第七話 告白
テルさんの助言もあり、俺は今日の夜、父さんと母さんに魔法のことを打ち明けることに決めた。
「あのさ、父さん……今夜、母さんと三人で話がしたいんだけど」
「ん? 構わんが、どうかしたのか?」
「いや、悪いことじゃないんだけど……」
「そうか。なら母さんには俺から言っておく。それまでしっかり剣術の練習に集中しなさい」
父さんと母さんは、どんな反応をするのだろうか。喜んでくれるだろうか、それとも不気味がられてしまうのだろうか。
「――こら、稽古中に考え事なんかするんじゃない」
「ご、ごめんなさい!」
「ハッ、話が何であろうと、俺と母さんはいつだってお前の味方だからな」
父さんは本当に優しい。不安を吹き飛ばすためにも、今は稽古に集中しよう。
稽古を終えて夕飯を食べ、ついにその時がやってきた。
「ロイ、そろそろ話を聞かせてくれるか?」
父さんに促され、俺は意を決して頷いた。
「父さん、母さん……実は僕、魔法を使えるんだ」
静寂が室内を包む。ほんの数秒の沈黙が、果てしなく長く感じられた。
「……やっぱりそうだったか」
父さんは驚く風もなく、落ち着いた声で言った。
「え……気づいてたの?」
「なんとなくな。なぁ、母さん?」
隣の母さんも、優しく微笑みながら頷いた。
「リロちゃんと練習しているところを見た時、ロイの手から小さな光が漏れてるのを見かけていたのよ。お父さんと相談して、ロイが自分の口から話してくれるまで待とうねって決めていたの」
そう言って、母さんは俺の手を温かく握りしめてくれた。
「なんで……聞かなかったの?」
「私たちが家族だからよ」
「親ってのはな、息子が小さな隠し事をしていても愛するものなんだ。だから何も追及しなかった。それだけさ」
「隠してて……ごめんなさい」
「謝ることなんてない。それに、魔法が使えるなんて最高の知らせじゃないか!」
父さんたちの温かい言葉に、偽りは一切なかった。胸の奥が熱くなる。
「はいはい! こんな辛気臭い空気は終わりにしましょ! おめでたいことなんだから、パッと明るく行きましょ!」
「そうだな! ロイ、使える魔法を何か見せてくれないか?」
父さんたちの期待に応えるため、俺は小さな炎を掌に浮かべた。
「ファイヤーボール」
「まあ、すごいわロイ!」
「よくやった!」
二人は俺の頭をこれでもかと撫で回してくれた。
⭐︎
両親に打ち明けてから一週間が経った。
俺の生活は大きく変わることもなく、穏やかな日常が続いていた。
朝は相変わらずリロに起こされ、二人で大木の広場へ向かう。
この一週間、テルさんに言われた通り「最後まで強く成功をイメージすること」を意識してヒールの練習を重ねていた。
「今日こそ、完璧に成功させたいな……」
意気込んで、枯れた一輪の花に手をかざす。
「――ヒール」
(イメージ、意識、集中……最後まで切らすな!)
脳裏に咲き誇る花の姿を鮮明に描き続ける。
すると数秒後、茶色く萎びていた花が瑞々しい緑を取り戻し、綺麗な大輪の花を咲かせた!
「で、できた……!」
「えぇっ!? すごいよロイ! パパに教わってすぐにできるようになっちゃうなんて!」
自分以上に、リロがピョンピョン跳ねて喜んでくれた。
よし、この感覚を忘れないうちに、もっと早く発動できるように特訓だ!
「ヒール!」
これで三十回目。発動速度はまだ遅いけれど、明確なコツは掴めてきた。
「どうやら、すっかりコツを掴んだみたいだね」
「うわぁっ!?」
びっくりした……。テルさんは本当に足音もなく静かに現れる。
「はい! テルさんのおかげで、ちゃんと治せるようになりました!」
「よかったよかった。それじゃあ次は、回復魔法以外の新しい魔法を教えてあげようか」
「本当ですか! お願いします!」
「いい返事だね。ロイ君は、どんな魔法が使いたいかい?」
異世界ファンタジーと言ったら、やっぱりあの魔法一択だろう!
「ものを自由に出し入れできるような魔法って、あったりしますか?」
「ものを出し入れする魔法、か……」
テルさんはあごに手を当て、深く考え込んでしまった。この世界には存在しないのだろうか?
「……あ、なかったら全然大丈夫なんですけど」
「いや、『アイテムボックス』と呼ばれる空間魔法ならあるにはあるんだ。ただ……あれは構造が複雑で、習得が相当難しいんだよ。一人で扱えるようになるまで、最低でも一年はかかる。ロイ君にできるかどうか……」
やっぱりあるんだ、アイテムボックス!
一年か……一見長く思えるが、空間収納の便利さを考えれば一年の修行なんて安いものだ。
「教えてほしいです! 頑張ります!」
「決まりだね。それじゃあ、練習は明日から始めよう。ロイ君用のメニューを考えてくるよ」
テルさんは優しく笑うと、家の方へと戻っていった。
「もー! ロイ、お話長ーい! 最近全然リロと遊んでくれないじゃん!」
放置されていたリロが、ぷくっと頬を膨らませて腕を組んでいた。
「ごめんごめん! これからの練習の話をしてたんだよ」
「これからは、忙しくても絶対にリロとお話ししてよねー!」
「わかった、わかったから」
その後の練習の合間、怒るリロとたくさん話をした。リロはすぐに機嫌を直し、満面の笑みを見せてくれた。
……ちなみに、リロも最近ヒールの練習を始めたのだが。
彼女は驚異的なセンスを発揮し、なんとたった二日でヒールを完全にマスターしてしまった。
俺の一週間の努力は一体……。
一方、父さんとの剣術稽古も着実に進んでいた。
指導された通り瞑想を繰り返すうちに、体の中を流れる気の感覚が感覚的に掴めるようになってきたのだ。
父さんのように目にも留まらぬ一撃はまだ打てないが、以前よりも遥かに鋭く、重い剣が振れるようになってきている。
魔法も、剣術も、少しずつできることが増えていく。
俺は異世界での成長に、確かな手応えと充実感を得ていた。
お読み頂きありがとうございます!アドバイス等ありましたら、お書きいただけると喜びます。
ついに家族に打ち明けたロイは、新たな魔法を習得しようとしています。「アイテムボックス」これがこっちの世界にもあれば相当楽になりそうですよね……欲しい
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