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19 夏祭り•後編


 辺りはとても賑わっている。カップル、親子連れ、小学生や学生の集団。浴衣を着た人が沢山いて、小さい男の子が甚平を着て綿飴を振り回している。


 沢山の屋台が立ち並んでいる中、提灯に灯が灯って、本格的な夜のお祭りムードがやってくる。遠くで太鼓の音が聞こえた。

 会場には母と六花も来ている。帰りは危ないから連絡を取り合って帰ることになっている。


 3人でお店を回る。りんご飴を食べてチョコバナナを食べて、フライドポテトもいっちゃおうかなと思っていると、真由の彼氏が到着したと連絡があったらしい。無事に見送って2人で周る。

 途中で他のクラスの子に出くわして暫くお喋りした。


 かき氷を買って、一休みすることに。ステージ上でバンドが演奏している。コピーバンドのグループが終わり、別のバンドになるところだった。チューニングをして音を合わせている。ボーカルらしき男の子もベースの男の子もボロボロの穴の空いたジーンズをはいている。ユウほど、くたびれた感はないけど、今年から流行り出したスタイルらしい。


 音楽が始まる。爆音と共にギターの音が響いてきた。ドラムやベース、リズム隊もしっかりしていて腕のいいバンドみたいだ。

 電話がかかってきたのか、杏樹が「ちょっと聞こえるところまで離れるね」と言って席を立った。


 バンドの演奏に乗って、ファンらしき女の子達がステージの前で飛び跳ねている。

 ユウがふらりと現れて、杏樹が座っていた左側の席に腰掛けた。今日はまたトレンチコートスタイルに戻したらしい。


「浴衣とても似合っているね」

「ありがとう」

「聞いてた?アイツのこと」

「うん」

「私のせいだった。私の選んだ結果だった」

「どんな選択をするかで道は変わるけれど、避けられないことだってあるよ。君のせいじゃない」

「うん……」


 ユウは心地よさそうにバンドの音のリズムに乗っている。

 生きているユウ君もこんな風に歌っているのだろうか。


「歌っているよ、君にわかるように、届くように。いつだって歌っている」

「そっか……。この人、いい声だね」

「そうだね」

「この人達と同じように4人組なんだよね」

「うん。4人組で弟もメンバーにいる。僕はボーカル&ギターだけど、ピアノも弾くよ」

「そうなんだ」

「弟がベース」

「へぇ〜」

「バンドの名前は花の名前からつけたんだよ」とユウは言った。


 杏樹が小走りで戻ってきた。待ち合わせの場所まで移動することに。

 お友達と大介を見つけた。大介の私服は久々に見たけれど、今流行りのボロボロジーンズにTシャツ姿だった。


 私の浴衣姿を見るなり、驚いた顔をしている。

「へぇーいいじゃん」と大介は一言言った。

 馬鹿にしないんだ。

 杏樹とお友達が仲睦ましく寄り添って歩いている後ろで、ビミョーな距離がある、私達。

 昔のノリが戻ってこない。沈黙が怖くて「彼女と別れたんだってね」と言ってしまった。

「うん別れたー。思ってた人と違うって言われた」「うわっそうなんだ。それはご愁傷様」と言うと笑っていた。

「難しいよね、何考えてるのかわっかんねー」と言う。そうゆうあんたも何か考えてるかわからなすぎるんだが……。

「何か食べた?」「少しだけ」「俺ら何も食べてないから腹減った」「すぐそばに焼きそばあるよ」

 最初こそ距離があるように感じていたけど、すぐに元に戻った。


 途中、人混みで杏樹達とはぐれてしまった。メールで何処にいるのか連絡を入れる。

「このままでいいんじゃないかな」と大介が言った。

「あの2人いい感じだし、俺達いない方が進展しそうだなって」

「それもそうだね」

 2人で金魚掬いをして、輪投げをして、食べ物の屋台を巡った。小さい頃に戻ったみたいだった。


 人混みに酔ったのと、慣れない下駄で足が痛くなってきたので少し離れて一休み。

 たこ焼きをがっついている大介は、私が食べているフランクルトをひと齧りしていった。一口がでかいんだ。ほとんどなくなったじゃないか。

「たこ焼きいる?」「うん」「ほら、あーん」「え、やだ」「なんでだよ、ほれ」と言ってくる。

「熱々だと火傷するじゃんか」

「傷ものになったら、もらってやるって」

「なんじゃ、そりゃ」

 わちゃわちゃしていると遠くの方でこちらを見ている人がいる事に気づいた。

 喉の奥がしまる。

 アイツだ。アイツがこっちを見ている。

 咄嗟に目を逸らした。どうしようか考えていると、大介が「あ、アイツ」と言った。大介も異様に浮き出たようなアイツの妖気に気づいたらしい。

「黒木から話きいてる。話しに行こうか?」

「いや、いい。大介ちょっと近づいていい?」

「へ?」

「付き合ってる風にしてもらっていい?ふりするだけ」

「ああ、うん」

 ヤバい、怖いのと、悔しいので泣きそうだ。早く何処かへ行ってくれ。今日はアイツの顔をこれ以上見たくない。

「大丈夫なの?」

「大丈夫なわけないでしょ」

「そっか、ごめん」

「何ですぐ話してくれなかったの?」と言う大介。こやつ、以前相談したことを忘れてやがる。

「言ったじゃん」

「そうだっけ?」

 何で男って話してる内容が頭にはいってないのかな。聞いてないのかな。大介だけじゃない、クラスの男子も家族の男どもも含めて、基本話を聞いてない奴が多すぎる。

 大介は私の顔を覗き込んで「あれ?目赤い?」と聞く。「今気づいたの、遅っ」「そんなまじまじ見れねーだろ。で?泣いたの?」「映画見てて号泣しちゃって」「アホ」

 話しているうちにアイツは何処かへ消えていた。

 花火大会は2人で見た。真由と杏樹から連絡がないから、上手くいってるみたいだ。


 帰る時間になって六花と母がいる待ち合わせ場所まで送ってくれた。

 母が「近所だし、ついでに乗って行く?」と大介に聞いた。

 夜食に食べるたこ焼きと串焼きを買って4人で家に帰った。


 家に帰ると杏樹から連絡があった。上手くいって告白されたらしい。そっちは?と聞かれて、何もなかったと話した。杏樹は何か期待していたようだけど、私は幼馴染に戻れただけで良かったかも。このままでいいのかもしれない。今は彼氏が欲しいとか大介とどうかなりたいとか、まだ思えない。

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