21 学校祭
壁画を描いたり催し物の衣装や小道具を作ったり、学校祭の準備は夢中になれる事の一つで、とても楽しく過ごしている。手先は器用な方だし、集中すると何時間でもやってしまう。家でも黙々と作っていて、気づいたら2時間も作業をしていた事も。
真っ暗な部屋でチクチクと縫い物をしていた姿を見て、帰ってきたばかりの六花が悲鳴をあげていた。
高校が始まってから、ずっと暗い日々を過ごしていたが、自分にもにもやっと活躍できる場が出来たように思えた。
別のクラスの子とも交流があって色んな子と仲良くなれてきた。
そんな中で、パンプキン野郎についてある女の子達から相談された。
アイツの被害がなくなってきたなと思っていたところ、なんと別の女の子が付きまとわれているらしかった。
私の時とは違い、一応話はできるようなのだが、家ま送ると言われて強引についてきたり、電話やメールを何十回も送りつけてきたり、同じ部活を始めたりと迷惑行為をしているらしい。ジッと影から見られててキツいと話す。
「嫌だからやめてほしいと訴えても、何で嫌なのかわからないって言うの。おかしくない?」
困り果てている女の子。
どうしたら良いのか相談されたが、具体的な解決策が見当たらなかった。
とにかく話ができるなら、徹底的に相手を拒否するか、強そうな男子に助けてもらうしかないと思う。或いは彼氏を見つけるでもいいかもしれない。
何かあってからでは危ないので、親に相談してみた方がいいと話しておいた。帰りは迎えにきてもらうでもいいと思う。
本当に気持ちが悪いと泣きそうな女の子。気持ちは痛いほど良くわかる。
こんなに困っているのに、アイツはなんで分からないんだろう。何で嫌なのか分からないという考えが全く理解できない。人が嫌がることは即座に辞めればいいだけなのに。
女子の間では相当やばい奴認定されているのに、男子達は何も気づいていないのももどかしい。
学校祭は他校からも遊びに来る人がいて、大介も友達と一緒に遊びに来ていた。六花も高校選びを含めて色々な学校祭を見学しているらしい。
学校祭でのクラスの催し物はクレープ屋さん。女の子は可愛いフリルの服を着て、男子はタキシード風。私はフリルスタイルが苦手なので、タキシードにしてもらっている。
杏樹のクラスはホラーの館。
霊感があるという女の子の霊感占いもある。
女子に大人気で、みんなこぞって見てもらいたがり、行列が出来ていた。
友達の勧めで自分も見てもらったが、よく分からないことしか言われなかった。
守護霊は武士だとか、ボーイッシュなのは前世が男だったからだとか。昔から大事に育てられていて、家族との絆が強いと言われた時は少し腹が立ってしまった。おそらく見た目だけで判断しているであろう事ばかり言われる。
「肩に霊がいる。どこか水辺に行った?」など。無難なことしか聞かない。
水辺はそこら中にある。池、川だって近くにあるし、プール、少し離れれば田んぼだってある。
「ないかな」と答えると、「たぶん、水死した霊だと思う」という。
で?だから?どうしろっての?具体的な解決法は提示してくれない。霊感も楽しむ程度ならいいのだが、無駄に不安を煽るようなことばかり言うのはどうかと思った。
連れてきてしまう事はあると思う。でも幽霊が同じような悩みを持っていたりとか、近い存在の側に暫くいるだけとか、単純に迷っていて優しい人について行けば成仏できると思ってるだけとか。
本当に悪いモノって実はそんなに多くない。と思う。気にする事はない事がほとんど。憑かれやすい人は実際にいるけれど、祓ってもまた別のモノに憑かれるだけなので、本人の意識を変えない限りあまり意味がない。
風邪をひきやすいかひきにくいか体質の違いみたいなもんだ。
憑かれやすいから悪いってわけでもないので、悪い事は全部霊のせいにするのは少し違うと思っている。
