第五話 異世界での日常
「測定が完了いたしました。あなたの魔力量は……『1』です」
「え……?」
両親も驚いていたが、一番驚いているのは俺だ。素早く次に流され、俺の異世界チート無双計画はあっけなく幕を下ろした。
って、そんなことで諦められるか!
絶対におかしい。だって、あんなに練習したんだぞ……。
落ち込んでいる俺を見て、父さんと母さんは何も言わずに優しく抱きしめてくれた。二人の胸の温もりに包まれると悔しさが込み上げてきて、思わず泣いてしまった。
どれくらい泣いただろう。しっかり泣いたおかげで、ようやく気持ちの整理がついた。
(……いや、待てよ? 現に俺は魔法を使えているんだ。数値が『1』だろうが関係ない。使えりゃいいんだよ、使えりゃ!)
教会を出ると、外で待っていたリロが「ロイ、どうだったー?」と元気に駆け寄ってきた。
「……『1』だったよ」
苦笑いを浮かべながら告げると、リロは目を見開いた。
「大丈夫だよロイ! わたし『57』もあるから、ロイの分もわたしが守ってあげる!」
本当にリロはいい奴だ。俺は「ありがとう」と言って笑った。
せっかくカザール王国の都に来たのだからと、俺たちは両親と一緒に街を散策することになった。活気あふれる市場には、見たこともない珍しい果物や家具が並び、俺と母さんは夢中になって見て回った。
ここぞとばかりに母さんにおねだりをして、この世界の歴史書のような本を買ってもらった。アトゥム様から授かった自動翻訳のおかげか、異世界の文字もすらすら読める。これでこの世界のことをもっと詳しく知ることができそうだ。
(ほう……ニンゲンにも、なかなか面白いモノがいるではないか)
「ん……?」
ふと、背筋にゾクリとした寒気が走り、振り返る。だが、そこには買い物を楽しむ人々の群れがあるだけだった。
「ロイー! 行くわよー」
「はーい!」
母さんに呼ばれ、首を傾げながらも急いでその場を後にした。
⭐︎
買い物のあと、みんなと合流して賑やかに夕飯を食べた。たくさん話してたくさん笑ったせいか、満腹になった俺はいつの間にか深い眠りに落ちていた。
ガタン、ゴトン。
揺れで目を覚ますと、すっかり暗くなった夜道を進む馬車の中だった。向かい合わせに座る父さんと母さんが、ひそひそと話している。
「まさか、ロイに魔法の才能がないなんてな……」
「そうね。あの子のあんなに落ち込んだ顔、初めて見たわ」
どうやら、俺のことについて話しているらしい。寝たふりをしながら耳をすます。
「俺は、あいつに剣術を教えようと思っている。魔力が『1』だった以上、魔法学院に入るのは無理だろう」
……魔法学院? 初めて聞く名前だ。父さんは俺をそこに行かせようとしていたのだろうか。なんだかすごくお金がかかりそうな名前だな……
「……ロイは剣術の方が向いているかもしれないわ」
「そうだな、剣術だったら俺がしっかり鍛え上げてやる」
父さんがなにやら意気込んでいる。……うぅ、なんだかまた馬車酔いが襲ってきた。早く本格的に寝てしまおう。
⭐︎
「ロイー! 朝だよー!」
ドスッと胸の上に衝撃が走り目が覚める。乗っかっていたのは、無邪気な笑顔を浮かべたリロだった。鍵くらいかけさせてほしい。前世が高校生だった俺には、精神毒が強すぎる。
「えー……まだ寝てたいよー」
「だーめ! 早く魔法の練習しようよー。早く行かないと、ロイがパパにとられちゃうー!」
魔力測定を終えた翌日から、俺は父さんによる地獄の剣術特訓を受けることになった。
剣なんて握ったこともない俺は、この一ヶ月、父さんと一緒にひたすら素振りしかしていない。魔法と違って地味でワクワク感はないが、父さんが熱心に教えてくれるので、それに応えようと頑張ってはいるのだが……。
「ロイ、はーやーくーいーこー!」
リロが手を引っ張りながら目をキラキラさせている。こうなると頑固で聞き入れてくれない。まったく、今を何時だと思っているんだ。地球の時間で言ったら大体朝の五時だぞ。
「わかった、わかったよ」
諦めてベッドから起き上がり、出かける準備を始めた。
俺たちは村の近くにある大木の下で、こっそり魔法の練習をしている。名目上は「俺がリロの魔法を見学している」ということになっているが、もちろん俺も一緒になって魔法を使っている。
「「ファイヤーボール!」」
二人同時に呪文を唱える。
目の前に出現したのは、テニスボールくらいの火の玉と、バスケットボール五、六個分くらいの炎の玉。もちろん、大きな方が俺の放ったやつだ。
「なんでロイのは、そんなにおっきいの?」
リロが不思議そうに首をかしげる。
同じ魔法を使っているのに、どうしてここまで規模が違うのだろうか。これがアトゥム様の言っていた「魔法適性」の差なのだろうか。でも魔力『57』のリロにも十分適性はありそうだが……。
まあ、深く考えても仕方ないか。
「きっと、たくさん練習してるからだよ」
適当に答えておいた。
「そっか〜! リロもおっきなやつ出せるように頑張るね!」
素直なリロは元気いっぱいに頷いた。
「リロは僕よりも魔力数値が多いんだから、すぐ抜かされちゃうかもな」
「ふふん! そしたらね、リロがロイのこと守ってあげる!」
本当に可愛い奴だ。魔力1の俺には勿体ないくらいに。
「ロイー! 稽古の時間だぞー!」
遠くから父さんの野太い声が響いてきた。
「えぇー、もう!?」
「今日はいつもより早いみたいだね」
「もー……」
リロがほっぺたをプクッと膨らませて不満顔をする。
「じゃあ、また明日練習しようね」
「うん。でも今度は、朝早くから男の子の部屋に勝手に入って来ちゃダメだからね?」
「わかったー!」
……絶対にわかってない顔だ。
「じゃ、また後で!」
不満顔を一瞬で笑顔に変えると、リロはパタパタと手を振って去っていった。俺も息を整え、父さんの元へと走っていった。
お読み頂きありがとうございます!アドバイス等ありましたら、書いて頂けると幸いです。
いやー小説って書くの難しいですね。読んでいるとわかりにくいところが沢山あったと思います。そんな中最後まで読んで頂きありがとうございます。
次回もぜひ見てくださーい。




