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「ディラン君の剣、いいなぁ。タリスライト産の名剣だね。国王の近衛騎士や、王族が代々受け継がせていくのに使うくらい質のいいものだよ」
ケニーさんは、興味津々といった様子でディランさんの腰あたりを見ています。
タリスライト産と聞いてつい反応してしまいましたが、ディランさんはケニーさんの言葉を聞き流していました。
「問題が起きている田舎の村に、君達のような若者がふらりと訪れたわけだろう?最初は君達が何か関係しているのかもと思ったけど、どうやら何も状況がわかっていないようだし、ステラちゃんの手帳を見てしまったら、なんだか悪いことをしている気がして、疑って悪かったと思っているよ。早く二人っきりの観光に戻れるといいね」
そんなお二人の横顔を眺めていると、今度はこちらに話題を振られて焦ります。
「違います、手帳は、別に」
「何かの暗号かと思ったら、恋人達に人気のデートスポットばかりがチェックされているし。ディラン君と行くの楽しみにしてたんだねぇ。後でおじさんおススメの場所も追加してあげるよ。もっと親密になれること間違いないよ」
「遠慮します!」
「おっさん、もうそれ以上そいつをからかうな。呪われるぞ」
ディランさんは呆れた声をあげ、ケニーさんは声を出して笑っています。
双方に悪い緊張は無くなったようですが、なんだか感情が右往左往するので疲れてしまいます。
「おじさんにも、その日記見せてもらえるかな?」
ケニーさんが真面目な顔に戻ったところで、三人で日記を読みました。
気になる箇所はいくつもありました。
◯月×日
ケイティが機関の者達に連れて行かれた。最初から彼女を名指しで、魔法の素質があるとかで、出産を控えている彼女に何かされないかと、彼女の夫が不安そうにしている。
◯月×日
村人から行方不明者が出た。女性や子供達には家に閉じこもるように伝え、男衆で捜索をしているが、見つからない。そんな中で、また新たな行方不明者が出てしまい、この村で何かが起きようとしていると、恐怖した。
◯月×日
村の周辺を徘徊する大型の魔物の姿を確認した。村から出られない。村人には屋敷の地下に避難するように伝えた。ここにきても、機関の者達は何かの作業を続けている。外に救援を求めることもままらないのに。彼らは何を考えているんだ。
◯月×日
唯一の朗報だ。ケイティが無事に出産を終えた。教会では彼女の世話を修道女がしてくれている。だが、どうにかしてこの状況を打破しなければ、生まれたばかりの赤子も我々も、皆、魔物の餌となる。
◯月×日
我々は、機関の提案を受け入れることにした。
ここで、日記は終わっていました。
日付けは、今日から三ヶ月以上前のものです。
提案とは、何を受け入れたのでしょうか。
「ケイティには魔法の才能があったのですね。名指しということは、彼女が目的でこの村に来た可能性もあるのでしょうか?何をさせられていたのか、機関とはなんのことでしょうか」
ネッド君はお姉さんが人質にされたと言っていたので、無理矢理何かをやらされていたのでしょうか。
私にはさっぱりで、謎は深まるばかりです。
ディランさんとケニーさんも難しい顔をしています。
「ディラン君。一つ、気になった場所があるんだけど、一緒に行ってみるかい?」
「何処へだ?」
「一階の、突き当たりに扉があったはずだ。そこの奥に、おそらく地下へと続く場所があるはずなんだ。村人が避難した場所はそこではないかと」
「わかった」
ケニーさんの提案を受けてその部屋を出ると、再び階段を降りてすぐ横にある扉の前へと移動しました。
ケニーさんが扉を開けると、鍵はかかってなかったようで、あっさりと中の様子を見ることができました。
部屋の中は半分が倉庫のようで、四方に木箱や何かが山積みにされていました。
一番目立ったのは、部屋の中央にあった鉄の扉です。
床に少しの傾斜をつけて設置された鉄の扉に、ディランさんが耳を押し当てました。
扉の方向は教会に向いています。
「この先は、屋敷の下を通って教会に繋がっているんじゃないかな」
「何の音もしないな」
おそらく、この下には階段があって、屋敷の玄関ホールの方角に向かっていて、そのまま教会に繋がっているのですね。
取手部分に鎖がグルグルに巻かれているのが気になりますが……
錠が取り付けられて、簡単には開かないようになってて、って、
「これ、閉じ込められているのでしょうか……?」
この場合、この下に誰かが避難しているのであったならば、内側からではなく外側から施錠されて閉じ込められていることになります。
「…………」
ディランさんは無言で錠と鎖を外しました。
「おお。ディラン君、器用だね。助かるよ。じゃあ、開けるから、明かりを持ってたら用意してくれるかな」
ケニーさんが両開きの片方の重い鉄の扉を持ち上げると、暗い空間が見え、反対側の扉をディランさんが持ち上げてみても、やっぱり暗闇へと続く階段が見えているだけでした。
覗き込んだまま様子を見てみても、物音一つしません。
カンテラの明かりを灯してかざしてみても、見えるものは大して変わりはありませんでした。
「下に降りるしかないか」
私が言うまでもなく、ディランさんの声からも、あまり乗り気ではないのがわかります。
この階段の先がどうなっているのか見当が付きませんし、良い想像も浮かんできません。
「おじさんが先に行くよ。後ろはディラン君にお願いしていいかな?何か起きれば、遠慮なくおじさんのことは置いて逃げて構わないから」
そう言って、まず最初に暗い階段をケニーさんは慎重に降りて行きます。
「階段には異常はなさそうだよ」
階段を降り切ったのか、わずかな灯りが下の方に見えました。
次は私の方が良いのかとディランさんの顔を見ると、頷かれたので、階段に足を進めます。
ひんやりとした空気に包まれて石階段を降りていくと、すぐにケニーさんに追いつきました。
私の後ろにディランさんも続きます。
階段から先の通路もとても狭く、幅は1メートルあるかないかといったところでしょうか?
高さもそこまでないので、ディランさんやケニーさんは窮屈そうです。
真っ暗で、ケニーさんとディランさんが灯したカンテラが視界を確保できる光源でした。




