18 夏祭り•前編
暫くアイツからも解放される、夏休み。
8月にある夏祭り&花火大会は、杏樹と真由と浴衣を着て行くことになった。
浴衣には抵抗があったが、せっかくだから皆んなで合わせようということになった。
真由は彼氏と途中で合流するという。杏樹は遠距離の彼氏と別れてしまい、新たな恋をしているところ。杏樹のお相手はサッカー部のエース。どうやら大介の友達だということが分かり、2人だけだと気まずいからとダブルデートにしてくれないかと懇願された。世間て本当に狭いもんだなと思い知らされる。
大介の前で浴衣とかキショい。絶対笑われるじゃないか。
杏樹の家で3人で着付けすることになっている。
買ってもらった浴衣を持って杏樹の家に行く。杏樹のお家はわりとお金持ちで、広い庭に、ワンちゃんもいて、杏樹の部屋は私の部屋の倍近くある。姫系で揃えられた白い可愛い家具。両親も仲が良く、よく旅行にも出かけている。夏休み中はネズミーランドにも行くらしい。
真由も行った事があるんだとか。羨ましく思ってしまう。北海道から出ることも海外なんて、夢のまた夢だから。
それぞれが持ってきた浴衣をベッドに並べた。
真由は綺麗な蝶々柄。杏樹はピンクに椿の花柄。私はすみれ色の風鈴花。
浴衣に着替えてからは、メイクしたり、髪型をセットしあったりとワイワイ楽しんだ。普段はメイクなんて全然しないし、あまり興味もない。1番詳しいのは杏樹で、雑誌を何冊も買って研究している。
練習台として杏樹がメイクをしてくれた。どっちのマスカラがいいいかな〜と楽しそうに選んでいるが、違いが全くわからない。どんどん盛られて宝塚みたいな顔になってきた。とても違和感があるけど、2人は可愛いと褒めてくれる。
「明里って顔がハッキリしてるからナチュラルの方が良かったかな〜」
そうなのか?確かに男顔。
「私はぼんやりしてるから、目をハッキリさせたい」と真由が言う。
手慣れた風で、ヘアメイクさんみたいだった。
杏樹が真由の髪をアレンジしている。
「どんながいい?」
「サイドだけ三つ編みにしようかな」
私はショートだからほとんど髪を触る必要はない。 2人はちゃんとお手入れされた髪の毛。綺麗に整えられた爪。今日は可愛いネイルをしている。
うちの高校は割と校則が自由な方なので、杏樹は髪を染めている。真由は日本人は黒髪よ、タイプなので染めないらしい。私は染めたいけど、父が許さない。
「いつ、彼氏来るの?」と杏樹が真由に聞いている。
「そういえばさ、明里は?大介君とどうなってるの?」
「えー、気まずい状態が続いております」
「えーーー」2人が声を合わせてハモっている。
「去年からずっと?一年経つか〜」
「こないだもちょっと色々あって」
「あの時、うまく行くと思ったのになぁ」と2人は話している。
絶対間違い無いと思っていたのに、こんな結果になってしまったことに、申し訳なさを感じていると話す2人。
「なんで!?」
「私達も押せ押せ行っちゃえって煽っちゃったからさ、罪悪感感じてるんだよね」
「それは違うよ、全部大介のせいだよ」全てあいつになすりつけてやろう。
「でもさ」と言って顔を見合わせる2人。
「何?」
「後で聞いたんだけどさ、大介は告白した気でいたみたいよ。振られたんだと思ったって友達から聞いた」
「告白されてないよ」
「あれはほぼ確実だったじゃん」「ねー」「もどかしかったよね」
「まあ、ハッキリ言わない大介が悪いんだけど」と2人は話した。
あの時、私からも言わなかった。
「大介さー、肝試しのペアが柿崎になっちゃって、めちゃキレてたっぽいよね」
「そうそう、柿崎がさ、明里にちょっかいかけてたのが気に入らなかったんでしょ」
柿崎?肝試しのペアって柿崎だっただろうか。記憶を辿ってみる。
「私のペア、柿崎じゃないよ」
「柿崎だったよ」
「ギリギリで変わってって言われて、違う人になった」
「そうだったっけ?」
そうだったはずだ。変わってと何度も言われて、肝試し出発の直前で、また変わってと言われてーーーー
「あ!!!!」私は大きい声をあげた。2人はびっくりしている。
とんでもない事を思い出してしまった。体中に鳥肌が立って、喉の奥がキュっと閉まる。
冷や汗がダラダラ流れてくる。
「わ、私の、肝試しのペア……た、田口だった」
真由は口を押さえ、杏樹は顔面蒼白だった。
「嘘でしょ」「それほんと?」
「うん、出発する寸前で変えてって言われて……どうでも良くなってたから……ずっと忘れてた」
真由が突然「いやーーーー!!!」と声をあげた。
「ねぇもしかしたら……」と声を震わせながら言う。
今、嫌な考えが頭をよぎった。きっとみんな同じ事を考えている。
3人同時に「勘違いされたんじゃない?」と声を合わせて言った。
「勘違いされたんだよ、だってあの時、好きな人とペア組もうってクラス中で言ってたから」
私はギャーと叫んでしまった。
「好きだと思われてたってこと?キモい、いやーーー!」
「あのパンプキン、勘違い野郎だって話しじゃん。絶対そうだよ」
「キモいキモい」
3人でハマるように叫びあった。
ペアなんて変えなきゃ良かった。いや変えたくなんてなかった。自分があの時、もっと素直になれていたら。ちゃんと気持ちを言えていたら……今更遅い。涙が溢れてきた。勘違いでストーカーされてたなんて。
涙が止まらなくて、せっかくの化粧もぐちゃぐちゃにで、瞼もパンパンに腫れてしまった。
2人がよしよししてくれて、杏樹がアイスノンを貸してくれて、なんとか腫れは引いてきたけれど、メイクはもう一度仕切り直し。
腫れが目立たないようにメイクしてくれた。さっきよりナチュラルになって自然な仕上がりだった。
「気を取り直して思いっきり楽しもう」と2人は言ってくれた。
杏樹と真由にギリギリで変わった女の子が誰だったのかと聞かれたが、全く思い出せなかった。でも思い出せなくて良かったかもしれない。その子のことを恨まなくて済むから。




