってから、可愛くなりたいなと思うようになった。昔の自分からは考えられないくらいの大進歩だと思う。今年は浴衣を着るのも嫌じゃない。
でも好きになってもらえるのか不安でたまらなかった。こんな自分だ。また勘違いかもしれないし、大介が言うように遊ばれてるだけかも。
今年も3人で杏樹の家に集まって浴衣の着付けをする。杏樹は新しい浴衣を買ったらしい。私と真由は去年の浴衣。
去年より腕を上げた杏樹が気合いの入ったメイクをしている。私はナチュラルに仕上げにしてもらった。真由はいつものように目力をつけたいらしい。
姿見を見ながら去年より少しだけ伸びた髪にワックスをつける。
隣にいる杏樹は少し太ったと言うけれど、全く見た目は変わってない。
「2キロなんて変わんないって」
「2キロだよ、来年また2キロ増えたら4キロ増なんだよ」と気にしているが、身長もまだ伸びているらしいので、気にすることはないと思っている。
「真由は付き合って長いよね〜」
「飽きないの?」と杏樹が聞いている。
「飽きないよ」
「長続きするコツってあるの?」
「お互い、思ってることは言葉にすることにしてる」
真由は自分で目のメイクをしながら言った。まだ盛り足りないらしい。
「溜め込むのはよくないよ。爆発するから」
真由と彼氏にも、過去にも危機はあったが、何度も乗り越えてきている。
我々は恋の相談になると真由大先生に聞く事にしている。
「杏樹は基本的に自分から好きになるって事が少ないように感じる」と真由が言う。
「確かに」
「えー?そうかな」
「アプローチされてからじゃない?好きになるの」
「そうかも」杏樹は腕を組んで頷いている。
「付き合ってみよっかなっていう軽い感じから始められるのは凄いなと思ってるんだけどね、私は絶対無理だし」
「明里はちゃんと好きにならないとダメだもんね」
「だからじゃない?」と盛りまくった目の真由が言う。バッチバチに決まっている。
「そもそもそんなに好きじゃないんだよ」
「あー」
「ちゃんと好きだよ」
「でもすく別れちゃうじゃん」
長続きしたこともあるよと杏樹は言うが、長くて半年くらいだったと思う。
「なんかさ、絶対無理なところを見つけちゃうとね一気に熱が冷めるの。何で好きだったんだろって思うくらい」
「それさ、ささいな事じゃん思ってたんだよね」と私が言うと、
「わかってる!わかってるんだけど、無理になっちゃうの。だってさ、好きな人の鼻から鼻毛出てみ?冷めるって」
両手を広げて力強く訴える杏樹。
「私は本人に教えるかな」と冷静な真由。
「もし由利君から鼻毛出てたら冷めない?」
想像したら吹いてしまった。
「鏡見ようかって言うかも」
「逆にさ、自分がでてたらどうするの?人間なんだからミスくらいあるって」バッチバチの目で杏樹に問いかける真由。
恋愛についての女子トーク……いや鼻毛トーク?に花が咲いてしまった。
「明里はどうなの由利君と」
「好きだよ」
そういうと2人は顔を見合わせて驚いていた。
「はっきり言うの珍しいよね」
「そうかな、そうかも」
2人はとても応援してくれている。
「告白するの?」
「向こうから言ってきそうな雰囲気じゃない?」
「う〜〜〜ん」
どうなるだろう。
「一つ懸念があってね、その……付き合うってことはさ、いずれ肌の触れ合いを求められるわけじゃん。漫画の読み過ぎなのかもだけど……。憧れもあるけど、苦手なんだよねそうゆうの」
「まずは付き合ってからの話じゃない」と真由大先生。
「先のことを考えすぎてたら前に進めないよ」と杏樹。
2人の言いたい事はわかる。考えすぎなのかもと思うこともある。ただそれが現実として目の前に来た時、自分がどうなるのか想像が出来ない。
好きな人に触られたいと思うけれど、その先に物凄く怖いものが潜んでいる気がしてならないのだ。