小さい子は身体も精神的な面でも幼いから、影響が出やすいのだと祖父は話していたこともある。いい大人ならよっぽどな事をしない限り心配ない。
それでも、何かあったり、悪い事が続いたりする場合は神社に行けと祖父もユウも言っている。
神社は神聖な場所だから行くだけでも効果があるんだとか。よっぽどマズイ時はお祓いも良いらしい。
見えないから怖いだけ。
なのに、真由が色々と怖いことを言われていて不憫に思う。こうゆう時はどうしたらいいんだろう。
女性の生き霊が真由に憑いていて、悪さをしているんだとか。最近の不幸はその生き霊のせいだと言いだしている。
霊感占いをしている彼女の力が強すぎて、私には見えない、理解できないって可能性もあるのかな。
「いないよ」とユウが言う。
「だよね、良かった」
「この子は目に見えない世界の話をしないと、人に興味を持ってもらえないんだよ」と言った。
私も昔、同じことを言われたなと思った。嘘つき呼ばわりされるのも、周りが怖い顔をすることも嫌で話さなくなった。いつしか、祖父の事も少しづつ避けるようになってしまった。
「彼女も訓練や経験によって開花される時が来るかもしれないけどね」
「なるほど」
「突然、本当に見えるようになる事もあるしね」
とりあえず真由を宥める事にしよう。それか、うちのおじいちゃんが見える人だからって事でふんわりアドバイスしてみようかな。
「私にも見えたらいいのにな」と周りの子が話している。見えてもそんなにいい事ばかりじゃないんだけどな……。
それに、いくら感じようとしても死んだ祖母の霊なんて見えないし、話もできないのは何でだろうと時々思う事もある。祖父は近しい人とは中々話せないんだと言っていた事があるが、何でなの?
「こうあって欲しいという雑念が強いと、別の何かと繋がってしまうこともある。親族を無くすという事自体が精神的なダメージになる。そこにつけ込む悪いやつも沢山いて、そうゆう輩と下手に繋がってしまうと危ないんだよ。惑わすものも含めてね」とユウは話している。
親族と話したい時は、信頼できる同業者に頼む方が良いのだとか。
学校祭、体育館ステージではビンゴ大会、カラオケ大会やメインイベントのバンド演奏などがある。
人気の先輩達が組んだバンドはコピー曲を歌っている。ボーカル&ギターなんて特に花形なので、女の子達はキャーキャー叫んでいる。
生きているユウ君も本当にいるならこんな感じなのかなと、ふと思う。
自分には縁遠い世界にいる人のように思えてならない。華があってキラキラしていて、人気者で……。私とは真逆の存在だとなのだと思う。
「そんな事はないよ、悩みをかけえている普通の人間だよ」とユウは言う。
「でもバンドのイメージって華型じゃん。オーラが凄いよね」
「君も君自身が自覚していないだけで、素晴らしい人間なんだよ」
「そうかな」
「そうだよ、前世の君は自分の事がとても好きだったよ。とても輝いて見えたよ」
その話をされる度、モヤモヤした。自分とは全然違う人間に思えるからだ。
「君は今でもとても美しい」
「それ、やめて。美しくなんてない」
「どんな時でも君は美しく綺麗だよ」
「綺麗じゃないの、汚いの!」
「どうして?」
「私は自分が嫌いなの」
「何故?」
何故?何故って……。
「どうして、そう思うようになったの?」
ユウは柔らかい口調で言う。
そんなのわからない。何でそんな事聞くの?別に私の勝手じゃないか。ほっといてくれ。
「私は、あなたの望む昔のアイリスではないんだよ」
「何度でも言うよ。君はとても美しい」
何でこの言葉にこんなにイライラするんだろう。美しくなんてない、綺麗なんかじゃない。だからこうゆう格好だってしてるじゃないか。可愛い女の子になんて見られたくない。気持ちが悪い。
でも涙が出そうになるのはどうしてなんだろう。




