16 変な夢
荒廃した灰色の砂利道を歩く。
私は道に迷っている。何処を歩いているのか分からない。どの場所にいるのかも。
誰もいないゴーストタウンで真っ黒い大きな人に出会った。
その真っ黒い人はもの凄い勢いでこちらに向かってくる。
怖くて逃げた。逃げても追ってくる。角を曲がってやっと真っ黒い人から逃げられたと思った。でもまたどんどん近づいてくる。逃げても逃げても前に進んでなかった。足がどんどん床に埋もれて沈んでいく。全然前に進めない。早く逃げなくては追いつかれてしまう。
黒い物体はついに追いついて、覆い被さってきた。押しつぶすつもりらしい。怖い、誰か助けて、息が出来ない、誰かーーーーー
きっとこのまま死ぬのかもと思った時、黒い物体が煙のように姿を消した。
その隙に逃げた。今度はちゃんと走れる。
建物の中なのに、トンネルを見つけた。
大きなトンネルの先が光っている。
美しい光に誘われて、トンネルを進む。だんだんと光は強くなり眩しくなってきた。目を覆話なければ直視できないほど、光輝いている。
トンネルの先は息を呑むほど美しい世界だった。
山で囲まれた峠のようなその場所は、木や緑でいっぱいで、花々が咲き乱れていた。身体が浮き上がるほど心地よくてとても暖かい。空に太陽はない。山々や木々や色とりどりの花が個々に光を放っているようだった。
トンネルから続く一本道は、空に浮いているような道だった。道の下も緑と花でいっぱいだ。まるで花束の中にいるみたい。
道の先は山に隠れていて、ずっと先までは見えない。
もっと先を見てみたい。
進もうとすると、
「そっちに行ってはダメ」と女の子の声がした。
後ろを振り向くと、白いレースのドレスを見に纏った少女が立っている。
「まだそっちに行くのは早いのよ、戻って」
「でもこっちの暖かいほうへ行きたい」
「ダメ、戻って、お願い」
「どうして?」
「まだやり残している事があるでしょう?」
そう言われて、急に怖くなってきた。
そうだ、まだやる事があった。
急いでトンネルに引き返す。
トンネルに戻った途端、当たりが暗くなった。
振り返ると、トンネルの向こう側が壁に塞がれて無くなってしまっている。最初からそんな場所なんてなかったかのように。冷たいコンクリートの塊になってしまった。
さっきまで光に満ち溢れていた場所が急に恐ろしくなった。急いでトンネルを出なければならない。背後から真っ暗闇が迫ってくる。
トンネルを抜けて、また灰色の砂利道を歩いて行く。
砂利道の先に開けた場所を見つけた。
開けた場所だけ色づいて見える。
ゆるゆるふわふわな女の子が花を摘んでいる。木や草花に話しかけながら水を撒き、植物菜園を楽しんでいる姿も見える。髪は栗色ウェーブ、目は海のように真っ青、少しもっちりしているような、とても健康そうな子。レースのようなヒラヒラした服を着て、後ろは帯のようなレースの紐で蝶々結びにしている。
急に場面が変わった。
打ちっぱなしの剥き出しのコンクリート。銃撃戦でもあったのだろうか。あちこちに攻撃の跡や穴が残っている。崩れた階段と天井。剥き出しの鉄の骨組みが見える。水が滴る音、人の叫び声、ゴォオォンという大きな音が響く。
汚いコンクリートの上に、裸足の少女が倒れている。苦悶に満ちた表情をして。先ほど見かけた少女に似ているが、髪の毛は無造作に切られていて短くなっている。真っ青な蒼い瞳に光はなく、目が虚で窪んでいる。随分痩せたのか頬もコケてしまい、げっそりしている。
そこへ少年が駆け寄る。
騎士のような格好をした金髪の少年は少女を見つけると、跪いて剣を床に置いた。
少年が女の子を抱きかかえようとする。
苦しくて息が出来ない。
「喋らなくていい」
「……待っ……て、待って」
少年は耳を傾ける。
「話を聞いて、」
話をーーーーー
「必ず見つける。僕達は必ずお互いを見つけ出せる。君に見つけてもらえるようにいつも歌ってる。だから大丈夫だよ」
「か……ならず、見つけるわ……必ず」
息が出来ない。苦しい。口の中が鉄の味がする。
息が、息がーーーーー
目を覚ましたら、いつもの部屋の天井だった。隣でツルツル頭の青いたぬきが、目覚ましの時間を待っている。
全身汗だくだった。歯を食いしばりすぎたのか口の中が血の味がする。呼吸が苦しかったのは喘息のせいみたいだ。
背中も痛い。つったのかなと思っていたが、一日中、肩甲骨のあたりがズキズキと痛かった。
夜、お風呂に入ろうと服を脱ぎ、キャミソールでリビングをウロついていると、「おねえちゃん、背中どーしたの?」と六花に呼び止められた。
アイスを加えたままの六花が駆け寄って背中を触る。
「凄い傷ができてるよ」
洗面所の鏡で背中を見に行くと、肩甲骨あたりに引っ掻き傷があった。
「なんか生えてきそうじゃね?」とジロジロ見ながら六花が言った。
「なにこれ」
「てゆーか、どうやったらこんな傷つくの?」
「寝てて、朝起きたら痛かったんだよね」
「いくら寝相悪くても、こんな風にならなくない?」
ぶつけたのかなと思ったが、そうゆう傷じゃない。何だろう。




