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青みかん  作者: リュウ
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給食戦争

 俺が学校の中で一番好きな時間は給食だ。まあ、そう思っている小学生は少なくないはずだ。特に、欠席者が出るときは、おかずやデザートの取り合いになることはよくある。


 5年生の冬、インフルエンザが流行して、クラスの欠席者が5人も出たことがあった。幸い(!?)おかんに予防接種に連れて行かれた俺は、手洗いうがいを口うるさく言われていたことも手伝って、病気とは無縁な生活を送っていた。

「やっぱり人が少ないと、寂しいな」

朝のホームルームを終えてから、大輔がそう嘆いていた。やっぱり、いつも明るいこいつは、人が多い方が賑やかで楽しいと思うのだろう。

 俺も、クラスに全員揃っていることが当たり前のように思ってきたから、欠席者が多い状況には違和感を覚えてしまう。原因が病気と思うと、欠席者が心配に思ったりもする。

 しかし、欠席者がいるからこそのラッキーもあるのだ。

「欠席者の分のプリン、欲しい人おる?」

給食の時間に、担任が俺たちに聞いた。そう言われ、俺を含む6人のクラスメートが手を挙げた。その時、教室の空気が急変した。

 1人だけがプリンをもらえなくなる。その事実を突きつけられたその6人は、欠席者のプリンを目の前にしながら、睨み合うことになった。この状況で、退くなんて選択肢は誰にもなかった。

「これで負けた人、めっちゃ可哀想」

前の席で給食を食べていた実果子が、笑いながらそう言ってきた。

「ああ?」

プリン争奪戦に関係のない人間にそう言われた俺は、無性に腹が立った。

「とにかく、じゃんけんで白黒つけようぜ」

プリン争奪戦の参加者の渉にそう言われ、俺たちはじゃんけんをした。

「じゃんけんぽん‼︎」

勝敗は、一発で決まった。俺は、じゃんけんに一人負けして、プリンを逃してしまった。

「くっそ…」

悔しくなった俺は、そう言わずにはいられなかった。

「あーあ、勇者30人を倒してお菓子の国を作ろうとした見返りやね」

実果子が、追い打ちをかけるようにそう言ってきた。

「お前、さっきから俺に喧嘩売っとんか⁉︎」

この実果子も、劇中ではおしゃべりで陽気な、勇者を演じていた一人だった。その台本を書いた真登香は、

「なんか、ごめん」

と言っていた。しかし真登香は

「おわびに何で実果子があんなことしてくるか、教えたろか?」

と続けた。

「そんなん、俺が知ったところで何の解決にもならへんやろ⁉︎」

俺は全く興味がなかったのでそう言ったが、真登香はそんな俺を無視して

「晴男のことが好きで、気を引きたいからやよ」

なんてアホなことを言っていた。

「アホか、そんなわけないやろ!」

俺は、真登香が言ったことを否定したくてそう言ったが、実果子は赤面して

「もう、余計なこと言わんといてさ!」

と叫んでいた。ちょっと待ってくれよ。俺は、実果子に好意を持たれても、全く嬉しくない。だって俺…

「だって、実果子だってさっき余計なことを言うてたやん」

真登香は全く動揺せずにそう言ってのけた。

「とりあえず、俺も席に戻るからな」

他のプリン争奪戦の参加者はとっくに自分の席に戻っていたので、俺もそうした。

「実果子、晴男は見込みないと思うで。あいつ、最近気になっとった下級生の女の子に振られたばっかやもん。そのことを引きずっとるし、年下にしか興味ないかもよ」

実香子の隣の席の徹也が、そんな余計なことを言った。

「えっ、そうなん⁉︎じゃあもう諦めよ!」

実果子はその余計な話に引いたらしく、あっけらかんとそう言った。

 俺は、余計なことばかり言われて更に腹が立った。好意を持たれて嬉しくない相手が諦めてくれて良かったと開き直る余裕なんて全くなかった。

「くっそー」

俺はそう言い、給食をやけ食いした。プリンこそ逃したが、パンやおかずは余っているし、牛乳は飲みたがらないクラスメートもいるため、結構残っていたりする。

 こんなとき、普段なら貴雄や博哉がなだめてくれるのに、こんな日に限ってインフルエンザをこじらせている。彼らがいつも近くにいたから気付かなかったが、今のクラスメートって、余計なことを言うやつばかりなんだな。こんな連中相手なら、自分が30人の勇者を倒した魔王役で良かったかもしれないと思ってしまう。

 そう思うと、急に貴雄と博哉に会いたくなった。いっそ、自分もインフルエンザをこじらせたら、貴雄や博哉に会えない代わりに、こんないらんこと言いのクラスメートに振り回されることもないのに。そんな不謹慎なことまで考えた。

「晴男、食欲ないから、残りのパンを代わりに食べてくれへん?」

席が近い大輔に、そう言われた。

「ええよ。お前が食欲ないなんて珍しいな」

俺はそう言って、大輔のパンの残りをもらった。

「ありがとう。何か、元気が出なくてさ、俺も体調悪いんやろか」

大輔は、俺にパンを渡しながらそう言った。こいつは、普段より人が少ない寂しさから食欲がなくなっているのだろうか?


 「おはよう晴男、一緒に学校行こ!」

数日後の朝、貴雄が元気良く俺の家に来た。

「良かった、インフルエンザが完治したんやな」

俺は、久しぶりに貴雄の顔を見られたことにほっとして、思わず抱きついてしまった。

「ちょっ、なっとしたんさ⁉︎普段は俺からひっついても嫌そうに払いのけるくせに!」

貴雄は驚いて、俺にそう言った。

「いや、久しぶりに会えたんが嬉しくてさ」

俺は、普段なら口にしないようなことを言っていた。

「久しぶりって、数日休んだだけやん。お前、熱でもあるんと(ちゃ)うか?」

貴雄はそう言うが、顔が赤い。

「お前こそ真っ赤やで。また熱が出たんか?」

俺はからかってそう言った。

「うっせーな。誰のせいで…。って、もたもたしとると遅刻すんで。行くぞ!」

貴雄がそう言うので、俺は笑って

「おう」

と返した。

「インフルエンザになってめっちゃ苦しかったわ。お前もかからんように気をつけろよ」

通学路で、貴雄にそう言われた。そうだよな。やっぱり学校に行けない状況になるくらいだから、苦しいに決まってるよな。

「おはよう。やっとインフルエンザ治ったで」

途中で合流する博哉も、元気良くそう挨拶してきた。

「良かった、俺も治ったばっかなんや」

貴雄が嬉しそうにそう言う。

「晴男のやつ、さっき会った途端に抱きついてきたんやで」

貴雄がそう続けた。

「えっ、そうなん⁉︎」

博哉がそう驚くから、俺は恥ずかしくなった。

「晴男がそんなことするなんて、俺らが休んどる間に何があったんさ?」

博哉がそう言いながら笑った。

「何だかんだ言って、晴男は貴雄のことが好きなんやね。まあ、俺も晴男のことも貴雄のことも大好きやけど」

博哉がそう続けたから、俺は

「えー!それ、本当かー⁉︎」

と言いながらも、また恥ずかしくなった。

「本当やって!やないとこうやって一緒に登下校なんてせえへんやろ?」

博哉も、そう言いながら照れていた。

 やっぱり俺は、貴雄や博哉が一緒にいる方がいいな。こうして、また3人で登下校できることが、俺の学校生活の中での幸せだと思うのだった。

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