第四話 魔力測定
「ねーえ、教えてよロイ!」
そう言って俺の服の裾を引っ張ってくる可愛らしい女の子は、幼馴染のリロだ。
「無理だよー。危ないもん」
俺はきっぱりと断る。俺とリロは今年で五歳になった。
四歳の時、俺は大きなミスをしてしまった。うっかりリロに魔法を使っているところを見られてしまったのだ。けれどリロは「自分に魔法を教えてくれるなら、大人たちには言わない」という条件で秘密を守ると約束してくれた。
そうしてリロは事あるごとに「魔法を教えて」とねだってくるのだが……俺もこんな可愛い幼馴染に頼まれたら教えてあげたいのは山々だが、教えられない明確な理由がある。
それは『魔力切れ』だ。
魔力を使いすぎると意識を失ってしまう現象で、俺も過去に一度だけ経験がある。
そう、あれは二回目の魔法を撃とうとした時だった——。
『ふぁいやーぼーる!』
ボフッ! と音を立てて、小さな火種が生まれた。
おおー! 思わず声が出る。今度は静かに練習しなければ。
『うぉーたーぼーる!』
今度は小さな水の球体が空中に現れた。触った瞬間に崩れ落ちてしまったが、確かな手応えだ。
なんだか体が重くなってきた気がするが、まあ気のせいだろう。あのポンコツ女神が『魔法適性』をつけてくれたはずだしな。
そう高を括り、もう一度『ウォーターボール』を唱えようとした瞬間——俺の意識は途絶えた。
目が覚めると、目の前には母さんがいた。
「お外で寝ちゃダメでしょ!」と怒られたが、幸いにも魔法の練習をしていたこと自体はバレずに済んだ。
この一件から、俺はある重大な事実に気づいた。
(……俺の魔力、少なくね?)
いやいや、そんなはずはない。あの女神アトゥムに魔力を増やしてもらったはずだ。つまり、幼すぎるこの身体ではまだ魔力を十分に溜め込めないということだろう。うん、そうに違いない。
チートをもらったはずの俺ですら二回で限界だったのだ。リロが使ったら一体どうなるか。一発打てるかどうかも怪しい。だから申し訳ないが、リロに教えるわけにはいかないのだ。
「ロイのケチ〜!」
リロが頬を膨らませて文句を言っているが、華麗にスルーする。
ちなみに最近の俺は、無詠唱で魔法を使えないか模索中だ。ラノベの定番だが、無詠唱はやっぱり難しい。うんともすんとも言わないので、ため息をつきながら普通に口に出す。
「ウォーターボール」
今では自分の頭くらいの大きさの水球が出せるようになった。しかも、同じ大きさを連続で十回は出せる。やはり赤ん坊の頃の身体では負担が大きすぎただけだったのだ。
心の中で「ポンコツ女神」なんて暴言を吐いてごめんなさい、アトゥム様。
ちなみにこの五年間で分かったのだが、アトゥム様はこの世界でかなりメジャーで偉大な神様らしい。家にある本の多くに名前が登場し、両親もことあるごとにアトゥム様に感謝を捧げている。あいつ、案外すごい奴だったんだな。
そういえば、六歳になると『魔力測定』という儀式を行うらしい。父さんがよく誇らしげに話してくれる。
「ロイは立派な魔法使いになれるぞ! なにせ母さんがすっごーい魔法使いだからな!」
母さんは少し照れていたが、否定はしなかった。確かに母さんは日常生活でバンバン魔法を使っているのに、魔力切れを起こしているところを見たことがない。昔は凄腕の冒険者だったのだろうか。
父さん、その言葉通り、あなたの息子は天才ですよ。フハハ。
⭐︎
そしてとうとう、魔力測定の当日を迎えた。
測定は街の教会で行うらしく、俺たちは朝早くから馬車に揺られていた。
リロは母さんの膝の上でぐっすり眠っていたが、俺は車酔いならぬ『馬車酔い』のせいで死にそうになっていた。うう……最悪だ。
三、四時間ほど馬車に揺られ、俺たちはカザール王国という国の大聖堂に到着した。
昨日は魔力測定前の追い込み練習で、同じ魔法を三十回も撃てるようになり、二つ同時に発動させる技術も身につけた。昨日の疲れと馬車酔いは残っているが、胸の高鳴りの方が勝っていた。
よし! 今日から俺の異世界無双伝説が始まるぞー!
先に測定を受けている子供たちを観察すると、大きな水晶のような媒体に手をかざすことで魔力量が数値化される仕組みらしい。
一般の子供の大半は『20』程度。たまに『30』を超える奴がいるが、そういうのは大抵裕福な貴族の子供だ。ここでは平民も貴族も分け隔てなく測定してくれるなんて、良い国だな。
やがて、リロの番がやってきた。リロの両親も魔法使いなので、そこそこの数値は出るはずだ。
「測定が完了いたしました。あなたの魔力量は……『57』です。」
おおー! 普通の人の二倍以上か! すごいな!
リロと両親は大喜びしている。リロは俺の方を振り返り、自慢気に嬉しそうに手を振ってきた。俺も軽く手を振り返す。リロ一家は「外で待ってるね」と声をかけてくれ、上機嫌で教会を後にした。
そしてついに、俺の番がやってきた。
背後から父さんと母さんが大きな声で「「ロイー! がんばれー!」」と声援を送ってくる。別に頑張るも何もないと思うのだが……。
俺は期待に胸を膨らませながら、冷たい水晶にそっと手を当てた。
神官が水晶を覗き込み、告げる。
「測定が完了いたしました。あなたの魔力量は……『1』です」
「え……?」
お読み頂きありがとうございます!アドバイスや感想等ございましたら書いて頂けると喜びます。
ついに、一話の伏線回収がされましたね。これからどんどん面白くなっていく予定です(多分)。
ぜひ次回も読んでください!




